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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1244602
審判番号 不服2010-18979  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-23 
確定日 2011-10-06 
事件の表示 特願2001-57483号「コネクタ用ソケット及びその組立て方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月13日出願公開、特開2002-260774号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成13年3月1日の出願であって、平成22年6月1日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年6月3日)、これに対し、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年8月23日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月23日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「プラグが挿入される空洞部と、該空洞部内に設けられた膨出部と、該膨出部のほぼ中心に位置し、プラグ先端が挿入される貫通孔と、該貫通孔の他端に対峙した接続子とを備えたコネクタ用ソケットにおいて、該貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、該開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を摺動自在に挿入し、該シャッタ部材は該傾斜面の先端が該貫通孔の内壁面に当接され、弾性体の付勢力により該貫通孔が閉塞され、プラグの挿入により該傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなって該シャッタ部材が弾該性体の付勢力に抗して移動し、該閉塞が開放されることを特徴とするコネクタ用ソケット。」とあったものを「プラグが挿入される空洞部と、該空洞部内に設けられた膨出部と、該膨出部のほぼ中心に位置し、プラグ先端が挿入される貫通孔と、該貫通孔の他端に対峙した接続子とを備えたコネクタ用ソケットにおいて、該貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、該開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、前記接続子の前面と当接ないし近接するように摺動自在に挿入し、該シャッタ部材は、該シャッタ部材の傾斜先端部が該貫通孔の内壁面に当接する部分に段部を設け、該傾斜先端部が段部に当接され、弾性体の付勢力により該貫通孔が閉塞され、プラグの挿入により該傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなって該シャッタ部材が該弾性体の付勢力に抗して移動し、該閉塞が開放されることを特徴とするコネクタ用ソケット。」と補正することを含むものである(下線は当審により付与。以下同様。)。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、シャッタ部材について、「接続子の前面と当接ないし近接するように摺動自在に挿入」することを限定し、同じく、シャッタ部材について、「該シャッタ部材の傾斜先端部が該貫通孔の内壁面に当接する部分に段部を設け、該傾斜先端部が段部に当接され」ることを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-131564号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、据置用のDVD、TV、STB(セットトップボックス:衛星放送のアダプタ装置)、CD、MD、アンプ等のデジタル信号を出力または/および入力する装置に設けられている光コネクタのソケットであって、特に、角型の光コネクタのプラグと接続する光コネクタのソケットに関する。」(段落【0001】)
b)「本発明の主たる目的は、光コネクタのソケットの信頼性を高く維持することのできる光コネクタのソケットを提供することにある。より具体的には、埃等の侵入を防止する手段や光素子の寿命を延ばす手段を一体化した光コネクタのソケットを提供することにある。また、併せて、光コネクタのソケットが設けられた装置の消費電力の低減を図ることのできる光コネクタのソケットを提供することにある。」(段落【0006】)
