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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1245023
審判番号 不服2009-11109  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-15 
確定日 2011-10-12 
事件の表示 特願2003-533133「バス・システムおよびバス・インターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月10日国際公開、WO03/29996、平成17年 2月10日国内公表、特表2005-504392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年9月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年9月27日(SG)シンガポール共和国)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月2日付けで誤訳訂正(同年5月30日付け手続補正書)がなされるとともに意見書が提出されたが、平成21年3月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月2日付け誤訳訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
データおよび制御信号を転送するためのバスによって結合されている第1の端末と第2の端末とを備え、当該バスが、当該第1の端末が当該第2の端末に繰り返しリクエストを送信すると考えられているプロトコルによって作動するバス・システムにおいて、当該第1の端末は、プロセッサと、バス・インターフェースと、当該プロセッサ及び当該バス・インターフェースに結合されるバッファを備え、
当該プロセッサは、当該リクエスト及び当該データを処理するためのリクエスト特性を生成するために動作可能であり、当該リクエスト特性は、当該リクエストのポーリング・レートを備え、
当該バッファは、当該リクエスト特性を格納するために動作可能であり、
当該バス・インターフェースは、当該格納されているリクエスト特性から当該リクエストを生成し、かつ当該リクエストを繰り返し送信するために動作可能であり、
当該バスインターフェースは、当該リクエスト特性に含まれる当該ポーリングレートに応じて当該リクエストを送信するレートを調整する、ことを特徴とするバス・システム。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-228355号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものである。

(a)「【請求項1】 第1の機器から第2の機器へとデータを転送するデータ転送装置であって、
所定のタイミングに同期して第1の機器から第2の機器へとデータを転送する第1の転送手段と、
所定のタイミングで、前記第1の転送手段による転送データを処理し終えているかを示すデータを、前記第2の機器から第1の機器へと転送する第2の転送手段と、
前記第2の転送手段により転送されるデータに基づいて、前記第1の転送手段を制御して、次のデータを転送するかデータを再送するか制御する制御手段とを有することを特徴とするデータ転送装置。」

