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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1245308
審判番号 不服2010-14345  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-30 
確定日 2011-10-20 
事件の表示 特願2004-334704「ズームレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-145762〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成16年11月18日の出願であって、平成21年11月24日付けで拒絶理由が通知され、平成22年3月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成23年4月12日付けで審尋がなされたが、審判請求人からの回答はなかった。



2.補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成22年6月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

2-1.本願補正発明

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおり補正することを含むものである(以下「本願補正発明」という。)。

「 物体側から像面側に向けて順に配列された、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とから構成され、前記第1レンズ群を像面側へ移動させ途中で物体側へ反転して移動させると共に前記第2レンズ群を物体側へ移動させて広角端から望遠端への変倍を行うズームレンズであって、
前記第2レンズ群は、物体側から像面側に向けて順に所定の間隔をおいて配列された、正の屈折力をもつ第3レンズ、負の屈折力をもつ第4レンズ、及び正の屈折力をもつ第5レンズからなり、 さらに、前記第2レンズ群の最も物体側寄りに配置されて前記第2レンズ群と共に移動する開口絞りを有し、
次の3つの条件式
0.90≦(DG1+DG2)/fw≦2.30
0.5≦|fG1|/fG2≦1.6
1.2≦fG2/fw≦3.5
但し、DG1:光軸上における第1レンズ群の厚み
DG2:光軸上における第2レンズ群の厚み
fw:広角端における第1レンズ群から像面までのレンズ系の焦点距離
fG1:第1レンズ群の焦点距離
fG2:第2レンズ群の焦点距離
を満足する、ことを特徴とするズームレンズ。」(下線は補正箇所を示す。)

本件補正による特許請求の範囲の請求項1に係る補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明においては「物体側から像面側に向けて順に、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とを備え」た「ズームレンズ」であったところを、「物体側から像面側に向けて順に配列された、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とから構成され」た「ズームレンズ」である(すなわち、2つのレンズ群のみからなるズームレンズである)と限定し、同様に、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「第2レンズ群」について、「物体側から像面側に向けて順に所定の間隔をおいて配列された、正の屈折力をもつ第3レンズ、負の屈折力をもつ第4レンズ、及び正の屈折力をもつ第5レンズからな」るものである(すなわち、第2レンズ群が互いに独立した(接合レンズでない)3つのレンズよりなる)と限定することを含むものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下に検討する。


2-2.引用発明

2-2-1.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平04-046308号公報(以下「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている(後述の「2-2-2.引用発明の認定」において引用した記載に下線を付した。)。

記載事項a.特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
(1)物体側より順に負の屈折力を有する前群と正の屈折力を有する後群とから成り、前群と後群との間の空気間隔を変化させることによつて全系の焦点距離を変化させるズームレンズにおいて、全系中に非球面を2面以上有し、且つ次の条件を満足することを特徴とするズームレンズ;
0.65<|φ_(1)/φ_(W)|<2.0
ここで、φ_(1):前群の屈折力
φ_(W):広角端での全系の屈折力
である。
(2)前記前群が2枚のレンズから成り、前記後群が3枚のレンズから成ることを特徴とする第1請求項に記載のズームレンズ。
(3)前記前群及び後群がいずれも2枚のレンズから成ることを特徴とする第1請求項に記載のズームレンズ。」

記載事項b.第7頁右下欄第10行乃至第8頁左上欄第2行
「<実施例7>
f=28.8?44.3?68.0 F_(NO)=4.6?5.2?5.6
曲率半径 軸上面間隔 屈折率 アッベ数
r_(1)^(*)158.476
d_(1) 1.459 N_(1)1.78850 ν_(1)45.68
r_(2)^(* )15.259
d_(2) 6.074
r_(3 )34.345
d_(3) 4.906 N_(2)1.70055 ν_(2)30.11
r_(4)^(*)_( )428.888
d_(4) 39.550?17.688?3.500
r_(5)^(*)_( )20.364
d_(5) 5.353 N_(3)1.58913 ν_(3)61.11
r_(6) -4030.470
d_(6 )5.668
r_(7)^(* )-65.568
d_(7) 3.056 N_(4)1.84666 ν_(4)23.82
r_(8)^(* )113.811
d_(8 )3.017
r_(9)^(* )-37.508
d_(9) 2.812 N_(5)1.51680 ν_(5)64.20
r_(10 )-17.384 」