c)「次に、シャッタ部の構造を特殊な構造とした場合について、本発明の第7の実施の形態に係る光コネクタのソケットとして、図23および図24を参照しつつ説明する。
図23は本発明の第7の実施の形態に係る光コネクタのソケットを示す概略的斜視図、図24は本発明の第7の実施の形態に係る光コネクタのソケットに、EIAJ規格の角型プラグを挿入したときの状態を説明する側面視概略的説明図であって、同図(A)は挿入直前の状態図、同図(B)および同図(C)は挿入途中の状態図、同図(D)は挿入完了時の状態図である〔尚、弾性体部は同図(D)においてのみ図示した。〕。
本発明の第7の実施の形態に係る光コネクタのソケット200Uは、光コネクタのプラグ100と接続する光コネクタのソケットであって、プラグ100が挿入される挿入穴部220Uを有したハウジング部205Uと、この挿入穴部220Uの入口側前方に、軸部240を伴うヒンジ構造によって取り付けられ、この挿入穴部220Uを略閉塞するためのシャッタ部210Uと、このシャッタ部210Uを挿入穴部220Uの内部側から前記入口側方向へ付勢する弾性体部230、230(図23のJおよびKの位置に設けられる。)とを備えている。
挿入穴部220Uは、正面の開口に接した1面側(図24において上側)に、シャッタ部210Uが回動可能な切欠き部225Uを有している。挿入穴部220Uは、その奥側に突出部900が設けられている。この突出部900の奥側には、図示しない光素子が設けられている。
シャッタ部210Uは、挿入穴部220Uの正面の開口の閉塞に寄与するシャッタ正面体部211Uと、このシャッタ正面体部211Uを、ヒンジ構造(このヒンジ構造は、シャッタ部210Uが軸部240によって軸支されていることによって形成されている。)よりも離れた位置にて結合するとともに、切欠き部225Uの閉塞に寄与する支持体部212Uとを有している。シャッタ正面体部211Uは、プラグ100の係合凸部150の正面外形形状から挿入ガイド用凸部151a、151aの部分を取り除いた形状に対応させて形成されている。支持体部212Uは、側面視扇状に形成されている。
このように形成されているソケット200Uの場合には、シャッタ部210Uのシャッタ正面体部211Uは、挿入穴部220U側に入り込む構造となっているが、挿入されたプラグ100の係合凸部150の側面側の保持にはあまり寄与していない。つまり、シャッタ正面体部211Uは、弾性体部230の付勢力を伴って、係合凸部150の側面側をその上部側から押さえるのに、多少寄与している程度である。ただし、挿入穴部220Uに入り込むシャッタ正面体部211Uは、前記ヒンジ構造よりも離れた位置にて支持体部212Uに結合されているため、図24に示されるように、挿入穴部220Uの手前側で回動することとなる。
そのため、挿入穴部220Uの奥側に、突出部900のようにEIAJ規格通りの突出部を設けることが可能となっている。また、弾性体部230、230が備えられ、シャッタ部210Uは、挿入穴部220Uの入口側へ付勢されている。そのため、シャッタ部210Uは、プラグ100が挿入穴部220Uに挿入されていないときに、挿入穴部220Uを略閉塞している。
プラグ100が挿入穴部220Uに挿入されると、シャッタ部210Uは、軸部240を中心として回動され、挿入穴部220Uの切欠き部225Uに格納される〔図24(A)?(D)〕。逆に、プラグ100が挿入穴部220Uから抜かれると、シャッタ部210Uは、弾性体部230、230によって、挿入穴部220Uの入口側へ付勢されて自動復帰する。
尚、ソケット200Uにおいても、弾性体部230、230の内の一方の弾性体部230を、上述の弾性体部230′のようにスイッチの一方側とし、固定切片部410′に相当するものもスイッチの他方側として設けてもよい。
上述の本発明に係る各実施の形態において、プラグ100は、EIAJ規格の角型の光コネクタのプラグであり、そのプラグ100と接続する光コネクタのソケット200等であるとして説明した。しかし、EIAJ規格の角型の光コネクタのプラグ以外の特別仕様の角型のプラグと接続するソケットにも、適用してもよいことは言うまでもない。尚、本発明に係る光コネクタのソケットは、角型(正面視略六角形)の光コネクタのプラグと接続するソケットに限定するものではない。例えば、四角形状の光コネクタのプラグと接続するソケットには簡単に適用できる。」(段落【0145】?【0154】)
