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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1245210
審判番号 不服2009-18725  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-02 
確定日 2011-10-14 
事件の表示 特願2005-505080「容器内の液体レベルを監視するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日国際公開、WO2004/008085、平成17年11月 4日国内公表、特表2005-533266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・原査定の拒絶の理由
本願は、平成15年6月26日を出願日(パリ条約による優先権主張、2002年7月17日、同年10月7日、英国)とする国際出願であって、特許請求の範囲について、平成17年3月11日付け、及び平成21年5月7日付けで補正がなされたところ、同年5月29日付け(送達:同年6月2日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より、平成22年6月30日付けで審尋をしたところ、同年9月30日付け回答書の提出があった。
そして、原査定の拒絶の理由は、本願各請求項に記載された発明は、いずれも、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-239384号公報(発明の名称:特殊材料ガス用容器、出願人:日本バイオニクス株式会社、公開日:平成6年8月30日、以下、「引用例」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許を受けることができない、というものである。

2.補正の適否・本願発明
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1の従属項である請求項2にさらに従属する請求項4を新たな請求項1とするとともに、本件補正前の請求項1の「キャパシタンスを監視するための手段」を「キャパシタンスの変化を監視するための手段」に補正し、さらに、本件補正前の請求項21を削除するものである。
ところで、本件補正前の「キャパシタンスを監視するための手段」が、監視対象である液体のレベルに応じて変化する「キャパシタンスの変化を監視するための手段」を意味することは明らかであるから、結局、本件補正は、実質的に請求項の削除を目的としたものといえる。しかも、本件補正が、国内書面に記載した事項の範囲内においてしたものであることも明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項及び同条第4項の規定に適合する。

(2)本願発明
以上のとおり本件補正は認められるので、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「容器(2)内の、有機金属化合物を含む反応性液体のレベルを監視するための装置であって、前記容器に気密封止される第1の電極として作用する少なくとも1つの金属プローブ(10)、硼珪酸ガラス材料内に包み込まれた前記プローブのシーリング端(22)、前記第1の電極から離隔されたキャパシタを形成する第2の電極、前記キャパシタに電流を印加するための手段(14)、およびそのキャパシタンスの変化を監視するための手段、を包含し、前記容器が金属容器であり、前記第2の電極として作用する、装置。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例記載の事項・引用発明
(1)引用例
これに対して、引用例である特開平6-239384号公報には、特殊材料ガス用容器(発明の名称)に関し、次の事項(a)?(f)が図面とともに記載されている。なお、下線は、引用発明を認定する上で特に留意すべき記載箇所を明示するために、当審が付したもの。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体製造工程などで使用される特殊材料ガスの貯蔵、運搬および供給用の特殊材料ガス用容器であって、ガスの出入口を有する金属製の容器と、検出プローブおよびこれと接続された変換部で構成された静電容量式液面計とを備えてなり、該検出プローブが前記金属製の容器に挿入され、気密に固定されてなる特殊材料ガス用容器。」
(b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は特殊材料ガス用容器に関し、さらに詳細には、半導体製造工程や光ファイバー製造工程などで用いられる特殊材料ガスの量を連続的に把握しうる特殊材料ガス用容器に関する。
【0002】半導体工業の発展とともにテトラエトキシシラン、トリエトキシボラン、トリメチルりん酸、トリエトキシアルシン、四塩化珪素、三臭化ほう素、オキシ塩化りん、三塩化砒素、四塩化炭素、クロロホルムおよびトリメチルアルミニウムなど特殊材料ガスの種類および使用量が増加している。
