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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1244537
審判番号 不服2010-18316  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-13 
確定日 2011-10-06 
事件の表示 特願2005-201708号「空調システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年1月25日出願公開、特開2007-17130号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年7月11日の出願であって、平成22年5月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月18日)、これに対し、同年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年8月13日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「天井及び一対の壁を少なくとも有する部屋の空調ゾーンであって、前記一対の壁の対向方向に沿って、かつ前記天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる仕切りと、前記仕切りによって形成され、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路とを含む空調ゾーンを冷やすための空調システムにおいて、前記空調ゾーンに供給される冷気を調整するための空調機と、前記空調機で調整された冷気を前記第一の通気路に吹き出すための吹き出し口と、前記吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調ゾーンから排出するための吸い込み口と、前記第一から第nの通気路の少なくともいずれかに設けられ、第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成するための気流形成装置と、を有し、前記気流形成装置は、気流形成装置が設けられている通気路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を前記通気路に所定の方向に向けて吹き出す装置であり、前記気流進行方向は、前記一対の壁の対向方向であって、通気路における気流の向きが、前記仕切りを介して該通気路に隣接する他の通気路における気流の向きに対して反対になる方向であることを特徴とする空調システム。」とあったものを「天井及び一対の壁を少なくとも有する部屋の空調ゾーンであって、前記一対の壁の対向方向に沿って、かつ前記天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる仕切りと、前記仕切りによって形成され、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路とを含む空調ゾーンを冷やすための空調システムにおいて、前記空調ゾーンに供給される冷気を調整するための空調機と、前記一対の壁の一方の壁に設けられる、前記空調機で調整された冷気を前記第一の通気路に吹き出すための吹き出し口と、前記吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調ゾーンから排出するための吸い込み口と、前記第一から第nの通気路の少なくともいずれかに設けられ、第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成するための気流形成装置と、を有し、前記気流形成装置は、気流形成装置が設けられている通気路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を前記通気路に所定の方向に向けて吹き出す装置であり、前記気流進行方向は、前記一対の壁の対向方向であって、通気路における気流の向きが、前記仕切りを介して該通気路に隣接する他の通気路における気流の向きに対して反対になる方向であることを特徴とする空調システム。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、吹き出し口について、「一対の壁の一方の壁に設けられる」ことを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭59-225273号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「本発明は、簡単に組立てられるプレハブ建築物を使用し、これに冷却ユニツトを設けてプレハブ建築物全体を冷蔵庫とし、これに強制冷却気流の通路を設けて差圧式として冷却気流の流通を良くして農産物を段ボール箱ごと冷却保存し、しかもこの冷蔵庫をプレハブ建築物としたため必要に応じて適当な場所に建設できるという機能的な農産物用の冷蔵庫を提供するものである。」(第1ページ右下欄第1?9行。下線は当審により付与。以下同様。)
