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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1245168
審判番号 不服2009-4391  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-27 
確定日 2011-10-13 
事件の表示 平成11年特許願第246480号「情報処理装置、情報処理方法及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月23日出願公開、特開2001- 75702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願出願は、平成11年8月31日の出願であって、平成21年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月30日付けで手続補正がなされ、平成22年7月13日付けの審尋がなされ、その後当審において、平成23年5月9日付けの拒絶理由通知が通知され、同年6月10日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項に係る発明は、平成23年6月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
アイテム名と下位階層の存在を示すアイコンとからなるメニュー項目を横書きで縦方向に一列に複数表示する表示手段と、
前記メニュー項目を項目毎に縦方向へスクロールさせ、選択された一のメニュー項目におけるアイテム名が所定の文字数以上であるとき、他の前記メニュー項目におけるアイテム名の表示及び前記アイコンの表示を維持したまま、前記一のメニュー項目における前記アイテム名の文字を前記横方向へスクロール表示させると共に、前記一のメニュー項目が選択されたことを示す表示情報を表示する制御手段と
を具える情報処理装置。」

3 引用例について
引用例1 特開平11-136336号公報
引用例2 特開平10-107663号公報
引用例3 特開平 4-195520号公報
引用例4 特開平 9-167055号公報

(1)引用例1の記載内容
当審による拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、表示部と回転式選択手段を有する電子機器、例えば携帯電話機に関する。」

・「【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、表示部を有する電子機器において、表示データに基づいて表示部に複数行の被選択データを表示すると共に、表示部の所定の行の位置にカーソルを表示し、回転式選択手段によってカーソルを固定する一方、複数行のデータを列方向に移動させるようにしたことを特徴とする電子機器である。」

・「【0014】この携帯電話機1の外観図を図2に示す。図2に示すように、携帯電話機1の上面には、アンテナ3が取り付けられる。アンテナ3は、伸縮自在とされている。アンテナ3は、通常状態では、縮められており、通話を行うときに、引き延ばされる。携帯電話機1の前面には、スピーカ8、LCD12、キーボード14、マイク9が設けられる。携帯電話機1の側面には、回転式選択手段(以下、ジョグダイヤルと称する)21が設けられる。このジョグダイヤル21を回転させると、ダイヤルの回転角に応じてデータが変化し、ジョグダイヤル21をクリック又はダブルクリックすると、そのデータが選択される。このジョグダイヤル21は、LCD12に表示されるデータ、例えば登録された名前あるいは電話番号を表示し、スクロールするときに利用される。」

・「【0018】このジョグダイヤル21を用いて通話しようとする相手方の電話番号を検索するときに、画面のスクロールを行うことができる。この際に、1行のみの表示であると、ジョグダイヤル21の回転し過ぎによって画面がスクロールされ過ぎ、被選択データである相手方の電話番号(選択項目)がずれてしまうことがある。そこで、この一実施形態では、画面のスクロールがされ過ぎてしまってもユーザにわかりすいように、携帯電話機1に設けられているLCD12に、複数行のデータ、例えば5人の電話番号リストを同時に表示する。」

・「【0019】LCD12の表示例を図5に示す。まず、図5Aは、LCD12の表示画面を、それぞれ1行のデータが表示される5つの領域に分割し、分割した領域の所定の領域(図5Aでは、中央の行)を囲むカーソルを表示させる第1の例である。カーソルとしての枠の表示領域は、各行の領域とは重ならないようにされる。このようにLCD12に固定カーソルを表示させることによって、カーソルをスクロール毎に書き換えることなく、データの移動のみでスクロールが実現できる。分割されたLCD12の各領域に対応するように画面の表示用メモリのメモリ領域も分割され、メモリに記憶されているデータを分割された表示用メモリの対応する領域に移動させる。この第1の例において、ジョグダイヤル21を回転させ、下方向に画面をスクロールさせる場合、表示されたデータが図5Aに示すように、転送される。よって、同一平面上にあるカーソルとデータとを移動するときに、カーソルとデータとを分けて考え、データのみの移動でスクロールを表現することができる。」

