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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24D
管理番号 1245202
審判番号 不服2010-27021  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-30 
確定日 2011-10-13 
事件の表示 特願2005-148819号「浴室空調システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月30日出願公開、特開2006-322694号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年5月20日の出願であって、平成22年8月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年11月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「温水または水の供給を受け、ミストを生成するミストノズルを有する湯水噴出装置と、
大気と冷媒との間の熱交換及び前記冷媒と水との間の熱交換で温水を生成し、生成した温水を前記湯水噴出装置と少なくとも浴室に供給するヒートポンプ給湯装置と、
電気ヒータを有し、運転モードに応じて送風または温風を吹き出す電気式の浴室空調装置と、
前記ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水を前記湯水噴出装置に供給して、前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出するようにし、前記湯水噴出装置によるミストの噴出と前記浴室空調装置の空調運転を連動させるミストモードを実行する制御手段とを備え、
前記ミストモードが実行されると、前記電気ヒータに通電して、前記浴室空調装置の空調運転が開始されると共に、前記ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水が前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出されるようにした
ことを特徴とする浴室空調システム。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「浴室空調装置」について、「電気ヒータを有」する「電気式の」浴室空調装置と限定するとともに、ミストモードが実行されると、「前記電気ヒータに通電して、」前記浴室空調装置の空調運転が開始される旨の限定を付加するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-207176号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1による浴室換気装置の概略構成を示した断面図である。本浴室換気装置20は送風手段として送風装置21を備えており、この送風装置21は浴室天井22に取り付けられている。送風装置21はケーシング23を有し、そのケーシング23の内部にはモータ24によって回転駆動される送風ファン25が設けられている。ケーシング23には、送風ファン25の下方に吸気口26が、送風ファン25の吐出側27下方に送風口28がそれぞれ形成されている。
(中略)
さらに、本実施の形態では、送風装置21にはスチーム発生手段としてスチーム発生装置33が設けられている。このスチーム発生装置33は、給水管34が接続されたスチーム用ヒータ35と、スチーム用ヒータ35にノズル配管36を介して取り付けられたノズル37と、給水管34の途中に設けられた電磁バルブ38とを備えている。ノズル37は送風口28の上流側に位置し、切替ダンパ31が二点鎖線の位置にあるときの位置よりも送風口28に近い位置に配置されている。また、ノズル配管36はスチーム用ヒータ35に揺動自在に取り付けられており、ノズル配管36をステッピングモータ等で揺動させることにより、ノズル37は、スチーム用ヒータ35を中心にして浴室天井22に平行な水平面内で揺動する。
(中略)
一方、給水管34には外部から水が供給されており、この水は電磁バルブ38を通ってスチーム用ヒータ35に流入し、スチーム用ヒータ35で加熱されてスチームを発生する。スチームはノズル配管36を介してノズル37から送風口28に向けて噴出され、送風ファン25の吐出側27から流れてくる空気に混合される。このとき、ノズル37は、スチームを噴出しながら、スチーム用ヒータ35を中心にして浴室天井22に平行な水平面内で揺動し、空気とスチームとを十分に混合させる。そして、スチームが混合された空気が、送風口28のルーバー32から浴室内に送風される。」(段落【0025】-【0030】、下線は当審にて付与。以下同様。)

b)「さらに、本実施の形態によれば、スチーム用ヒータ35による加熱を止めて、ノズル37から冷水のミストを噴出することにより、浴室内の温度を速やかに下げることができるという効果もある。
(実施の形態2)次に、本発明の実施の形態2について説明する。図2は本発明の実施の形態2による浴室換気装置の概略構成を示した断面図である。本実施の形態では、送風ファン25の吐出側27と送風口28との間に温風用ヒータ40が設けられている。この温風用ヒータ40は、浴室内換気時の切替ダンパ31の位置(図の二点鎖線)よりも下流側で、スチームを噴出するノズル37よりも上流側の位置に配置されている。また本実施の形態では、送風ファン25はその回転軸が水平方向になるよう組み付けられている。
また、本実施の形態では、図3に示すような制御系が設けられている。この制御系は制御手段としてスチーム発生装置制御部41と送風装置制御部42を有し、両制御部41,42は連動制御されようになっている。スチーム発生装置制御部41には、浴室ドアの開閉を検出するドアセンサ43、冷・暖房スイッチ44、浴室内の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ45、スチーム用ヒータ35、および電磁バルブ38が接続されている。また、送風装置制御部42には、冷・暖房スイッチ44、温度センサ45、温風用ヒータ40、送風ファンのモータ24、およびルーバー32を駆動するステッピングモータ(図示省略)に接続されている。なお、温度センサ45の代わりに、浴室内の湿度を検出する湿度センサを設けることもできる。
上記構成において、浴室内の暖房または乾燥を行う場合は、切替ダンパ31を図の実線の位置に切り替えて、送風ファン25の吐出側27と送風口28とを連通する。この状態で、モータ24を回転させて送風ファン25を回転駆動させると、浴室内の空気は吸気口26から吸気され、送風ファン25の吐出側において、温風用ヒータ40によって加熱され、さらにノズル37から噴出するスチームが混合された後、送風口28のルーバー32を介して浴室内に送風される。
浴室内の換気を行う場合は、切替ダンパ31を図の二点鎖線の位置に切り替えて、浴室内の空気を吸気口26から吸気して、吐出側27を介して排気ダクト29へと流し外部に排出する。
本実施の形態によれば、浴室内から吸気した空気を温風用ヒータ40で加熱し、その加熱した空気に素早くスチームを混合させているので、空気が十分に加熱され、その加熱空気を浴室内に送風することにより、浴室内を効果的に暖めることができる。」(段落【0034】-【0039】)

