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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1244530
審判番号 不服2010-14083  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-25 
確定日 2011-10-06 
事件の表示 特願2007-332923「液滴吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月16日出願公開、特開2009-154328〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年12月25日に出願したものであって、平成22年2月9日付けで手続補正がなされ、同年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月25日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年10月13日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年12月16日に回答書が提出された。
当審においてこれを審理した結果、平成23年5月16日付けで拒絶の理由を通知したところ、審判請求人は同年7月12日付けで意見書及び手続補正書を提出した。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年7月12日付け手続補正で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を備えるイジェクタと、
前記イジェクタの前記圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路と、
前記第1流体流路から前記圧力室へ供給された液体が前記連通路を通じて流れ込む第2流体流路と、
前記第1流体流路を通して前記イジェクタへ、前記イジェクタから前記第2流体流路を通して液体を循環させる循環手段と、
前記循環手段を制御して前記第1流体流路から前記イジェクタの前記圧力室へ供給されて前記第2流体流路に流れ込む液体を止めることなく循環させる液体の循環量を、前記ノズルから液滴が吐出される液滴吐出時と前記ノズルから液滴が吐出されない液滴吐出待機時とで変える液体増粘防止制御部と、を備え、
さらに、前記液体増粘防止制御部は、前記ノズルが液滴を吐出する前に、前記ノズルから液体漏れや空気吸い込みを生じさせないように前記アクチュエータに印加される第一の予備波形を、前記ノズルから液滴が吐出される時に、前記ノズルから吐出される液滴の吐出安定性及び吐出方向性に影響させないように前記アクチュエータに印加される第二の予備波形よりも大きくすることを特徴とする画像形成装置。」

3 引用刊行物
(a)平成23年5月16日付け当審の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-248766号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載が図とともにある(下線は審決において付した。以下同じ。)。
ア 【0015】図2は図1の原理図を具体化したインクジェット記録装置の縦断面概略図である。図2において、10がインクジェット記録装置の吐出ヘッドで、図の右上に吐出部10aがあり、これと対向する反対側(左上)にPZT14が配設されている。このPZT14に吐出信号発生手段13から画像データ信号に基づいた電気信号が印加される。吐出ヘッド10の内部は中空であり、その中央に、流路規制部材10bが位置しており、インク50の流路を規制している。すなわち、インク50を収容するインクタンク20から、パイプ21、送液手段22、パイプ23を介して連続的に吐出ヘッド10内へ送液されたインク50は、吐出ヘッド10の左壁面と流路規制部材10bの左面との間の通路を左上へ進み、PZT14側から吐出部10a側へと移り、吐出ヘッド10の右壁面と流路規制部材10bの右面との間の通路を右下へ進み、流路規制部材10bの下方を通ってインクタンク20へ戻る。
【0016】この流路規制部材10bは上辺が段状に形成され、吐出ヘッド10の上面との距離がPZT14側で広く、吐出部10a側で狭く形成されている。この狭い領域において吐出ヘッド10の上面内側と流路規制部材10b上面にそれぞれ濃度分布制御電極18が設けられている。これらの濃度分布制御電極18間に濃度バイアス電圧制御装置(電界制御手段)12からパルスP1が所定時間印加されて濃度分布制御電極18間に電界が形成される。 荷電された粒子を溶媒中に分散したインクがこの電界中を通過するとき、粒子が吐出口10a側の濃度分布制御電極18に移動するように、電圧パルスが印加される。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「吐出ヘッド10は、右上に吐出部10aがあり、これと対向する反対側(左上)にPZT14が配設されており、
吐出ヘッド10の内部は中空であり、その中央に、インク50の流路を規制している流路規制部材10bが位置しており、
流路規制部材10bは上辺が段状に形成され、吐出ヘッド10の上面との距離がPZT14側で広く、吐出部10a側で狭く形成されており、
インク50を収容するインクタンク20から、パイプ21、送液手段22、パイプ23を介して連続的に吐出ヘッド10内へ送液されたインク50は、吐出ヘッド10の左壁面と流路規制部材10bの左面との間の通路を左上へ進み、PZT14側から吐出部10a側へと移り、吐出ヘッド10の右壁面と流路規制部材10bの右面との間の通路を右下へ進み、流路規制部材10bの下方を通ってインクタンク20へ戻るようになっているインクジェット記録装置。」(以下「引用発明」という。)