・「【0022】さらに、図5Cは、上述した図5Aおよび図5Bに示すようなLCD12に固定カーソルを表示するようなカーソルを省略し、所定の位置(図5Cでは、中央の行)のデータと他の位置のデータとの階調を変化させるようにして、カーソルを表示させる第3の例である。図5Cでは、階調の相違が文字の大きさの差として示されている。この図5Cに示す一例は、カーソルの表示領域がとれないような小さい画面でスクロールを行う場合や、グラフィックの表示ができない画面でカーソルを表現したい場合に有効である。この階調の変化の方法は、所定の行の位置のデータを強い階調にする場合、所定の行の位置のデータに向けて徐々に階調を変化させる場合など、所定の行の位置のデータにカーソルがあるように表現ができればどのような階調の表現方法でも良い。」

そうすると、引用例1の上記摘記事項から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「表示部と回転式選択手段を有する電子機器において、
回転式選択手段を回転させると、ダイヤルの回転角に応じてデータが変化し、回転式選択手段をクリック又はダブルクリックすると、そのデータが選択され、
表示データに基づいて表示部に複数行の被選択データを表示すると共に、表示部の所定の行の位置にカーソルを表示し、回転式選択手段によってカーソルを固定する一方、複数行のデータを列方向に移動させるようにしたことを特徴とする電子機器。」

(2)引用例2の記載内容
当審による拒絶の理由に引用された引用例2には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、FM多重放送、文字多重放送等のデータ放送システムの受信機における番組選択画面の表示方法に関する。」

・「【0037】なお、選択項目”3.ニュース&スポーツ番組”のように、選択項目を構成する表示文字の数が、表示器10に表示できる文字数を越えている場合には、画面が切り替えられるまでの間に、スクロール表示によって、全ての文字が表示されるようにすることが好ましい。この際、選択枝である番組番号以外の文字のみをスクロールさせることが好ましい。」

(3)引用例3の記載内容
当審による拒絶の理由に引用された引用例3には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「一方、補足メッセージ長判断手段13の判断により、表示対象の補足メッセージが補足メッセージ表示領域5内に収まらないと判断されると、補足メッセージ表示制御手段14は、タイマ手段15からのタイミング信号に同期させて、表示対象の補足メッセージを例えば1文字ずつ例えば左方向にスクロールしていくことで、表示対象の補足メッセージをテロップ形式に従って補足メッセージ表示領域5に表示していく処理を実行する。
このように、本発明では、ウィンドウ4が小さく設定されるときには、表示対象の補足メッセージをテロップ形式に従って表示していくように制御するものであることから、オペレータは、ウィンドウ4を小さく設定したときにあっても、何ら操作を加えることなく、補足メッセージの全体を見ることができるようになるのである。」(第3頁左下欄第2?17行)

(4)引用例4の記載内容
当審による拒絶の理由に引用された引用例4には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「【0013】図3は、図2の画面の後、反転領域222の文字の大きさを14ポイントにしたい場合に、その文字列を選択して反転した後、書式設定(T)250を選び、第1プルダウンメニュー表示320を開き、その後、文字大きさ(S)322を選択(マウスをドラッグして離す若しくはクリック又はキー入力)した後、下位メニューである第2プルダウンメニュー表示330を開いた後で、この後さらに、自由大きさ(F)332を選択し、図4の「自由大きさ」ウィンドウを開く。」

・【図面の簡単な説明】中の【符号の説明】には「312 下位メニュー存在表示」と記載されている。また、【図3】には、「入力属性(I)」、「改行幅(P)」といったメニュー要素を示す文字の右隣に、符号「312」に対応するものとして、黒い三角形のような図形が記載されている。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「表示部と回転式選択手段を有する電子機器」は、本願発明における「情報処理装置」に対応している。

引用発明の「被選択データ」は、引用例1【0018】段落の「被選択データである相手方の電話番号(選択項目)」との記載及び図5からも明らかなように、例えば相手方の電話番号等のような文字列からなるものであるから、引用発明における「被選択データ」は、本願発明における「アイテム名からなるメニュー項目」に対応している。

引用発明の「表示データに基づいて表示部に複数行の被選択データを表示する」との事項は、本願発明における「メニュー項目を横書きで縦方向に一列に複数表示する表示手段」に対応している。

引用発明の「回転式選択手段によってカーソルを固定する一方、複数行のデータを列方向に移動させるようにした」との事項は、本願発明における「前記メニュー項目を項目毎に縦方向へスクロールさせ」る「制御手段」に対応している。

以上によれば、本願発明と引用発明の一致点、相違点は次のとおりである。

(1)一致点
「アイテム名からなるメニュー項目を横書きで縦方向に一列に複数表示する表示手段と、
前記メニュー項目を項目毎に縦方向へスクロールさせる制御手段と
を具える情報処理装置。」

