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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B
管理番号 1245013
審判番号 不服2008-24442  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-24 
確定日 2011-10-12 
事件の表示 特願2002-225918「無アルカリガラスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開,特開2004- 67408〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年8月2日の特許出願であって,平成20年4月17日(起案日)付けで拒絶理由が通知され,同年6月16日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され,同年8月22日(起案日)付けで拒絶査定され,同年9月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,明細書の記載に係る手続補正書が提出されたものである。そして,平成23年4月28日(起案日)付けで,特許法第164条第3項に規定する報告書を引用した審尋がなされ,同年7月1日付けで回答書が提出されている。

2.平成20年9月24日付けの手続補正の適法性について
平成20年9月24日付けの手続補正は,補正前の請求項3(請求項1を引用する請求項2,を引用するもの。)を補正後の請求項1とし,補正前の請求項4?8を,それぞれ補正後の請求項2?6とするとともに,それに対応して,明細書の段落【0009】,【0018】,【0023】の記載を,補正後の請求項に整合するように補正するものである。
したがって,平成20年9月24日付けの手続補正は,願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであり,そのうち特許請求の範囲についての補正は,請求項の削除を目的とするものであって,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の要件を満たす。
よって,平成20年9月24日付けの手続補正は適法なものである。

3.本願発明
本願発明は,平成20年9月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

ガラス原料を調合し,溶融,成形する無アルカリガラスの製造方法において,シリカ原料として,平均粒径(D_(50))が30?60μm,最大粒径(D_(99))と平均粒径(D_(50))の差が40μm以下の原料を使用し,且つガラス原料中に,塩化物をCl換算で0.01?1質量%添加することを特徴とする無アルカリガラスの製造方法。

4.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は,平成20年4月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1であり,本願請求項1?8に係る発明に対して引用文献1?3を引用した特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

5.本願の出願前に頒布された刊行物の記載事項
刊行物1:特開平11-43350号公報(原審で引用された引用文献1)
(1-ア)「【請求項2】 重量百分率でSiO_(2) 40?70%,Al_(2)O_(3) 6?25%,B_(2)O_(3) 5?20%,MgO 0?10%,CaO 0?15%,BaO 0?30%,SrO 0?10%,ZnO 0?10%の組成を有し,本質的にアルカリ金属酸化物を含有しないガラスとなるように調合したガラス原料調合物を溶融した後,成形する無アルカリガラスの製造方法において,ガラス原料調合物に清澄剤としてSnO_(2)を0.05?2重量%,Sb_(2)O_(3)を0.05?3重量%及び塩化物をCl_(2)換算で0.01?2%添加することを特徴とする無アルカリガラスの製造方法。」(特許請求の範囲)
(1-イ)「次にガラス原料調合物にSnO_(2)とSb_(2)O_(3)と塩化物を添加する。塩化物としては,BaCl_(2),CaCl_(2)等が使用できる。なおSnO_(2)及びSb_(2)O_(3)の添加量は,ガラス原料調合物100重量%に対して0.05?2重量%及び0.05?3重量%であり,塩化物はCl_(2)換算で0.01?2重量%である。Sb_(2)O_(3)が0.05%より少ないとガラス化反応時に発生したガスを追い出し難くなり,SnO_(2)が0.05%より少ない場合,及び塩化物が0.01%より少ない場合は均質化溶融時にガラス融液中に残った泡を除去し難くなる。一方,SnO_(2)が2%,Sb_(2)O_(3)が3%より多いとガラスが失透し易くなり,また塩化物が2%より多いと揮発量が多くなりすぎてガラスが変質し易くなる。」(段落【0020】)