b)「第1図において、(1)はプレハブ建築物の冷却庫本体を示し、(2)はこの内側に間隔を設けて設置されている有孔間仕切パネルである。この有孔間仕切パネル(2)で囲われた一端に冷却ユニツト(3)を設ける。この冷却ユニツト(3)には第2、3図に図示されるように冷気送気用のフアン(4)を三段に設けて、上方のフアン(4)' は冷蔵用の送風機とし、下段の2基のフアン(4)''は差圧式強制冷却用の送風機とするものである。図中の符号Aは有孔間仕切パネル(2)の両側に積置されている被冷却物であり例えばキウリ、トマト等の入つた段ボール箱である。この段ボール箱Aは図示されるように冷却気流が通るように中間に通路を設けるように両側に積置されている。(5)は出入れ口の扉を示している。
本発明の急速冷却庫は上記のような構造であるから、強制冷却用のフアン(4)''を作動させて冷気を矢印aの如く中央の通路に向つて送気すると冷気は被冷却物Aを通つて有孔間仕切パネル(2)に抜けて本体(1)との間隔から冷却ユニツト(3)に戻つて循環するものである。この冷気の循環において加圧されて送気されている冷気は、有孔間仕切パネル(2)を通過して本体(1)との間隔を通つて冷却ユニツト(3)に送気されるときは負圧となるため、冷気の循環がきわめて円滑に行われ段ボール等のきわめて冷却されにくい被冷却物であつても急速に冷却保存されるものである。
本発明においては、冷却気送風用のフアン(4)を三段に設け、上方のフアン(4)'を冷蔵用の送気用としてあるために一旦一定温度にまで低温になつた庫内には上方のフアン(4)' より冷蔵用冷気bを送気することによつて庫内は常に一定に保つことができる利点を有する。
そして、本発明の冷却庫は冷気が多孔質の間仕切板に均一に吸い込まれるため庫内において温度のむらがなく均一に冷却されるという従来の冷蔵倉庫にはみられない画期的な効果を奏するものである。」(第1ページ右下欄第16行?第2ページ右上欄第13行)
c)上記a、bの記載事項及び図面の図示内容によると、プレハブ冷却庫本体(1)が天井及び四方に側壁を備えること、有孔間仕切パネル(2)が一対の側壁の対向方向に沿って設けられること、被冷却物の段ボール箱Aが、有孔間仕切パネル(2)の内側で、かつ、天井及び冷却ユニット(3)が設けられる側壁から離間した位置に複数設けられること、両側の有孔間仕切パネル(2)とプレハブ冷却庫本体(1)との間に間隔が設けられること、及び、冷却ユニット(3)が、冷蔵用の送風機である上方のファン(4)'と、差圧式強制冷却用の送風機である下段の2基のファン(4)''とを含むことが示されている。
d)上記bの記載事項及び第1図の図示内容によると、冷気が冷却ユニット(3)に戻って循環する際、冷却ユニット(3)に冷気の戻り口が設けられていることは明らかである。

上記a?bの記載事項、上記c?dの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「天井及び四方に側壁を有する、全体を冷蔵庫とするプレハブ冷却庫本体(1)であって、一対の側壁の対向方向に沿って設けられる有孔間仕切パネル(2)の内側で、かつ、天井及び冷却ユニット(3)が設けられる側壁から離間した位置に複数設けられる被冷却物の段ボール箱Aと、両側に積置されている段ボール箱Aの中間に冷却気流が通るように設けられる通路と、冷気が冷却ユニット(3)に戻って循環する、両側の有孔間仕切パネル(2)と本体(1)との間の間隔とを備える差圧式急速冷却庫において、
有孔間仕切パネル(2)で囲まれた一端に冷却ユニット(3)を設け、
冷却ユニット(3)は、冷蔵用の送風機である上方のファン(4)'と、差圧式強制冷却用の送風機である下段の2基のファン(4)''と、冷気の戻り口とを含み、
強制冷却用のファン(4)''を作動させて冷気を中央の通路に向けて送気すると、冷気は被冷却物の段ボール箱Aを通って有孔間仕切パネル(2)に抜けて本体(1)との間の間隔から冷却ユニット(3)に戻って循環する
冷却気流の流通を良くした差圧式急速冷却庫。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-185397号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「本発明は、温度の許容幅が小さい冷蔵倉庫において、倉庫内の積み荷の密度を高くしても庫内温度を均一にできるようにすることを課題とする。」(段落【0006】)
b)「【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この実施形態の冷蔵倉庫を示す平面図である。図2は、この冷蔵倉庫の縦断面図であり、符号Tは積み荷の一領域を示している。