記載事項c.第10頁左上欄第2行乃至第5行
「 第1図?第9図は、前記実施例1?9に対応するレンズ構成図であり、図中の矢印は前記前群及び後群の最広角端(S)から最望遠端(L)にかけての移動を模式的に示している。」

記載事項d.第7図




2-2-2.引用発明の認定

記載事項c及び記載事項dの記載内容から、引用例のズームレンズは、前群を像面側に移動させ途中で物体側へ反転して移動させると共に後群を物体側へ移動させて最広角端から最望遠端への変倍を行うものであることが理解できる。
記載事項bに記載のズームレンズの実施例における数値データ及び記載事項dのレンズ構成図から、引用例のズームレンズは、後群が、物体側から像面側に向けて順に所定の間隔をおいて配列された、正の屈折力を持つレンズ、負の屈折力をもつレンズ、正の屈折力をもつレンズからなることが理解できる。
記載事項bに記載のズームレンズの実施例における数値データから、DG1を光軸上における前群の厚み、DG2を光軸上における後群の厚み、fwを最広角端における前群から像面までのレンズ系の焦点距離とするとき、DG1、DG2及びfwの値はそれぞれ、12.439、19.906及び28.8であるから、引用例のズームレンズにおいて、(DG1+DG2)/fwの値は1.123であることが理解できる。
記載事項bに記載のズームレンズの実施例における数値データから、fG1を前群の焦点距離、fG2を後群の焦点距離とするとき、fG1及びfG2の値は、それぞれ-44.2464及び40.7047と算出されるから、引用例のズームレンズにおいて、|fG1|/fG2の値は1.087であることが理解できる。
記載事項bに記載のズームレンズの実施例における数値データから、引用例のズームレンズにおいて、fG2/fwの値は1.413であることが理解できる。

上記各事項及び記載事項a乃至記載事項dの記載内容から、引用例には、

「 物体側より順に負の屈折力を有する前群と正の屈折力を有する後群とから成り、前群を像面側に移動させ途中で物体側へ反転して移動させると共に後群を物体側へ移動させて最広角端から最望遠端への変倍を行うズームレンズにおいて、
後群は、物体側から像面側に向けて順に所定の間隔をおいて配列された、正の屈折力を持つレンズ、負の屈折力をもつレンズ、正の屈折力をもつレンズからなり、
(DG1+DG2)/fwの値は1.123であり、
|fG1|/fG2の値は1.087であり、
fG2/fwの値は1.413である、
ズームレンズ。
但し、DG1は光軸上における前群の厚み、
DG2は光軸上における後群の厚み、
fwは最広角端における前群から像面までのレンズ系の焦点距離、
fG1は前群の焦点距離、
fG2は後群の焦点距離とする。」

(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


2-3.対比

本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明の「負の屈折力を有する前群」は、本願補正発明の「全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群」に相当し、同様に、「正の屈折力を有する後群」は「全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群」に相当する。
引用発明の「物体側より順に・・・前群と・・・後群とから成」るとの事項は、本願補正発明の「物体側から像面側に向けて順に配列された・・・第1レンズ群と、・・・第2レンズ群とから構成され」るとの事項に相当する。
引用発明は、「(DG1+DG2)/fwの値」が「1.123であ」るから、本願補正発明の「条件式」「0.90≦(DG1+DG2)/fw≦2.30」「を満足する」。
引用発明は、「|fG1|/fG2の値」が「1.087であ」るから、本願補正発明の「条件式」「0.5≦|fG1|/fG2≦1.6」「を満足する」。
引用発明は、「fG2/fwの値」が「1.413であ」るから、本願補正発明の「条件式」「1.2≦fG2/fw≦3.5」「を満足する」。

