ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1245039 |
審判番号 | 不服2010-15338 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-09 |
確定日 | 2011-10-12 |
事件の表示 | 特願2007-222071「ゲーム提供システム及びゲーム提供管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日出願公開、特開2009- 50602〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成19年8月29日にされた出願であって,平成22年4月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。 平成23年2月23日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年4月25日に回答書が提出された。 第2.平成22年7月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成22年7月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容,補正後の本願発明 平成22年7月9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を,補正前(平成21年10月16日付け手続補正書を参照)のものから,次のとおりに補正しようとする補正を含む。 「【請求項1】 インターネットを介して接続されるゲーム提供管理装置と複数のユーザ端末と寄附管理サーバとで構成されるゲーム提供システムであって, ゲーム提供管理装置は, 前記ユーザ端末から送信される前記ゲームにより取得したポイントを受信して,前記ユーザ端末によるゲームプレイ時のユーザID毎にポイント記憶手段に記憶させる第1の記憶制御と, 前記ポイント記憶手段に記憶されているポイントに基づき取得したアイテムを,前記ユーザID毎にアイテム記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段と, 各ユーザが保有している金銭の額である保有金額を,前記ユーザID毎に保有金額記憶手段に記憶させる第3の記憶制御手段と, いずれかのユーザ端末から送信された売却要求に応じて,前記アイテム記憶手段に記憶されているアイテムを売却することを示す出品情報を生成し,他のユーザ端末に送信する送信手段と, 前記他のユーザ端末から送信された購入要求に応じて,前記アイテム記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムを削除し, かつ,この削除したアイテムを,前記購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDのアイテムとして記憶させるアイテム管理手段と, このアイテム管理手段により書き換えられた前記アイテムの売買金額を設定し,この設定した売買金額を,前記保有金額記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額に加算し,かつ,前記購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額から減算する保有金額管理手段とを備え, 前記ユーザ端末は, ゲームプログラムに基づきゲームを実行するゲーム実行手段と, このゲーム実行手段によるゲームの実行に伴って取得したポイントを送信するポイント送信手段と, 前記アイテム記憶手段に記憶されているアイテムの売却要求を送信する売却要求送信手段と, 前記ゲーム提供管理装置から送信される前記出品情報を受信する受信手段と, アイテムの購入要求を送信する送信手段と, 前記売買金額の金銭を寄附するか否かを示す寄附情報を送信する寄附情報送信手段と, を備え, 更に, 前記ゲーム提供管理装置は, 前記寄附情報送信手段により送信される寄附情報を受信する寄附情報受信手段と, この寄附情報受信手段により受信した寄附情報が,寄附を否定する情報と寄附を肯定する情報のいずれであるかを判断する判断手段とを備え, 前記保有金額管理手段は, 前記判断手段の判断結果に基づき,前記寄附を否定する情報である場合には,前記売買金額を,前記保有金額記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額に加算する加算手段と, 寄附を肯定する情報である場合には,前記加算手段による加算を行うことなく,前記売買金額を示す金銭情報を外部に送信する外部送信手段と, を備え, 前記寄附管理サーバは,ボランティア団体により管理されるものであって前記ゲーム提供管理装置とは別体に構成され, 寄附されている金額である寄附金額を記憶する寄附金額記憶手段と, 前記ゲーム提供管理装置の外部送信手段により送信された前記金銭情報を受信する金銭情報受信手段と, この金銭情報受信手段により受信された金銭情報が示す金額を前記寄附金額に加算して寄附金額記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備えることを特徴とするゲーム提供システム。」 上記補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1に同請求項5の内容を取り入れるとともに寄附管理サーバは「ボランティア団体により管理されるもの」であることを特定したものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする。 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,特許出願の際,独立して特許を受けることができるものかについて検討する。 2.刊行物及びその記載内容 刊行物1 特開2003-150820号公報 刊行物2 特開2006-43439号公報 記事3 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050421/soermt.htm 刊行物4 特開2002-123704号公報 (1)本願出願前に頒布された上記刊行物1には,以下の記載がある(下線は合議体が付与)。 (1a)「【請求項1】プレイヤにより操作される複数のクライアント装置にネットワークを介して接続され,各クライアント装置を操作するプレイヤ間でのゲームを進行させるとともに,前記ゲーム上で使用されるアイテムを出品させて当該ゲーム上の金銭で販売するオークションを実行するサーバ装置であって, 前記各クライアント装置の各プレイヤがゲーム上で所有している前記アイテムと前記金銭の額とを示すセーブデータを各プレイヤに対応付けて記憶する記憶手段と, 前記クライアント装置のプレイヤからオークションへのアイテムの出品又はオークションでの入札を受付ける受付手段と, この受付手段が受付けた内容に基づいて前記記憶手段に記憶されている該当するプレイヤのセーブデータから,オークションへ出品したアイテム,又はオークションで入札する金銭の額に相当するデータを削除するデータ削除手段と, 出品された前記アイテムのオークション結果を判断する判断部と, 前記オークション結果に基づいて,前記記憶手段に記憶されたセーブデータを更新するセーブデータ更新手段とを備えることを特徴とするサーバ装置。 ・・・ 【請求項7】プレイヤにより操作される複数のクライアント装置にネットワークを介して接続され,各クライアント装置を操作するプレイヤ間でのゲームを進行させるとともに,前記ゲーム上で使用されるアイテムを出品させて当該ゲーム上の金銭で販売するオークションを実行するサーバ装置を用いたオークション処理方法であって, 前記各クライアント装置の各プレイヤがゲーム上で所有している前記アイテムと前記金銭の額とを示すセーブデータを各プレイヤに対応付けて記憶する記憶ステップと, 前記クライアント装置のプレイヤからオークションへのアイテムの出品又はオークションでの入札を受付ける受付ステップと, この受付手段が受付けた内容に基づいて前記記憶ステップで記憶されている該当するプレイヤのセーブデータから,オークションへ出品したアイテム,又はオークションで入札する金銭の額に相当するデータを削除するデータ削除ステップと, 出品された前記アイテムのオークション結果を判断する判断ステップと, 前記オークション結果に基づいて,前記記憶手段に記憶されたセーブデータを更新するセーブデータ更新ステップとを備えることを特徴とするオークション処理方法。」 (1b)「【従来の技術】 【0004】近年においては,ネットワークを利用して複数のプレイヤが同時に参加し,対戦したり協力して遊んだりするネットワーク対応型のビデオゲーム(オンラインゲーム)が増えつつある。このオンラインゲームにおいては,各プレイヤにより操作される複数の端末と,ゲームサーバ群とをネットワークで接続させ,前記端末とゲームサーバ群間で通信を行う。ゲームサーバ群には,プレイヤが一緒に遊ぶ相手を探すために複数のビデオゲーム機が接続されるサーバが含まれている。このサーバは,プレイヤが集まってコミュニケーションをとるための仮想的なロビーを提供することから,ロビーサーバと呼ばれることがある。 【0005】ビデオゲーム機がロビーサーバに接続されると,仮想の「ロビー」を表す画面がビデオゲーム機の表示装置上に表示される。このロビー画面には,自己のプレイヤキャラクタ及びロビーサーバに接続している他のプレイヤのキャラクタが表示される。プレイヤはチャットを行うことができ,それによって,他のプレイヤと交流を図ったり,一緒にゲームを遊ぶ相手を探したりすることができる。 【0006】ロビー画面に表示されるメニューから所望のゲームが選択されると,ビデオゲーム機がゲームサーバ群内のいずれかのゲームサーバに接続され,ゲーム画面がビデオゲーム機の表示装置上に表示され,ゲームが開始される。また,ゲーム終了時には,プロファイルサーバあるいはビデオゲーム機のメモリに,ゲーム終了時にプレイヤがゲーム上でキャラクタを介して取得している剣やカード等のアイテム,得点や所持金額(ゲーム上の金額)等のセーブデータが記憶される。さらに,再度ゲームを行った際には,セーブデータとして記憶されているアイテム,得点や所持金額等を使用してゲームが進行する。そして,プレイヤは,自己が所有しているアイテムや金銭を,ゲーム中において他のプレイヤと接触して直接交換することができる。」 (1c)「【0025】(システム構成) 【0026】図1は,本発明に係るオンラインゲームを提供するシステムの構成を示すブロック図である。ネットワーク200上には,サーバ側のオンラインゲーム提供装置1とクライアント側の複数のプレイヤ(プレイヤA?D・・・)が利用するための情報端末101?104・・・とが接続されている。情報端末101?104としては,回線に接続されたパーソナルコンピュータ(以下,PC101?PC104という)を,用いるが,これに限るものではなく,ゲーム機本体,テレビ受像機,操作コントローラからなるクライアントシステムや,無線方式の携帯端末を用いて構成してもよい。」 (1d)「【0027】(オンラインゲーム提供装置) 【0028】オンラインゲーム提供装置1は,複数のプレイヤA?Dが所定のゲームを通じて対戦するための競技場所を提供する装置である。オンラインゲーム提供装置1は,ロビーサーバ2,認証サーバ3,コンテンツサーバ4,メッセージサーバ5,メールサーバ6,及びプロファイルサーバ7とを備えている。 【0029】認証サーバ3は,複数のプレイヤA?Dのアカウント(ユーザID)及びパスワードの管理や,PC101?PC104のアドレス管理を行う。・・・プロファイルサーバ7は,アカウントに対応するプレイヤA?Dのプロファイルを管理する。各プレイヤA?Dは,PC101?PC104を通じて自己のプロファイルをオンラインゲーム提供装置1に登録する。 ・・・ (ロビーサーバ) 【0031】図2は,ロビーサーバ2の詳細を示すブロック図である。ロビーサーバ2は,複数のチャットサーバ(IRC;InternetRelayChat)11?14と複数のゾーンサーバ21?24とを備えている。このロビーサーバ2は,ゲームロビー(LN;LobbyNavigator)30からなる管理マスタプログラムを有している。ゾーンサーバ21?24は,ルームマスタ(RM;RoomMaster)31,テーブルマスタ(TM;TableMaster)32,オークションマスタ(AM;AuctionMaster)33からなる管理プログラムを有している。なお,チャットサーバ11?14は,各サーバ間でメッセージを受け渡すためのルーティングを行う。」 (1e)「【0040】なお,フローチャート及びその説明で用いる各種符号等は,下記事項を意味している。 CP:クライアントプレイヤユーザ端末(以下,単にユーザ端末という):前記情報端末101?104(PC101?PC104)LN:ロビー・ナビゲータ:前記LobbyNavigatorであって,ゲーム内に唯一存在し,ゾーン及びルームを管理するロビー管理プログラム RM:ルーム・マスタ:前記RoomMasterであって,ルーム内プレイヤ・テーブルを管理するルーム管理プログラム TM:テーブル・マスタ:前記TableMasterであって,テーブル内プレイヤ・ゲーム進行を管理するテーブル・ゲーム管理プログラム AM:オークション・マスタ;前記AuctionMasterであって,当該ゲームの実行に伴って変化した各ユーザ端末のプレイヤがゲーム上で所有しているアイテムをゲーム上の金銭を用いて売買するオークションを実行するプログラムGM:ゲームマスタ:CPに対して,LN,RM,TMのサーバ上プログラムを総称して呼ぶ POLPRO:ファイルアクセスサーバ:前記プロファイルサーバ7内に存在し,各クライアント(GM,CP共含む)用にユーザ領域を確保し,クライアント間ファイルアクセスを管理する。ファイルアクセスの場合,アクセス制限を実現する。ユーザ領域に,プレイヤ毎にSD(プレイヤ・セーブデータ)を格納する。・・・ SD:プレイヤ・セーブデータ:ゲーム内プレイヤ情報であり,プレイヤがゲーム上でキャラクタを介して取得した剣などの武器,魔法,薬,カード等のアイテムや,得点や金銭等を格納する。CPのPOLPROユーザ領域,及びPOLPROのユーザ領域に保存される。・・・ POLBES:オークションに出品したアイテムを格納するデータベースDBを管理するサーバであって,ロビーサーバ2内に存在する。【0041】また,フローチャートにおいて,横方向の単線矢印はIRCサーバとのデータ送受信を示し,二重線矢印はPOLPROとのデータ送受信を示す。」 (1f)「【0047】しかる後に,ゲーム開始通知があるまで待機し(ステップC18),ゲーム開始通知を受信したならば,ゲーム処理を行ってゲームを開始させるとともに進行させる(ステップC19)。そして,プレイヤがユーザ端末CPにてゲームをやめると操作を行うと,IRCチャンネルを抜けてテーブルから離脱する(ステップC20)。」 (1g)「【0053】次に,PT(プレイヤ・テーブル)ステータスを「プレイ中」に更新して,ルーム・マスタRMに送信し(ステップT5),ステップC19で前述したのように,ゲーム処理を行ってゲームを開始させるとともに進行させる(ステップT6)。ここで,例えば,セーブデータSDを利用するゲームにあっては,既にユーザ端末CPに複写されているセーブデータSDを利用するようにしてもよく,ゲームの開始時においてPOLPROからセーブデータSDを複写して利用してもよい。そして,プレイヤがゲームをやめると,ゲーム結果を当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDに反映させるべくPOLPROに送信し(ステップT7),POLPROはこのゲーム結果を当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDに反映させる。しかる後に,テーブル状態を「空き」に更新する指令を送信する(ステップT8)。」 (1h)「【0059】すなわち,図10に示すように,ユーザ端末CPが所望のアイテムの出品指示を送信すると(ステップC101),オークション・マスタAMはPOLPROの当該ユーザ端末CPに対応するプレイヤのプレイヤ・セーブデータSDを読み込む(ステップA101)。そして,出品を指示されたアイテムを当該プレイヤが持っているか否か,つまり出品を指示されたアイテムが当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDとして格納されているか否かを判断する(ステップA102)。これによって,ユーザ端末CPにおいてセーブデータが改変されているか否かを適切に判断することができる。 ・・・ 【0061】また,出品を指示されたアイテムが当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDに入っている場合には(ステップA102;YES),かかるアイテムのオークションへの出品は可能である。よって,POLPROの当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDから出品を指定されたアイテムを削除する(ステップA104)。