この冷蔵倉庫では、天井吊りのユニットクーラー1が、一側壁(図1の左側壁)A側に沿って奥行き方向(図1の上下方向)の2カ所に設置されている。各ユニットクーラー1は、3本の吹き出し配管11?13を備えている。中央の吹き出し配管12は、左側壁Aと対向する側壁(図1の右側壁)Bに向けて真っ直ぐ延び、奥行き方向中心側の吹き出し配管13は、奥行き方向中心に向けて延びてから右側壁B側に向くように配管されている。また、奥行き方向両端の吹き出し配管11は、それぞれ入り口側の側壁Cまたは奥側の側壁Dに向けて斜めに延びている。
また、右側壁Bに設けられた各柱2の床位置近くに、左側壁A側を吹き出し側として誘引型軸流ファン3Aが設置されている。同じ誘引型軸流ファン3Bが、天井近くの、6つに分割された、各積み荷の領域の中心となる6カ所(図1に「○」で示す)に、左側壁A側を吸い込み側として(図2参照)設置されている。同じ誘引型軸流ファン3Cが、天井近くの、倉庫の間口方向(図1の左右方向)中心となる3カ所と右側壁B側の3カ所(図1に「×」で示す)に、上側を吸い込み側として(図2参照)設置されている。同じ誘引型軸流ファン3D(図2にのみ表示)が、左側壁A側を吸い込み側として、ユニットファン1の吹き出し配管12の上側にも設置されている。
この誘引型軸流ファン3A?3Dは、風量はそれほど大きくないが、周囲の空気を誘引する(例えば10倍以上の風量を誘引できる)ため、倉庫内に必要な気流を小さなファンで造りだすことができる。
さらに、左側壁Aの2カ所の隅部A1,A2と、他の側壁B,C,Dの柱2が突出している角部と、倉庫中央部の4カ所に配置された柱21の、左右の側壁A,Bと平行な面に、整流板4が設けてある。また、図2に示すように、天井Eの隅部5と床Fの隅部6にも整流板4が設けてある。
したがって、図2に矢印で示すように、吹き出し配管12の吹き出し口から出た冷気は、誘引型軸流ファン3Dにより倉庫内の空気と混合された状態で右側壁B側に向かうため、上方に置かれた積み荷Tの凍結が防止される。また、誘引型軸流ファン3Bにより、右側壁Bまで十分に冷気が行き渡るようになる。また、誘引型軸流ファン3Cにより、床側まで十分に冷気が行き渡るようになる。また、右側壁Bまで到達した冷気は、誘引型軸流ファン3Aにより左側壁A側へ戻されるため、倉庫内全体に冷気が循環するようになる。」(段落【0009】?【0014】)
c)上記bの記載事項及び図面の図示内容によると、冷気の循環方向に位置する、左側壁Aと右側壁B間において、積み荷の一領域Tが、天井E及び左側壁Aと右側壁Bのそれぞれに対して離間して設けられること、右側壁Bまで到達した冷気は、誘引型軸流ファン3Aにより左側壁A側へ戻され、両端の離間部を介して、倉庫内全体に冷気が循環するようになること、及び、床位置近くの通気路に、左側壁A側を吹き出し側として誘引型軸流ファン3Aが設置され、天井近くの通気路に、左側壁A側を吸い込み側として誘引型軸流ファン3Bが設置されることが示されている。

上記a?bの記載事項、上記cの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、庫内温度を均一にした冷蔵倉庫に関して次の技術事項ア?イが記載されていると認められる。

技術事項ア
「冷気の循環方向に位置する、左側壁Aと右側壁B間において、積み荷の一領域Tが、左側壁Aと右側壁Bのそれぞれに対して離間して設けられ、
右側壁Bまで到達した冷気は、誘引型軸流ファン3Aにより左側壁A側へ戻され、両端の離間部を介して、倉庫内全体に冷気が循環するようになること。」

技術事項イ
「床位置近くの通気路に、左側壁A側を吹き出し側として誘引型軸流ファン3Aが設置され、
天井近くの通気路に、左側壁A側を吸い込み側として誘引型軸流ファン3Bが設置され、
誘引型軸流ファン3A?3Bは周囲の空気を誘引するものであること。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「天井及び四方に側壁を有する、全体を冷蔵庫とするプレハブ冷却庫本体(1)」は、プレハブ冷却庫本体(1)に空調のための冷気が送気されるものであり、プレハブ冷却庫本体(1)は、全体として、被冷却ゾーンを構成するといえることから、本件補正発明の「天井及び一対の壁を少なくとも有する部屋の空調ゾーン」に相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「一対の側壁の対向方向に沿って設けられる有孔間仕切パネル(2)の内側で、かつ、天井及び冷却ユニツト(3)の一方の側壁から離間した位置に複数設けられる被冷却物の段ボール箱A」と、本件補正発明の「一対の壁の対向方向に沿って、かつ天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる仕切り」とは、前者において、被冷却物の段ボール箱Aは、複数並んで設けられることにより仕切として機能することから、両者は、「一対の壁の対向方向に沿って、かつ天井及び一方の壁に対して離間して設けられる仕切り」であることで共通し、同様に、