(b)「【0025】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)図2はPCなどのホスト201と外部バス213で接続されたプリンタなどの周辺機器202を示している。
<印刷システムの構成>ホスト201の内部にはシステムバスとしてのアドレス信号線203とデータ信号線204と制御信号線205があり、これにROM(Read Only Memory)206、RAM(Random Access Memory)207、全体制御部208、表示制御部209、蓄積部210、I/O制御部211、ホスト外部バス制御部212が接続されている。全体制御部208はアドレス信号線203によって、各機能ブロックの選択を行い、データ信号線204と制御信号線205によってデータの転送を行うことで、各ブロックの動作の制御を行い、ホスト201の全体の動作を制御する。
【0026】ROM206には全体制御部208と各機能ブロックとのアクセスの制御方法などの基本的なプログラムのコードが格納されている。RAM207は、全体制御部がROM206または蓄積部210に格納されているシステム全体のオペレーティングシステム、アプリケーションの動作モジュールや動作中に必要とされるデータ、外部周辺機器のドライバなどの中から、必要とされる動作モジュールや、各モジュールが動作時に必要とするパラメータなどを一時格納するメモリである。
【0027】表示制御部209は、図示していないCRTモニタ、液晶ディスプレイなどの外部表示装置を制御する。蓄積部210は、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM Driveなどの蓄積装置とその制御部で構成されており、アプリケーションの実行ファイルやアプリケーションで作成されたデータファイルが格納されている。I/O制御部211は、図示していないキーボード、マウスなどの入力装置が接続されており、利用者が希望する制御情報を入力可能にしている。
【0028】ホスト外部バス制御部212は、外部バス213を介して周辺機器202と接続されており、周辺機器202との間でデータを送受信する。
【0029】利用者は、I/O制御部へ入力することで、希望する動作をホストに行わせる。外部表示装置に表示されている画面を見ながら蓄積部210に格納されているアプリケーション、またはデータファイルを選択してアプリケーションを起動させ、さらにそのアプリケーションに入力を行い一連の作業を行う。その時に作業結果を周辺機器202に転送する要求が発生した場合に、ホスト外部バス制御部212、外部バス213を用いてデータの転送を行う。
【0030】周辺機器202としてプリンタを例にして説明を行う。周辺機器202には内部バスとしてのアドレス信号線214、データ信号線215、制御信号線216があり、この内部バスに周辺機器外部バス制御部217、モータ制御部218、ヘッド制御部219、周辺機器制御部220、ROM221、RAM222、画像処理部223が接続されている。周辺機器制御部220はアドレス信号線214によって、各機能ブロックの選択を行い、データ信号線215と制御信号線216によってデータの転送の制御を行い、周辺機器202の動作を制御する。
【0031】周辺機器外部バス制御部212は、外部バス213を介してホスト201と接続されており、ホスト201とのデータの送受信を行う。モータ制御部218は、紙送り、ヘッド駆動用のモータを周辺機器制御部220の制御に応じて駆動する。ヘッド制御部218は、印刷するデータを受け取り、ヘッドの制御を行って印刷する。画像処理部223は、転送されてきたデータにさらに画像処理を行う。
【0032】ROM223には周辺機器制御部220を動作させるためのプログラムが格納されており、周辺機器制御部220はこのプログラムに沿って周辺機器外部バス制御部217に送られてくるデータを処理して、他の機能ブロックを制御して印刷を可能にする。RAM222は送られてくるデータ、または処理中に発生するパラメータなどを格納することに使用される。
<データ転送手順>次にこの一連の動作を図3と図4とを利用して説明する。ここでは、利用者が所定のアプリケーションによってドキュメントを作成し、これをプリントアウトするところから説明する。
【0033】利用者が、アプリケーション上で印刷命令を発行すると、これがプリンタドライバに通知される(401)。
