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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1244481 |
審判番号 | 不服2009-1828 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-23 |
確定日 | 2011-10-06 |
事件の表示 | 特願2003-354446「放送通信複合端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-123754〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成15年10月15日の特許出願であって、平成19年7月30日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年10月9日付けで手続補正書の提出がなされ、平成20年5月27日付けで最後の拒絶理由の通知がなされ、同年8月4日付けで手続補正書の提出がされ、同年12月15日付けで同年8月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年1月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年2月23日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成21年2月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年2月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 平成21年2月23日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)は、本件補正前の平成19年10月9日付け手続補正書により補正された請求項1の内容を、 「【請求項1】 放送内容を受信する放送受信手段と、 着信時に前記放送受信手段が受信中の放送内容の蓄積を開始するか否かの選択情報を格納する選択情報格納手段と、 前記選択情報格納手段に格納された選択情報にしたがって、前記受信中の放送内容の放送蓄積手段への蓄積を開始する否かを制御する第1の制御手段を含むことを特徴とする放送通信複合端末。」 から、 「【請求項1】 放送内容を受信する放送受信手段と、 放送通信複合端末の通信手段に電話が着信した時に前記放送受信手段が受信中の放送内容の蓄積を開始するか否かの選択情報を格納する選択情報格納手段と、 前記選択情報格納手段に格納された選択情報にしたがって、前記受信中の放送内容の放送蓄積手段への蓄積を開始する否かを制御する第1の制御手段を含むことを特徴とする放送通信複合端末。」 に、変更する補正を含むものである。 上記補正は、補正前の請求項1における「着信時」を、「放送通信複合端末の通信手段に電話が着信した時」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-339648号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。 (あ)「【請求項1】符号化され多重化され変調されたデジタル信号を受信し復調する受信手段と、前記受信手段で復調されたデジタル信号から映像信号,音声信号,番組情報等のサービス情報を分離する分離手段と、前記分離手段で分離された映像信号,音声信号を復号する復号手段とを備えたデジタル放送受信装置において、 前記分離手段から分離されたサービス情報を解析するとともに番組情報を取得する番組情報解析手段と、前記番組情報解析手段によって取得された番組情報より番組の優先度を登録する番組優先度テーブルおよび電話の送信信号から発呼者の電話番号を取得して前記電話番号と氏名を発呼者の優先度とともに登録する個人情報テーブルを作成するテーブル作成手段とを備え、番組視聴中における電話着呼時に、前記個人情報テーブルにある発呼者の優先度と前記番組優先度テーブルにある番組の優先度とを比較して、電話受信と番組録画制御を自動的に行うことを特徴とするデジタル放送受信装置。」 (い)「【0017】図1のデジタル放送受信装置において、100は放送局から送信される符号化され多重化され変調されたデジタル信号の入力端子、101は入力端子100からのデジタル信号を受信し復調する受信部、102は受信部101で復調されたデジタル信号から映像信号,音声信号と番組情報等のサービス情報を分離するデータ分離部、103は分離部102で分離された映像信号から出力された映像/音声信号を復号する映像/音声信号復号部、104は前記映像/音声信号復号部203において復号した映像/音声信号を出力する映像/音声信号出力端子である。 【0018】105はデータ分離部102で分離された番組情報を解析する番組情報解析部である。106は電話機機能部であり、公衆網との接続部である電話回線接続部107と音声信号処理だけでなく発呼者の電話番号を解析も行う音声信号処理部108を備えている。電話機機能部106は図1ではブロック内に含めているが、同様の処理機能を持つ電話機を外部に備える形態を取ることも可能である。 【0019】109は音声信号処理部108からの発呼者電話番号,個人情報テーブルや番組情報解析部105で解析された番組情報をもとに番組優先度テーブル,制御方法等の情報を作成するテーブル作成部である。