d)「本発明の請求項9に係る光コネクタのソケットは、光コネクタのプラグと接続する光コネクタのソケットであって、前記プラグが挿入される挿入穴部と、この挿入穴部の入口側前方にヒンジ構造によって取り付けられ、この挿入穴部を略閉塞するためのシャッタ部と、このシャッタ部を挿入穴部の内部側から前記入口側方向へ付勢する弾性体部とを備えており、前記挿入穴部は、正面の開口に接した1面側に、シャッタ部が回動可能な切欠き部を有しており、前記シャッタ部は、挿入穴部の正面の開口の閉塞に寄与するシャッタ正面体部と、このシャッタ正面体部を、前記ヒンジ構造よりも離れた位置にて結合するとともに、前記切欠き部の閉塞に寄与する支持体部とを有したことを特徴とした。
よって、本発明の請求項9に係る光コネクタのソケットの場合には、シャッタ部のシャッタ正面体部は、挿入穴部側に入り込む構造となっているが、挿入されたプラグの側面側を保持するためには使用されない。ただし、挿入穴部に入り込むシャッタ正面体部は、前記ヒンジ構造よりも離れた位置にて支持体部に結合されているため、挿入穴部の手前側で回動することとなる。そのため、挿入穴部の奥側に通常設けられているプラグ先端保持部(突出部とも呼ぶ。)は、その奥行き寸法等をEIAJ規格通りとすることが可能となっている。
弾性体部が備えられ、シャッタ部は、挿入穴部の入口側へ付勢されている。そのため、シャッタ部は、プラグが挿入穴部に挿入されていないときに、挿入穴部を略閉塞している。プラグが挿入穴部に挿入されると、シャッタ部は、挿入穴部の切欠き部に格納される。また、この後、プラグが挿入穴部から抜かれると、シャッタ部は、基本的に、弾性体部によって、挿入穴部の入口側へ付勢されて自動復帰する。
よって、このような構造によっても、信頼性を低下させる埃等の侵入を適切に防止することができる。また、埃等よけのキャップを抜き差しする手間もなく、キャップを紛失して埃等の侵入を許す心配もない。」(段落【0271】?【0274】)
e)上記cの記載事項及び【図24】の図示内容によると、突出部900のほぼ中心に位置し、光コネクタのプラグ100の先端が挿入される貫通孔について示されている。

上記a?dの記載事項、上記eの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「信頼性を高く維持することのできる光コネクタのソケット200Uを提供することを目的として、
ハウジング部205Uに有される、プラグ100が挿入される挿入穴部220Uと、挿入穴部220Uの奥側に設けられる突出部900と、突出部900のほぼ中心に位置し、光コネクタのプラグ100の先端が挿入される貫通孔と、突出部900の奥側に設けられている光素子とを備えている光コネクタのソケット200Uにおいて、
シャッタ部210Uは、挿入穴部220Uと切欠き部225Uとを回動し、
シャッタ部210Uは、弾性体部230、230により付勢されることにより、シャッタ正面体部211Uが挿入穴部220Uの正面の開口を閉塞し、
プラグ100が挿入穴部220Uに挿入されると、シャッタ部210Uは、軸部240を中心として回動され、挿入穴部220Uの切欠き部225Uに格納される、
光コネクタのソケット200U。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-8010号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【産業上の利用分野】本発明は、電子機器間を電気的に接続するためのコネクタに関するものである。」(段落【0001】)
b)「上記問題に対処するため図8に示す如く、電子機器本体側コネクタ(2)を外装キャビネット(11)の開口(12)から離して電子機器本体(1)内に設け、該開口(12)には扉板(13)をヒンジ(14)にて内向きに開く様に取り付け、トーションバネ(15)によって閉じ方向に付勢して本体側コネクタ(2)の防塵を画ったものも実施されている。
図9に示す如く、接続側コネクタ(3)を挿入する際、扉板(13)が、トーションバネ(15)に抗して押されて開き、さらに挿入することで本体側コネクタ(2)に接続側コネクタ(3)を差込むことができる。接続側コネクタ(3)を抜き去ることにより、扉板(13)がトーションバネ(15)の付勢により開口(12)を閉じて防塵する。
上記回転扉板(13)は、ヒンジ(14)を中心に内側に回転動作する構造上、図8に示す様に、扉板(13)が開閉する際、本体側コネクタ(2)との干渉を避けるため、扉板(13)の開閉範囲Aよりも後方に本体側コネクタ(2)を配置しなければならなず、それに合わせて接続側コネクタ(3)の差込み長さBも大きくしなければならない。その結果、電子機器本体(1)の寸法もそれらの影響を受けて大きくなり、特に小型、軽量を求められるポータブルタイプの電子機器においては不利となる。本発明は上記問題を解決できるコネクタを明らかにするものである。」(段落【0005】?【0007】)