刊行物2:特開昭47-42817号公報(原審で引用された引用文献3)
(2-ア)「重量%で表して次の条件:
SiO_(2) 30?80 R_(2)O<13(K_(2)O,Na_(2)O及び/又はLi_(2)O)
B_(2)O_(3) 1?30 B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3)>6 清澄剤
Al_(2)O_(3) 0?40 好ましくは>10 RO残留分(MgO,CaO,
SrO及び/又はBaO)
を満たすガラスを製造するための石英粉末および他のガラス形成成分の粉砕混合物からなるガラス混合物の製造方法において,少なくとも90%の選択粒子の大きさが30?120ミクロンの範囲に存在する石英粉末を使用することを特徴とするガラス混合物の製造方法。」(特許請求の範囲)
(2-イ)「混合物に用いる石英粉末は,いわゆる,殆んどSiO_(2)のみからなる高純度の砂を粉砕して得られる。
かかる石英粉末を含有する混合物の溶融において,十分均質に融解する必要があるときは,長時間を要し,このために硼珪酸塩ガラスは小塊(knobs),応力領域(stressed zones),脈理(striae)および石を除去して得られる。この結果,かかる混合物を溶融する炉から得られるガラスの品位はあまり良くない。
本発明によれば,30?120ミクロンの選択された粒子の大きさが少なくとも90%有する石英粉末を使用するときに,溶融作用が著しく促進されることを確かめた。
石英粉末の最大粒径の大きさが重要であることは動的考察の観点から全く驚くべきことではない。しかしながら,実際上粒子の大きさの最少の範囲を考慮に入れることは明らかでなかった。極めて細い粉末(<30ミクロン)は溶融後拡散により極めて徐々に消失する礫岩を構成する。この結果,ガラスをあまり急速に形成する場合,管状ガラスに延伸する際に,例えば小塊を生じ不均質になる欠点を生ずる(この場合,多量のSiO_(2)含有量の結果高い粘度を有する領域が存在する)。
30ミクロン以下の粒子の大きさを殆ど含まない選択された粉末を用いる場合には,健康上極めて重要な塵の存在しない付加的利点を有する。」(第1頁右下欄第7行?第2頁左上欄第13行)
(2-ウ)「実施例1 本例においては,篩分けした石英粉末(a)を使用した場合を,篩分けしない石英粉末(b)の使用と比較した。
粉末の粒子の大きさの分布は次の通りである:
a) >160μm 0.2% b) >160μm 0.5%
>100μm 1.5% >100μm 1%
> 63μm 38 % > 63μm 6%
> 45μm 75 % > 40μm 25%
> 32μm 91 % ( < 40μm 75% )
( < 32μm 9 % )
これらの粉末を次に示す組成:
SiO_(2) 73.0% CaO 0.8%
B_(2)O_(3) 17.4% MgO 0.3%
Na_(2)O 4.5% Al_(2)O_(3) 2.5%
K_(2)O 1.4%
のガラスを溶融するために硼酸,硼砂,炭酸ナトリウム,苛性カリ(potash),ドロマイト,方解石およびアルミナと一緒に用いた。添付図面の曲線は上記の両混合物に対して時間当り溶融時間の函数としてガラス10g当りの小塊の数を自然対数Kで示した曲線である。本発明による方法の効果は,礫岩が消失する極めて短時間から全く明らかに生ずる。」(第2頁右上欄第17行?同頁左下欄末行)

6.対比・判断
刊行物1には,記載事項(1-ア)から,「重量百分率でSiO_(2) 40?70%,Al_(2)O_(3) 6?25%,B_(2)O_(3) 5?20%,MgO 0?10%,CaO 0?15%,BaO 0?30%,SrO 0?10%,ZnO 0?10%の組成を有し,本質的にアルカリ金属酸化物を含有しないガラスとなるように調合したガラス原料調合物を溶融した後,成形する無アルカリガラスの製造方法において,ガラス原料調合物に清澄剤としてSnO_(2)を0.05?2重量%,Sb_(2)O_(3)を0.05?3重量%及び塩化物をCl_(2)換算で0.01?2%添加する無アルカリガラスの製造方法」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「ガラス原料調合物を溶融した後,成形する」ことは,本願発明の「ガラス原料を調合し,溶融,成形する」ことに相当する。そして,引用発明の「塩化物をCl_(2)換算で0.01?2%添加する」ことと,本願発明の「ガラス原料中に,塩化物をCl換算で0.01?1質量%添加する」こととは,いずれも「塩化物を添加する」点で共通するといえる。
したがって両発明は,
「ガラス原料を調合し,溶融,成形する無アルカリガラスの製造方法において,ガラス原料中に,塩化物を添加することを特徴とする無アルカリガラスの製造方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点A:
本願発明では,「シリカ原料として,平均粒径(D_(50))が30?60μm,最大粒径(D_(99))と平均粒径(D_(50))の差が40μm以下の原料を使用し」と特定するのに対し,引用発明ではかかる特定がない点

