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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1245158 |
審判番号 | 不服2008-16070 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-25 |
確定日 | 2011-10-13 |
事件の表示 | 特願2001-148782「霧状毛髪化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月27日出願公開、特開2002-338441〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、平成13年5月18日の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。 平成20年2月19日付け 拒絶理由通知 平成20年4月25日 意見書、手続補正書 平成20年5月23日付け 拒絶査定 平成20年6月25日 審判請求書、手続補正書 平成20年7月31日付け 前置審査移管 平成20年8月29日付け 前置報告書 平成20年9月5日付け 前置審査解除 平成22年11月24日付け 審尋 平成23年1月27日 回答書 第2 平成20年6月25日付け手続補正書について 1 本件補正 平成20年6月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の 「【請求項1】(A)被膜形成能を有する高分子化合物0.05?10.0質量%と、(B)非イオン性界面活性剤0.05?5.0質量%と、(C)粒径0.5?50μmの粉末0.05?10.0質量%と、(D)噴射剤25.0?80.0質量%とを含有し、(C)粒径0.5?50μmの粉末が、球状粉末と板状粉末から構成されることを特徴とする霧状毛髪化粧料。 【請求項2】 (B)非イオン性界面活性剤と(C)粒径0.5?50μmの粉末の配合比(B)/(C)が0.15?5.0であることを特徴とする請求項1に記載の霧状毛髪化粧料。 【請求項3】 (B)非イオン性界面活性剤がアルキレンオキシド基を含有するシリコーン化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の霧状毛髪化粧料。」 を 「【請求項1】(A)被膜形成能を有する高分子化合物0.05?10.0質量%と、(B)非イオン性界面活性剤0.05?5.0質量%と、(C)粒径0.5?50μmの粉末0.05?10.0質量%と、(D)噴射剤25.0?80.0質量%とを含有し、(C)粒径0.5?50μmの粉末が、球状粉末と板状粉末から構成され、(B)非イオン性界面活性剤と(C)粒径0.5?50μmの粉末の配合比(B)/(C)が0.15?5.0であることを特徴とする霧状毛髪化粧料。 【請求項2】 (B)非イオン性界面活性剤がアルキレンオキシド基を含有するシリコーン化合物であることを特徴とする請求項2に記載の霧状毛髪化粧料。」 とするものである。 2 補正の適否 上記補正は、補正前の請求項1に、請求項1を引用する請求項2の内容を全て盛り込むものであるから、補正前の請求項1を削除したものであり、さらに、補正前の請求項2及び請求項3をそれぞれ請求項1及び請求項2に改めたものであるといえる。 そして、上記補正は、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の記載からみて、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」においてなされたものであるといえる。 したがって、上記補正は、平成18年法律55号改正附則第3条第1項により、なお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項に適合するものであるから、上記補正は適法になされたものである。 第3 本願発明について 本願の請求項1?2に係る発明は、平成20年6月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。なお、平成20年6月25日付け手続補正書による補正後の明細書を「本願明細書」という。 「【請求項1】(A)被膜形成能を有する高分子化合物0.05?10.0質量%と、(B)非イオン性界面活性剤0.05?5.0質量%と、(C)粒径0.5?50μmの粉末0.05?10.0質量%と、(D)噴射剤25.0?80.0質量%とを含有し、(C)粒径0.5?50μmの粉末が、球状粉末と板状粉末から構成され、(B)非イオン性界面活性剤と(C)粒径0.5?50μmの粉末の配合比(B)/(C)が0.15?5.0であることを特徴とする霧状毛髪化粧料。」 第4 原査定の理由の概要 原査定における拒絶の理由の概要は、平成20年6月25日付け手続補正書による補正前の請求項1?3に係る発明は、その出願前に頒布された以下の刊行物である引用文献1?6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。 1.特開2000-080017号公報 2.特開平11-171729号公報 3.特開2000-159638号公報 4.特開平04-124121号公報 5.特開平07-069838号公報 6.