【0034】プリンタドライバは、用紙サイズ、印刷品位などのプリンタの設定情報などをシステムに通知する(402)。
【0035】システムはアプリケーションにデータの変換を要求し(403)、アプリケーションは印刷データをシステムが要求する所定のフォーマットのデータに変換してシステムに転送する(404)。
【0036】システムは、転送されたデータをRAM207または蓄積部210に格納し(405)、アプリケーションに終了許可の通知を行う(406)。アプリケーションは、この許可を受け取り印刷動作を終了し、次の操作を受け付ける状態に移行する(407)。
【0037】システムは、405で格納したデータをプリンタドライバで処理可能な大きさのデータ量に分割して、プリンタドライバにデータを転送する(501)。
【0038】プリンタドライバは、受け取ったデータからターゲットのプリンタに最適な画像データの生成のための画像処理を行う(502)。たとえば、色空間変換、カラーマッチング、ラスタライズ、エッジ強調、ソフトネスなどである。これらの処理は、テキスト領域1002、イメージ領域1003に応じて最適な組み合わせが選択される。
【0039】502で生成された画像データはプリンタ制御コマンドに変換され(503)、プリンタへのデータ送信要求とともにシステムに渡される(504)。
【0040】システムは受け取ったプリンタ制御コマンドをホスト外部バス制御部212に転送する(505)。ホスト外部バス制御部212は受け取ったプリンタ制御コマンドを外部バス213を介して周辺機器外部バス制御部217に送信する(506,507)。データの転送が終了した時点でホスト外部バス制御部22からシステムにデータ転送の終了が通知される。
【0041】データを受信した周辺機器外部バス制御部217はプリンタの周辺機器制御部220にデータが送信されたことを通知する。周辺機器制御部220は受信したデータに応じてプリント出力を行うように各機能ブロックを制御する(508)。
【0042】システムは、データ転送の終了が通知されると(509)、印刷するページの1ページが終了するまで、501?509を繰り返す(510)。
【0043】これを印刷が要求されているすべてのページに対して繰り返し行う(511)以上の手順によりホストからプリンタへのデータ転送を行っている。
<外部バス制御部の構成>図1は本発明の一実施例であるホスト外部バス制御部212のブロック図である。なお、本実施例では、図示していないが、ホスト外部バス制御部212に複数のコネクタがあり、外部バス213には複数の周辺機器202が接続されている。
【0044】また外部バス109としてUSBを採用した場合を例に説明する。
【0045】システムバスの制御信号線101とデータ信号線102とアドレス信号線103とが制御部110に接続されており、ホスト制御部208の指示によって送られる制御によってバッファ部104、パケット生成部105、通信制御部106の制御を行う。
【0046】外部バス109を介して図1には図示していない周辺機器に転送されるデータはデータ信号線102からバッファ部104に格納される。転送データは、パケット生成分105でパケットに変換され、通信制御部106に供給される。ここではデータに対して、通信相手を示すトークンパケット、データであるデータパケット、受信の確認を行うハンドシェイクパケットを生成する。
【0047】通信制御部106は内部にサイクルタイマ107を装備しており、サイクルタイマ107で生成されるバスのサイクルのタイミングに合わせて供給されたパケットをトランシーバを介して外部バス109にデータを出力する。
【0048】周辺機器202の周辺機器外部バス制御部217もホスト外部バス制御部112とほぼ同一の構成であるが、トークンパケットの生成は行わない。
【0049】まずUSBのデータ転送について簡単に説明する。
【0050】データ転送は、基本的に3つのパケット、トークンパケット、データパケットハンドシェイクパケットで構成される。これら3つのパェットで構成される一回のデータ転送をトランザクションと呼ぶ。トークンパケットには、トランザクションの種類を示すパケットID,データ転送のターゲットとなるデバイスのアドレス、エンドポイント番号が挿入されており、このトークンパケットの情報に適合したデバイスとホストとの間でデータ転送が可能になる。このトークンパケットはホストのみが生成することができる。これはホストのみでバスのアクセス権を管理していることを意味する。データパケットには転送データが格納されている。ハンドシェイクパケットには、データ転送が正常に完了したか、または正常に完了できなかったかを示す情報が格納されている。