相違点B:
本願発明では,ガラス原料中に添加する塩化物の量について,「塩化物をCl換算で0.01?1質量%添加する」のに対し,引用発明では,「塩化物をCl_(2)換算で0.01?2%添加する」点

上記相違点A,Bについて,以下,検討する。

相違点Aについて:
刊行物2には,記載事項(2-ア)に,「少なくとも90%の選択粒子の大きさが30?120ミクロンの範囲に存在する石英粉末を使用する・・・ガラス混合物の製造方法」が記載されている。そして,記載事項(2-イ)には,「石英粉末を含有する混合物の溶融において,十分均質に融解する必要があるときは,長時間を要し,このために硼珪酸塩ガラスは小塊(knobs),応力領域(stressed zones),脈理(striae)および石を除去して得られる。・・・・・・石英粉末の最大粒径の大きさが重要であることは動的考察の観点から全く驚くべきことではない。しかしながら,実際上粒子の大きさの最小の範囲を考慮に入れることは明らかでなかった。極めて細い粉末(<30ミクロン)は溶融後拡散により極めて徐々に消失する礫岩を構成する。この結果,ガラスをあまり急速に形成する場合,管状ガラスに延伸する際に,例えば小塊を生じ不均質になる欠点を生ずる(この場合,多量のSiO_(2)含有量の結果高い粘度を有する領域が存在する)。」と記載されている。
したがって,刊行物2には,あまり長時間を要さずに小塊,応力領域,脈理および石が除去されるよう十分均質に融解するためには,石英粉末の最大粒径が重要であることは驚くべきことではなく,すなわち,あまり大きい粒子が含まれないようにすることは自明であるが,30ミクロン(μm)未満の細か過ぎる粉末は,溶融後の拡散・消失が極めて遅い礫岩を形成することから,粒子の大きさの最小の範囲を考慮する必要があること,つまり,あまり細か過ぎる粒子が含まれないようにする必要があることが記載されているといえる。そして,具体的な方法として,「少なくとも90%の選択粒子の大きさが30?120ミクロンの範囲に存在する石英粉末を使用する」ことが開示されているとみることができる。さらに,刊行物2には,記載事項(2-ウ)に,「粉末の粒子の大きさの分布は次の通りである:
a) >160μm 0.2% b) >160μm 0.5%
>100μm 1.5% >100μm 1%
> 63μm 38 % > 63μm 6%
> 45μm 75 % > 40μm 25%
> 32μm 91 % ( < 40μm 75% )
( < 32μm 9 % )」と記載されており,平均粒径(D_(50))が45?63μmの間にあることが明らかな「石英粉末a)」が例示されている。
ここで,ガラスの溶融に関する技術常識を確認すると,山根正之,安井至,和田正道,国分可紀,寺井良平,近藤敬,小川晋永 編,「ガラス工学ハンドブック」,朝倉書店,1999年7月5日,223?225頁,294?295頁(以下「刊行物3」という。)には,以下の事項が記載されている。
「ガラスの初期融液中に残存する固体の溶解が普通1100℃以上で律速プロセスとなる。現行技術では,比較的粗粒のけい砂が使用されており,それが最後に残存する固体となる。」(第223頁左欄第2?5行)
「溶解速度は平衡(飽和)濃度が達せられる境界層近傍での溶解物質の拡散移動により制御される。したがってSiO_(2)の溶解速度は,<1>融液中のSiO_(2)の拡散係数,<2>SiO_(2)-融液の境界での濃度勾配(または融液中と境界とでのSiO_(2)の濃度差ないし拡散層の厚さ),<3>融液と接触するSiO_(2)の表面積(すなわちSiO_(2)の初期粒径)などの因子に依存する。」(第223頁左欄第21?27行)(当審注:丸囲い数字はすべて<1>等のように表記した。)
「サイズ分布を有するシリカ粒子の場合には,最大の粒子が完全溶解の所要時間を決定する。」(第224頁左欄第3?5行)
「炉に原料バッチを投入してから固相消失(バッチ起因の結晶質物質のないガラスの生成)までの時間を溶解時間あるいは砂利切れ時間(batch free time)とよぶ。温度・粒径の溶解時間への効果は多数の研究者に取り扱われてきた。・・・・・・原料の粒度の効果は複雑で,平均サイズのみならずサイズ分布までを規定する必要がある。・・・・・・図1.5は砂利切れ時間のデータの一例で,溶融時間はけい砂粒子の比表面積の逆数と直線関係をもつことを示しており,溶融時間と初期粒子サイズとの正比例関係に対応する。・・・・・・けい砂の溶解速度は溶融促進剤とよばれる微量添加物によってかなりの程度影響される。普通促進剤には,すでに言及した硫酸ナトリウムのほかにフッ化物,NaClなどがあげられる。」(第224頁右欄第4行?第225頁左欄第1行)
「原料の粒度はガラス化反応の速度に極めて重要な影響を及ぼす。理想的には各原料の粒度が揃っているのがよい。ガラス組成,溶融条件によって粒度の最適値は異なり,必ずしも微粒原料が好ましいとはいえない。微粒原料を使用した場合,ハンドリングが困難になる,キャリーオーバーの増加により組成変動が生じたり,炉の寿命が短くなるなどの問題が生ずる。」(第294頁右欄第37行?第295頁左欄第2行)
また,作花済夫 編,「ガラスの事典」,朝倉書店,1985年9月20日,248?249頁(以下「刊行物4」という。)には,以下の事項が記載されている。
「タンク窯に投入されたバッチが,火炎の輻射熱によって加熱されて溶解し,固相が完全に消失した状態をバッチフリー(batch free)の状態,それに要する時間をバッチフリータイムまたは溶解時間(melting time)とよび,ガラス溶融の一つの指標とする。・・・・・・Pottsらのるつぼ実験によれば,SiO_(2)の増加は溶融時間を長くし,原料粒度が小さくなるほど溶融時間は短い。ケイ砂の粒度の影響が最も大きく,細か過ぎるとかえって溶融しにくくなる。」(第249頁第3?10行)
このように,ガラスの製造においては,原料粒子の固相が完全に無くなるように溶融することが従来から重要視されており,特に溶け残り易いSiO_(2)の粒度が重要で,粒度が細かい方が溶けやすいが,細か過ぎると逆に溶けにくいことが周知である。さらに,粒度分布が重要であることも周知であり,粒度分布が広すぎて粗大な粒子を含む原料を使用すると,粗大な粒子が溶け残り易くなることは当業者にとって自明である。
そうすると,引用発明において,ガラスを均質に融解すべく,刊行物2に記載された技術を適用し,シリカ(SiO_(2))原料の粒度について,刊行物2に具体的に例示された平均粒径(D_(50))が45?63μmの間という粒度の近傍において適宜調整を行い,平均粒径(D_(50))が30?60μm,最大粒径(D_(99))と平均粒径(D_(50))の差が40μm以下とすることは,当業者が格別の困難なくなし得ることである。

