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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1245303
審判番号 不服2010-11589  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-31 
確定日 2011-10-20 
事件の表示 特願2005-117118「車載メータ表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月26日出願公開、特開2006-290284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成17年4月14日の出願であって、平成21年7月23日付け拒絶理由通知に対し、同年9月17日付けで意見書が提出されたが、平成22年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、同日付で手続補正書が提出されて、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものであり、その後、当審において平成22年12月13日付けで書面による審尋がなされ、それに対し、平成23年2月9日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成22年5月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年5月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
1-1.本件補正の内容
平成22年5月31日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、本件出願の願書に最初に添付した)特許請求の範囲の下記(A)に示す請求項1ないし6を、下記(B)に示す請求項1ないし6へと補正するものである。

(A)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
計測情報を表示する第1表示部(10、12、14、16)と、
前記第1表示部の近傍に配置されメッセージ情報を表示する第2表示部(20)と、
前記第1、前記第2表示部と電源とを接続するスイッチ手段と、
該スイッチ手段の投入により前記第1表示部に優先して前記第2表示部に電力を供給する制御手段(40)と、を備えることを特徴とする車載メータ表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記スイッチ手段が投入されたときに、前記第2表示部の表示を開始し、前記第2表示部の表示開始後、所定時間(T)経過した時点で前記第1表示部の表示を開始することを特徴とする請求項1に記載の車載メータ表示装置。
【請求項3】
前記第2表示部は液晶表示板(20)により構成され、前記制御手段は前記スイッチ手段の投入により、前記メッセージ表示と前記液晶表示板のバック照明とを作動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載メータ表示装置。
【請求項4】
前記第2表示部は自発光表示板により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載メータ表示装置。
【請求項5】
前記第1表示部は目盛表示(11a?17a)と指針(11b?17b)とを備えたアナログメータであり、前記制御手段は、前記目盛を照明する盤面照明と指針を照明する指針照明とを行うことにより前記第1表示部の表示を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車載メータ表示装置。
【請求項6】
前記第1表示部は、前記所定時間経過の後、前記盤面照明および指針照明の輝度を漸増することを特徴とする請求項5に記載の車載メータ表示装置。」

(B)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
計測情報を表示する第1表示部(10、12、14、16)と、
前記第1表示部の近傍に配置され、操作や警報に関わるメッセージ情報を表示する第2表示部(20)と、
前記第1、前記第2表示部と電源とを接続するスイッチ手段と、該スイッチ手段の投入により前記第1表示部に優先して前記第2表示部に電力を供給する制御手段(40)と、
を備えることを特徴とする車載メータ表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記スイッチ手段が投入されたときに、前記第2表示部による前記メッセージ情報の表示を開始し、前記第2表示部による前記メッセージ情報の表示開始後、所定時間(T)経過した時点で前記第1表示部による計測情報の表示を開始することを特徴とする請求項1に記載の車載メータ表示装置。
【請求項3】
前記第2表示部は液晶表示板(20)により構成され、前記制御手段は前記スイッチ手段の投入により、前記メッセージ情報の表示と前記液晶表示板のバック照明とを作動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載メータ表示装置。
【請求項4】
前記第2表示部は自発光表示板により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載メータ表示装置。
【請求項5】
前記第1表示部は目盛表示(11a?17a)と指針(11b?17b)とを備えたアナログメータであり、前記制御手段は、前記目盛を照明する盤面照明と指針を照明する指針照明とを行うことにより前記第1表示部の表示を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車載メータ表示装置。
【請求項6】
前記第1表示部は、前記所定時間経過の後、前記盤面照明および指針照明の輝度を漸増することを特徴とする請求項5に記載の車載メータ表示装置。」(下線は補正箇所を示す。)