したがって、引用発明と本願補正発明とは、

「 物体側から像面側に向けて順に配列された、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とから構成され、前記第1レンズ群を像面側へ移動させ途中で物体側へ反転して移動させると共に前記第2レンズ群を物体側へ移動させて広角端から望遠端への変倍を行うズームレンズであって、
前記第2レンズ群は、物体側から像面側に向けて順に所定の間隔をおいて配列された、正の屈折力をもつ第3レンズ、負の屈折力をもつ第4レンズ、及び正の屈折力をもつ第5レンズからなり、
次の3つの条件式
0.90≦(DG1+DG2)/fw≦2.30
0.5≦|fG1|/fG2≦1.6
1.2≦fG2/fw≦3.5
但し、DG1:光軸上における第1レンズ群の厚み
DG2:光軸上における第2レンズ群の厚み
fw:広角端における第1レンズ群から像面までのレンズ系の焦点距離
fG1:第1レンズ群の焦点距離
fG2:第2レンズ群の焦点距離
を満足する、ズームレンズ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明では、「第2レンズ群の最も物体側寄りに配置されて前記第2レンズ群と共に移動する開口絞りを有し」ているのに対し、引用発明では当該特定事項を有していない点。


2-4.判断

物体側から像面側に向けて順に配列された、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とから構成され、前記第1レンズ群を像面側へ移動させ途中で物体側へ反転して移動させると共に前記第2レンズ群を物体側へ移動させて広角端から望遠端への変倍を行うズームレンズにおいて、第2レンズ群の最も物体側寄りに配置されて前記第2レンズ群と共に移動する開口絞りを有するものは本願の出願時点で周知であるから(例えば、原査定の拒絶の理由において提示された、特開平05-281470号公報(実施例6参照)、特開2004-264638号公報(実施例1参照))、引用発明において、前記周知の構成を採用し、後群の最も物体側寄りに配置されて前記後群と共に移動する開口絞りを有するものとして相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、審判請求書において、前記特開平05-281470号公報の記載事項について、「このズームレンズにおいては、第1レンズ群と第2レンズ群は単に両者の間隔を変えるように移動すると記載されているのみであり」と主張しているが、ズームレンズの実施例における数値データから、変倍に際し第1レンズ群が反転移動していることは明らかである。


2-5.効果について

本願補正発明による効果は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別なものとはいえない。


2-6.補正の却下の決定のむすび

以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。



3.本願発明について

3-1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 物体側から像面側に向けて順に、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とを備え、前記第1レンズ群を像面側へ移動させ途中で物体側へ反転して移動させると共に前記第2レンズ群を物体側へ移動させて広角端から望遠端への変倍を行うズームレンズであって、
次の条件式(1),(2)を満足する、ことを特徴とするズームレンズ。
(1)0.90≦(DG1+DG2)/fw≦2.30
(2)0.5≦|fG1|/fG2≦1.6
但し、DG1:光軸上における第1レンズ群の厚み
DG2:光軸上における第2レンズ群の厚み
fw:広角端における第1レンズ群から像面までのレンズ系の焦点距離
fG1:第1レンズ群の焦点距離
fG2:第2レンズ群の焦点距離」


3-2.引用発明

引用例及びその記載事項は、前記「2-2.引用発明」に記載したとおりである。


3-3.対比・判断

本願発明は、本願補正発明において、「物体側から像面側に向けて順に配列された、全体として負の屈折力をもつ第1レンズ群と、全体として正の屈折力をもつ第2レンズ群とから構成され」た「ズームレンズ」である、すなわち、2つのレンズ群のみからなるズームレンズであると限定のあるところを、これを削除し、以下同様に、「前記第2レンズ群は、物体側から像面側に向けて順に所定の間隔をおいて配列された、正の屈折力をもつ第3レンズ、負の屈折力をもつ第4レンズ、及び正の屈折力をもつ第5レンズからな」ると限定のあるところを、これを削除し、「前記第2レンズ群の最も物体側寄りに配置されて前記第2レンズ群と共に移動する開口絞りを有し」ていると限定のあるところを、これを削除し、「条件式」「1.2≦fG2/fw≦3.5」「を満足する」と限定のあるところを、これを削除したものに相当する。
そうすると、前述の「2-3.対比」において述べたとおり、本願補正発
明と引用発明との相違点は、本件補正によって、「前記第2レンズ群の最も物体側寄りに配置されて前記第2レンズ群と共に移動する開口絞りを有し」ているとする限定が付されたことにより生じた相違点のみであるから、本願発明と引用発明との間には上記相違点は存在しないから、本願発明は引用例に記載された発明である。
よって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


3-4.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることが出来ない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-02 
結審通知日 2011-08-09 
審決日 2011-08-29 
出願番号 特願2004-334704(P2004-334704)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 英信  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 吉川 陽吾
吉野 公夫
発明の名称 ズームレンズ  
代理人 山本 敬敏  

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