【0003】
【従来の技術】特殊材料ガスには常温でガス状、低粘度および高粘度の液状、粉体または固体状など種々なものがあり(以下これらを総称して特材ガスと記す)、通常は金属製の容器に充填されているが、毒性が極めて高いもの、空気に触れて発火するものなど危険性の高いものが多く、また、高価でもあるため、常温または加圧状態で液状あるいは固体状の形で内容量が数g?数百gのような比較的小型で気密性の高い金属容器内に充填されている。そして、使用時には液体のまま用いる場合を除いて、通常は減圧、加熱による蒸発、昇華またはベースガスによるバブリング、希釈などによって気化せしめられ、ガス状として半導体製造工程などに供給される。」
(c)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれらの課題を解決するべく鋭意研究を続け、化学プラントなどで使用されている静電容量式液面計に着目するとともに、比較的小型である特材ガス用容器への適用について、さらに検討を重ねた結果、密閉性が良く、加圧または高真空条件でも特材ガスの量を連続して精度良く測定できる状態で装着しうる手段を見いだし、本発明を完成した。すなわち本発明は、半導体製造工程などで使用される特殊材料ガスの貯蔵、運搬および供給用の特殊材料ガス用容器であって、ガスの出入口を有する金属製の容器と、検出プローブおよびこれと接続された変換部で構成された静電容量式液面計とを備えてなり、該検出プローブが前記金属製の容器に挿入され、気密に固定されてなる特殊材料ガス用容器である。本発明の特殊材料ガス用容器は、シリコンおよび化合物半導体製造、光ファイバー製造などに用いられ、液状あるいは粉末や固化状態で収容された特材ガスの貯蔵、移動用および加熱、減圧などによるプロセスへの気化供給用などに使用される。
【0007】本発明に用いられる容器は、内容量が例えば5mL?10Lのような比較的小さい金属製の容器であり、特材ガスの種類、貯蔵条件に適合する強度、耐蝕性を備えたものであれば金属の材質には特に制限はなく、種々の金属および合金が使用できるが、通常は、ステンレス鋼製などの容器が一般的に用いられる。また、容器の内壁などに吸着されている微量の不純物ガスや粒子などの特材ガス中への混入が問題となるような場合には、容器の内面を電解研磨や酸化皮膜形成処理などを施したものが用いられる。容器の形状にも種々なものがあるが、通常は円筒状であり、充填される特材ガスの形態、使用目的などに応じて、ガス、液体など流体の出入口、粉体、固体の充填口などが設けられる。」
(d)「【0008】本発明において、金属製の容器には静電容量式液面計の検出部が気密に固定して装着される。静電容量式液面計は2個の金属導体が空間におかれているとき、この導体間に存在する物質によって静電容量が変化する原理を利用したものであり、検出部および信号変換部などから構成されており、従来は化学プラントの大容量のタンクや粉体貯蔵用サイロなどに使用されている。しかしながら、これらの用途に市販されている検出部であるプローブは本発明に適用するには余りにも大き過ぎ、しかも、取付けがフランジ形式あるいは内部に吊り下げるような形式が主体であり、本発明には使用できない。
【0009】本発明で使用される静電容量式液面計の検出プローブは、上記のフランジ形式のものを小型化した形態でもよいが、特材ガス容器として要求される気密性、すなわち、ヘリウムリーク試験法で10の-8乗torr以上のような高度の気密性を維持させるためには配管継手または溶接によって取り付ける形態とすることが好ましく、特に取付け取外しが容易におこなえることから半導体製造プロセスのガス供給配管などに使用される高圧または真空用の配管継手などを用いることが好ましい。例えば、市販されている継手として、VCR型(ケイジョン社)、スウェジロック型(スウェジロック社)、MCG型(東横化学(株))などの継手を使用することができ、継手部品の片方を金属容器に溶接などで固定し、他の片方の内部に検出プローブを絶縁シールした状態ではめ込んで固定し、継手部品の両者を接合することによって容器に気密に取り付けることができる。
【0010】検出プローブは静電容量式液面計の一方の電極となるが、通常は、円柱形であり、そのまま金属製の容器に挿入して気密に固定し、容器の壁をもう一方の電極としてもよいが、特材ガスが液体のような場合などには、誘電率が比較的小さいものもあるため、電極間の距離を小さくして外乱による静電容量の変動を防止するなどの目的で、容器壁に代わる電極としてグランド部を設けることが好ましい。グランド部としては検出プローブの周囲を囲む同軸の円筒、多数の貫通孔を設けた円筒または一部切欠円筒形などであり、検出プローブと絶縁した状態で設けられる。この場合には、検出プローブとグランド部とを同時に配管継手の一方の部品と組み合せて一体化した形態とすることが好ましい。
【0011】検出プローブとグランド部および継手部の絶縁には各種の特材ガスの種類などに応じて選択されるが、通常は気密性の高い合成ゴム、合成樹脂などのシール材が用いられ、耐蝕性、耐久性をも合わせて、例えば弗素ゴム、シリコンゴム、テフロン、セラミックなどであるが、好ましくはテフロンおよび特材ガスの種類によって、不活性なセラミックの成型物などが使用される。検出部の電極はリード線で信号変換器と接続され、さらに変換器は液面指示計などと接続され、静電容量式液面計として用いられる。」
