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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25C |
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管理番号 | 1244418 |
審判番号 | 不服2009-15521 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-25 |
確定日 | 2011-10-07 |
事件の表示 | 平成11年特許願第305089号「電解装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月 8日出願公開、特開2001-123288〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年10月27日の出願であって、平成21年 5月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年 8月25日付けで拒絶査定の不服審判の請求がなされ、平成23年 2月24日付けで当審によって拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、平成23年 5月20日付けで、意見書が提出された。 2.本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、平成21年 5月 7日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「電解槽内において陽極および陰極のいずれか一方の電極が充填層電極とされ他方が対極とされた電解装置において、充填層電極の充填層は給電部材上に設けられ、該充填層および対極がそれぞれ実質的に水平に設置され、該充填層を挿通乃至は貫通せしめられ、かつ、基部よりも先端が対極に接近せしめられた導電体である貫通給電部材を有し、該貫通給電部材の基部が前記給電部材に固着されたことを特徴とする電解装置。」 3.当審の拒絶理由 当審において平成23年 2月24日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願日前に頒布された特開昭61-278850号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明であって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、というものである。 4.引用例 (1)特開昭61-278850号公報 引用例には、「写真処理液の脱銀方法及び写真処理機」(発明の名称)が記載され、図面とともに以下の記載がある。 (引ア)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、写真処理液の脱銀方法及び該脱銀方法の実施に使用する写真処理機に関する。特に、使用された写真処理液から電解的に脱銀して銀を回収でき、あるいは銀を回収するとともに該写真処理液を写真性能的に問題なく再利用することも可能な脱銀方法及び写真処理機に関する。」(3頁左上欄2?8行) (引イ)「本発明者等は前記の目的を達成すべく多くの実験を重ねた結果、少なくとも銀錯イオンを含有するハロゲン化銀写真材料の処理液を電解的に処理して脱銀する方法において、電解槽の陰極にベッド電極を配することにより、これを達成し得ることを見いだしたものである。 この場合特に、ベッド電極が電導性の粒子からなる固定床電極や流動床電極であるものによりこの目的が良好に達せられる。」(6頁右上欄7?15行) (引ウ)「電導性粒子よりなるベッド電極とは、導電性粒子部と集電子(板もしくは網等)とを組合せた電極を指し、具体的形態は、集電子網を底あるいは周囲に敷いたカゴ状容器に導電性粒子をこの中に有し、上方もしくは下方のから電解液を流通せしめ、導電性粒子を流動状態において、電極として用いることで代表される導電性粒子を流動、もしくは固定床としての凝流動状態で用いることを特徴とした電極である。なお便宜的に、下方から液を流動させ導電性粒子を流動状態で使用するものを流動床電極、このとき、導電性粒子を固定して用いるもの、及び液を上方から流動させ導電性粒子を固定状態で用いるものを固定床電極と呼ぶが、その他横から流動させるものなど、ここに例示した形態にとらわれない。 