なお,上記ステップA104までの処理は,POLPROのセーブデータが複写されて利用されていない時間,例えば,セーブデータを利用するゲーム終了後から再度当該ゲームが開始されるまでの間,つまりゲーム開始前に行われる。次に,出品を指示されたアイテムをPOLBESによりデータベースDBに格納し(ステップA105),オークションへの出品「成功」をユーザ端末CPに通知する(ステップA106)。 【0062】一方,図11に示すように,オークションに入札しようとするプレイヤのユーザ端末CPは,POLPROに格納されている自己のプレイヤ・セーブデータSDを取得する(ステップC102)。プレイヤは,この取得されて画面上に表示されるプレイヤ・セーブデータSDにより,自己が所有しているアイテムや金銭の額を確認する。次に,出品物検索が指示されると(ステップC103),オークション・マスタAMはデータベースDBの出品物リストを検索して(ステップA107),その検索結果をファイルにし(ステップA108),POLPROはこのファイルからなる出品物リストを格納する(ステップPP101)。また,オークション・マスタAMは,書き込みOKをユーザ端末CPに送信し,これを受信したユーザ端末CPはPOLPROに格納されている出品物リストを読み込む(ステップC104)。これにより,ユーザ端末CPの画面上に出品物リストが表示されることとなる。 【0063】また,図12に示すように,ユーザ端末CPの画面上で出品物リストからいずれか購入したいアイテムが選択され,かつ,このアイテムの購入に際して支払ってもよい入札金額が決定されると(ステップC105),オークション・マスタAMは,ステップA116で後述するように,POLBESに予め格納した現時点での最高値入札者の入札金額(旧入札金額)を読み込む(ステップA110)。そして,この読み込んだ旧入札金額と今回の新入札金額とを比較して,新入札金額が最高値であるか否かを判断する(ステップA111)。 【0064】この判断の結果,新入札額が最高値でなかった場合には(ステップA111;NO),落札の「失敗」をユーザ端末CPに通知する(ステップA112)。また,最高値であった場合には,当該ユーザ端末CPのプレイヤのプレイヤ・セーブデータSDをPOLPROから読み込んで(ステップA113),前記新入札金額に相当する金銭があるか否かを判断する(ステップA114)。この入札金額に相当する金銭がない場合には(ステップA114;NO),落札は不可能であるので前述と同様に落札の「失敗」をユーザ端末CPに通知する(ステップA112)。 【0065】また,前記入札金額に相当する金銭がある場合には(ステップA114;YES),POLPROの当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDから前記入札金額に相当する金額を減算する(ステップA115)。」 (1i)「【0068】また,入札があった場合には(ステップA121;YES),当該入札のあったアイテムの出品者にオークションが成功であったことを通知するためのMSG(メッセージ)と,オークションでの落札金額に相当する金額を出品者に納金するための納金伝票情報とをPOLPROに送る(ステップA122)。これにより,MSG(メッセージ)は,ユーザ端末CPに取り込まれる。また,POLPROは当該プレイヤのプレイヤ・セーブデータSDに納金伝票情報を対応付けて保存する。そして,所定の時点において,POLPROのセーブデータSDに納金伝票情報が示す金銭の額を加算して更新する。ここで,所定の時点としては,POLPROから複写したセーブデータの内容を変更させるゲームが実行されていない時点や,セーブデータの要求があった時点であってもよい。 【0069】さらに,当該アイテムの最高額入札者(落札者)に落札が成功であったことを通知するためのMSG(メッセージ)と,この落札者に落札したアイテムを納品するための納品伝票情報とをPOLPROに送る(ステップPB123)。これにより,POLPROは当該落札者のプレイヤ・セーブデータSDに納品伝票情報が示すアイテムを加えて更新し,MSG(メッセージ)は前記落札者のユーザ端末CPに取り込まれることとなる。」 (1j)【図8】には,ステップT7において,テーブルマスタTMがゲーム結果をSDに反映させるべく,POLPROにデータを送っている様子が示されている。 (1k)【図11】には,出品物リストの下にPOLPROからCPにむけて二重線が描かれており,(1e)の記載を参酌すると,ファイルアクセスサーバPOLPROからユーザ端末CPに出品物リストのデータが送信されることが示されている。同様に,【図12】には,入札情報(アイテム選択,入札金額決定)が,ユーザ端末CP2からオークション・マスタAMに送信されることが示されている。 ゲーム上の金銭をプレイヤがどのように取得するかについて,刊行物1には,従来技術において,「ゲーム上でキャラクタを介して取得」することが記載されている。 そして,刊行物1は従来技術のオンラインゲームにおいてアイテムの取引を容易にするよう改良したものであり,刊行物1において,アイテムやゲーム上の金銭は,従来技術同様「プレイヤがゲーム上でキャラクタを介して取得」したものと認められるから,上述の記載事項(1a)?(1k)の記載から見て,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物1記載の発明」という。) 「ネットワーク200上に,サーバ側のオンラインゲーム提供装置1とクライアント側の複数のプレイヤ(プレイヤA?D・・・)が利用するためのユーザ端末CP(情報端末101?104・・・)とが接続されたオンラインゲームを提供するシステムであって, オンラインゲーム提供装置1はユーザIDを用いてプレイヤ認証をするものであり,各ユーザ端末CPの各プレイヤがゲーム上でキャラクタを介して取得し所有しているゲーム上で使用されるアイテムとゲーム上の金銭の額とを示すプレイヤ・セーブデータSDを各プレイヤに対応付けて記憶する記憶手段を備え,プレイヤ・セーブデータSDは,ゲーム終了時にオンラインゲーム提供装置のテーブルマスタTMから送信されるゲーム結果を反映させて更新されるものであり, あるプレイヤ(出品者)のユーザ端末CPが所望のアイテムの出品指示を送信すると,オンラインゲーム提供装置1が出品を受け付けてオンラインゲーム提供装置1のファイルアクセスサーバPOLPROの出品者のプレイヤ・セーブデータSDから出品を指定されたアイテムを削除するとともに出品を指示されたアイテムをオンラインゲーム提供装置1のデータベースDBに格納し,入札しようとするプレイヤ(入札者)の出品物検索指示に基づいて該データベースDB上の出品物リストを検索して検索結果の出品物リストファイルをファイルアクセスサーバPOLPROに格納し,ユーザ端末CP上に出品リストが表示されるよう,該ファイルを入札者のユーザ端末CPに送信するものであり, 入札者が,出品リストから選択した購入したいアイテムと入札金額をユーザ端末CPから送信して入札し,その時点で最高入札金額であった際には,オンラインゲーム提供装置1はPOLPROの入札者のプレイヤ・セーブデータSDから入札金額に相当する金額を減算するものであり, 最終的に最高額入札者としてアイテムを落札した際には,オンラインゲーム提供装置1は,出品され,出品者のプレイヤ・セーブデータSDから削除されてデータベースDBに格納されていたアイテムを,最高額入札者のプレイヤ・セーブデータSDに加えて更新するものであり, また,落札金額に相当する金額を出品者に納金するための納金伝票情報をPOLPROに送り,POLPROのセーブデータSDに納金伝票情報が示す金銭の額を出品者のセーブデータSDに加算して更新するものであり, ユーザ端末CPは, ゲーム処理を行ってゲームを開始させるとともに進行させるものであり, 所望のアイテムの出品指示を送信するものであり, オンラインゲーム提供装置1から送信される出品リストを受信するものであり, 出品リストから選択した購入したいアイテムと入札金額を送信して入札するものである,オンラインゲームを提供するシステム」 (2)本願出願前に頒布された上記刊行物2には,以下の記載がある。 (2a)「【0095】 次に,ゲーム端末50の機能構成について説明する。図7は,ゲーム端末の機能構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように,ゲーム端末50は,操作部500と,処理部510と,表示部520と,音出力部530と,通信部540と,記憶部550とを備えて構成されている。 ・・・ 【0097】 処理部510は,記憶部550に格納されるプログラムやデータ等に基づいて,ゲーム端末50全体の制御,ゲーム端末50内の各機能部への指示,画像処理,音処理等の各種処理を行う。この処理部510の機能は,各種プロセッサ(CPU,DSP等),ASIC(ゲートアレイ等)等のハードウェアや,所与のプログラムにより実現され,図1ではシステム基板1280がこれに該当する。 【0098】 また,処理部510は,主な機能部として,ゲーム演算部512と,画像生成部514と,音生成部516とを含み,1フレーム時間(1/60秒)で1枚の画像を生成して表示部520に表示出力させるとともに,適宜効果音やBGMを音出力部530に音出力させる。 【0099】 ゲーム演算部512は,操作部500から入力される操作信号,記憶部550から読み出したゲームプログラム560やゲームデータ600,或いは通信部540及び通信回線Nを介して接続されるゲームサーバ10から送信される情報等に基づいて,格闘対戦ゲームを実現するための種々のゲーム処理を実行する。ゲーム処理としては,例えば,仮想空間の設定処理,仮想空間へのオブジェクトの配置処理,オブジェクトの交差判定処理(ヒットチェック処理),キャラクタのアクション制御,ゲーム結果の算出処理,或いは視点の位置や視線方向の決定処理等を実行する。」 (2b)「【0112】 ゲームデータ600は,格闘対戦ゲームの進行に係るデータであり,ゲームサーバ10からダウンロードされてゲーム実行中に適宜更新されるデータとして,自プレーヤデータ610と,自ゴーストキャラデータ620と,対戦用ゴーストキャラ情報630とを含む。 【0113】 自プレーヤデータ610は,現時点で当該ゲーム端末50を操作するプレーヤのプレーヤデータを記憶する。この自プレーヤデータ610は,上記したように,ゲームサーバ10からダウンロードされるデータであり,プレーヤがゲームを終了した時点でゲームサーバ10に送信され,ゲームサーバ10においてプレーヤDB140(図4参照)として管理される。より詳細には,本実施形態では,プレーヤによるゲームプレイの結果更新され たデータ(後述するプレーヤデータ差分742)のみがゲームサーバ10にアップロードされるようになっており,これにより,データ転送によるネットワークへの負担を軽減させることができる。」 (3)電気通信回線を通じて公衆に公開された記事であって,本願の出願前である2005年4月21日の日付がある記事3には,以下の記載がある。 (3a)「米Sony Online Entertainmentは,現地時間の4月19日,「Ever QuestII」の公式サイト上において,ユーザー同士が安全にリアルマネートレード(RMT)を行なうためのシステム「Station Exchange」の構想を明らかにした。RMTは,SOEでもユーザーに対する禁止事項のひとつに数えられており,180度の方向転換となる。同社では,来週にもユーザーを対象に意見を取りまとめ,6月末にも運用を開始するとしている。 「Station Exchange」は,従来,禁止事項と知りながら裏で取引されていた現金によるバーチャルコンテンツ(アイテム,通貨,キャラクタ)の取引を,SOEオリジナルのシステムを介して,公式サポートするというシステム。現在アジア圏で一部導入されているアイテム課金とは本質的に異なるもので,ユーザー間の現金を介した取引を公式に認めるという“公式RMTシステム”とも言うべき内容となっている。これは言うまでなくこれまでチート行為と並んで禁止事項の筆頭事項だったRMTの解禁が前提となっており,「Ever QuestII」ユーザーは,6月末以降,Station Exchangeを介して自由に現金によるコンテンツの売買が可能になる。 今回の発表は,SOEのRresident John Smedley自身が,ユーザーに対して直接語りかけるという形式をとって行なわれた。その中では導入の経緯が披露されており,導入を決断した一番大きな理由として,カスタマーサービス部門が取り扱うサポート内容のうち,RMTの占める割合が実に40%にも及んでおり,この膨大なリソースを他のことに振り分けることが得策だと判断したためだとしている。 構想としては,現行のゲームサーバーを一律Station Exchangeに対応してしまうのではなく,対応サーバーと非対応サーバーに分類し,Station Exchangeシステムを導入するか否かの最終判断はユーザーにゆだねるとしてる。つまり,一応名目上は,全面採用ではなく,一部採用という形を採る。ただし,Station Exchangeという“公定価格”の設定と,圧倒的な“宣伝力”により,「Ever QuestII」のRMTは半ば公認されたことになるのは間違いない。今以上に裏取引が活発化する可能性も否定できない。 気になるのは日本運営を担当するスクウェア・エニックスの対応。広報部に問い合わせてみたところ,「いまのところ未定です。発表する時期が来たらお知らせします」との回答だった。本来あるべき衝撃の共有などはなかったところからみれば,Station Exchangeは規定事項として準備が進められている可能性が高い。 トップの和田代表取締役社長の過去の発言を振り返ってみると,RMTのビジネス化については肯定的な見解を示してきていることがわかる。ただし,前提事項として“RMTを想定したゲームデザインを採用していること”を挙げており,「Ever QuestII」が果たしてRMTを想定したゲームデザインか否かが導入の争点になりそうだ。 ちなみに日本運営に関しては,くくりとしては「プレイオンライン」コンテンツのひとつで,ゲームサーバーも日本に存在するが,課金決済やアカウント管理はSOEのStation.comを採用している。プレイオンラインの運営ポリシーは,タイトル別に異なっており,「ファイナルファンタジーXI」が禁止だからといって,「エバークエストII」も禁止になるということにはならない。日本でもStation Exchangeが導入される可能性は十分にあると考えていいだろう。 今回の発表では,RMTの安全性の確保や導入によるリソースの解放といったメリットが強調されており,Station Exchange導入後に予想されるゲーム世界の価値観の変貌や,現金獲得のために特定の狩り場が占拠される可能性といった負の面にはふれられていない。今回の発表は,EQ2に留まらず,MMO史上最大級のターニングポイントであるだけに,現時点で導入時期を6月末と特定せずに,ユーザーと十分な対話を行なうべきだろう。全世界のMMOユーザーにとって大いに注目される発表内容だけに,今後も引き続き注目していきたいところだ。」 (4)本願出願前に頒布された上記刊行物4には,以下の記載がある。 (4a)「【請求項1】出品者端末と入札者端末とサーバ機によるネットワークを介して行われるチャリティオークションのシステムであって, サーバ機が,「寄付金の振込情報」を含む「団体情報」を予め複数記憶し,かつ,出品者に対して「寄付先の特定を促す手段」と「出品物情報の入力を促す手段」を有することを特徴とするもの。」 (4b)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は,ネットワーク(特に,インターネット)を介したチャリティオークションにおける出品形式に関するものである。 【0002】 【従来の技術】多数の入札を期待できる点からネットワークを介したチャリティオークションが数多く行われている。例えば,インターネットのホームページを用いた様々なチャリティオークションである。 【0003】これらチャリティーを目的とするオークションは,予め寄付を行う団体が定められており,この団体への寄付を募るものである。そして,その団体への寄付に賛同した人達によって様々な商品が出品・落札され,その落札された金額から一定の額が寄付されるものである。」 (4c)「【0008】この発明において「寄付金の振込情報」とは,寄付金を振り込むために求められる情報をいい,その主な情報は寄付金の振込み先である銀行又は郵便局といった金融機関の名前とその口座番号である。更に,口座を有さない団体については現金書留で送って欲しいといった条件(その郵送先),また,寄付金の振込み期限といった条件なども含むものである。・・・ ・・・ 【0011】「出品物情報」とは,オークションへの出品物に関する情報をいい,出品物の種類(カバンや靴,洋服,書籍等),ブランド名や定価,最低入札価格,出品物の状態(傷の有無など)を含む。また,この発明における出品物とは必ず物品である必要はなく,形のないサービスなども含まれる。例えば,有名人と食事ができる,またプロゴルファーのゴルフレッスンなどである。」 (4d)「【0027】 【発明の実施形態】(全体構成)この発明におけるオークションシステムの構成を図1に示す。