刊行物1に記載された発明の「両側に積置されている段ボール箱Aの中間に冷却気流が通るように設けられる通路と、冷気が冷却ユニット(3)に戻って循環する、両側の有孔間仕切パネル(2)と本体(1)との間の間隔」と本件補正発明の「仕切りによって形成され、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路」とは、前者において、「通路」と「間隔」が段ボール箱Aによって形成されるものであり、かつ、被冷却物の段ボール箱Aが冷却ユニットが設けられる側壁から離間して、有孔間仕切パネル(2)を介して連通するように設けられることから、両者は、「仕切りによって形成され、一端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路」であることで共通する。
また、刊行物1に記載された発明の「差圧式急速冷却庫」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「空調ゾーンを冷やすための空調システム」及び「空調システム」に相当し、以下同様に、
「冷却ユニット(3)」は、「空調ゾーンに供給される冷気を調整するための空調機」に、
「冷却ユニット(3)は、冷蔵用の送風機である上方のファン(4)' と、差圧式強制冷却用の送風機である下段の2基のファン(4)'' 」「を含」むことは、冷却ユニット(3)が、送風機の吹き出し口を有することは明らかであり、冷却ユニット(3)が設けられる側壁に送風機の吹き出し口が設けられているといえるから、「一対の壁の一方の壁に設けられる、空調機で調整された冷気を第一の通気路に吹き出すための吹き出し口」に、
「冷却ユニット(3)は」「冷気の戻り口を含」むことは、送風機を作動させると、冷気が被冷却物の段ボール箱Aを通って本体(1)との間の間隔から冷却ユニット(3)に戻って循環することから、冷気の戻り口が、冷却ユニット(3)の送風機に対応して設けられていることは明らかであり、「吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで空調ゾーンから排出するための吸い込み口」に、
それぞれ相当する。
さらに、刊行物1に記載された発明の「強制冷却用のファン(4)''を作動させて冷気を中央の通路に向けて送気すると、冷気は被冷却物の段ボール箱Aを通って有孔間仕切パネル(2)に抜けて本体(1)との間の間隔から冷却ユニット(3)に戻って循環する」ことと、本件補正発明の「第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成するための気流形成装置」を有し、「気流進行方向は、一対の壁の対向方向であって、通気路における気流の向きが、仕切りを介して通気路に隣接する他の通気路における気流の向きに対して反対になる方向である」こととは、前者において、強制冷却用のファン(4)''と有孔間仕切パネル(2)とは、冷気を被冷却物の段ボール箱Aに通すための気流を形成するものであり、通気路に所定の気流進行方向の気流を形成し、また、中央の通路を通る冷気の向きと、両側に設けられる間隔を通る冷気の向きとは逆方向であることから、両者は、「第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成し、気流進行方向は、一対の壁の対向方向であって、通気路における気流の向きが、仕切りを介して通気路に隣接する他の通気路における気流の向きに対して反対になる方向である」ことで共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「天井及び一対の壁を少なくとも有する部屋の空調ゾーンであって、前記一対の壁の対向方向に沿って、かつ前記天井及び一方の壁に対して離間して設けられる仕切りと、前記仕切りによって形成され、一端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路とを含む空調ゾーンを冷やすための空調システムにおいて、前記空調ゾーンに供給される冷気を調整するための空調機と、前記一対の壁の一方の壁に設けられる、前記空調機で調整された冷気を前記第一の通気路に吹き出すための吹き出し口と、前記吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調ゾーンから排出するための吸い込み口と、第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成し、前記気流進行方向は、前記一対の壁の対向方向であって、通気路における気流の向きが、前記仕切りを介して該通気路に隣接する他の通気路における気流の向きに対して反対になる方向である空調システム。」

[相違点1]
本件補正発明では、仕切りが、一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられ、仕切りによって形成される通気路の両端部において互いに連通するのに対して、刊行物1に記載された発明では、複数設けられる被冷却物の段ボール箱Aを冷却ユニット(3)が設けられる側壁から離間した位置に設けているものの対向する壁からは離間した位置に設けられていない点。