c)「【実施の形態】図1(a)は、本発明の本体側コネクタ(2)を内蔵した電子機器本体(1)の外装キャビネット(11)の要部を示している。図1(b)は、本発明の接続側コネクタ(3)である。図(2)は、本体側コネクタ(2)と接続側コネクタ(3)を接続する前の状態を示している。図(3)は、シャッター(4)の取り付け状態を示している。
電子機器本体(1)の外装キャビネット(11)には、電子機器本体(1)に内蔵した本体側コネクタ(2)との対向位置に、接続側コネクタ(3)挿入用の横長矩形の開口(12)が開設されている。本体側コネクタ(2)は、接続口(21)を上記外装キャビネット(11)の開口(12)に接近して位置しており、接続口(21)に対して開口(12)は少し大きい。外装キャビネット(11)の外面には、開口(12)を包囲して矩形の凹段部(16)が形成され、該凹段部(16)に開口(12)を開閉するシャッター(4)が配備される。
シャッター(4)は、上下一対の矩形のシャッター板(41)(42)を開口(12)の上下幅の中央で閉じる様に配備して構成され、上両シャッター板(41)(51)はともに、コイルバネ(41)或いはトーションバネによって、互いに閉じ方向に付勢されている。両シャッター板(41)(42)の閉じ側縁には、シャッター板(41)(42)の外側に45°の角度でテーパ部(43)が全長に亘って形成され、両シャッター板(41)(42)が閉じた状態で、テーパ部(43)(43)は、90°外開きのV溝を形成する。
外装キャビネット(11)には、シャッター(4)の上から案内枠(5)が取り付けられている。案内枠(5)は、外形が凹段部(16)よりも大きく、中央に接続側コネクタ(3)の後記するガイド部材(32)が挿入可能な矩形の案内孔(51)が開設されており、該案内孔(51)を外装キャビネット(11)の開口(12)に対向させている。該案内枠(5)と外装キャビネット(11)の凹段部(16)の底面との間で、シャッター板(41)(51)がガタつくことなく上下にスライドする。
接続側コネクタ(3)は、ケーブル(31)の先端に取り付けられており、コネクタ本体(30)の先端面に横長短筒体のガイド部材(32)を突設し、該ガイド部材(32)内に端子列(35)を設けている。ガイド部材(32)の両端板(33)(33)の挿入側先端は、90°の角度を成す山状のテーパ部(34)(34)が形成されている。
次に、図2によって、接続側コネクタ(3)を本体側コネクタ(2)に接続する時の動作を説明する。接続側コネクタ(3)を本体側コネクタ(2)に挿入し始めると、接続側コネクタ(3)のガイド部材(32)両端のテーパ部(34)(34)がシャッター板(41)(42)のテーパ部(43)(43)に接触し、さらに挿入するとテーパ部(34)(43)、(34)(43)の摺接によって、上シャッター板(41)を上に、下シャッター板(42)を下に押す推力が生じて上下のシャッター(41)(42)が開く。
上下のシャッター板(41)(42)間が接続側コネクタ(3)のガイド部材(32)の高さ幅まで開くと、接続側コネクタ(3)のガイド部材(32)は、シャッター板(41)(42)間を前進して待機する本体側コネクタ(2)に嵌合する。接続側コネクタ(3)のガイド部材(32)は、案内枠(5)の案内孔(51)に嵌まって前進するため、接続側コネクタ(3)を押すだけで正しく本体側コネクタ(2)に差込できる。
本体側コネクタ(2)から接続側コネクタ(3)を引き抜くと、ガイド部材(32)に押し広げられていたシャッター板(41)(42)は規制するものがなくなり、バネ(44)の付勢力により自動的に閉まり、外装キャビネット(11)の開口(12)からの塵の侵入を防止する。」(段落【0011】?【0018】)
d)「上記実施例は、上下一対のシャッター板(41)(42)によってシャッター(4)を構成したが、これに限定するものではなく、図4に示す如く、1枚板のシャッター(4)でも可い。この場合、シャッター(4)の閉じ側縁に外開きのテーパ部(43)を形成し、接続側コネクタ(3)のガイド部材(32)の両端板(33)の差込側先端は、シャッター(4)のテーパ部(43)に対応するテーパ部(34)を形成する。シャッター(4)を閉じ方向に付勢するバネ(44)、シャッター(4)の外れ止めと接続側コネクタ(3)の挿入案内を兼用する案内枠(5)等は、前記と同様であので、説明は省略する。
1枚板のシャッター(4)は、2枚板のシャッターに比べて、部品点数を少なくして構成の簡素化を画ることができる。尚、シャッター(4)のテーパ部(43)の角度、接続側コネクタ(3)のガイド部材(32)のテーパ部(34)の角度は、シャッター(4)の形状、材質等の条件によって適宜選択すればよく、又、テーパ部の先端に安全のためのR形状を設けるなどの変更も可能である。」(段落【0019】?【0020】)