【0051】トランザクションにはイントランザクション,アウトトランザクション,セットアップトランザクションの3種類がある。イントランザクションでは周辺機器からホストへデータが転送される。アウトトランザクションではホストから周辺機器へデータが転送される。セットアップトランザクションはホストから周辺機器に対して規格で規定されたコマンドの転送に使用される。これら3つのトランザクションでバルク転送,コントロール転送,アイソクロナス転送,インタラプト転送と呼ばれるトランスファーが構成される。
【0052】バルク転送はイントランザクション又はアウトトランザクションの並びである。コントロール転送はセットアップトランザクションのみ、またはセットアップトランザクションに続くイントランザクションとアウトトランザクションの並びである。アイソクロナス転送はハンドシェークパケットの無いイントランザクションまたはアウトトランザクションの並びである。インタラプト転送はひとつのイントランザクションである。
【0053】これらのトランスファーはフレームと呼ばれる1ms単位の期間に並べられる。この制御はホスト外部バス制御部212で行われる。フレームの開始はSOF(Start Of Frame)パケットと呼ばれる特殊なパケットで通知される。このうち、アイソクロナス転送とインタラルと転送はフレーム内にその帯域を確保されている。
【0054】バルク転送は非同期のデータ転送であり、コントロール転送はバスに接続されている周辺機器外部バス制御部217の初期化に使用される。アイソクロナス転送は同期転送であり、単位時間あたりのデータ転送量が確保されている。ただし他のトランスファーと異なり、アイソクロナス転送のみデータの保証はされていない。インタラプト転送は設定時間ごとに必ず転送されることが保証されているため、割り込み処理に使用される。
【0055】データ転送は従来のデータ転送によく似ており、転送先からデータ転送の確認は取れるが帯域が保証されない。本発明ではアイソクロナス転送とインタラプト転送とを使用することで、より簡単に、さらにデータ帯域が保証されたデータ転送方式を実現している。その特徴的な動作を図5で説明する。
【0056】図5で、Txはホスト201、Rxは周辺機器202を示している。SOFは1ms間隔で送信されている。SOFとSOFの間には、ここでは図示していないホスト201と複数の周辺機器202との間のトランスファーの転送が多く存在する。ここではひとつの周辺機器202に対して本発明に関係するトランスファーのみを示している。
【0057】予めホスト201と周辺機器202との間でアイソクロナス転送で転送するデータ量とインタラプト転送の確保のネゴシエーションが行われる。ネゴシエーションが終了し、データ転送の帯域が確保できた後に、ホスト201からData0が周辺機器202にアイソクロナス転送で転送される。周辺機器では受け取ったデータをもとに処理を行う。このステップは従来例で示したものと同一である。インタラプト転送が開始された時点で、受け取ったデータの処理が終了しており、次のデータの処理が可能な状態であれば、インタラプト転送で処理可能であること(OK)をホスト201に転送する。
【0058】Data1を受信したが、次のインタラプト転送の開始時点までにデータの処理が終了しなかった場合には、周辺機器202はインタラプト転送で処理不可(NG)をホスト201に転送する。処理不可を通知されたホスト201は次のアイソクロナス転送でData1を再送する。処理可能(OK)をつうちされるまでData1の再送を繰返す。
【0059】以上のような手順でデータ転送を行うことで、データ帯域を保証し、しかも転送先の周辺機器がデータを受信したことを確認しつつデータを確実に転送できる。さらに、複数の周辺装置を接続してあっても同様の手順で簡単にデータ転送を行える。また、ホストがトークンパケットを発行することでバスの調停を行うため、ホスト側だけの制御でバスを管理でき、周辺装置側の構成が簡単になる。
【0060】なお、アイソクロナンス転送とインタラプタ転送順番を変え、インタラプト転送によって周辺機器202の状態を判定した後で、アイソクロナス転送によってデータを転送するようにしてもよい。」