図にあるように,この発明はオークションを行うサーバ機と,オークションを介して寄付を行う出品者が用いる出品者端末と,オークションに入札する入札者端末によって構成される。そして,これらの装置はネットワークを介して双方向に情報通信可能に接続されている。 ・・・ 【0030】そして,落札後は出品者と落札者(入札者)との間で出品物とお金の取引が行われ,出品者に払われるお金の一部が団体に寄付される。・・・ 【0031】そして,図に示す実施形態では,上記した出品物の取引とは別に,オークションの主催者が落札者から寄付金を預かり,特定された団体へ寄付を行う形態である。その際,主催者はオークションに関する手数料を徴収する。」 (4e)「【0044】(出品者端末及び入札者端末の構成)出品者端末及び入札者端末の構成としては,入力装置,制御装置,通信装置,表示装置をもったもので実施が可能であり,各種のコンピュータを用いて実施が可能である。」 (4f)「【0070】(寄付選択手段) 更に,この発明におけるサーバ機では,制御手段21が記憶手段24から寄付をするのか否かを定めるプログラム(寄付選択手段)を読み出し,出品者端末の表示画面に寄付をするのか否か選択を促す形態で実施することができる。ここで,選択を促す形態としては,「寄付をしますか」との問いに対して,「はい」,「いいえ」のいずれかの表示をクリックさせる形態などである。 【0071】そして,出品者が寄付をしないとの選択をした場合は,寄付を行わない通常のオークションとしてサーバ機はその後実行する。一方,寄付をすると選択した場合は,これまで説明したチャリティオークションとして実行する。この発明の構成は,利用者に対して寄付をするのか否かの入力を促す,寄付選択手段を有するサーバ機である。」 (4g)「【0085】寄付金の送付形態 各種の団体への寄付金の送付は,オークションにおいて一つの取引が成立するたびに,その都度送ってもよい。・・・」 上述の記載事項(4a)?(4g)の記載から見て,刊行物4には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物4記載の発明」という。) 「オークションを行うサーバ機と,オークションを介して寄付を行う出品者が用いる出品者端末と,オークションに入札する入札者端末とがネットワークを介して双方向に情報通信可能に接続されたオークションシステムであって, 出品者は,サーバ機により出品者端末の表示画面に表示された「寄付をしますか」の問いに対して「はい」「いいえ」のいずれかの表示をクリックして選択するものであり, サーバ機は,出品者が寄付をしないとの選択をした場合は,寄付を行わない通常のオークションとしてサーバ機はその後実行し,寄付をすると選択した場合は,チャリティオークションとして実行するものであり, 寄付をすると選択した場合,オークションの主催者が落札者から寄付金を預かり,特定された団体へ寄付を行う,オークションシステム。」 3.対比 補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「ユーザ端末CP」,「オンラインゲーム提供装置1」,「オンラインゲームを提供するシステム」,「ゲーム上の金銭」,「(所望のアイテムの)出品指示」,「出品リスト」,「出品リストから選択した購入したいアイテムと入札金額の送信による入札」は,補正発明の「ユーザ端末」,「ゲーム提供管理装置」,「ゲームを提供するシステム」,「ポイント」,「売却要求」,「出品情報」,「購入要求」に相当する。 刊行物1記載の発明の「ネットワーク」と補正発明の「インターネット」とは,通信回線網としての「ネットワーク」の点で共通する。 刊行物1記載の発明の「記憶手段」は,ポイント(ゲーム上の金銭)の額を示すプレイヤ・セーブデータSDを各プレイヤに対応付けて記憶するものであるから,刊行物1記載の発明の「記憶手段」と補正発明の「ポイント記憶手段」とは,ゲームにより取得したポイント(ゲーム上の金銭)をユーザ毎に記憶する「ポイント記憶手段」の点で共通する。 刊行物1記載の発明が,「ポイント記憶手段」に記憶させる制御を行う手段を有するのは自明であり,刊行物1記載の発明と補正発明とは,ポイントをポイント記憶手段に記憶させる「第1の記憶制御」(手段)を有する点で共通する。 刊行物1記載の「記憶手段」は,アイテムを示すプレイヤ・セーブデータSDを各プレイヤに対応付けて記憶するものでもある。刊行物1記載の発明は,また,オークションによりポイント(金銭)とアイテムとを交換するものであり,ポイント(金銭)により取得したアイテムもプレイヤ・セーブデータSDに加えて記憶させるものである。よって,刊行物1記載の「記憶手段」は,ポイント記憶手段に記憶させているポイントに基づき取得したアイテムを記憶するものである。 したがって,刊行物1記載の発明の「記憶手段」と補正発明の「アイテム記憶手段」とは,ポイント記憶手段に記憶されているポイントに基づき取得したアイテムをユーザ毎に記憶する「アイテム記憶手段」の点で共通する。 刊行物1記載の発明は,「アイテム記憶手段」にアイテムを記憶させる制御を行うから,そのための手段を有するのは自明であり,刊行物1記載の発明と補正発明とは,アイテムをアイテム記憶手段に記憶させる「第2の記憶制御手段」を有する点で共通する。 刊行物1記載の発明は,出品者のユーザ端末から送信された売却要求に応じて,アイテム記憶手段に記憶されているアイテムを売却することを示す出品情報を生成し,入札者の(他の)ユーザ端末に送信するから,これら制御をして情報を送信する送信手段を有することは自明であり,刊行物1記載の発明は,補正発明の「送信手段」を備えたものである。 刊行物1記載の発明は,売却要求を送信したユーザ端末のユーザに対応づけられたアイテム記憶手段が取得しているアイテムをアイテム記憶手段から削除して,データベースDBに一時保管し,入札者の(他の)ユーザ端末から送信された購入要求に応じて,出品されたアイテムを,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザのアイテムとして記憶させる制御を行うものであり,当然,このような制御のための手段としてのアイテム管理手段を備えるものである。 よって,刊行物1記載の発明と補正発明とは,売却要求を送信したユーザ端末のユーザに対応づけられたアイテム記憶手段が取得しているアイテムをアイテム記憶手段から削除し,この削除したアイテムを,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザのアイテムとして記憶させる「アイテム管理手段」を備える点で共通する。 刊行物1記載の発明は,オークションで落札されたアイテムの最高入札金額に相当するポイントを設定し,設定したポイントを,売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザに対応づけられたポイント記憶手段に加算し,かつ,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザに対応づけられたポイント記憶手段から減算する制御を行うものであり,その制御のための手段を有することは自明である。 よって,刊行物1記載の発明と補正発明とは,アイテム管理手段により書き換えられたアイテムの売却金額を設定し,設定した売却金額を売却要求を送信した端末に係るユーザに対応づけて記憶されたデータに加算し,かつ,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザに対応づけられたデータから減算する「保有金額管理手段」を備える点で共通する。 刊行物1記載の発明のユーザ端末CPは,アイテムの売却要求及び購入要求を送信するものであり,また,出品情報を受信するものであるから,刊行物1記載の発明が,「売却要求送信手段」,「出品情報を受信する受信手段」,「アイテムの購入要求を送信する送信手段」を有することは自明である。 したがって,補正発明と刊行物1記載の発明との一致点,相違点は以下のように認定できる。 