特開2000-191452号公報 第5 刊行物に記載された事項 1 刊行物1に記載された事項 本願の出願前である平成12年3月21日に頒布された刊行物である特開2000-80017号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1a)「本発明で用いられる噴射剤としては、フロン11、フロン12、フロン21、フロン113、フロン114、フロン134a等のフロンガスや、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭化水素系ガス(LPG)及びジメチエルエーテル等の液化ガスが挙げられる。」(段落【0014】) (1b)「本発明に用いる水不溶性かつ油不溶性の粉末としては、ケイ酸、無水ケイ酸、珪ソウ土、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、クレー、ベントナイト、バーミキュライト、酸化チタン皮膜雲母(雲母チタン)、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、低次酸化チタン、タングステン酸金属塩、ゼオライト、セラミックスパウダー、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベンガラ、黒酸化鉄、黄酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンゾグアナミン粉末、ポリ四フッ化エチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、デンプン、デンプン誘導体、シリコーンパウダー及びこれらの複合体が挙げられる。これらの粉末を含有させることにより、使用感(べたつきの無さ)を更に向上させることができる。粉末の含有量は原液中0.1?20wt%であり、好ましくは0.5?10wt%である。0.1wt%未満では使用感の向上が感じられず、20wt%を越えると分散性が悪くなる。粉末の粒径は0.01?30μmが好ましく、0.01μm未満ではきしみ感を生じるので使用感を損なう場合があり、30μmを超えるとざらつきを感じるので好ましくない場合がある。」(段落【0016】) (1c)「【実施例】次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各表中の数値は含有量(wt%)を表わす。」(段落【0018】) (1d)「(3)使用感女性パネラー20名によって、のび、べたつきの無さについての使用特性を下記の評価基準に従って評価した。」(段落【0021】) (1e)「実施例13(ヘアークリーム) 軽質流動イソパラフィン 20.0 (パールリーム4;日本油脂社製) ポリエーテル変性シリコーン 1.0 モノイソステアリン酸ソルビタン 2.0 (クリル6;クローダ社製) 流動パラフィン 5.0 (カーネーション70;ウィトコケミカル社製) ポリビニルピロリドン 1.0 (PVP K-30;BASF社製) シリコーンパウダー 3.0 (トレフィルE-501;東レ・ダウコーニング社製) エタノール 10.0 パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 5.0 (パルソルMCX;ジボダン社製) 精製水 53.0」(段落【0028】) (1f)「上記成分を前記した調製方法により乳化し、得られた油中水型乳化組成物を原液とし、原液50wt%、噴射剤としてLPG40wt%、ジメチルエーテル10wt%を充填してエアゾール型ヘアークリーム(エアゾール組成物)を調製した。」(段落【0029】) (1g)「このエアゾール組成物は、噴射剤の再分散性に優れ、噴射時の霧が均一で使用感にも優れていた。」(段落【0030】) 2 刊行物2に記載された事項 本願の出願前である平成4年4月24日に頒布された刊行物である特開平4-124121号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2a)「(1)微粒子粉末を配合した整髪剤組成物。 (2)微粒子粉末の平均粒径が20μ未満である前記請求項1記載の整髪剤組成物。 (3)さらに毛髪固定用樹脂を配合した前記請求項1記載の整髪剤組成物。」(特許請求の範囲) (2b)「まず、本発明整髪剤組成物に配合される微粒子粉末としては、シリカ、マイカ、セリサイト、タルク、酸化チタン、酸化ジルコニア、珪酸、珪酸力ルシウム、珪酸マグネシウム等の無機物、ポリエチレン、ナイロン、アクリル樹脂、エポキン樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。 これら微粒子粉末の形状としては、球状のもののほか、板状のものであってもよい。」(第2頁左上欄第3?10行)) (2c)「本発明の整髪剤組成物は、前記の成分を常法により処理してヘアスプレイ、ヘアミストなど公知の整髪剤の形態とすることかできる。」(第2頁右下欄第11?13行) 第6 当審の判断 1 刊行物1に記載された発明 刊行物1の上記摘記事項(1e)には、実施例13として、「ヘアークリーム」の具体的な配合例が記載されており、上記摘記事項(1c)を併せてみると、各成分の合計が「100wt%」になるといえるところ、上記摘記事項(1f)には、「ヘアクリーム」の組成物を「原液とし、原液50wt%、噴射剤としてLPG40wt%、ジメチルエーテル10wt%を充填してエアゾール型ヘアークリーム(エアゾール組成物)を調製した」ことが記載されている。 