[相違点2]
本件補正発明では、第一から第nの通気路の少なくともいずれかに気流形成装置が設けられ、気流形成装置は、気流形成装置が設けられている通気路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を通気路に所定の方向に向けて吹き出す装置であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、強制冷却用のファン(4)''を作動させて冷気を中央の通路に向けて送気すると、冷気は被冷却物の段ボール箱Aを通って有孔間仕切パネル(2)に抜けて本体(1)との間の間隔から冷却ユニット(3)に戻って循環する点。

4.当審の判断
上記相違点1?2について検討する。
刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項とは、空調システムという同一の技術分野に属し、冷却気流の流通を良くし、庫内温度を均一にするという共通の課題を解決するものである。
そして、刊行物1に記載された発明における気流を形成する強制冷却用のファン(4)''と有孔間仕切パネル(2)とを、刊行物2に記載された技術事項イに倣って、誘引型軸流ファンを、通路と間隔とのいずれかに設けることは、当業者が容易になし得たものである。
その際に、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された技術事項アを適用して、被冷却物の段ボール箱Aを一対の壁のそれぞれから離間して設け、かつ、通路と間隔とをその両端部において互いに連通させることは、当業者が容易になし得たものである。
さらに、本件補正発明の奏する効果は、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
よって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
よって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年12月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「天井及び一対の壁を少なくとも有する部屋の空調ゾーンであって、前記一対の壁の対向方向に沿って、かつ前記天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる仕切りと、前記仕切りによって形成され、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路とを含む空調ゾーンを冷やすための空調システムにおいて、前記空調ゾーンに供給される冷気を調整するための空調機と、前記空調機で調整された冷気を前記第一の通気路に吹き出すための吹き出し口と、前記吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調ゾーンから排出するための吸い込み口と、前記第一から第nの通気路の少なくともいずれかに設けられ、第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成するための気流形成装置と、を有し、前記気流形成装置は、気流形成装置が設けられている通気路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を前記通気路に所定の方向に向けて吹き出す装置であり、前記気流進行方向は、前記一対の壁の対向方向であって、通気路における気流の向きが、前記仕切りを介して該通気路に隣接する他の通気路における気流の向きに対して反対になる方向であることを特徴とする空調システム。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1?2、刊行物1?2の記載事項及び刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、吹き出し口について、「一対の壁の一方の壁に設けられる」との限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-03 
結審通知日 2011-08-09 
審決日 2011-08-23 
出願番号 特願2005-201708(P2005-201708)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25D)
P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千壽 哲郎久保 克彦  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
青木 良憲
発明の名称 空調システム  
代理人 松倉 秀実  
代理人 今堀 克彦  
代理人 川口 嘉之  

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