一致点 「ネットワークを介して接続されるゲーム提供管理装置と複数のユーザ端末とで構成されるゲーム提供システムであって, ゲーム提供管理装置は, ゲームにより取得したポイントを受信して,ユーザ毎にポイント記憶手段に記憶させる第1の記憶制御と, ポイント記憶手段に記憶されているポイントに基づき取得したアイテムをユーザ毎にアイテム記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段と, いずれかのユーザ端末から送信された売却要求に応じて,アイテム記憶手段に記憶されているアイテムを売却することを示す出品情報を生成し,他のユーザ端末に送信する送信手段と, 売却要求を送信したユーザ端末のユーザに対応づけられたアイテム記憶手段が取得しているアイテムをアイテム記憶手段から削除し,この削除したアイテムを,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザのアイテムとして記憶させるアイテム管理手段と, このアイテム管理手段により書き換えられたアイテムの売却金額を設定し,設定した売却金額を売却要求を送信した端末に係るユーザに対応づけて記憶されたデータに加算し,かつ,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザに対応づけられたデータから減算する保有金額管理手段とを備え, ユーザ端末は, アイテム記憶手段に記憶されているアイテムの売却要求を送信する売却要求送信手段と, ゲーム提供管理装置から送信される前記出品情報を受信する受信手段と, アイテムの購入要求を送信する送信手段と, を備えるゲーム提供システム。」 相違点1 補正発明は,ネットワークが「インターネット」であるのに対し,刊行物1記載の発明は,ネットワークをインターネットに特定していない点。 相違点2 補正発明は,ポイント,アイテムを,「ユーザ端末によるゲームプレイ時のユーザID」毎に記憶手段に記憶させるのに対し,刊行物1記載の発明は,ユーザIDを用いてプレイヤ認証をするものであり,また,ポイントやアイテムをユーザ毎に記憶させるものであるが,IDとこれらデータとの関係について開示されておらず,端末によるゲームプレイ時のユーザIDと関連づけて「ユーザIDごとに」記憶させるか否かが不明な点。 相違点3 補正発明は,ユーザ端末が,ゲームプログラムに基づきゲームを実行するゲーム実行手段と,ゲーム実行手段によるゲームの実行に伴って取得したポイントを送信するポイント送信手段を備え,ゲーム提供管理装置は,ユーザ端末から送信されるゲームにより取得したポイントを受信して,ポイント記憶手段に記憶するものであるのに対し,刊行物1記載の発明は,ポイント等のゲーム結果はゲーム提供管理装置内のテーブルマスタTMから同じくゲーム提供管理装置内のファイルアクセスサーバPOLPROに送信されてポイント記憶手段を更新するものであってユーザ端末から送信されるものとなっていないため,ユーザ端末はゲーム実行手段によるゲームの実行に伴って取得したポイントを送信するポイント送信手段を備えるものではなく,また,ゲームプログラムに基づきゲームを実行するゲーム実行手段を有するか否かも不明な点。 相違点4 補正発明は,アイテム管理手段が,「他のユーザ端末から送信された購入要求に応じて」,アイテム記憶手段において売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムを削除し,かつ,この削除したアイテムを,前記購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザのアイテムとして記憶させるのに対し, 刊行物1記載の発明は,売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムを削除し,かつ,この削除したアイテムを,購入要求に応じて,購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザのアイテムとして記憶させるものであるものの,アイテムがオークション中に売却要求を送信したユーザのアイテム記憶手段からなくなるのを防ぐために,売却要求の時点で売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムをユーザのアイテム記憶手段から削除して一時的にデータベースDBに保管するものであって,他のユーザ端末から送信された購入要求に応じてアイテム記憶手段において売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムを削除するものではない点。 相違点5 補正発明は,現実の金銭を用いてアイテムの取引をするものであって,各ユーザが保有している(現実の)金銭の額である保有金額を,ユーザID毎に保有金額記憶手段に記憶させる第3の記憶制御手段を備え,アイテムの売買金額を保有金額記憶手段に記憶された保有金額において加減算するのに対し,刊行物1記載の発明は,ポイント(ゲーム上の金銭)を用いて取引をするものであって,(現実の)金銭を用いて取引するものではないため,補正発明のような保有金額記憶手段及び第3の記憶制御手段を有しておらず,売買金額はポイント(ゲーム上の金銭)記憶手段のデータに加減算される点。 相違点6 補正発明は,寄附管理サーバをさらに備え, ユーザ端末は,売買金額の金銭を寄附するか否かを示す寄附情報を送信する寄附情報送信手段を備え, ゲーム提供管理装置は, 寄附情報送信手段により送信される寄附情報を受信する寄附情報受信手段と, この寄附情報受信手段により受信した寄附情報が,寄附を否定する情報と寄附を肯定する情報のいずれであるかを判断する判断手段とを備え, 保有金額管理手段は, 判断手段の判断結果に基づき,前記寄附を否定する情報である場合には,売買金額を,前記保有金額記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額に加算する加算手段と, 寄附を肯定する情報である場合には,前記加算手段による加算を行うことなく,前記売買金額を示す金銭情報を外部に送信する外部送信手段と, を備え, 寄附管理サーバは,ボランティア団体により管理されるものであって前記ゲーム提供管理装置とは別体に構成され, 寄附されている金額である寄附金額を記憶する寄附金額記憶手段と, 前記ゲーム提供管理装置の外部送信手段により送信された前記金銭情報を受信する金銭情報受信手段と, この金銭情報受信手段により受信された金銭情報が示す金額を前記寄附金額に加算して寄附金額記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備えるものであるのに対し, 刊行物1記載の発明のシステムは,現実の金銭を扱うことや金銭を寄附することを行うものではなく,当然,補正発明のような寄附管理サーバを備えず,ユーザ端末,ゲーム提供管理装置も寄附管理に関する上記のような構成を備えない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 相違点1について データ通信のためのネットワークとして「インターネット」は例示するまでもなく周知のものであり,刊行物1記載の発明には,ネットワークをインターネットに特定することは当業者が容易になし得ることである。 相違点2について 刊行物1記載の発明は,ユーザIDを用いてプレイヤ認証をするものであるから,技術常識からみてユーザ端末によるゲームプレイ時にもユーザIDを用いて入退場やゲーム進行等の管理を行っているものと認められる。ユーザIDによって各種情報を管理することは一般に慣用的に行われていることであり,ポイントやアイテムをユーザ毎に記憶するにあたり,これらデータを端末によるゲームプレイ時のユーザIDと関連づけて記憶させる当業者が容易に想到し得ることである。 相違点3について 刊行物2には,通信網を介して接続されるゲーム提供管理装置(ゲームサーバ10)とユーザ装置(ゲーム端末50)とで構成されるゲーム提供システムにおいて,ユーザ端末(ゲーム端末50)がゲームプログラムに基づきゲームを実行する実行手段(ゲーム演算部512)を備え,ゲーム終了時にユーザ端末(ゲーム端末50)からゲーム提供装置(ゲームサーバ10)にゲーム結果が送信されるように構成する技術が記載されている。 刊行物1記載の発明において,刊行物2記載の上記技術を参酌して,ユーザ端末がゲームプログラムに基づきゲームを実行する実行手段を備えるものとし,ゲームデータもゲーム時にはユーザ端末側が管理してゲーム終了時にユーザ端末からゲーム提供装置にゲーム結果が送信されるものとすることは,当業者が容易になし得ることである。 刊行物1記載の発明では,ポイント(ゲーム上の金銭)もゲーム結果に含まれるものであるから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の上記技術を適用した際には,ユーザ端末がゲーム実行手段によるゲームの実行に伴って取得したポイントを送信するポイント送信手段をも含むようになることは自明である。 