(c)図1及び図2から、ホスト外部バス制御部内のバッファはバスを介して全体制御部と接続されていることは明らかである。

よって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

「ホストと周辺機器とが、USBが採用された外部バスで接続され、
ホストは、各ブロックの動作の制御を行い、ホスト全体の動作を制御する全体制御部と、
外部バスを介して周辺機器と接続され、周辺機器との間でデータを送受信するホスト外部バス制御部と、を備え、
ホスト外部バス制御部は、外部バスを介して周辺機器に転送されるデータを格納するバッファ部と、を備え、
バッファはバスを介して全体制御部と接続され、
ホスト外部バス制御部は、通信相手を示すトークンパケット、データであるデータパケット、受信の確認を行うハンドシェイクパケットを外部バスに出力する、
データ転送装置。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-283311号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものである。

(d)「【0027】
【発明の実施の形態】図1に示すように、本発明によるコンピュータ・システム10は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)11によって相互接続された複数のユニットを含んでいる。システム10は、一般に従来のパーソナル・コンピュータ(PC)によって実施されたワークステーションであるホスト・コンピュータ14を含んでいる。
【0028】コンピュータ14は、詳細には図示されていないが、プロセッサ、揮発性データ記憶装置および不揮発性データ記憶装置、入出力デバイスなどを有するマザーボードを含んでいる。コンピュータ14は、バス11を介してデータ転送を制御するUSBコントローラ16を含んでいる。また、本発明による帯域幅割り当てユニット18が、コントローラ16およびユニット18によって必要とされるリストおよびテーブル・データを記憶する記憶装置20とともに示されている。記憶装置20は、コンピュータ14の従来のメモリ・アキーテクチャの一部となりうることに留意されたい。
【0029】割り当てユニット18は、以下で詳細に説明するようにコントローラ16に関連し、その一部をなす構成要素となりうる。コントローラ16および割り当てユニット18は、ハードウェア、ソフトウェア、またはその任意の組合せの形で実施できる。
【0030】これらのユニットの一部または全部は、本発明によるエンド・ユーザに分配すべき磁気ディスクやCD ROMなどデジタル・データ記憶媒体上に記憶された命令を含んでいるコンピュータ・プログラムとして実施される。さらに、これらのユニットの一部または全部は、動作前および動作中、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはその任意の組合せの形で完全にまたは部分的に実施できる。
【0031】図示のように、いくつかの周辺装置がUSBバス11を介してホスト・コンピュータ14に接続される。図示の例では、モデム28およびプリンタ30が線12を介してUSBハブ32に接続される。USBハブ32自体は、USBコントローラ16に接続される。モニタ22、キーボード24およびマウス26が線12を介して他のハブ33に接続される。ハブ33自体は、線12を介してハブ32に接続される。
【0032】USBコントローラ16は、4つのタイプのデータ転送、すなわち割込み転送、等時性転送、制御転送、およびバルク転送を使用して、USBバス11を介して周辺装置と通信する。USBバス11自体は、ハブ32および33、および線12を含んでいる。
【0033】本発明が関する割込み転送は、コントローラ16が周辺装置を個々の要件に依存する間隔を置いて周期的にポーリングすることによって開始される。ポーリングに応答して、周辺装置は、特定の処理を実施した結果、例えばキーボード24のキーを押した結果を表すデータをコントローラ16に戻す。コントローラ16は、データを適切な処理のために周辺装置からコンピュータ14に送る。デバイス、一般にキーボードまたはマウスは、送信すべきデータを有しない場合、否定応答(NAK)メッセージをもって応答する。
【0034】異なるタイプの周辺装置は、異なるポーリング間隔要件を有する。ポーリング間隔は、それぞれ1ミリ秒の固定の期間を有する一連の「フレーム」に対して定義される。周辺装置は、1ミリ秒ごとか、または1ミリ秒の2の累乗の倍数ごとにポーリングされる。
【0035】周辺装置のポーリング構造を指定するデータは、図2に示すように2進ツリー構成で配置されたポーリング・リスト内に記憶される。ツリーは、2の累乗に対応するレベルのところに配置されたノードを有する。1ミリ秒ごとにポーリングしなければならない周辺装置のデータは、ツリーのルート・ノードのところに配置される。2ミリ秒ごとにポーリングしなければならない周辺装置のデータは、ルート・ノードから第1の先祖レベル内に記憶され、4ミリ秒ごとにポーリングしなければならない周辺装置のデータは、第2の先祖レベル内に記憶される。
【0036】図2は、OHCIコントローラによって実施される2進ツリー構造の簡略化された一例である。図は、4つのレベルを有するツリー、および円によって示されたノードを示す。ノードは、円内に配置された番号を有する。「1」で示され、1ミリ秒ごとに割込みポーリング信号を発生する1つのルート・ノードが存在する。「2」および「3」で示された第2のレベルのところには、2ミリ秒ごとに割込みポーリング信号を発生する2つのノードが存在する。
【0037】「4?7」で示された第3のレベルのところには、4ミリ秒ごとに割込みポーリング信号を発生する4つのノードが存在し、「8?15」で示された第4のレベルまたはリーフ・レベルのところには、8ミリ秒ごとに割込みポーリング信号を発生する8つのノードが存在する。
【0038】要約すると、第1のレベル(1ミリ秒期間)はルート・ノード1で構成され、第2のレベル(2ミリ秒期間)はノード2および3で構成され、第3のレベル(4ミリ秒期間)はノード4?7で構成され、第4のレベル(8ミリ秒期間)はノード8?15で構成される。
【0039】割込みポーリング信号INT0からINT7は、入力ノードまたはリーフ・ノード8?15に加えられ、ルート・ノード1に向かって右へ伝搬する。信号INT0からINT7は、連続的な1ミリ秒間隔またはフレーム期間を置いて加えられる。例えば、信号INT1は、信号INT0がノード8に加えられてから1ミリ秒後にノード9に加えられる。
【0040】指定されたノードの左側の各ノードは、そのノードの「先祖ノード」であり、指定されたノードの右側の各ノードは、そのノードの「継承ノード」である。リーフ・ノード8?15は先祖ノードを有せず、ルート・ノード1は継承ノードを有しないことに留意されたい。
【0041】現在実施されているOHCIシステムは、それぞれ16ミリ秒および32ミリ秒の追加の期間を与える追加の2つのノード・レベルを含んでいる。しかし、図2の簡略化された構成は、図面を煩雑にすることなく本発明の概念を提示するのに十分である。
【0042】図2の2進ツリー構造は、OHCIシステムでは「終点記述子リスト」と呼ばれるポーリング・リストに対応する。このポーリング・リストは、コントローラ16および/または割り当てユニット18内に記憶され、図3に示される。図2のツリーを介してそれぞれリーフ・ノード8?15からルート・ノード1に至る8つのパスが存在する。信号INT0用のリーフ・ノード8からのパスは、ノード8、4、2、1を横断する。信号INT6用のリーフ・ノード14からのパスは、ノード14、7、3、1などを横断する。」