そうすると、刊行物1には、 「軽質流動イソパラフィン 10.0wt% (パールリーム4;日本油脂社製) ポリエーテル変性シリコーン 0.5wt% モノイソステアリン酸ソルビタン 1.0wt% (クリル6;クローダ社製) 流動パラフィン 2.5wt% (カーネーション70;ウィトコケミカル社製) ポリビニルピロリドン 0.5wt% (PVP K-30;BASF社製) シリコーンパウダー 1.5wt% (トレフィルE-501;東レ・ダウコーニング社製) エタノール 5.0wt% パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 2.5wt% (パルソルMCX;ジボダン社製) 精製水 26.5wt% LPG 40wt% ジメチルエーテル 10wt% の組成を有するエアゾール型ヘアークリーム」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 2 本願発明と引用発明との対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「エアゾール型ヘアークリーム」は、刊行物1の上記摘記事項(1g)の「このエアゾール組成物は、・・・、噴射時の霧が均一で使用感にも優れていた」の記載からみて、本願発明における「霧状毛髪化粧料」に相当するといえる。 引用発明の「ポリビニルピロリドン」は、本願明細書の段落【0009】の「本発明に用いられる(A)被膜形成能を有する高分子化合物としては、例えば、・・・ポリビニルピロリドン(ルビスコールK、BASF社製)、・・・等のノニオン性高分子化合物等がある」の記載からみて、本願発明の「(A)被膜形成能を有する高分子化合物」に相当するといえる。また、引用発明において、「ポリビニルピロリドン」は「0.5wt%」配合されるのであるから、本願発明の「(A)被膜形成能を有する高分子化合物」と同様に、「0.05?10.0質量%」の範囲内で配合されているといえる。 引用発明の「ポリエーテル変性シリコーン」及び「モノイソステアリン酸ソルビタン」は、本願明細書の段落【0011】の「(B)非イオン性界面活性剤としては、例えば・・・ソルビタン脂肪酸エステル、・・・ポリオキシアルキレン変性シリコーン・・・等が挙げられ」の記載からみて、本願発明の「(B)非イオン性界面活性剤」に相当するといえる。引用発明において、「ポリエーテル変性シリコーン」及び「モノイソステアリン酸ソルビタン」はそれぞれ「0.5wt%」、「1.0wt%」、合計で「1.5wt%」配合されるのであるから、本願発明の「(B)非イオン性界面活性剤」と同様に、「0.05?5.0質量%」の範囲内で配合されているといえる。 引用発明の「シリコーンパウダー(トレフィルE-501;東レ・ダウコーニング社製)」は、平均粒径が「10μm」であるから(この点について、特開平10-36228号公報の段落【0032】には、「(8)シリコーンエラストマー微粒子粉体(トレフィルE-501,平均粒径10μm,東レ・ダウコーニング社製)」と記載されている。)、本願発明の「(C)粒径0.5?50μmの粉末」に相当するといえる。また、引用発明の「シリコーンパウダー(トレフィルE-501;東レ・ダウコーニング社製)」は「1.5wt%」配合されるのであるから、本願発明の「(C)粒径0.5?50μmの粉末」と同様に、「0.05?10.0質量%」の範囲内で配合されているといえる。 引用発明の「LPG」及び「ジメチルエーテル」は、刊行物1の上記摘記事項(1a)の「本発明で用いられる噴射剤としては、・・・炭化水素系ガス(LPG)及びジメチエルエーテル等の液化ガスが挙げられる。」の記載からみて、「噴射剤」であるから、本願発明の「(D)噴射剤」に相当するといえる。また、引用発明において、「LPG」及び「ジメチルエーテル」はそれぞれ「40wt%」、「10wt%」、合計で「50wt%」配合されるのであるから、本願発明の「(D)噴射剤」と同様に、「25.0?80.0質量%」の範囲内で配合されているといえる。 そして、引用発明において、「(B)非イオン性界面活性剤」である「ポリエーテル変性シリコーン」及び「モノイソステアリン酸ソルビタン」は合計で「1.5wt%」配合され、「(C)粒径0.5?50μmの粉末」である「シリコーンパウダー(トレフィルE-501;東レ・ダウコーニング社製)」は「1.5wt%」配合されるのであるから、本願発明と同様に、「(B)非イオン性界面活性剤と(C)粒径0.5?50μmの粉末の配合比(B)/(C)が0.15?5.0」の範囲内で配合されているといえる。 また、引用発明は、上記の成分の他に、「軽質流動イソパラフィン」、「流動パラフィン」、「エタノール」、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」、「精製水」を含むものであるが、本願明細書の段落【0020】の「本発明で用いられるその他の成分としては、上記成分の他に従来公知の任意の成分を効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、油剤、・・・、アルコール類、・・・、紫外線吸収剤、・・・水・・・等が挙げられる」の記載からみて、本願発明もこれらの成分を含む態様を包含しているといえる。 したがって、両者は、 「(A)被膜形成能を有する高分子化合物0.05?10.0質量%と、(B)非イオン性界面活性剤0.05?5.0質量%と、(C)粒径0.5?50μmの粉末0.05?10.0質量%と、(D)噴射剤25.0?80.0質量%とを含有し、(B)非イオン性界面活性剤と(C)粒径0.5?50μmの粉末の配合比(B)/(C)が0.15?5.0であることを特徴とする霧状毛髪化粧料。」 という点で一致するが、以下の点で相違する。 