1-2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である第2表示部に表示する「メッセージ情報」に関して、「操作や警報に関わる」との特定事項を付加することで限定するものであることから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2-1.引用刊行物の記載事項
2-1-1.刊行物1
(1)原査定の拒絶理由において引用された刊行物である特開2001-277905号公報(以下、「刊行物1」という。)には、例えば、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0028】図1において、本実施例による車両用表示装置は、表示器Dと、表示器D並びに運転者のアイポイントPに対面する凹面(球面)鏡Mと、表示器Dと凹面鏡Mとを一体化するハウジングHと、このハウジングHの発光表示像(後述)の出光側に配置された暗色系の半透過パネルSPとで構成されている。
【0029】表示器Dは、図2に示すように、例えばステップモータからなるメータ1に連結され計測量(例えば車速)に応じて振れ角運動する指針2と、この指針2の背後に配置され計測量に応じた目盛、文字、マーク等の指標部3が施された表示パネル4と、この表示パネル4の所定部に形成した開口に配置されるSTN系の液晶パネル5と、これら指針2、指標部3、液晶パネル5のそれぞれに対応して独立して設けられ各々が例えば発光ダイオードからなる指針光源6,パネル光源7,液晶光源8とを備える。液晶パネル5は、この場合、様々な情報表示を行うフルドット表示のマルチディスプレイを構成する。
【0030】指針2、指標部3、液晶パネル5は、それぞれが光透過性を有し、これらの背後に設けられた光源6?8の点灯により、それぞれ独立した発光表示像を形成する。」(段落【0028】ないし【0030】)

(イ)「【0032】表示器D(表示装置)は、図3に示すように、制御手段10と電気的に接続されており、この制御手段10を通じてその動作が制御される。制御手段10は、マイコン11と各種ドライバ12,13,14を含み、電源スイッチたるイグニッションスイッチ(切替手段)15を介して電源ラインに接続されている。
【0033】マイコン11は、走行速度や距離等を計測するセンサ16からの入力信号を処理し、その処理結果に基づく制御信号をメータドライバ12とLCDドライバ14のそれぞれに出力し、この出力信号に応じてメータドライバ12とLCDドライバ14とがメータ1と液晶パネル5を駆動するための駆動信号(駆動電力)を供給する。
【0034】マイコン11はまた、イグニッションスイッチ15のオンに伴う信号入力(所定の信号入力)を受けて光源ドライバ13に指針光源6、パネル光源7、液晶光源8を点灯させる制御信号を出力し、この出力信号に応じて光源ドライバ13が指針光源6、パネル光源7、液晶光源8に駆動電力を供給してこれらを点灯駆動する。またメータ1と液晶パネル5を駆動するための駆動電力供給もイグニッションスイッチ15のオンに伴うマイコン11への信号入力に応じて開始される。」(段落【0032】ないし【0034】)

(ウ)「【0037】イグニッションスイッチ15のオンに伴う各光源6?8の点灯動作は、制御手段10を通じて図4に示すように制御される。すなわち、制御手段10は、イグニッションスイッチ15からの信号入力を受けて、まずパネル光源7と液晶パネル5への駆動電力供給を開始した後、所定の遅延時間をもって指針光源6と液晶光源8への電力供給を開始する。パネル光源7及び液晶パネル5への駆動電力の供給開始時期(t1)から指針光源6及び液晶光源8への駆動電力の供給開始時期(t2)までの時間差(t3)は、本実施例の場合、例えば約2.0秒に設定されている。」(段落【0037】)

(エ)「【0042】従って、イグニッションスイッチ15のオンに伴い運転者から半透過パネルSPを通して視認される発光表示像は、まず指標部3の発光表示像が一連の輝度上昇動作に伴って徐々に明るさを増しながら浮かび上がり、最大輝度レベルに到達(t4)した後、指標部3の発光表示像の明るさは、調光手段17の設定値に減光される。この後、所定の時間差を伴って指針2及び液晶パネル5の発光表示像が調光手段17の設定値に応じた明るさレベルで浮かび上がる。なお、指針2及び液晶パネル5の発光表示像が表示された後は、照光手段17を通じて運転者が任意に発光表示像(各光源6?8)の明るさを調整することができるように設定されている。」(段落【0042】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(エ)の記載及び図面からみて、次のことが分かる。