(e)「【0012】次に、本発明を図面によって例示し、具体的に説明する。図1は本発明の特殊材料ガス用容器の断面図であり、図2は検出端装着部の拡大図であり、図3a、bはそれぞれ異なる態様の検出端を示した図である。図1および2において、円筒状の容器本体1の頭部には特材ガスの出入口2、容器の底部まで延長されたキャリアーガスの導入口3が設けられ、それぞれにバルブが介在している。また、容器本体1の頭部には配管継手の一方の部品4が挿入され、溶接によって固定されている。もう一方の部品5にはテフロンでコートされた検出プローブ6が絶縁材7で部品5と絶縁されて組み込まれて一体化された状態で、容器本体1側の部品4とパッキン8を介して袋ナット9によって部品4と螺合され、気密に装着されている。さらに、検出プローブ6および部品5は信号線10によって変換器11と接続され、変換器11には液面指示計12が接続され、本発明の特殊材料ガス用容器を構成している。
【0013】特殊材料ガス用容器の使用に際しては、特材ガスが例えばテトラエトキシシランなどのように液体のときには出入口2から容器内に充填される。次に、これを気化させて半導体プロセスなどに供給する場合には、キャリアーガス導入口3から窒素などの不活性ガスを導入し、バブリングさせることにより特材ガスは希釈されながら気化し、出入口2を通って半導体プロセスなどに供給される。液面の変化は一方の電極となる検出プローブ6と、容器の壁との間に生ずる静電容量の変化によって検知され、信号線10を経て変換器11に伝達され、ここで変換されて液面指示計12に容器内の液位が表示される。」
(f)「【0015】【実施例】
(容器本体)内径120mm、高さ200mm、厚さ2mm(容量2L)のSUS316L製で、頭部に特材ガスの出入口、バブリング口および継手取付け孔を設けた容器本体を製作し、継手取付け孔に市販の配管継手(VCR型、1/4インチ、ケイジョン社製)の一方の部品を挿入し、溶接によって固定した。
(検出端)SUS316L製で直径2mm、長さ230mmでテフロンコートを施した検出プローブを製作した。
(装 着)この検出プローブを容器に溶接した継手部品の相方の部品に挿入し、テフロンリングを嵌め込んで両者を絶縁状態で固定して一体化した後、容器に溶接した継手部品と螺合して取り付けた。次に、検出プローブおよび継手部品の電極と変換器を信号線で接続し、変換機に指示計を接続して図1に示したと同様の特殊材料ガス用容器を製作した。」

上記記載(a)ないし(f)及び図1,2の記載より、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
「容器本体1内の、トリメチルアルミニウムなどの半導体製造工程などで用いられる特殊材料ガスが液状で収容された該液体の液位を、液面指示計12に表示するための特殊材料ガス用容器であって、前記容器本体1に、絶縁材7及び継手部品5と共に一体化され、パッキン8を介して袋ナット9によって継手部品4と螺合することにより気密に装着される一方の電極として作用するSUS316L製の検出プローブ6、弗素ゴム,シリコンゴム,テフロン(登録商標),セラミックなどの上記絶縁材7で継手部品5と絶縁されて組み込まれて一体化された前記プローブの頭部、前記一方の電極から離隔されたキャパシターを形成するもう一方の電極、前記キャパシターに接続された変換器11、およびその静電容量の変化を検知する変換器11、を包含し、前記容器本体1がSUS316L製の容器であり、前記もう一方の電極として作用する、特殊材料ガス用容器。」(以下、「引用発明」という。なお、(登録商標)は、当審で付記した。)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)まず、引用発明における「容器本体1」は、本願発明における「容器(2)」に相当し、引用発明における「トリメチルアルミニウム」は、本願発明における「有機金属化合物」に相当し、同様に、「液位」は、「レベル」に、「液面指示計12に表示する」は、「監視する」に、「特殊材料ガス用容器」は、「装置」に、「一方の電極」は、「第1の電極」に、「SUS316L製の検出プローブ6」は、「金属プローブ(10)」に、「もう一方の電極」は、「第2の電極」に、「静電容量」は、「キャパシタンス」に、「SUS316L製の容器」は、「金属容器」に、「検知する変換器11」は、「監視するための手段」に、それぞれ相当する。
(2)上記相当関係(1)を踏まえると、引用発明の「容器本体1内の、トリメチルアルミニウムなどの半導体製造工程などで用いられる特殊材料ガスが液状で収容された該液体の液位を、液面指示計12に表示するための特殊材料ガス用容器」は、本願発明の「容器(2)内の、有機金属化合物を含む反応性液体のレベルを監視するための装置」に相当するといえる。