なお,請求人は,審判請求書において,「引用例1,2は,無アルカリガラスを対象にしており,引用例3は,アルカリ含有ガラスを対象にしています。既述の通り,無アルカリガラスとアルカリ含有ガラスは,その溶融性(溶融温度,溶融時間等)等の諸物性が大きく相違するため,技術分野が異なります。
よって,引用例3に記載の方法を,引用例1,2の無アルカリガラスに適用することは,当業者であっても困難であると思料致します。
(c)したがって,本願請求項1に記載の発明は,引用例1?3を根拠にして,特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではありません。」(第6頁第12?17行)と主張するので,この点について検討する。
そこで,さらに技術常識を確認すると,成瀬省 著,「ガラス工学」,共立出版,昭和54年9月25日,64?71頁(以下「刊行物5」という。)には,以下の事項が記載されている。
「バッチが加熱されて完全にガラス化するまで,その温度上昇に伴って,つぎのようないろいろな物理的および化学的変化が行われる。
(1) バッチ中のいろいろな原料の付着水が蒸発する。
(2) 原料の熱分解によって発生する気体,すなわちCO_(2),SO_(3),SO_(2),結合水(結晶水または水酸化物の-OH基)等が離脱する。
(3) バッチ成分の中で最も融点の低いものが溶融して液相を生ずる。またその調合比から,生成しうると考えられる共融体による多成分系融液を生ずる。また場合によっては,バッチの分離が起きていたために,局部的に特殊な低融点共融体ができて,その融液が特に低温で生ずることもある。
(4) 上記のようにして生成した幾種類もの液相が相互に溶解しあう。さらに未溶融の固体原料のあるものは,この融液中に溶解する。
(5) 原料相互間,またはそれまでに生成された珪酸塩化合物と他の酸化物との間に固相反応(Solid phase reaction)が起きて,新化合物を生成する。
(6) 高温のために,ガラスまたはバッチの中の成分のあるものは揮発する。揮発成分としては,Na_(2)O,K_(2)O,B_(2)O_(3),PbO,SiF_(4),BF_(3),As_(2)O_(3),Sb_(2)O_(3),Se等がある。
(7) 溶融ガラス面をおおっている気相(燃料,燃焼ガス,空気,原料から発生した分解ガス等)の中のガス成分がガラス中に溶けこむ。この溶解ガスはしばしば過飽和に達し,それがやがてはガス体となって再び遊離して,ガラス中の小気泡をつくる原因となることがある。」(第64頁第2?20行)
ここで,本願発明のシリカ原料の溶解については,特に上記(3)?(5)の変化が重要と考えられるが,無アルカリガラスであっても基本的に同様の変化が起こるものと考えられ,アルカリ成分を含むガラスと比較して,各原料の融点や初期に生じる共融体の種類及び生成温度が異なるとしても,刊行物3,4に記載されている上記周知技術のとおり,シリカ原料とその周囲に形成される液相とが接触する表面積,すなわちシリカ原料の粒度がシリカ原料の溶融速度に大きく影響する点に変わりはないと考えるのが自然である。
一方,請求人は,「無アルカリガラスとアルカリ含有ガラスは,その溶融性(溶融温度,溶融時間等)等の諸物性が大きく相違する」と主張するものの,本願明細書段落【0007】に,「無アルカリガラスの場合,アルカリ成分を含有するガラスと異なり,原料の溶融段階でアルカリ融液によるシリカ原料粒子の溶解が起こらない。」との記載があるだけで,それ以上の技術的説明はなく,たとえば刊行物3?5に記載されているような従来周知の一般的なシリカ(SiO_(2))の溶融挙動とはどのように異なるのか,また,その違いのために,当業者であれば,シリカ原料の粒度が大きすぎても小さすぎてもいけないという技術常識が該当しない可能性が高いと予測するはずである等の,刊行物2記載の技術を無アルカリガラスへ適用することの困難性について,詳しい説明はなされていない。そして,結局,無アルカリガラスに関する本願発明においても,シリカ原料の粒度及び粒度分布が適度な範囲内にあるものを使用するというのであり,上記従来周知の技術と比較して特に驚くべき結果は得られていない。
そうすると,シリカ原料の粒度を適度な範囲に調整する刊行物2記載の技術を,無アルカリガラスに関する引用発明に適用することに格別の困難性があるとはいえず,上記請求人の主張は採用できない。