相違点4について 刊行物1記載の発明は,アイテムがオークション中に売却要求を送信したユーザのアイテム記憶手段からなくなるのを防ぐために,「売却要求の時点」で売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムをユーザのアイテム記憶手段から削除して一時的にデータベースDBに保管するものであるため,「他のユーザ端末から送信された購入要求に応じて」,アイテム記憶手段において売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムをユーザのアイテム記憶手段から削除するものとはなっていない。 しかし,出品者が売買成立までオークション対象の出品物を保管し,売買成立後に金銭と引き替えに出品物を譲渡することは,オークションの際に一般に行われていることであるから,刊行物1記載の発明において,アイテムを売却要求の時点ではなく購入要求があるまで出品者が保管するものとし,アイテム管理手段が,「他のユーザ端末から送信された購入要求に応じて」,アイテム記憶手段において売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムを削除するものとすることは当業者が容易になし得ることである。 相違点5について 記事3によれば,バーチャルコンテンツ(アイテム,通貨,キャラクタ)を現金で取引することは,本願の出願前においてゲーム関係者に周知であったことであり,アイテムの現金取引をサポートするシステムを構築することについても,本願の出願前においてオンラインゲームの当業者が認識していたことと認められる。 また,インターネット上で(現実の)金銭の決裁を行う取引システムは,刊行物4にも記載のように,本願の出願時において既に開発され,ごく一般に用いられていたものである。 してみると,刊行物1記載の発明において,アイテムを,ポイント(ゲーム上の金銭)のみではなく,現実の金銭で取引できるものとすることは当業者が容易に想到し得ることである。 刊行物1記載の発明は,アイテムをポイント(ゲーム上の金銭)で取引するシステムが構築されているものであるから,刊行物1記載の発明において(現実の)金銭でも取引を行うものとする際に,(現実の)金銭についても,ポイント(ゲーム上の金銭)と同様に,ユーザが保有する(現実の)金銭の保有金額を,ユーザID毎に保有金額記憶手段に記憶させるものとし,また,そのための第3の記憶制御手段を備えるものとすることは当業者が容易に想い到ることである。 また,刊行物1記載の発明において,アイテムを現実の金銭で取引できるものとする際に,オークションの売買金額を現実の金銭の保有金額を記憶する保有金額記憶手段の記憶された各ユーザの保有金額から加減算するよう構成することは自明である。 相違点6について 刊行物4記載の発明の「出品者端末」は,補正発明の「ユーザ端末」に相当する。 刊行物4記載の発明の「サーバ機」と補正発明の「ゲーム提供管理装置」とは,ユーザ端末とネットワークを介してやりとりし,オークションを行う「サーバ」の点で共通する。 刊行物4のユーザ端末(出品者端末)は,寄付をしますかの問いに対して「はい」「いいえ」の回答をサーバ(サーバ機)に伝えるものであるから,刊行物4記載の発明は,「売買金額の金銭を寄附するか否かを示す寄附情報を送信する寄附情報送信手段を備え」たものといえる。同様に,サーバは「寄附情報送信手段により送信される寄附情報を受信する寄附情報受信手段と,この寄附情報受信手段により受信した寄附情報が,寄附を否定する情報と寄附を肯定する情報のいずれであるかを判断する判断手段とを備え」たものと言える。 してみると,刊行物4記載の発明には,補正発明の「ユーザ端末は,売買金額の金銭を寄附するか否かを示す寄附情報を送信する寄附情報送信手段を備え,サーバは,寄附情報送信手段により送信される寄附情報を受信する寄附情報受信手段と,この寄附情報受信手段により受信した寄附情報が,寄附を否定する情報と寄附を肯定する情報のいずれであるかを判断する判断手段とを備える」構成が開示されている。 オークション等で現金取引を行う際に売り上げを寄付することは,記載事項(4b)にも記載され,また,特開2002-99780号公報にも記載されているように一般に行われていることであり,刊行物1記載の発明のオークションでアイテムを現実の金銭により取引するにあたり,売買金額を寄付できるように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。 その際に,ユーザ端末及びゲーム提供管理装置を,刊行物4記載の発明のように,ユーザ端末は,売買金額の金銭を寄附するか否かを示す寄附情報を送信する寄附情報送信手段を備え,ゲーム提供管理装置は,寄附情報送信手段により送信される寄附情報を受信する寄附情報受信手段と,この寄附情報受信手段により受信した寄附情報が,寄附を否定する情報と寄附を肯定する情報のいずれであるかを判断する判断手段とを備えるものとすることは当業者が容易になし得ることである。 また,刊行物1記載の発明は,オークションのアイテム売買金額を売却要求を送信したユーザのデータに加算する処理を行うものであり,また,寄附を肯定する情報である場合に寄附する金銭のデータを出品者のデータに加算せずに寄附を行うように処理することは当然であるから,刊行物1記載の発明においてアイテムと取引した金銭を寄附できるようにするにあたり,保有金額管理手段を,判断手段の判断結果に基づき,寄附を否定する情報である場合には,売買金額を,通常のオークションとして保有金額記憶手段において売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額に加算するべくそのような処理をする加算手段を備えたものとし,寄附を肯定する情報である場合には,売買金額を前記加算手段による加算を行うことなく,寄附をするために処理する手段を備えたものとすることは,当業者が当然に採用する構成である。 ここで,ゲーム提供管理装置は,売買金額を示す金銭情報を外部に送信する外部送信手段を備え, ゲーム提供システムは,ボランティア団体により管理されるものであって前記ゲーム提供管理装置とは別体に構成され, 寄附されている金額である寄附金額を記憶する寄附金額記憶手段と, 前記ゲーム提供管理装置の外部送信手段により送信された前記金銭情報を受信する金銭情報受信手段と, この金銭情報受信手段により受信された金銭情報が示す金額を前記寄附金額に加算して寄附金額記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備える寄附管理サーバを備える点は,いずれの文献にも記載されていない しかし,寄附を受け取るボランティア団体が,寄附金額を寄附される側から伝達されて把握し,寄附金額を加算していくことは,刊行物4記載のシステムにおいても,例えば金融機関におけるボランティア団体の口座において,寄付金額が記憶されるとともに加算されるものであるように当然に行われることであり,また,ボランティア団体が寄附を受け取るためにサーバをおくことも,例えば上記特開2002-99780号公報(【図6】のNPO団体端末600),特開2003-169166号公報(ドネーション活用サーバ3)に記載のように本願の出願時における周知の技術であるから,刊行物1記載の発明において,刊行物4記載の発明を参酌してアイテムとオークション取引して得た金銭を寄附できるようにするにあたり,アイテム売却代金を,ゲーム提供管理装置から,ボランティア団体により管理されるものであって前記ゲーム提供管理装置とは別体に構成される寄附管理サーバに送信するようにするものとすること,寄附管理サーバを,寄附金額記憶手段,金銭情報受信手段,寄附金額を加算して更新する更新手段とを備えるものとして構成することは,当業者が適宜なし得ることである。 審判請求人は,審尋回答書中にて,補正発明は, [1]刊行物1に記載された発明において,アイテム等の取引を現金によって行うという上記周知の思想を考慮に入れた上で, [2]刊行物4(前置報告の引用文献9)に開示の技術的思想を適用して, [3]寄付を行うか否かの選択を出品者に行わせるとともに, [4]寄付を行う場合に所定の寄付金を所定の団体に寄付するよう構成することによって, [5]全体として現実の金銭によるアイテムの売買を行うシステムを構築する との五段階を経なければならないものであるから,進歩性を肯定すべきである旨主張する。 しかし,刊行物4には, -寄付を行うか否かの選択を出品者に行わせるとともに, -寄付を行う場合に所定の寄付金を所定の団体に寄付するよう構成とした, -現実の金銭による売買を行うシステム が開示されているものであり,上記五段階を順次ステップアップするように経なければ補正発明を構成できないというものではない。 