c)「次に、本実施の形態では、温度センサ45からの検出温度情報に基づいて、スチーム用ヒータ35、電磁バルブ38、温風用ヒータ40、送風ファンのモータ24を制御して浴室内の温度を調節するようにしている。
最初に、スチーム用ヒータ35を制御して浴室内の温度を調節する手順を図4のフローチャートを用いて説明する。まず、冷・暖房スイッチ44が入っているか否か判断し(ステップS101)、冷・暖房スイッチ44が入っていれば、温度センサ45は浴室内の温度を検出し、その検出温度情報をスチーム発生装置制御部41が取り込む(ステップS102)。
スチーム発生装置制御部41は、取り込んだ検出温度情報を基に浴室内の温度を所定値に制御する。例えば、浴室内の温度が45℃以下であるか否か判断し(ステップS103)、45℃以下であれば、スチーム用ヒータ35の電源をオンにするか、もしくはスチーム用ヒータ35に印加する電圧を増加またはスチーム用ヒータ35に流す電流を増加させる(ステップS104)。これにより、ノズル37からスチームの噴出が開始されるか、もしくはスチームが噴出されているときであれば、そのスチーム温度が上昇するので、浴室内温度を上昇させることができる。また、45℃を超えていれば、スチーム用ヒータ35の電源をオフにするか、もしくはスチーム用ヒータ35に印加する電圧を減少またはスチーム用ヒータ35に流す電流を減少させる(ステップS105)。これにより、スチームが噴出されているときであれば、そのスチームの噴出が停止されるか、もしくはスチーム温度が降下するので、浴室内温度を降下させることができる。
ステップS102?ステップS104の処理またはステップS102?ステップS105の処理は、冷・暖房スイッチ44が切られるまで繰り返され(ステップS106)、浴室内の温度が所定温度(45℃)になるよう制御される。
次に、電磁バルブ38を制御して浴室内の温度を調節する手順を図5のフローチャートを用いて説明する。ステップS111?ステップS113の処理は、図4におけるステップS101?ステップS103の処理と同じである。そして、スチーム発生装置制御部41は、ステップS113において、浴室内の温度が45℃以下であると判断した場合は電磁バルブ38の開度を開く(ステップS114)。これにより、ノズル37からスチームの噴出が開始されるか、もしくはスチームが噴出されているときであれば、その噴出量が増加するので、浴室内温度を上昇させることができる。また、45℃を超えていると判断した場合は電磁バルブ38の開度を閉じる(ステップS115)。これにより、スチームが噴出されているときであれば、スチームの噴出が停止されるか、もしくはスチーム噴出量が減少するので、浴室内温度を降下させることができる。
ステップS112?ステップS114の処理またはステップS112?ステップS115の処理は、冷・暖房スイッチ44が切られるまで繰り返され(ステップS116)、浴室内の温度が所定温度(45℃)になるよう制御される。
なお、図5のステップS112において、浴室内の湿度データを取り込み、その湿度データが予め設定された値以下か否かを判断し、その判断結果に基づいてて電磁バルブ38の開度を制御することも可能である。
次に、温風用ヒータ40を制御して浴室内の温度を調節する手順を図6のフローチャートを用いて説明する。なお、ここではノズル37からはスチームが噴出されているものとする。ステップS121?ステップS123までの処理は、図4におけるステップS101?ステップS103までの処理と同じである。ただし、ステップS122における温度データの取り込みは送風装置制御部42が行う。そして送風装置制御部42は、ステップS123において、浴室内の温度が45℃以下であると判断した場合は、温風用ヒータ40の電源をオンにするか、もしくは温風用ヒータ40に印加する電圧を増加または温風用ヒータ40に流す電流を増加させる(ステップS124)。これにより、送風ファン25からの空気が十分に加熱され、その加熱された空気がノズル37からのスチームと送風口28で混合されることになるので、スチームを高温状態に維持することが可能となり、その結果、浴室内温度を上昇させることができる。また、45℃を超えていると判断した場合は、温風用ヒータ40の電源をオフにするか、もしくは温風用ヒータ40に印加する電圧を減少または温風用ヒータ40に流す電流を減少させる(ステップS125)。この場合は、送風ファン25からの空気が十分に加熱されないので、ノズル37からのスチームを高温に維持することが難しくなり、その結果、浴室内温度を降下させることができる。」(段落【0041】-【0048】)