(b)平成23年5月16日付け当審の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-327964号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載が図とともにある。
イ 【0125】また電子部品用電極インキは、常時循環させる必要はない。例えばインキジェットで印字している最中は必要に応じて止めても良い。こうすることで、印字最中にインキの噴出量がインキ循環の影響を受けない。また印字最中でも例えば単一方向印字の際のキャリッジリターン時間、双方向印字のヘッド移動時間等の短い時間であってもインキを循環させられる。また単位時間当りのインキ循環量(もしくはインキ流量)を、印字状態で変化させても良い。例えば、基板交換や基板搬送等の印字していない間はインキ流量を多くし、高精度の印字を行っている間はインキ流量を少なくしてもよい。またインキ流量をわざと多くしたり、インキの搬送圧力を上げることで、インキ噴出部から電子部品用電極インキを外部からの電気信号無しにポタポタあるいは霧状に多量に噴出できる。こうしてインキ噴出部をクリーニングすることができる。

(c)平成23年5月16日付け当審の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-193436号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ウ 【0038】
このとき、ノズル24近傍のインク18は溶媒が蒸発し、インク18の濃度が高くなるため、増粘してインク吐出特性に影響することがある。このため本実施例では、ノズル24近傍においてインク滴22を吐出しない程度の流速を生じるようなパルスを予備波形として圧電素子16に印加(審決注:「印可」が誤記であることは明らかであるので修正して摘記した。)し、ノズル24近傍のインク18を攪拌することで粘度の増加を抑えている。
エ 【0041】
本実施例のように矩形の一パルスが圧力室圧縮→膨張の場合、ある一定の駆動電圧Vに対して、パルス幅を変化させると、ノズル近傍でのインクの最大流速は図2のようになる。このときインク流速が大きすぎると、インク滴が吐出してしまうため、予備波形としてのパルス幅は短いほうが望ましい。【0042】
すなわち、予備波形での最大流速は、吐出時の最大流速の60%以下である必要がある。これ以上の流速では滴が吐出してしまう危険があるからであり、この条件を満たすためには、予備波形のパルス幅を図2に示すように固有周期の10%以下とする必要がある。
オ 【0046】
予備波形での最大流速は吐出時の最大流速の60%以下である必要があるのは前述の通りだが、より望ましくは吐出時の最大流速の20%?50%と限定するほうがよい。
【0047】
10%以下の流速では予備波形の効果が少なすぎ、50%以上の流速では高周波吐出時に予備波形の残響により次の吐出時の特性に影響を及ぼす可能性が高いからである。この条件を満たすためにはパルス幅を固有周期の3%?8%とする必要がある。

4 対比
a 本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「吐出部10a」、「『流路規制部材10b』の『上辺』と『吐出ヘッド10の上面との距離』が『吐出部10a側で狭く形成され』ている『流路』部分」、「『流路規制部材10b』の『上辺』と『吐出ヘッド10の上面との距離』が『PZT14側で広く』『形成され』ている『流路』部分」、「インク50」、「PZT14」、「『流路規制部材10b』の『上辺』と『吐出ヘッド10の上面との距離』が『PZT14側で広く』『形成され』ている『流路』部分及び『PZT14』」、「吐出ヘッド10の左壁面と流路規制部材10bの左面との間の通路」、「『吐出ヘッド10の右壁面と流路規制部材10bの右面との間の通路』及び『流路規制部材10bの下方』の通路」、「『インクタンク20』、『パイプ21』、『送液手段22』、『パイプ23』及び『インクタンク20へ戻るようになっている』構成」及び「インクジェット記録装置」は、それぞれ本願発明の「液滴を吐出するノズル」、「連通路」、「圧力室」、「液体」、「アクチュエータ」、「イジェクタ」、「第1流体流路」、「第2流体流路」、「液体を循環させる循環手段」及び「画像形成装置」に相当する。
b 引用発明は「吐出ヘッド10は、右上に吐出部10aがあり、これと対向する反対側(左上)にPZT14が配設されており」、「流路規制部材10bは上辺が段状に形成され、吐出ヘッド10の上面との距離がPZT14側で広く、吐出部10a側で狭く形成されて」いるから、液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を備えるイジェクタとを備えているものといえる。
c 引用発明は「インク50は、吐出ヘッド10の左壁面と流路規制部材10bの左面との間の通路を左上へ進」むものであるから、イジェクタの圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路を備えているものといえる。
d 引用発明は「インク50は、吐出ヘッド10の左壁面と流路規制部材10bの左面との間の通路を左上へ進み、PZT14側から吐出部10a側へと移り、吐出ヘッド10の右壁面と流路規制部材10bの右面との間の通路を右下へ進み、流路規制部材10bの下方を通ってインクタンク20へ戻る」ものあるから、第1流体流路から圧力室へ供給された液体が連通路を通じて流れ込む第2流体流路を備えているものといえる。
e 上記aないしdから、引用発明は、第1流体流路を通してイジェクタへ、前記イジェクタから第2流体流路を通して液体を循環させる循環手段を備えているものといえる。
f 引用発明のインクジェット記録装置が動作を制御する制御部を有していることは当業者に自明であるから、引用発明と本願発明は、制御部を備えている点で共通する。