(オ)表示器Dは、指針2、指標部3が施された表示パネル4、指針光源6及びパネル光源7から構成される計測情報を表示する第1表示部と、第1表示部の近傍に配置され、様々な情報を表示する液晶パネル5である第2表示部とを備えているといえる。そして、イグニッションスイッチ15は第1表示部及び第2表示部と電源とを接続し、該イグニッションスイッチのオンに伴い、制御手段10は、第1表示部におけるパネル光源7と第2表示部における液晶パネル5に駆動電力を供給し、所定の遅延時間をもって、第1表示部における指針光源6と第2表示部における液晶光源8に電力を供給しているといえる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

「計測情報を表示する第1表示部と、
前記第1表示部の近傍に配置され、様々な情報を表示する第2表示部と、
前記第1、前記第2表示部と電源とを接続するイグニッションスイッチと、該イグニッションスイッチのオンに伴い前記第1表示部におけるパネル光源と前記第2表示部における液晶パネルに駆動電力を供給し、所定の遅延時間をもって、前記第1表示部における指針光源と前記第2表示部における液晶光源に電力を供給する制御手段と、
を備える車両用表示装置。」

2-1-2.刊行物2
(1)原査定の拒絶理由において引用された刊行物である特開2004-61325号公報(以下、「刊行物2」という。)には、例えば、以下の事項が記載されている。

(a)「【0014】
図1において、本実施形態による表示装置は、第1の発光表示ユニット(第1の発光表体)1と、この第1の発光表示ユニット1とは異なる情報を表示する第2の発光表示ユニット(第2の発光体)2と、これら発光表示ユニット1,2間に配置される透過型反射パネル3と、各発光表示ユニット1,2の動作を制御する制御手段4とを有する。
【0015】
第1の発光表示ユニット1は、計測量として車速に応じて回転軸を回転させる駆動装置11と、この駆動装置11によって回転する指針12と、この指針12の背後に配置される表示板13とを有し、表示板13には指針12の指示対象となる目盛や数字、図形等の指標部14が印刷され、この指標部14と指針12とで指針式表示部PDを形成する。
【0016】
指針12及び表示板13の背後には、例えば発光ダイオードからなる光源15がそれぞれ配置され、この光源15の点灯により指針12及び指標部14がバックライト照明され、これにより指針式表示部PDの指針式発光表示像(第1の表示像)PDLを形成する(図3,図4参照)。なおこの場合、指針12は光源15の光を受けて線状に発光する光透過性の指示部を備え、また指標部14は光透過性のインクによって印刷形成され、その背景は遮光性のインクによって印刷形成されている。
【0017】
第2の発光表示ユニット2は、図2に示すように、発光表示素子21と、導光体22と、これら発光体21及び導光体22を収納するケース23とを有する。
【0018】
発光表示素子21は、例えば、ガラス基板211上に金属電極212、有機発光層213、透明電極214の積層体を設け、その積層体を封止枠215にて封止し、各電極212,214間に直流電力を供給することにより、各電極212,214間に挟まれた有機発光層213領域が発光する有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルが使用されている。
【0019】
透明電極214は、その中央部に位置する電極部214aがセグメント形状に区分されており、各セグメントへの電力供給を制御することにより、所定の数字や文字からなる第1のグラフィック表示部GD1の発光表示像(第2の表示像)GDL1を形成する(図3,4参照)。この場合、グラフィック表示部GD1は、車両の走行距離データを数字や文字で表示するようになっているが、走行距離に代えて外気温度、水温、燃料残量等を表示するようにしてもよいし、走行距離と合わせてこれらの情報を表示するようにしてもよい。
【0020】
一方、透明電極214中、両側に位置する電極部214bは、電極部214aの外周を取り巻くアーチ形状に形成されており、この部分に電力供給を行うことにより、アーチ形の発光部を形成する。
【0021】
導光体22は、透明な合成樹脂からなり、電極部(発光部)214bに対向する受光部221と、この受光部221から取り入れた光を外周に導く板状部222と、この板状部222にて導光した光を外部に放射する照射部223とを有し、この照射部223を通じて放射される光によって第2のグラフィック表示部GD2の発光表示像(第2の表示像)GDL2が形成され(図3,図4参照)、この第2のグラフィック表示部GD2の発光表示像GDL2が後に詳述する透過型反射パネル3を通じて指針式発光表示像PDLの輪郭を形成する。」(段落【0014】ないし【0021】)