d)上記b)の「浴室内の暖房または乾燥を行う場合は、・・・浴室内の空気は吸気口26から吸気され、送風ファン25の吐出側において、温風用ヒータ40によって加熱され、さらにノズル37から噴出するスチームが混合された後、送風口28のルーバー32を介して浴室内に送風される。」及び「浴室内の換気を行う場合は、・・・浴室内の空気を吸気口26から吸気して、吐出側27を介して排気ダクト29へと流し外部に排出する。」の記載事項から、「送風装置21」は、暖房または乾燥及び換気等の「運転モード」に応じて加熱した空気を吹き出しているものと認められる。

e)上記a)の「このスチーム発生装置33は、給水管34が接続されたスチーム用ヒータ35と、スチーム用ヒータ35にノズル配管36を介して取り付けられたノズル37と、給水管34の途中に設けられた電磁バルブ38とを備えている。」及び「スチームはノズル配管36を介してノズル37から送風口28に向けて噴出され、送風ファン25の吐出側27から流れてくる空気に混合される。・・・そして、スチームが混合された空気が、送風口28のルーバー32から浴室内に送風される。」の記載事項から、水(スチーム)はスチーム発生装置33によって浴室内に噴出されているものと認められる。

f)上記b)の「この制御系は制御手段としてスチーム発生装置制御部41と送風装置制御部42を有し、両制御部41,42は連動制御されようになっている。」の記載事項、及び、上記c)の記載事項から、「スチーム発生装置制御部41と送風装置制御部42」は、スチーム発生装置33によるスチームの噴出と送風装置21の加熱した空気を送風する運転を連動させる運転モードを実行しているものと認められる。

上記a)?c)の記載事項、上記d)?f)の認定事項および図2の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「水の供給を受け、スチームを噴出するノズル37を有するスチーム発生装置33と、
温風用ヒータ40を有し、運転モードに応じて加熱した空気を吹き出す送風装置21と、
水を前記スチーム発生装置33に供給して、前記スチーム発生装置33によって浴室内に噴出するようにし、前記スチーム発生装置33によるスチームの噴出と前記送風装置21の加熱した空気を送風する運転を連動させる運転モードを実行するスチーム発生装置制御部41と送風装置制御部42とを備え、
前記連動させる運転モードが実行されると、前記温風用ヒータ40の電源をオンにして、前記送風装置21の加熱した空気を送風する運転が開始されると共に、スチーム用ヒータ35によって生成された温水が前記スチーム発生装置33によって浴室内に噴出されるようにした浴室換気装置20。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「スチーム発生装置33」は、本願補正発明の「湯水噴出装置」に相当し、以下同様に、
「加熱した空気」は「温風」に、
「送風装置21」は「(電気式の)浴室空調装置」に、
「送風装置21の加熱した空気を送風する運転」は「浴室空調装置の空調運転」に、
「スチーム発生装置制御部41と送風装置制御部42」は「制御手段」に、
「浴室換気装置20」は「浴室空調システム」に、
それぞれ相当する。