ベッド電極に用いられる導電性粒子の材料は導電性であれば特に制限されないが、漂白定着液あるいは安定化液に含有される金属イオン、錯化材金属錯イオンの種類に応じて適宜選択される。かかるものとして、アルミニウム、鉄、ニッケル、カドミウム、チタン、スズ、鉛、銅、水銀、銀、白金、金などの金属の他、ステンレス等の合金や成型された炭素、あるいは半導体などが挙げられるが、イオン化傾向の差による溶解損失、人体への毒性を考慮して、特にステンレス、あるいは炭素(グラファイト)が好ましい。本発明の効果は、特にステンレススチール粒子、炭素(グラファイト)粒子を用いることによって効果的に発揮される。」(7頁右下欄9行?8頁左上欄17行) (引エ)「導電性粒子の容器(陰極のわく)には、集電子と呼ばれる電源負側端子に接続される導電体が取り付けられるが、容器の形状、大きさ、集電子の形状、大きさは、粒子の量、流速等により決定され、特に制限されないが、好ましくは、流動方向底面もしくは側面に網状の集電子を配するものが良い。特に漂白定着液の場合、底面の集電子から流動方向に集電子を伸長させたものは、他に比べて導電性粒子量が少なくとも同一の効果を発揮するという利点を有し、電解槽の小型化に有利である。具体的には流動床電極を流動方向に数?数十室に隔て隔壁を網状導電材料とし底面集電子と電気的に接続するのが好ましいが、これに制限されるものではない。集電子に用いられる材料には、導電性粒子に用いられるものがほとんどすべて使用できるが、溶解性や汚染を考慮すれば白金、ステンレス等が好ましい。但しこれに限定されない。」(9頁左上欄1?17行) (引オ)「ベッド電極内の電位の分布は副反応を抑えたり均一な銀の電着を生じさせるためにできるだけ小さいことが好ましいことであり、ベッド電極内のいかなる部分においても少なくとも300mV以下、好ましくは200mV以下、更に好ましくは100mV以下特に好ましくは50mV以下である。ベッド電極内の電位分布が小さければ小さい程本発明の効果が最大に発揮される。 このためにベッド電極は電導性の電極基板と接続したいくつもの電導性隔壁で仕切られたベッド電極室からなっていることが好ましく、又別には何本もの電極基板と接続した電導性障害棒がベッド電極内の任意の位置に配されていることが好ましい。これらの方法により電極内の電位の分布を最小限にすることができる。」(10頁左下欄1?15行) (引カ)「〔発明の実施例〕 以下本発明の実施例を説明する。 第1図に、本発明を流動床電解法により具体化した場合の構成を示す。 但し、第1図は本発明を解説すべく使用するもので、本発明を限定するものではない。本発明の実施例を示す他の図面も同様である。 図面の(1)はグラファイト電極である。(2)は陰極で不銹鋼の有底円筒であり、流動粒子との接触部分とターミナル部分を残して絶縁被覆が施される。(3)の陽極は黒鉛または不浸透性黒鉛、あるいは白金メッキを施したチタンの円筒であり、流動用粒子が接触する部分は非電気電導性で、耐薬品性で流動性粒子不透性の網(11)で流動粒子と隔離され、短絡することを防いでいる。(8)は定電位電源、(9)はクーロメーター、(10)はレコーダーである。 老化漂白定着液は貯槽(5)からポンプ(7)によつて流量計(6)を通して上昇し、流動粒子を膨張させて流動床(4)を形成させ、上部から貯槽に戻るようにして循還する。 極間距離は20ないし30mmで、この間に均一な流動床を形成させる。流動粒子は炭素粒子が使用されるが、ステンレス粒子でも差しつかえない。しかし比重の小さいものは十分な流速が得られないため、銀の析出層の状態は良くない。炭素粒子の大きさは2mm径のものが使用され、流動床容積の30ないし50%を添加して運転される。 照合電極のブリッヂの先端は通常、陰極の表面近く、かつ全体のどの位置からも陰極までの距離が等しくなるように置くのが好ましい。ブリッヂは定着溶液あるいは硫酸ナトリウム溶液などが使用できる。 電解電流は設定電位と液中の銀濃度に依存する。 溶液中の銀濃度は市販の銀イオン濃度試験紙で測定できるが、設定された陰極電位に基づいて、対応する電流値によってより容易に管理することができる。 最適電位範囲に保持すれば、溶液に硫化銀が生成することがないことはもちろん、処理液中の異臭の発生や、タール、スラッヂ等が出ず、処理液を再使用してもステイン等の発生が全くみられなかった。また、析出銀の状態は良好で純度は平均で99.9%程度に保たれる。 老化漂白定着液の脱銀処理は溶液から連続的に送入して行われるか、またはバッチで処理される。電解終了時に陰極粒子を取り出して別の陰極と取替える場合を除いて、運転はほとんど自動的に行われ省力化に適している。 