(b)「【0024】
制御手段4は、図1に示すように、CPU(中央処理ユニット)41と、複数の駆動回路42とで構成され、CPU41の出力側に駆動装置11、光源15、発光表示素子21の各々(各発光表示ユニット1,2)を動作させる駆動回路42a,42b,42cが接続され、これら駆動回路42a,42b,42cの出力側に駆動装置11、光源15、発光表示素子21の各々が接続されている。またCPU41の入力側には図示しないセンサ類の他、バッテリBとキースイッチ(スイッチ)SWが接続されている。
【0025】
CPU41は、前記センサ類からの検出信号やキースイッチSWからの切替信号に応じて駆動回路42a?42cに駆動装置11、光源15、発光表示素子21の各々の動作させるための制御信号を出力し、この制御信号を受けて駆動回路42a?42cが駆動装置11、光源15、発光表示素子21に駆動信号を出力し、これらを動作させるようになっている。」(段落【0024】及び【0025】)

(c)「【0026】
次に図5に基づいて、キースイッチSWの操作基づきCPU41にて実行される各発光表示ユニット1,2の発光シーケンス(プログラム)及び消灯シーケンス(プログラム)を説明する。
【0027】
まず観察者によってキースイッチSWがオフ状態からオン状態に操作されると(時刻t1)、CPU41にオン信号からなる切替信号が入力され、CPU41は、先ず第2の発光表示ユニット2の発光表示素子21を発光させる処理を行う。これにより第2の発光表示ユニット2は、キースイッチSWがオン操作と略同時に第1,第2のグラフィック表示部GD1,GD2を形成し、それらの発光表示像GDL1,GDL2が透過型反射パネル3を通じて反射され、観察者に虚像として視認される。なおこの場合、発光表示像GDL1にて表示される走行距離データは、キースイッチSWのオフ直前に図示しない不揮発メモリに記憶されていた値となる。
【0028】
次にCPU41は、時刻t1から所定時間(例えば1秒)経過後となる時刻t2で第1の発光表示ユニット1の光源15を点灯(発光)させる処理を行う。これにより第1の発光表示ユニット1は、指針式表示部PDを形成し、その指針式発光表示像PDLが透過型反射パネル3を透過し、図3に示すように虚像となる発光表示像GDL1,GDL2と共に実像として観察者に視認される。この状態から時刻t3にて示すキースイッチSWのオフ操作までは、発光表示像GDL1,GDL2及び指針式発光表示像PDLの発光状態が継続され、前記センサ類に応じて発光表示像GDL1の値が変化すると共に駆動装置11の指針12の振れ角が変化する」(段落【0026】ないし【0028】)

(2)ここで、上記(1)の(a)ないし(c)の記載及び図面からみて、次のことが分かる。

(d)キースイッチSWがオン状態に操作されると、先ず第2の発光表示ユニット2が発光し、所定時間経過後、第1の発光表示ユニット1が発光することから、キースイッチSWのオン状態への操作により第1の発光表示ユニット1に優先して第2の発光表示ユニット2に電力を供給しているといえる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物2には、次の技術(以下、「刊行物2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。