よって、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。

「USBコントローラ16は、USBバス11を介して周辺装置と通信し、
異なるタイプの周辺装置は、異なるポーリング間隔要件を有し、
周辺装置は、1ミリ秒ごとか、または1ミリ秒の2の累乗の倍数ごとにUSBコントローラによりポーリングされ、
周辺装置のポーリング構造を指定するデータは、USBコントローラ16内のポーリング・リストに記憶される、USBコントローラ。」

4.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1は、「ホストと周辺機器とが、USBが採用された外部バスで接続され」ており、引用発明1の「USBが採用された外部バス」、「ホスト」、「周辺機器」は、それぞれ、本願発明の「バス」、「第1の端末」、「第2の端末」に相当する。

引用発明1の外部バスには、データパケットが出力される。そして、引用発明1の外部バスには、通信相手を示すトークンパケット、受信の確認を行うハンドシェイクパケットが出力され、これらは周辺機器(第2の端末)を制御するものであるから、引用発明1と本願発明とは、「データおよび制御信号を転送するためのバスによって結合されている第1の端末と第2の端末とを備え」る点で共通する。

引用発明1の「全体制御部」は、「各ブロックの動作の制御を行い、ホスト全体の動作を制御する」ものであるから、本願発明の「プロセッサ」に相当すると言える。

引用発明1の「ホスト外部バス制御部」は、本願発明の「バス・インターフェース」に相当する。

引用発明1の「バッファ」は、本願発明の「バッファ」に相当する。

引用発明1の「データ転送装置」は、バスを介してホストと周辺機器の間でデータ転送を行うものであるから、本願発明の「バスシステム」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「データおよび制御信号を転送するためのバスによって結合されている第1の端末と第2の端末とを備えたバスシステムにおいて、当該第1の端末は、プロセッサと、バス・インターフェースと、当該プロセッサ及び当該バス・インターフェースに結合されるバッファを備えたバスシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明のバスシステムは、当該バスが、当該第1の端末が当該第2の端末に繰り返しリクエストを送信すると考えられているプロトコルによって作動するのに対して、引用発明1のバスシステムは、当該バスが、第1の端末(ホスト)が第2の端末(周辺機器)に繰り返しリクエストを送信するか否かが明確ではない点。