g 上記aないしfより、本願発明と引用発明は、
「液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を備えるイジェクタと、
前記イジェクタの前記圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路と、
前記第1流体流路から前記圧力室へ供給された液体が前記連通路を通じて流れ込む第2流体流路と、
前記第1流体流路を通して前記イジェクタへ、前記イジェクタから前記第2流体流路を通して液体を循環させる循環手段と、
制御部を
備えた画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]制御部に関し、本願発明は「前記循環手段を制御して前記第1流体流路から前記イジェクタの前記圧力室へ供給されて前記第2流体流路に流れ込む液体を止めることなく循環させる液体の循環量を、前記ノズルから液滴が吐出される液滴吐出時と前記ノズルから液滴が吐出されない液滴吐出待機時とで変える液体増粘防止制御部」であり、さらに、液体増粘防止制御部は「前記ノズルが液滴を吐出する前に、前記ノズルから液体漏れや空気吸い込みを生じさせないように前記アクチュエータに印加される第一の予備波形を、前記ノズルから液滴が吐出される時に、前記ノズルから吐出される液滴の吐出安定性及び吐出方向性に影響させないように前記アクチュエータに印加される第二の予備波形よりも大きくする」と特定されているのに対し、引用発明の制御部は、本願発明のような制御部でない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
a 刊行物2には、インキを循環させる画像形成装置において「印字していない間はインキ流量を多くし、高精度の印字を行っている間はインキ流量を少なく」することが記載されているから、引用発明の画像形成装置(インクジェット記録装置)において、印字していない間はインキ流量を多くし、印字を行っている間はインキ流量を少なくするように引用発明の制御部に制御させることは、当業者が容易になし得る程度のことであり、そのような制御を行う制御部を液体増粘防止制御部と称することができる。そうすると、引用発明は、循環させる液体の循環量を、ノズルから液滴が吐出される液滴吐出時と前記ノズルから液滴が吐出されない液滴吐出待機時とで変える液体増粘防止制御部を有することになる。
b 本願発明の「ノズルが液滴を吐出する前」がいつのことを意味しているのか必ずしも明らかではないが、本願明細書の段落【0141】には「一方、ノズル42がキャップ部材44にキャップされている場合でも、若干、ノズル42近傍のインクの粘度は上昇してしまう。そこで、ノズル42がキャップ部材44から開放され、ノズル42が画像形成用の液滴を吐出する前に、画像形成とは無関係の予備吐出が必要となる。」と記載されているから、本願発明の「ノズルが液滴を吐出する前」とは、キャップ部材を開放後画像形成データが送られて印字が始まるまでの間、印字終了後であって次の画像形成データが送られて印字が始まるまでの間等の印字と関係ない時期を意味しているものと認められる。
c 刊行物3には、増粘防止のために予備波形を圧電素子に印加することが記載されている。また、インク滴22を吐出しない程度の予備波形を圧電素子16に印加すること、吐出時の最大流速の60%以上の流速では滴が吐出してしまう危険があること、50%以上の流速では高周波吐出時に予備波形の残響により次の吐出時の特性に影響を及ぼす可能性が高いことが記載されている。即ち、吐出時の最大流速の60%程度では、滴が吐出しないが、吐出時の最大流速の50%以上の大きい流速では、次の吐出時の特性に影響を及ぼすことが示唆されている。
d インクの増粘防止は、画像形成装置(インクジェット記録装置)において自明の課題であり、その際、ノズルから液体漏れや空気吸い込みを生じさせないこと、ノズルから吐出される液滴の吐出安定性及び吐出方向性に影響させないことも当然の要求であるから、引用発明に刊行物3に記載の予備波形を圧電素子に印加することを適用する際、印字に影響を与えない時期である「ノズルが液滴を吐出する前」には、増粘防止が有効に発揮できるように、ノズルから液体漏れや空気吸い込みを生じさせない程度の大きい予備波形を与え、印字に影響を与える時期である「ノズルから液滴が吐出される時」には、ノズルから吐出される液滴の吐出安定性及び吐出方向性に影響させない程度の小さい予備波形を与えるように引用発明の制御部に制御させることは当業者が容易になし得る程度のことである。
e そうすると、引用発明の制御部は、ノズルが液滴を吐出する前に、前記ノズルから液体漏れや空気吸い込みを生じさせないようにアクチュエータに印加される第一の予備波形を、前記ノズルから液滴が吐出される時に、前記ノズルから吐出される液滴の吐出安定性及び吐出方向性に影響させないように前記アクチュエータに印加される第二の予備波形よりも大きくするものとなる。
f 上記aないしeから、本願発明の上記相違点のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のように、本願発明の相違点に係る構成は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-28 
結審通知日 2011-08-02 
審決日 2011-08-22 
出願番号 特願2007-332923(P2007-332923)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 隆志大塚 裕一  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
鈴木 秀幹
発明の名称 液滴吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
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