そして、引用発明の「スチーム」は水が加熱されて発生するものであるのに対し、本願補正発明の「ミスト」は温水が噴出されたものであるから、両者に特段の差異はなく、引用発明の「スチーム」は、本願補正発明の「ミスト」に相当する。
また、上記b)の「ノズル37から冷水のミストを噴出する」の記載から、引用発明の「ノズル37」は「ミスト」を生成可能であり、引用発明の「スチームを噴出するノズル37」は、本願補正発明の「ミストを生成するミストノズル」に相当する。
さらに、上記c)の「温風用ヒータ40の電源をオンにするか、もしくは温風用ヒータ40に印加する電圧を増加または温風用ヒータ40に流す電流を増加させる」の記載から、引用発明の「温風用ヒータ40」は、本願補正発明の「電気ヒータ」に相当するとともに、引用発明の「温風用ヒータ40の電源をオンに」することは、本願補正発明の「電気ヒータに通電」することに相当する。
また、引用発明の「連動させる運転モード」は、スチーム発生装置33によるスチームの噴出と送風装置21の加熱した空気を送風する運転を連動させる運転モードであり、本願補正発明の「ミストモード」と同様の運転をすることから、本願補正発明の「ミストモード」に相当する。

次に、引用発明の「水」と、本願補正発明の「ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水」とは、「水」である点において共通する。
また、引用発明の「スチーム用ヒータ35」と、本願補正発明の「ヒートポンプ給湯装置」とは、「温水生成手段」という点において共通する。

したがって、両者は、
「水の供給を受け、ミストを生成するミストノズルを有する湯水噴出装置と、
電気ヒータを有し、運転モードに応じて温風を吹き出す電気式の浴室空調装置と、
水を前記湯水噴出装置に供給して、前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出するようにし、前記湯水噴出装置によるミストの噴出と前記浴室空調装置の空調運転を連動させるミストモードを実行する制御手段とを備え、
前記ミストモードが実行されると、前記電気ヒータに通電して、前記浴室空調装置の空調運転が開始されると共に、温水生成手段によって生成された温水が前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出されるようにした浴室空調システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、「大気と冷媒との間の熱交換及び前記冷媒と水との間の熱交換で温水を生成し、生成した温水を前記湯水噴出装置と少なくとも浴室に供給するヒートポンプ給湯装置」を備え、前記「ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水」を湯水噴出装置に供給して、前記「ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水」が前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出されるのに対し、引用発明は、当該「ヒートポンプ給湯装置」を備えておらず、「水」をスチーム発生装置33に供給して、「スチーム用ヒータ35」によって生成された温水が前記スチーム発生装置33によって浴室内に噴出される点。

4.判断
[相違点]について
大気と冷媒との間の熱交換及び前記冷媒と水との間の熱交換で温水を生成し、生成した温水を浴室等に供給するヒートポンプ給湯装置は、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2002-48397号公報、特開2004-293837号公報、特開2004-360973号公報を参照。)。
また、給湯装置で温水を生成し、生成した温水を湯水噴出装置と少なくとも浴室に供給することも、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平3-111050号公報、特開平8-131507号公報、特開平10-179681号公報を参照。)。

よって、引用発明において、エネルギー効率をよくするために、前記周知の技術事項を踏まえて、「スチーム用ヒータ35」の代わりに「大気と冷媒との間の熱交換及び前記冷媒と水との間の熱交換で温水を生成」する「ヒートポンプ給湯装置」によって温水を生成すること、及び、当該「ヒートポンプ給湯装置」によって生成された温水をスチーム発生装置33と浴室に供給することは、当業者にとって容易に想到し得たものである。
そうすると、引用発明に前記周知の技術事項を適用して、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用発明及び前記周知の技術事項から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び前記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成22年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「温水または水の供給を受け、ミストを生成するミストノズルを有する湯水噴出装置と、
大気と冷媒との間の熱交換及び前記冷媒と水との間の熱交換で温水を生成し、生成した温水を前記湯水噴出装置と少なくとも浴室に供給するヒートポンプ給湯装置と、
運転モードに応じて送風または温風を吹き出す浴室空調装置と、
前記ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水を前記湯水噴出装置に供給して、前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出するようにし、前記湯水噴出装置によるミストの噴出と前記浴室空調装置の空調運転を連動させるミストモードを実行する制御手段とを備え、
前記ミストモードが実行されると、前記浴室空調装置の空調運転が開始されると共に、前記ヒートポンプ給湯装置によって生成された温水が前記湯水噴出装置によって浴室内に噴出されるようにした
ことを特徴とする浴室空調システム。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。

2.対比および判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から、「浴室空調装置」について、「電気ヒータを有」する「電気式の」浴室空調装置との限定を省くとともに、ミストモードが実行されると、「前記電気ヒータに通電して、」前記浴室空調装置の空調運転が開始される旨の限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.及び4.」に記載したとおり、引用発明及び前記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明及び前記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-11 
結審通知日 2011-08-16 
審決日 2011-08-29 
出願番号 特願2005-148819(P2005-148819)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24D)
P 1 8・ 121- Z (F24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 覚  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
青木 良憲
発明の名称 浴室空調システム  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  

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