上記a?dの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、シャッター(4)を1枚板によって構成した、第4図に示される実施例を中心として、次の発明が記載されていると認められる。
「案内枠と、開口12を包囲して形成される、外装キャビネット11の矩形の凹段部16の底面との間に、閉じ側縁に外開きのテーパ部43が形成され、開口12を開閉する1枚板の矩形のシャッター4がガタつくことなく上下にスライド可能に配備され、
1枚板のシャッター4は、閉じ側縁に外開きのテーパ部43が形成され、コイルバネ44によって閉じ方向に付勢され、外装キャビネット11の開口12からの塵の侵入を防止し、接続側コネクタ3を挿入すると、1枚板のシャッター4のテーパ部43が接続側コネクタ3の差込側先端のテーパ部34の摺接によって、1枚板のシャッター4を上に押す推力が生じて1枚板のシャッター4が開く、
本体側コネクタ2。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「ハウジング部205Uに有される、プラグ100が挿入される挿入穴部220U」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「プラグが挿入される空洞部」に相当し、以下同様に、
「挿入穴部220Uの奥側に設けられる突出部900」は「空洞部内に設けられた膨出部」に、
「突出部900のほぼ中心に位置し、光コネクタのプラグ100の先端が挿入される貫通孔」は「膨出部のほぼ中心に位置し、プラグ先端が挿入される貫通孔」に、
「突出部900の奥側に設けられている光素子」は「貫通孔の他端に対峙した接続子」に、
「光コネクタのソケット200U」は「コネクタ用ソケット」に、
「シャッタ部210Uは、弾性体部230、230により付勢されることにより、シャッタ正面体部211Uが挿入穴部220Uの正面の開口を閉塞」することは「シャッタ部材は」「弾性体の付勢力により貫通孔が閉塞され」ることに、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「シャッタ部210Uは、挿入穴部220Uと切欠き部225Uとを回動」することと、本件補正発明の「貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、接続子の前面と当接ないし近接するように摺動自在に挿入」することとは、前者における「挿入穴部220U」、「切欠き部225U」と、後者における「切り欠き開孔部」とは、いずれもシャッタ部材が、挿入される空洞部を形成するものであるから、両者は「シャッタ部材を空洞部内に移動自在に挿入」することで共通し、同様に、
刊行物1に記載された発明の「プラグ100が挿入穴部220Uに挿入されると、シャッタ部210Uは、軸部240を中心として回動され、挿入穴部220Uの切欠き部225Uに格納される」ことと本件補正発明の「プラグの挿入により傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなって該シャッタ部材が弾性体の付勢力に抗して移動し、閉塞が開放される」こととは、前者において、シャッタ部210Uが、挿入穴部220Uの切欠き部225Uに格納されることは、挿入穴部220Uの正面の開口が閉塞状態から開放状態となることであるから、両者は、「プラグの挿入により、プラグ先端によって押圧されるにともなってシャッタ部材が弾性体の付勢力に抗して移動し、閉塞が開放される」ことで共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「プラグが挿入される空洞部と、該空洞部内に設けられた膨出部と、該膨出部のほぼ中心に位置し、プラグ先端が挿入される貫通孔と、該貫通孔の他端に対峙した接続子とを備えたコネクタ用ソケットにおいて、シャッタ部材を空洞部内に移動自在に挿入し、該シャッタ部材は、弾性体の付勢力により該貫通孔が閉塞され、プラグの挿入によりプラグ先端によって押圧されるにともなって該シャッタ部材が該弾性体の付勢力に抗して移動し、該閉塞が開放されるコネクタ用ソケット。」

[相違点1]
シャッタ部材が、本件補正発明では、貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、接続子の前面と当接ないし近接するように摺動自在に挿入するのに対して、刊行物1に記載された発明では、シャッタ部210Uのシャッタ正面体部211Uは、回動可能に挿入穴部220U側に入り込む構造となっている点。