陰極粒子上に析出した銀層は焼却すれば容易に基体から銀を回収することができ、純度の高い金属銀が得られる。」(18頁右下欄末行?19頁左下欄11行) (引キ)「次に第3図乃至第7図に従って本発明の実施例を説明する。各図中"丸1"(審決注:これは、数字の1を○で囲った文字を意味する。以下、同様に、数字の1、2、3・・・を○で囲った文字を、"丸1"、"丸2"、"丸3"、・・・と表示する。)は、電源装置を示し、"丸2"は陽極でありグラファイト電極であるが、ステンレス電極でも差し支えない。"丸3"は流動性粒子であり炭素粒子が使用されるがステンレス粒子でも差し支えない。"丸4"は流速を与えるポンプである。第3図の"丸5"は、陰極であり、粒子漏出しない耐薬品性の電導性網である。例えばステンレス網が用いられる。"丸6"は流量計で流速を測定する為に取りつけてあるが、なくてもよい。"丸7"は貯槽である。 第4図の"丸8"は陰極で壁面に取り付けたステンレス板であるが炭素板でよくまた形状も棒でもよく、形状は特に規定されない。"丸9"は粒子が漏出しない様な電気伝導性の網に取り付けられたステンレス棒であり"丸8"と同様陰極として用いられる。"丸8"のステンレス棒と同様炭素棒でもよく板でもよく形状は如何なるものでもよい。また"丸8"同士、"丸9"と接触していても差し支えない。」(20頁右上欄13行?左下欄10行) (引ク)第4図には、陽極"丸2"は水平方向に伸びていて、上記記載事項(引カ)の第1図の説明、及び、同(引キ)の第3図の説明を参酌すれば、第4図において、老化漂白定着液等の液体が貯槽に蓄えられ、当該蓄えられた液体がポンプにより、特定の空間内を上昇し、特定の空間内上方の所定の位置で取出され、貯槽に戻されるものであって、流動性粒子"丸3"及び液体(老化漂白定着液等の使用された写真処理液)は、何らかの部材によって特定の空間内に収容されていることが、看取される。 そして、上記記載事項(引キ)の第4図の説明を参酌すれば、第4図の「ステンレス板"丸8"」は、流動性粒子"丸3"及び液体(老化漂白定着液等の使用された写真処理液)を特定空間内に収容する、上記何らかの部材の側壁に取り付けられていることが看取される。 したがって、引用例には、「流動床電解法によって、老化漂白定着液等の使用された写真処理液から電解的に脱銀して銀を回収でき、あるいは銀を回収するとともに該写真処理液を写真性能的に問題なく再利用することも可能な写真処理機において、電源装置"丸1"と、水平方向に伸びたグラファイト電極である陽極"丸2"と、ベッド電極として用いられる、炭素粒子である導電性の流動性粒子"丸3"と、流動性粒子"丸3"及び液体(老化漂白定着液等の使用された写真処理液)を特定空間内に収容する部材の側壁面に取り付けたステンレス板の陰極"丸8"と、電気伝導性の網に取り付けられた陰極として用いられるステンレス棒"丸9"とを備えた写真処理機。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 5.対比・判断 (1)本願発明と、引用発明とを比較する。 引用発明では、流動性粒子"丸3"及び液体(使用された写真処理液)は、何らかの部材によって写真処理機内の特定の空間に収容されて、流動床電解法が行われていることから、引用発明は、当該特定の空間を形成する「電解槽」を備えた「電解装置」であることは明らかである。 したがって、引用発明の「写真処理機」は、本願発明の「電解槽内において」電解を行う「電解装置」に相当する。 また、引用発明では、「炭素粒子である導電性の流動性粒子"丸3"」、「壁面に取り付けたステンレス板の陰極"丸8"」、及び、「電気伝導性の網」によって、「ベッド電極」を構成している。 一方、本願の明細書の段落【0002】に、「【従来の技術】充填層電極は、ベッド電極および三次元電極などとも別称され、グラファイト粒のような炭素粒などの充填物を容器内に充填した充填層と、該充填層に給電するための給電部材とを有している電極である。」と記載されているように、「充填層電極」は、「ベッド電極」と別称されるものであって、引用発明のベッド電極に用いられる「炭素粒子である導電性の流動性粒子"丸3"」は、本願発明の「充填層」に相当することは明らかである。 また、引用発明の「陽極"丸2"」は、水平方向に伸びるものであり、本願発明の水平に設置された「対極」に相当する。 また、引用例の第4図から明らかなように、引用発明の「炭素粒子である導電性の流動性粒子"丸3"」は、水平方向に伸びる陽極"丸2"に向かい合うような形で、水平に設置されている。 