相違点Bについて:
引用発明では,塩化物を「Cl_(2)換算」で0.01?2%添加するが,この数値はモル分率ではなく重量百分率であることから,「Cl換算」と表現しても重量百分率(本願発明の「質量%」に相当)の数値は同じである。
そうすると,本願発明と引用発明は,「塩化物をCl換算で0.01?1質量%添加する」点で重複し,上限値について,本願発明では1質量%であるのに対し,引用発明では2%(2質量%)である点で相違している。
しかしながら,刊行物1には,記載事項(1-イ)に,塩化物の添加量の上限の理由として,「塩化物が2%より多いと揮発量が多くなりすぎてガラスが変質し易くなる。」と記載されており,揮発によるガラスの変質を防止する観点から,さらに上限値を引き下げて1質量%以下とすることは,当業者が適宜なし得ることである。そして,上記記載事項(1-イ)に記載された上限の理由は,本願明細書の段落【0013】に,「1%以下であれば過度の揮発によるガラスの変質を起こすおそれがない。」と記載された理由と同じであって,その効果も予測し得るものである。

よって,本願発明は刊行物1,2に記載された発明及び当該技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,刊行物1,2に記載された発明及び当該技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-09 
結審通知日 2011-08-16 
審決日 2011-08-31 
出願番号 特願2002-225918(P2002-225918)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 直也藤代 佳  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 深草 祐一
中澤 登
発明の名称 無アルカリガラスの製造方法  
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