(相違点2)
本願発明のバスシステムにおいては、当該プロセッサは、当該リクエスト及び当該データを処理するためのリクエスト特性を生成するために動作可能であり、当該リクエスト特性は、当該リクエストのポーリング・レートを備え、当該バス・インターフェースは、当該格納されているリクエスト特性から当該リクエストを生成し、かつ当該リクエストを繰り返し送信するために動作可能であり、当該バスインターフェースは、当該リクエスト特性に含まれる当該ポーリングレートに応じて当該リクエストを送信するレートを調整するのに対して、
引用発明1のバスシステムにおいては、当該プロセッサが、「当該リクエスト及び当該データを処理するためのリクエスト特性を生成するために動作可能であり、当該リクエスト特性として当該リクエストのポーリングレートを備え、当該バス・インターフェースは、当該格納されているリクエスト特性から当該リクエストを生成し、かつ当該リクエストを繰り返し送信するために動作可能である」かどうかが明確ではなく、当該バスインターフェースは、当該リクエスト特性に含まれる当該ポーリングレートに応じて当該リクエストを送信するレートを調整するものではない点。

(相違点3)
本願発明のバッファは、当該リクエスト特性を格納するために動作可能であるのに対し、
引用発明1のバッファは、当該リクエスト特性を格納するものではない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

(a)相違点1について
例えば引用発明2が示すとおり、一般に、USBはホストから周辺機器にポーリングをおこなうプロトコルを有するバスであるから、引用発明1において、第1の端末(ホスト)が第2の端末(周辺機器)にポーリング、すなわち、繰り返しリクエストを送信するように構成することで、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(b)相違点2について
引用発明2は、周辺装置のタイプに応じて異なるポーリング間隔要件を有し、周辺装置のポーリング構造を指定するためのデータをUSBコントローラ内のポーリング・リストに記憶するものであり、該「ポーリング間隔」とは本願発明のポーリングレートに相当するものであるから、該USBコントローラは、リクエスト特性としてリクエストのポーリングレートを備え、周辺装置にポーリングを行うバスインターフェースであると言える。
また、上位装置から下位装置へのポーリングに際し、上位装置においてポーリングの間隔(レート)を調整することは本願優先日前に周知(<1>特開平4-289949号公報請求項1、段落【0011】?【0019】、図1、<2>特開平6-75887号公報段落【0007】?【0009】、図1、<3>特開平8-7177号公報段落【0011】?【0020】参照)であり、上位装置側のプロセッサがポーリングレートの調整のために、ポーリングレートを生成することは通常のことである。
してみると、引用発明1及び2は、USBプロトコルを採用するバスシステムである点で共通し、上記の通り引用発明2にはポーリングレートの記憶について記載され、ポーリングレートの調整のためにプロセッサが処理をおこなうことにも困難性は認められないから、引用発明1に引用発明2、周知技術を適用して、引用発明1のバスシステムにおいて、当該プロセッサが、当該リクエスト及び当該データを処理するためのリクエスト特性を生成するために動作可能として、当該リクエスト特性が、当該リクエストのポーリング・レートを備え、当該バス・インターフェースが、当該格納されているリクエスト特性から当該リクエストを生成し、かつ当該リクエストを繰り返し送信するために動作可能とし、当該バスインターフェースが、当該リクエスト特性に含まれる当該ポーリングレートに応じて当該リクエストを送信するレートを調整するように構成することで、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(c)相違点3について
データをどのように記憶するかは必要に応じて適宜に決定し得る設計的事項であって、上記「(b)相違点2について」において説明したように、引用発明1において、引用発明2、周知技術を適用した場合に、リクエスト特性をバッファに格納するようにして、引用発明1のバッファをリクエスト特性を格納するために動作可能とすることは当業者が適宜になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は当業者が引用発明1、引用発明2及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-28 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-27 
出願番号 特願2003-533133(P2003-533133)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅景 篤  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 安久 司郎
佐藤 匡
発明の名称 バス・システムおよびバス・インターフェース  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  

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