また、引用例の第4図の「ステンレス棒"丸9"」が取り付けられた「電気伝導性の網」は、引出線による具体的な場所は例示されていないが、「電源装置"丸1"」からの配線先、及び、第3図と第3図の説明(「第3図の"丸5"は、陰極であり、粒子漏出しない耐薬品性の電導性網である。」という記載。)とを参照すれば、電源装置"丸1"からの配線が接続された部材であることは明らかである。 したがって、引用例発明の「陰極"丸8"」と「電気伝導性の網」とからなる部材は、本願発明の「給電部材」に相当する。 そして、引用発明では、「ステンレス棒"丸9"」は「電気伝導性の網」に取り付けられていて陰極としても用いられるのであるから、「ステンレス棒"丸9"」の基部は「電気伝導性の網」に固着されていることは明らかである。 また、引用例の第4図から明らかなように、「ステンレス棒"丸9"」の上端部は、「陽極"丸2"」に接近している。 さらに、同図から明らかなように、「ステンレス棒"丸9"」は、ベッド電極として用いられる炭素粒子である導電性の流動性粒子"丸3"を挿通乃至は貫通している。 そうすると、引用発明の「ステンレス棒"丸9"」は、本願発明の「充填層を挿通乃至は貫通せしめられ、かつ、基部よりも先端が対極に接近せしめられた導電体である貫通給電部材」に相当する。 してみると、引用例には、「電解槽内において陰極が充填層電極とされ陽極が対極とされた電解装置において、充填層電極の充填層は給電部材上に設けられ、該充填層および対極がそれぞれ実質的に水平に設置され、該充填層を挿通乃至は貫通せしめられ、かつ、基部よりも先端が対極に接近せしめられた導電体である貫通給電部材を有し、該貫通給電部材の基部が前記給電部材に固着されたことを特徴とする電解装置。」が開示されており、本願発明と引用発明とに、実質的な差異がない。 なお、請求人は、平成23年 5月20日付けの意見書において、本願発明(請求項3に係る発明)と引用発明(当審拒絶理由で「引用例4」として引用された本審決における「引用例」)とについて、以下のように主張している。 (意1)「〔請求項3〕に係る発明の電解装置は、充填層電極の充填層は給電部材上に設けられ、かつ、対極が該給電部材と共に実質的に水平に設置された(〔請求項3〕および〔0015〕)水平型電解装置であり、また、〔請求項3〕に係る発明の電解装置における貫通給電部材は、その先端を充填層の対極側表面近辺まで貫通せしめられ実質的に鉛直に設けられ(〔0013〕第3?6行)、『定電位電解法』の適用を可能とするために、充填層電極における電位の制御を可能ならしめて充填層電極の充填層における電位の正確な測定を可能とするものである。 本願〔請求項3〕に係る発明は引用例4記載の発明ではない。 引用例4の第3図および第4図それぞれに示された電解装置においては、導電性粒子は電解槽槽体と同様に鉛直な円柱として設けられており、充填層が水平に設置された本願〔請求項3〕に係る発明の電解槽と相違する。 また、引用例4記載の電解装置において、第4図に示されたステンレス棒9は、前記したように、単に集電子として作用するのみであり、本願発明の電解装置における『貫通給電部材』の作用・機能とは相違し、『貫通給電部材』には相当しない。 さらに、ステンレス棒9は単に集電子のみとして作用するのであるから、導電性粒子3と接触してさえいればよくその長さは厳しく特定されることはないが、他方、本願〔請求項3〕に係る発明においては、水平な充填層の表面近辺の電位を測定するための貫通給電部材はその先端が水平な充填層の表面近辺となるように、長さには厳しい制限があり、この点でも、本願〔請求項3〕に係る発明の水平型電解装置は引用例記載の発明における電解装置とは本質的に相違する。 因みに、引用例4の第4図における電解装置においてステンレス棒9の先端は導電性粒子3の層の近辺にはなく、導電性粒子3の層の表面から突出せしめられている。 仍って、本願請求〔請求項3〕にかかる発明は、引用例4記載の発明と本質的に相違し、特許されるべきである。」(II本願発明と引用文献記載の発明との対比 2〔請求項3〕について) 要するに、請求人は、引用発明の「ステンレス棒"丸9"」は、定電位電解法に適用されるものではなく、本願発明の「貫通給電部材」には相当しない、引用発明は水平電解装置ではない、及び、引用発明の「ステンレス棒"丸9"」は「導電性粒子"丸3"」の層の表面から突出していて、本願発明の「貫通給電部材」には相当しない旨を主張している。 しかしながら、本願発明は、「定電位電解法」に適用可能な電解装置だとしても、本願発明には、「定電位電解法」に関する限定はされていない。 一方、本願の平成21年 5月 7日付けの手続補正書によって補正された明細書の段落【0015】には、以下の記載がある。 (明1)「【0015】 すなわち、板体が対極とされた場合において、板体の対極を電解槽内の上部に水平に設け、かつ、充填物を電解槽の底板上、または支承板上に充填し、その表面を均平して充填層を水平に形成せしめ、かつ、該充填層内を貫通給電部材である複数の導電体を鉛直に貫通乃至は挿通せしめる。通常は、貫通給電部材である複数の導電体は、通常は、その先端縁を充填層表面と実質的に同一な水平面に乃至は水平面から僅かに高い同一平面に位置せしめて充填層表面に露出せしめ、乃至は、その先端部を充填層表面から突出せしめて貫通せしめることが好ましい。なお、貫通給電部材は、その長さを充填層の厚さよりも僅かに短くして、その先端縁を充填層表面よりも低くして挿通せしめることができる。就中、貫通給電部材の先端縁を充填層表面と実質的に同一な水平面とすることが理想的である。 充填層が水平に形成せしめられた充填層電極およびこのような充填層電極を有する電解装置を、以下、それぞれ、水平型充填層電極および水平型電解装置と記すこともある。」 また、同段落【0050】には、以下の記載がある。 (明2)「【0050】また、給電部材93である支承板に鉛直に植設され充填層91を貫通せしめられ、互いに等長の複数のステンレス合金製丸棒が貫通給電部材92,…,92とされる。貫通給電部材92,…,92である複数のステンレス合金製丸棒の先端は、充填層91の表面と実質的に同一な平面にあり、その先端縁は充填層91の表面に露出せしめられている。給電部材93はコード932に接続せしめられている。なお、開口731の直径は対極8から充填層91にかかる大きさとされ、かつ、開口731は対極8と充填層91との両者の側方に位置せしめられている。」 上記(明1)には、「対極を電解槽内の上部に水平に設け」、「充填層が水平に形成せしめられた充填層電極およびこのような充填層電極を有する電解装置を、以下、それぞれ、水平型充填層電極および水平型電解装置と記す」としており、同様な対極及び充填層を備えた引用発明の「写真処理機」は、本願の明細書中で定義された「水平型電解装置」に相当するものである。 また、上記(明1)の「該充填層内を貫通給電部材である複数の導電体を鉛直に貫通乃至は挿通せしめる。通常は、貫通給電部材である複数の導電体は、通常は、その先端縁を充填層表面と実質的に同一な水平面に乃至は水平面から僅かに高い同一平面に位置せしめて充填層表面に露出せしめ、乃至は、その先端部を充填層表面から突出せしめて貫通せしめることが好ましい。」という記載、及び、上記(明2)の「貫通給電部材92,…,92である複数のステンレス合金製丸棒の先端は、充填層91の表面と実質的に同一な平面にあり、その先端縁は充填層91の表面に露出せしめられている。」という記載があることから、「ステンレス合金製丸棒の先端は、充填層91の表面と実質的に同一な平面にある」旨の記載はあるものの、「その先端部を充填層表面から突出せしめて貫通せしめることが好ましい。」という記載もあり、ステンレス合金製丸棒の先端が充填層表面から突出することを否定しているものではない。 また、請求項3には、「該充填層を挿通乃至は貫通せしめられ、かつ、基部よりも先端が対極に接近せしめられた導電体である貫通給電部材を有し」と記載されており、貫通給電部材(ステンレス合金製丸棒)が充填層から突出しているかどうかについて、及び、貫通給電部材(ステンレス合金製丸棒)の充填層からの突出の程度がどの程度であるかについては、特定されていない。 したがって、引用発明の「ステンレス棒"丸9"」が「導電性粒子"丸3"」の層の表面から突出しているとしても、本願発明の「貫通給電部材」に相当するものである。 そうすると、明細書の記載を参酌しても、本願発明と引用発明とに差異を見いだすことはできず、請求人の上記主張は、採用することができない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-15 |
結審通知日 | 2011-07-05 |
審決日 | 2011-08-01 |
出願番号 | 特願平11-305089 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C25C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 馳平 憲一 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
田村 耕作 川端 修 |
発明の名称 | 電解装置 |
代理人 | 三宅 正夫 |