「車両用表示装置において、キースイッチのオン状態への操作により第1の発光表示ユニットに優先して第2の発光表示ユニットに電力を供給する技術。」

2-2.対比・判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、その構造または技術的意義からみて、刊行物1に記載された発明における「イグニッションスイッチ」は、本願補正発明における「スイッチ手段」に相当し、以下同様に、「オンに伴い」は「投入により」に、「車両用表示装置」は「車載メータ表示装置」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「様々な情報を表示する第2表示部」は、本願補正発明における「操作や警報に関わるメッセージ情報を表示する第2表示部」に、「情報を表示する第2表示部」という限りにおいて相当する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「第1表示部におけるパネル光源と第2表示部における液晶パネルに駆動電力を供給し、所定の遅延時間をもって、前記第1表示部における指針光源と前記第2表示部における液晶光源に電力を供給する制御手段」は、本願補正発明における「第1表示部に優先して第2表示部に電力を供給する制御手段」に、「第1表示と第2表示部に電力を供給する制御手段」という限りにおいて相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「計測情報を表示する第1表示部と、
前記第1表示部の近傍に配置され、情報を表示する第2表示部と、
前記第1、前記第2表示部と電源とを接続するスイッチ手段と、該スイッチ手段の投入により前記第1表示部と前記第2表示部に電力を供給する制御手段と、
を備える車載メータ表示装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、第2表示部に表示する情報が「操作や警報に関わるメッセージ情報」であり、スイッチ手段の投入により「第1表示部に優先して前記第2表示部に電力を供給する」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、第2表示部に表示する情報が、操作や警報に関わるメッセージ情報であるかどうか明らかでなく、第1表示部に優先して第2表示部に電力を供給する構成とはなっていない点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
本願補正発明と刊行物2に記載された技術とを対比すると、その構造または技術的意義からみて、刊行物2に記載された技術における「車両用表示装置」は、本願補正発明における「車載メータ表示装置」に相当し、以下同様に、「キースイッチ」は「スイッチ手段」に、「オン状態への操作」は「投入」に、それぞれ相当する。
また、刊行物2に記載された技術における「第1の発光表示ユニット」及び「第2の発光表示ユニット2」は、本願補正発明における「計測情報を表示する第1表示部」及び「操作や警報に関わるメッセージ情報を表示する第2表示部」と、「一方の表示部」及び「他方の表示部」という限りにおいてそれぞれ相当する。
よって、刊行物2に記載された技術を本願補正発明の用語を用いて表現すると、
「車載メータ表示装置において、スイッチ手段の投入により他方の表示部に優先して一方の表示部に電力を供給する技術。」
となる。

ここで、車載メータ表示装置において、液晶表示板等から構成される表示部に「操作や警報に関わるメッセージ情報」を表示させることは、本件出願前において周知の技術(例えば、特開2003-191771号公報(特に、段落【0020】)及び特開2004-34893号公報参照。以下、「周知技術1」という。)である。
さらに、車載メータ表示装置において、警報や報知情報といった運転者に注意を促す必要のある情報を優先して表示させ、運転者に伝達することは、本件出願前において周知の技術(例えば、特開2003-191771号公報(キースイッチSWの投入により、計測値表示部D1,D2,D3,D4に優先して各種警報や報知情報等が表示される表示パネルDPを表示させる点)及び特開平4-240522号公報(IGスイッチの投入により、第1表示装置の指針に優先して第2表示装置に注意表示又は警告表示を表示させる点)を参照。以下、「周知技術2」という。)である。

そうすると、刊行物1に記載された発明において、刊行物2に記載された技術を適用する際、上記周知技術1及び周知技術2を考慮することで、第2表示部に「操作や警報に関わるメッセージ情報」を表示し、このような第2表示部を優先して表示するために「第1表示部に優先して前記第2表示部に電力を供給する」ようにして、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果も、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定より却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成22年5月31日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、本件出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された上記(第2.の[理由]の1-1.(A)【請求項1】)のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

2.引用刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由において引用された刊行物1(特開2001-277905号公報)に記載された発明及び刊行物2(特開2004-61325号公報)に記載された技術は、前記第2.の[理由]2-1-1.(3)及び2-1-2.(3)にそれぞれ記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の[理由]1-2.で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2.の[理由]2-2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-03 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2005-117118(P2005-117118)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60K)
P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 一夫平田 信勝  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 柳田 利夫
安井 寿儀
発明の名称 車載メータ表示装置  
代理人 特許業務法人ゆうあい特許事務所  
代理人 特許業務法人ゆうあい特許事務所  

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