[相違点2]
シャッタ部材が、本件補正発明では、シャッタ部材の傾斜先端部が貫通孔の内壁面に当接する部分に段部を設け、傾斜先端部が段部に当接されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、当該発明特定事項を具備していない点。

[相違点3]
シャッタ部材が、本件補正発明では、プラグの挿入により傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなってシャッタ部材が弾性体の付勢力に抗して移動し、閉塞が開放されるのに対して、刊行物1に記載さてた発明では、プラグ100が挿入穴部220Uに挿入されると、シャッタ部210Uは、軸部240を中心として回動され、挿入穴部220Uの切欠き部225Uに格納される点。

4.当審の判断
上記相違点1?3について検討する。
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「案内枠と、開口12を包囲して形成される、外装キャビネット11の矩形の凹段部16の底面との間に、閉じ側縁に外開きのテーパ部43が形成され、開口12を開閉する1枚板の矩形のシャッター4がガタつくことなく上下にスライド可能に配備され」ることと、本件補正発明の「貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、接続子の前面と当接ないし近接するように摺動自在に挿入」することとは、前者における「案内枠と」「矩形の凹段部16の底面との間」と後者における「開孔部」とは、「空洞部」であることで共通するから、両者は、「空洞部に、先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、摺動自在に挿入」することで共通し、以下同様に、
刊行物2に記載された発明の「閉じ側縁に外開きのテーパ部43が形成され」ることと、本件補正発明の「シャッタ部材の傾斜先端部が貫通孔の内壁面に当接する部分に段部を設け、傾斜先端部が段部に当接され」ることとは、「傾斜先端部が形成される」ことで、
刊行物2に記載された発明の「コイルバネ44によって閉じ方向に付勢され、外装キャビネット11の開口12からの塵の侵入を防止」することと、本件補正発明の「弾性体の付勢力により貫通孔が閉塞され」ることとは、後者において、シャッタ部材により貫通孔の開口が閉塞状態となることは明らかであるから、両者は、「弾性体の付勢力により開口が閉塞状態」となることで、
それぞれ共通する。
また、刊行物2に記載された発明の「接続側コネクタ3を挿入すると、1枚板のシャッター4の差込側先端のテーパ部43が接続側コネクタ3のテーパ部34の摺接によって、1枚板のシャッター4を上に押す推力が生じて1枚板のシャッター4が開く」ことは、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「プラグの挿入により傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなってシャッタ部材が弾性体の付勢力に抗して移動し、閉塞が開放される」ことに相当し、同様に、
「本体側コネクタ2」は、接続側コネクタ3が挿入されることから、「コネクタ用ソケット」に相当する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、「空洞部に、先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、摺動自在に挿入し、シャッタ部材は、傾斜先端部が形成され、弾性体の付勢力により開口が閉塞状態となり、プラグの挿入により傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなってシャッタ部材が弾性体の付勢力に抗して移動し、閉塞が開放されるコネクタ用ソケット。」と言い換えることができる。
そして、光コネクタの技術分野において、貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を摺動自在に挿入することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、前置報告書において提示された実願昭55-120285号(実開昭57-43413号)のマイクロフィルムの案内孔5に設けた遮蔽体8や、実願昭56-62977号(実開昭57-175109号)のマイクロフィルムの光アダプタ5に設けた遮へい体8を参照。以下「周知の技術事項1」という。)。