(2)相違点
[相違点1]
本願発明では、メニュー項目がアイテム名と「下位階層の存在を示すアイコン」とからなるのに対し、引用発明ではそのようになっていない点。

[相違点2]
本願発明では、制御手段が「選択された一のメニュー項目におけるアイテム名が所定の文字数以上であるとき、他の前記メニュー項目におけるアイテム名の表示及び前記アイコンの表示を維持したまま、前記一のメニュー項目における前記アイテム名の文字を前記横方向へスクロール表示させる」のに対し、引用発明ではそのようになっていない点。

[相違点3]
本願発明では、制御手段が「前記一のメニュー項目が選択されたことを示す表示情報を表示する」のに対し、引用発明ではそのようになっていない点。

5 当審の判断
[相違点1]について
引用例4には、「第1プルダウンメニュー表示320を開き、その後、文字大きさ(S)322を選択した後、下位メニューである第2プルダウンメニュー表示330を開」(【0013】段落)くような場合、「入力属性(I)」、「改行幅(P)」といったメニュー要素を示す文字の右隣に「下位メニュー存在表示」として黒い三角形のような図形を表示すること(図3)が記載されており、メニュー表示において、下位メニューが存在する場合に「下位階層の存在を示すアイコン」を表示することは常套手段である。
そうすると、引用発明において上記常套手段を採用し、被選択データに下位メニューが存在するような場合、その被選択データに「下位階層の存在を示すアイコン」を含ませ、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて採択しうる設計的事項にすぎない。

[相違点2]について
引用例2には、「選択項目”3.ニュース&スポーツ番組”のように、選択項目を構成する表示文字の数が、表示器10に表示できる文字数を越えている場合には、画面が切り替えられるまでの間に、スクロール表示によって、全ての文字が表示されるようにすることが好ましい。この際、選択枝である番組番号以外の文字のみをスクロールさせることが好ましい。」(【0037】段落)と記載され、引用例3には、「ウィンドウ4が小さく設定されるときには、表示対象の補足メッセージをテロップ形式に従って表示していくように制御する」(第3頁左下欄第11?14行)と記載されていることから、「選択された一のメニュー項目におけるアイテム名が所定の文字数以上であるとき、所定の表示を維持したまま、前記一のメニュー項目における前記アイテム名の文字を前記横方向へスクロール表示させる」ことは、当業者にとって周知の事項(周知事項1)である。
そして、引用発明においても、被選択データの文字数が、表示部に表示できる文字数よりも長くなる場合も普通に予測できることであることから、そのような場合に、引用発明において上記周知の事項(周知事項1)を採用することは、当業者が容易に採択しうる事項にすぎない。
ここで、上記「所定の表示を維持したまま」とする場合、どの表示を維持するかは、表示内容の見やすさ等を考慮して当業者が適宜決定できる事項であるから、引用発明において、カーソルが表示された所定の行以外の行、すなわち、「他の前記メニュー項目におけるアイテム名の表示を維持したまま」としたり、相違点1において述べたように「下位階層の存在を示すアイコン」を付加したようなときには、「前記アイコンの表示を維持したまま」とすることは、何ら困難なことではない。
そうすると、引用発明において上記周知の事項(周知事項1)を採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点3]について
引用例1(【0022】段落)には、「LCD12に固定カーソルを表示するようなカーソルを省略し、所定の位置(図5Cでは、中央の行)のデータと他の位置のデータとの階調を変化させるようにして、カーソルを表示させる第3の例」と記載されており、情報処理装置の表示手段において、所定の位置のデータの諧調を変化させることは、当業者にとって周知の事項(周知事項2)である。
したがって、引用発明において上記周知の事項(周知事項2)を採用し、回転式選択手段をクリック又はダブルクリックすることにより一の被選択データが選択されたとき、階調を変化させるなどして、「前記一のメニュー項目が選択されたことを示す表示情報を表示する」ように構成することは、当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明、常套手段、及び、周知事項1、2から、当業者が容易に予測できるものである。

したがって、本願発明1は、引用発明、常套手段、及び、周知事項1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-11 
結審通知日 2011-08-16 
審決日 2011-09-01 
出願番号 特願平11-246480
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 圓道 浩史田中 秀樹  
特許庁審判長 井上 正
特許庁審判官 須田 勝巳
木方 庸輔
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法及び記録媒体  
代理人 田辺 恵基  

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