(3)引用発明における「前記容器本体1に、絶縁材7及び継手部品5と共に一体化され、パッキン8を介して袋ナット9によって継手部品4と螺合することにより気密に装着される一方の電極として作用するSUS316L製の検出プローブ6」について、上記相当関係(1)を踏まえて検討するに、引用発明における検出プローブ6は、絶縁材7及び継手部品5とともに一体化されており(したがって、この部分において検出プローブ6の容器外部に対する気密性は当然に担保されている。)、これら一体化された検出プローブ6、絶縁材7及び継手部品5は、パッキン8により容器外部と気密に封止されている。
よって、上記相当関係(1)を踏まえると、引用発明における「前記容器本体1に、絶縁材7及び継手部品5と共に一体化され、パッキン8を介して袋ナット9によって継手部品4と螺合することにより、気密に装着される一方の電極として作用するSUS316L製の検出プローブ6」は、本願発明における「前記容器に気密封止される第1の電極として作用する少なくとも1つの金属プローブ(10)」に相当するといえる。
(4)引用発明の「弗素ゴム,シリコンゴム,テフロン(登録商標),セラミックなどの上記絶縁材7」も、本願発明の「硼珪酸ガラス材料」も、共に、「絶縁材料」である点で共通する。
また、本願発明における「前記プローブのシーリング端(22)」は、本願明細書の発明の詳細な説明に「【0025】・・・プローブは、マウンティング30内にシールされた中空ステンレス・スチールの細長い管20を包含する。その管の、マウンティング内にシールされることになる端部分22は、・・・。端部分22は、ガラス材料34に対して気密封止される。」とあるように、金属プローブ(10)のうち、気密封止に供されるマウンティング30側の端部分を意味するから、結局、引用発明における「前記プローブの頭部」のことに外ならない。
よって、引用発明の「弗素ゴム,シリコンゴム,テフロン(登録商標),セラミックなどの上記絶縁材7で継手部品5と絶縁されて組み込まれて一体化された前記プローブの頭部」も、本願発明の「硼珪酸ガラス材料内に包み込まれた前記プローブのシーリング端(22)」も、共に、「絶縁材料内に包み込まれた前記プローブのシーリング端」である点で共通する。
(5)引用発明は、本願発明と同様、液位の変動に伴う静電容量の変化を検知しているから、キャパシタを形成する電極に電流を印加して行っていることはその測定原理から明らかであり、してみると、引用発明の「キャパシターに接続された変換器11」がキャパシターに対して電流を印加していると解されるから、引用発明の「前記キャパシターに接続された変換器11」は、本願発明の「前記キャパシタに電流を印加するための手段(14)」に相当するといえる。
よって、上記相当関係(1)を踏まえると、引用発明の「前記キャパシターに接続された変換器11、およびその静電容量の変化を検知する変換器11、を包含し、前記容器本体1がSUS316L製の容器であり、前記もう一方の電極として作用する、特殊材料ガス用容器。」は、本願発明の「前記第1の電極から離隔されたキャパシタを形成する第2の電極、前記キャパシタに電流を印加するための手段(14)、およびそのキャパシタンスの変化を監視するための手段、を包含し、前記容器が金属容器であり、前記第2の電極として作用する、装置。」に相当するといえる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「容器内の、有機金属化合物を含む反応性液体のレベルを監視するための装置であって、前記容器に気密封止される第1の電極として作用する少なくとも1つの金属プローブ、絶縁材料内に包み込まれた前記プローブのシーリング端、前記第1の電極から離隔されたキャパシタを形成する第2の電極、前記キャパシタに電流を印加するための手段、およびそのキャパシタンスの変化を監視するための手段、を包含し、前記容器が金属容器であり、前記第2の電極として作用する、装置。」
(相違点)
金属プローブを金属容器に対して絶縁するための絶縁材料が、
本願発明では、硼珪酸ガラス材料であるのに対し、引用発明では、弗素ゴム,シリコンゴム,テフロン(登録商標),セラミックなどの絶縁材7である点。

5.判断
前記相違点について検討する。
一般に、測定に使用される電極を絶縁するための絶縁材料として、硼珪酸ガラスを用いることは周知な技術である。(以下、「周知技術1」という。)
この点については、例えば、原審で周知技術であるとして引用された特開平2-77622号公報の、「さらに、これらの感温抵抗体3,4および電極5上には、耐油性,耐薬品性,絶縁性を確保するため、ホウケイ酸鉛系のオーバーコートガラス膜6が形成され、保護コートされている。」(3頁右下欄16?19行)との記載や、特開2001-272369号公報の、「絶縁部材5を形成する材料は、絶縁性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、必要に応じて1種以上の材料を組み合わせて用いてもよい。例えば、パイレックスガラス、石英ガラス、シリカ、高分子、フォトレジスト、プラスチック等が挙げられる。また、これらの材料を溶融、陽極接合などの方法で接合した多層材料で構成される絶縁材料を用いることもできる。」(段落【0046】)の記載を参照のこと。ここで、「パイレックスガラス」は、硼珪酸ガラスのことである。