また、差込開口部を有する機器の技術分野において、シャッタ部材の傾斜先端部が当接する部分に段部を設け、傾斜先端部を段部に当接されることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、前置報告書において提示された実願昭48-85861号(実開昭50-33292号)のマイクロフィルムの可動板5の先端傾斜面を受ける受口4cや、特開昭63-81777号公報のFig2のスライダ7同士の受け部を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
さらに、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明は、シャッタ部材により開口部からの塵の侵入を防止し、信頼性を向上させるコネクタソケットという共通の技術分野に属するものである。
これらのことから、刊行物1に記載された発明のシャッタ部材に、シャッタ部材により開口部からの塵の侵入を防止し、信頼性を向上させるために、刊行物2に記載されたシャッタ部材を適用することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、上記適用に際して、上記周知の技術事項1に倣って、シャッタ部材を空洞部内に挿入する位置を貫通孔の側壁を一部切り欠いて形成した開孔部として、開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を、摺動自在に挿入し、プラグの挿入により傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなってシャッタ部材が弾性体の付勢力に抗して移動し、閉塞が開放されるようにすることは、当業者が適宜なし得たものである。これに伴い、刊行物1に記載された発明において、光素子は、突出部900の奥側に設けられていることから、結果として、シャッタ部材が、接続子の前面とシャッタ部材の構成について近接するように摺動自在に挿入されるようになることは明らかである。
また、上記適用に際して、シャッタ部材の構成について、上記周知の技術事項2に倣って、シャッタ部材の傾斜先端部が貫通孔の内壁面に当接する部分に段部を設け、傾斜先端部が段部に当接されるようにすることは、当業者が適宜なし得たものである。
さらに、本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
よって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年4月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「プラグが挿入される空洞部と、該空洞部内に設けられた膨出部と、該膨出部のほぼ中心に位置し、プラグ先端が挿入される貫通孔と、該貫通孔の他端に対峙した接続子とを備えたコネクタ用ソケットにおいて、該貫通孔の側壁を一部切り欠き開孔部を形成し、該開孔部へ先端に傾斜面が形成された略直方体の柱状のシャッタ部材を摺動自在に挿入し、該シャッタ部材は該傾斜面の先端が該貫通孔の内壁面に当接され、弾性体の付勢力により該貫通孔が閉塞され、プラグの挿入により該傾斜面がプラグ先端によって押圧されるにともなって該シャッタ部材が弾該性体の付勢力に抗して移動し、該閉塞が開放されることを特徴とするコネクタ用ソケット。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1?2、刊行物1?2の記載事項及び刊行物1?2に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、シャッタ部材について、「接続子の前面と当接ないし近接するように摺動自在に挿入」するとの限定を省くとともに、「該シャッタ部材の傾斜先端部が該貫通孔の内壁面に当接する部分に段部を設け、該傾斜先端部が段部に当接され」るとの限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-04 
結審通知日 2011-08-09 
審決日 2011-08-23 
出願番号 特願2001-57483(P2001-57483)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也片岡 弘之  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
稲垣 浩司
発明の名称 コネクタ用ソケット及びその組立て方法  
代理人 特許業務法人ウィンテック  

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