そして,先に検討したように,オンラインゲームのバーチャルコンテンツ(アイテム,通貨,キャラクタ)を現金で売買することが本願の出願当時にゲーム関係者に周知であったこと,金銭と物やサービスとを取引する通常のオークションにおいて売上金を寄付することがごく一般的に行われている慣行であることを考慮すれば,刊行物1記載の発明においてアイテムを現金で取引するように構成するとともにその売上金を寄付する構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることであり,そのためのシステムを補正発明のように構成することも,当業者の通常の創作能力を超えた格別のものということはできない。 本件発明の効果について検討する。 審判請求人は,審尋回答書中にて,補正発明は,ビデオゲームの社会的地位向上やビデオゲームに対する遊興的イメージの改善をすることができるとの格別の効果を奏する旨主張する。 しかし,金銭を寄贈して社会活動を支援することによりイメージアップや社会的地位向上をはかることは,競艇や競輪等の収益金が一部公益事業に支出されているように,一般に行われていることであり,イメージアップ,社会的地位向上等の効果は寄附行為に付随するものと認められるから,ビデオゲームのアイテムのオークションにおいて寄附を可能とすることによってビデオゲームの社会的地位向上やビデオゲームに対する遊興的イメージの改善をすることができるとの効果は,刊行物1,2,4記載の発明,記事3に記載の周知の事項,周知技術及び上記のような社会的通念から予測し得る程度のものである 審判請求人は,また,補正発明は,各ユーザがユーザ端末から寄附を肯定する情報を送信すると,各ユーザからの寄附金の総額がゲーム提供管理装置により管理されることなく,各ユーザの寄附金情報が個々に寄附管理サーバに送信される。したがって,寄附がユーザ個々であって,寄附の形態がボランティア団体に対し直接的となるので,ユーザにおいて寄附している実感が持てるという作用効果を奏する旨主張する。 しかし,補正発明は,ユーザ端末が送信する寄附を肯定する情報を,寄附情報受信手段で受信,判断して送信するという管理をするものであるから,寄附がユーザ個々であって,寄附の形態がボランティア団体に対し直接的となるものではない。 なお,各ユーザの寄附金情報を個々に処理することは,刊行物4に「各種の団体への寄付金の送付は,オークションにおいて一つの取引が成立するたびに,その都度送ってもよい」(記載事項(4g))と記載されるように,通常に行われていることであり,格別新規なものではない。 また,寄附管理サーバの構成としても,単にゲーム提供管理装置から送信される金銭情報を受信して寄付金額記憶手段に記憶された寄付金額に加算して更新することを規定するのみであり,補正発明のゲーム提供システムは,例えば,アイテム売却時に寄附管理サーバの内容が加算されて更新されることをユーザが即時に知り得る等の「寄附をしている実感が持てる」ような構成を何ら具備していないから,審判請求人の主張する当該効果を補正発明の格別の効果とすることはできない。 補正発明のその他の効果も,刊行物1,2,4記載の発明,記事3に記載の周知の事項及び周知技術から予測し得る程度のものである。 したがって,補正発明は,刊行物1,2,4記載の発明,記事3に記載の周知の事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである 5.補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成22年7月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年10月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「請求項1】 インターネットを介して接続されるゲーム提供管理装置と複数のユーザ端末とで構成されるゲーム提供システムであって, ゲーム提供管理装置は, 前記ユーザ端末から送信される前記ゲームにより取得したポイントを受信して,前記ユーザ端末によるゲームプレイ時のユーザID毎にポイント記憶手段に記憶させる第1の記憶制御と, 前記ポイント記憶手段に記憶されているポイントに基づき取得したアイテムを,前記ユーザID毎にアイテム記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段と, 各ユーザが保有している金銭の額である保有金額を,前記ユーザID毎に保有金額記憶手段に記憶させる第3の記憶制御手段と, いずれかのユーザ端末から送信された売却要求に応じて,前記アイテム記憶手段に記憶されているアイテムを売却することを示す出品情報を生成し,他のユーザ端末に送信する送信手段と, 前記他のユーザ端末から送信された購入要求に応じて,前記アイテム記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDが取得しているアイテムを削除し, かつ,この削除したアイテムを,前記購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDのアイテムとして記憶させるアイテム管理手段と, このアイテム管理手段により書き換えられた前記アイテムの売買金額を設定し,この設定した売買金額を,前記保有金額記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額に加算し,かつ,前記購入要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額から減算する保有金額管理手段とを備え, 前記ユーザ端末は, ゲームプログラムに基づきゲームを実行するゲーム実行手段と, このゲーム実行手段によるゲームの実行に伴って取得したポイントを送信するポイント送信手段と, 前記アイテム記憶手段に記憶されているアイテムの売却要求を送信する売却要求送信手段と, 前記ゲーム提供管理装置から送信される前記出品情報を受信する受信手段と, アイテムの購入要求を送信する送信手段と, 前記売買金額の金銭を寄附するか否かを示す寄附情報を送信する寄附情報送信手段と,を備え, 更に, 前記ゲーム提供管理装置は, 前記寄附情報送信手段により送信される寄附情報を受信する寄附情報受信手段と, この寄附情報受信手段により受信した寄附情報が,寄附を否定する情報と寄附を肯定する情報のいずれであるかを判断する判断手段とを備え, 前記保有金額管理手段は, 前記判断手段の判断結果に基づき,前記寄附を否定する情報である場合には,前記売買金額を,前記保有金額記憶手段において前記売却要求を送信したユーザ端末に係るユーザIDの保有金額に加算する加算手段と, 寄附を肯定する情報である場合には,前記加算手段による加算を行うことなく,前記売買金額を示す金銭情報を外部に送信する外部送信手段と, を備えることを特徴とするゲーム提供システム。」(以下,「本願発明」という。) 2.刊行物の記載内容 本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1,2,4及び記事3の記載事項は,前記「第2.2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は,補正発明から,寄附管理サーバの具体的構成及び寄附管理サーバがボランティア団体により管理されるとの限定を削除したものである。 前記第2.4.で検討したとおり,本願発明において,さらに,寄附管理サーバの具体的構成を特定し,寄附管理サーバがボランティア団体により管理されるとの限定をした補正発明が,刊行物1,2,4記載の発明,記事3に記載の周知の事項及び周知技術から容易になし得るものと判断されるものであるから,これらの限定をしない本願発明も,当然,刊行物1,2,4記載の発明,記事3に記載の周知の事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 第4.むすび したがって,本願発明は,刊行物1,2,4記載の発明,記事3に記載の周知の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-08 |
結審通知日 | 2011-07-19 |
審決日 | 2011-08-23 |
出願番号 | 特願2007-222071(P2007-222071) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古川 直樹 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
土屋 真理子 宮崎 恭 |
発明の名称 | ゲーム提供システム及びゲーム提供管理装置 |
代理人 | 三好 千明 |