しかも、引用発明は、絶縁材料の一つとして剛性の高いセラミックを用いているものであり、引用発明におけるセラミックを、同様に剛性の高いガラスの一種である硼珪酸ガラスに置き換えることに、何ら阻害要因は存在しない。
してみると、引用発明における絶縁材料の1つとしてのセラミックに代えて、同じく測定電極の絶縁材料として周知な硼珪酸ガラスを採用することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

また、本願発明の作用効果として請求人が主張する、硼珪酸ガラスを用いたことにより、高純度が要請される半導体製造工程において用いられる反応性液体を汚染することがないとの効果は、硼珪酸ガラス自体が備えた性能であり、事実、不純物の混入を嫌う半導体製造工程において、硼珪酸ガラスは普通に用いられているものでもある。(以下、「周知技術2」という。)
この点については、例えば特公平7-9900号公報の「半導体製造工程における半導体ウエーハ,ガラスマスク,液晶等の超精密洗浄を行うために用いられる超音波洗浄装置は、0.1μm程度の微細な粒子(異物)を除去する必要があるため、波長が短く、また、キャビテーションによる損傷を生じさせないため1MHz付近の超音波周波数が用いられている。
さらに、洗浄槽内に金属イオンが存在するとイオン結合によって被洗浄物に付着して悪影響を及ぼすため、石英ガラスや硼珪酸ガラス等金属イオンや不純物が溶出しない材質によって作られたビーカ等を内槽とする2重槽構造の洗浄装置が用いられている。」(第2欄下から1行?第3欄10行)との記載や、実公平7-37314号公報の「第4図は上記誘電体被覆線路を利用する方式のプラズマアッシング装置の模式的正面断面図であり、図中40は中空直方体形の反応器であって上部壁を除く全体が金属製であり、特に周囲壁は二重構造であって内部に冷却水用の通流室41を備えている。反応器40の上部壁はマイクロ波の透過が可能であり、誘電損失が小さい耐熱性板42、例えば石英ガラス又はパイレックスガラス等にて気密状態に封止されている。」(第3欄42?49行)の記載を参照のこと。
よって、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1,2から当業者が予測可能なものであって格別のものでもないといわざるを得ない。

6.請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由や、前記回答書において、本願発明は、硼珪酸ガラスを金属との気密封止のために用いた点に特徴がある旨主張している。
(1)しかしながら、まず、この点に関して、本願発明は、特許請求の範囲の請求項1に、「・・・、前記容器に気密封止される第1の電極として作用する少なくとも1つの金属プローブ(10)、硼珪酸ガラス材料内に包み込まれた前記プローブのシーリング端(22)、・・・」とあるように、金属プローブ(10)は、(金属)容器に気密封止されること、そのシーリング端(22)は、硼珪酸ガラス材料内に包み込まれていることが特定されているにとどまり、硼珪酸ガラス材料を金属との気密封止のために用いたことまで特定しているわけではない。
よって、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張とはいえないから、採用できない。
(2)仮に、請求人主張のとおり、上記特許請求の範囲の記載が、硼珪酸ガラスを金属との気密封止のために用いたことを意味するとした場合についても、予備的に検討しておく。
引用発明において、絶縁材7としてのセラミックは、検出プローブ6及び継手部品5と一体化されており、金属である検出プローブ6と金属である継手部品5との間に存在することにより、当然に、検出プローブ6を容器本体1に対して、気密に封止する機能を果たす(前記「4.(3)対比」を参照のこと。)ものである。
よって、この場合も、本願発明は、引用発明と、絶縁材料の種類が相違する点(この相違点については、「5.判断」で説示したとおりである。)を除き相違するとはいえないから、やはり、請求人の主張は採用できない。
なお、硼珪酸ガラスを金属容器の気密封止に用いることは、上記周知技術2として説示したように周知な技術でもある。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-20 
結審通知日 2011-05-23 
審決日 2011-06-06 
出願番号 特願2005-505080(P2005-505080)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 ▲高▼木 真顕
森 雅之
発明の名称 容器内の液体レベルを監視するための方法および装置  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  
代理人 富田 博行  
代理人 中田 尚志  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  

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