110はテーブル作成部109で作成された情報と、データ分離部102で分離された映像/音声データとを記憶しておく情報記録部である。111は音声信号処理部108からテーブル作成部109を経由して得られた発呼者電話番号から、対応する個人情報テーブルの情報を出力する情報出力端子である。212は選局やその他様々な操作を実現するために上記101?110の各部を制御する制御部、113はユーザの選局やその他の操作要求を入力するためのユーザ要求入力部である。 【0020】放送局から送信されるデジタル信号は、入力端子100より入力され、受信部101に送出される。受信部101では検波とともにデジタル変調、誤り訂正等の復調処理を行い、多重化されたデジタルデータをデータ分離部102へ送出する。データ分離部102では多重化されたデジタルデータの中から選局されている映像/音声信号を映像/音声信号復号部103へ、番組情報を番組情報解析部105へとそれぞれ分離して出力する。録画制御される際には、分離された映像/音声信号は情報記録部110にも出力され、記録される。データ分離部102で分離された映像/音声信号は映像/音声信号復号部103で復号され、映像/音声信号出力端子104から出力される。」 (う)「【0023】図3は番組優先度テーブルの実施の形態を示す図である。図3において、番組優先度テーブル301は、項目として、番組のジャンルと、優先度(1?2)と、録画すべき番組?を有する。デジタル放送においては番組毎に様々なジャンルが放送局側で設定されている。したがって、番組優先度テーブル301は、番組毎の番組ジャンルにもとづいて優先度と、録画すべき番組かどうかの制御を纏めると便利である。」 (え)「【0031】図6は図1のデジタル放送受信装置の処理動作フローを示す図である。テレビ放送視聴中に電話着呼があった場合に(S1)、図4の個人情報テーブル401に受信した発呼者の電話番号が登録されているかどうかを検索する(S2)。発呼者の電話番号が個人情報テーブル401に登録されていれば、発呼者の電話番号と個人情報テーブル401から取得した発呼者氏名を図5のメッセージ表示部501に表示し(S3)、S5に遷移する。発呼者の電話番号が個人情報テーブル401に登録されていなければ、発呼者の電話番号のみを図5のメッセージ表示部501に表示し(S4)、S6に遷移する。 【0032】S5においては、図4の個人情報テーブル401に設定されている発呼者の優先度が、現在視聴中番組の優先度よりも高いかどうかを取得し、高い場合は自動的に電話受信処理に遷移し(S7)、その後にS8に遷移する。それに対して発呼者の優先度が番組の優先度よりも低い場合にはS6に遷移する。S6では視聴者が一定時間内に電話を受信したかどうかを取得し、一定時間内に電話を受信した際にはS8に遷移し、電話を受信しなかった際には、電話を受信する意志がないものと判断して自動的に留守番電話機能を開始する(S9)。この場合、視聴者はわずらわしいと思われる電話を受けること無く、テレビ放送番組の視聴を継続することが可能であり、特に自動的な録画制御の必要性はない。 【0033】S8において、予め設定しておいた録画すべき番組かどうかを図3の番組優先度テーブル301から取得し、録画対象番組であれば自動的に録画制御を開始し(S10)、そうでなければ録画制御を開始しない(S11)。さらに録画開始の際に録画開始点にマーキングしておくことにより、電話終了後、簡易に録画開始点からの視聴が可能となる。テレビ放送番組を録画するとともに視聴している場合においても、マーキングすることにより電話受信によって視聴が妨げられた部分からの視聴を簡易に行うことが可能となる。上記の説明において自動で各制御に移る処理が数箇所存在するが、視聴者の入力要求等により手動で制御してもよい。 【0034】本実施の形態によれば、デジタル信号中に含まれている番組情報を利用して、視聴者が望む優先度を予め登録しておくので、番組の優先度をまとめて予め設定し登録することが容易にすることができ、且つテレビ放送視聴中にかかってきた電話に対しては、電話をかけてきた相手の優先度および各番組情報を基に設定登録した番組の優先度を比較させることにより、視聴者の要望に応じた電話受信、録画制御、留守番録画処理等を、自動的にさせることができる。」 よって、上記(あ)乃至(え)及び関連図面の記載から、引用例には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「放送局から送信されるデジタル信号を受信する受信部と、 公衆網との接続を行う電話機機能部と、 テレビ放送番組視聴中に電話が着呼した場合に参照され、テレビ放送番組のジャンル別に録画すべき番組であるか否かの情報が設定されている番組優先度テーブルを記憶する情報記録部と、 前記情報記録部に記憶された前記番組優先度テーブルの前記録画すべき番組であるか否かの情報にしたがって、テレビ放送視聴中の映像/音声信号を前記情報記録部に記録させる制御部を含むデジタル放送受信装置。」 (3)対比 (3-1)本件補正発明と引用発明との対応関係について (ア)引用発明の「放送局から送信されるデジタル信号」は放送内容を含んだものであるから、引用発明の「放送局から送信されるデジタル信号を受信する受信部」は本件補正発明の「放送内容を受信する放送受信手段」に相当する。 (イ)引用発明の「電話機機能部」、「電話が着呼」は、本件補正発明の「通信手段」、「電話が着信」に相当する。 (ウ)引用発明の「デジタル放送受信装置」は、公衆網との接続を行う電話機機能部を含むものであるから、本件補正発明の「放送通信複合端末」に相当する。 (エ)引用発明の「テレビ放送番組のジャンル別に録画すべき番組であるか否かの情報」は、テレビ放送番組視聴中に電話が着呼した場合に、視聴中のテレビ放送番組の録画を行うかまたは録画を行わないかの選択を行う情報であるから、「選択情報」と呼び得るものである。 (オ)引用発明と本件補正発明は、「放送通信複合端末の通信手段に電話が着信した場合、前記放送受信手段が受信中の放送内容の蓄積を行うか否かの選択情報」を有している点で共通している。 (カ)引用発明の「制御部」は、テレビ放送視聴中に電話が着呼した場合、情報記録部に記憶された番組優先度テーブルの情報に基づいて、当該視聴中の番組が録画をすべき番組であるならば情報記録部に記録の実行、即ち記録の開始が行われるものであるから、引用発明と本件補正発明は、「選択情報にしたがって、前記受信中の放送内容の蓄積を開始する否かを制御する制御手段」を有している点で共通している。 (3-2)本件補正発明と引用発明の一致点について 上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。 「放送内容を受信する放送受信手段と、 放送通信複合端末の通信手段に電話が着信した場合、前記放送受信手段が受信中の放送内容の蓄積を行うか否かの選択情報にしたがって、前記受信中の放送内容の蓄積を開始する否かを制御する制御手段を含むことを特徴とする放送通信複合端末。」 (3-3)本件補正発明と引用発明の相違点について 本件補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。 (相違点A) 本件補正発明は、「選択情報」を「選択情報格納手段」に格納し、「受信中の放送内容」を「放送蓄積手段」に蓄積しているのに対し、引用発明ではこれらに該当する情報を「情報記録部」に共に記録している点。 (相違点B) 本件補正発明においては、「放送通信複合端末の通信手段に電話が着信した時に前記放送受信手段が受信中の放送内容の蓄積を開始するか否かの選択情報を格納」しているのに対し、引用発明は、「電話機機能部に電話が着呼した時に受信部が受信中の放送内容の録画を開始するか否かの選択情報を格納」していない点。 (4)当審の判断 (4-1)相違点Aについて 映像機器において、機器の設定データのような容量の小さなデータと、画像データのような容量の大きなデータとを別々の記憶部所に記憶することは、例えば、特開2000-196776号公報(段落【0020】,【0036】の記載)、特開2001-320643号公報(段落【0011】?【0012】の記載)に記載されているように周知技術にすぎない。 してみると、引用発明に上記周知技術を適用して相違点Aの構成とすることに格別の困難性は認められない。 (4-2)相違点Bについて テレビ放送視聴中に電話がかかってきた場合、電話の着信時に視聴中のテレビ番組の録画を開始することは、平成19年7月30日付けの拒絶の理由に引用された特開2002-247490号公報(段落【0014】?【0016】の記載)、及び、上記(4-1)に記載した特開2000-196776号公報(段落【0035】?【0036】の記載)に記載されているように周知技術である。 そして、引用発明と上記周知技術は、テレビ放送視聴中に電話がかかってきた場合に視聴中のテレビ番組を録画する技術分野において共通しているので、引用発明に上記周知技術を適用し電話の着信時に番組優先度テーブルを参照して録画を開始するように制御させることで相違点Bのようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (4-3)本件補正発明の作用効果について また、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)むすび よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成21年2月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成19年10月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 放送内容を受信する放送受信手段と、 着信時に前記放送受信手段が受信中の放送内容の蓄積を開始するか否かの選択情報を格納する選択情報格納手段と、 前記選択情報格納手段に格納された選択情報にしたがって、前記受信中の放送内容の放送蓄積手段への蓄積を開始する否かを制御する第1の制御手段を含むことを特徴とする放送通信複合端末。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本件補正発明における着信時を「放送通信複合端末の通信手段に電話が着信した時」に限定する点を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-27 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-25 |
出願番号 | 特願2003-354446(P2003-354446) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 行武 哲太郎、畑中 博幸、山中 実 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
甲斐 哲雄 飯田 清司 |
発明の名称 | 放送通信複合端末 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 机 昌彦 |