相違点:「(C)粒径0.5?50μmの粉末」について、本願発明では、「球状粉末と板状粉末から構成され」るのに対し、引用発明ではそのような構成がない点 (2)判断 (ア)相違点について 刊行物1の上記摘記事項(1b)には、粉体として、引用発明の「シリコンパウダー」以外に、「タルク」等の無機顔料等を配合し得ることが記載されており、また、刊行物2の上記摘記事項(2a)?(2c)には、ヘアスプレイ等の整髪剤組成物において、配合する微粒子粉末の形状として、球状のもののほか、板状のものも配合できることが記載されている。さらに、化粧料において、球状の粉体と板状の粉体とを併用することは、本願出願時において周知の技術であるから(この点について、特開平10-182397号公報の特許請求の範囲、段落【0017】及び各実施例、特開平11-79969号公報の段落【0018】?【0019】、特開2000-119134号公報の特許請求の範囲及び段落【0006】、【0015】及び各実施例、特開2000-302828号公報の段落【0026】、【0036】、【0043】(実施例7)を参照)、引用発明において、粉体成分として、球状の粉体である「シリコーンパウダー」に加えて「板状粉末」を用いること、あるいは、「シリコーンパウダー」に代えて別の「球状粉末」と「板状粉末」を用いることは、当業者が適宜なし得たことといえる。 (イ)本願発明の効果について 本願発明の効果について、本願明細書の段落【0039】には、「本発明が、セット保持性、べたつきのなさ、不自然な艶のなさ、分散安定性に極めて優れた霧状毛髪化粧料を提供する」と記載されている。 一方、刊行物1の上記摘記事項(1g)には、「このエアゾール組成物は、噴射剤の再分散性に優れ、噴射時の霧が均一で使用感にも優れていた。」と記載されており、「使用感」として、刊行物1の上記摘記事項(1d)には、「べたつきのなさ」が評価の対象となっている。また、上記(4)で検討しように、引用発明は、「(C)粒径0.5?50μmの粉末」を「球状粉末と板状粉末から構成」する以外の点において、本願発明の構成をすべて備えていることから、引用発明においても、本願発明と同様の効果が奏せられると評価できる。 さらに、本願発明の「(C)粒径0.5?50μmの粉末」を「球状粉末と板状粉末から構成」することにより分散性が優れたものとなる効果について検討する。本願明細書の実施例10と参考例1をみると、参考例1では「(C)粒径0.5?50μmの粉末」として「タルク」5.0質量%のみを用い、実施例10では「タルク」2.0質量%と「シリコンパウダー」3.0質量%を用い、その他の成分は全て同じものであるが、参考例1では「粉体分散性」の評価が「○」であるのに対し、実施例10では「◎」となっている。 しかしながら、球状粉体に比べてタルク等の板状粉末は分散性がよくないことは、本願出願前に周知の事項であったといえるから(この点について、特開平5-112429号公報の段落【0010】、特開平8-3016号公報の段落【0012】を参照)、「タルク」等の板状粉体のみを用いるよりも、板状粉体と球状粉体とを併用した方が分散性が向上することは、当業者が予測し得る効果であったといえる。 3 その他 なお、平成23年1月27日付け回答書において、請求人は、本願発明の「(B)非イオン性界面活性剤」について、「(B)アルキレンオキシド基を含有するシリコーン化合物である非イオン性界面活性剤」と特定する補正案を提示している。 しかしながら、引用発明も、「(B)アルキレンオキシド基を含有するシリコーン化合物である非イオン性界面活性剤」に相当する「ポリエーテル変性シリコーン」を「0.5wt%」含有しているから、依然として、回答書において提示された補正案と同様に、「(B)・・・0.05?5.0質量%」の範囲内で含むものであり、「(C)粒径0.5?50μmの粉末」である「シリコーンパウダー(トレフィルE-501;東レ・ダウコーニング社製)」は「1.5wt%」配合されているから、「(B)非イオン性界面活性剤と(C)粒径0.5?50μmの粉末の配合比(B)/(C)」も「0.15?5.0」の範囲内になるといえる。また、本願明細書の段落【0020】の「本発明で用いられるその他の成分としては、上記成分の他に従来公知の任意の成分を効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、・・・その他の界面活性剤・・・等が挙げられる。」の記載からみれば、回答書において提示された補正案は、引用発明におけるもう1つの「非イオン性界面活性剤」成分である「モノイソステアリン酸ソルビタン」を含む態様も包含する。そうすると、回答書において提示された補正案によっても、上記2(1)?(2)で検討したとおり、拒絶すべき理由を解消できるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余のことについて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-11 |
結審通知日 | 2011-08-16 |
審決日 | 2011-08-29 |
出願番号 | 特願2001-148782(P2001-148782) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 清子 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
関 美祝 杉江 渉 |
発明の名称 | 霧状毛髪化粧料 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 伊藤 健 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 山本 博人 |