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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1245318
審判番号 不服2010-20020  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-06 
確定日 2011-10-20 
事件の表示 特願2001- 35301「薄膜光電変換装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月30日出願公開、特開2002-246619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成13年2月13日の特許出願であって、平成22年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月6日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである(以下、平成22年9月6日になされた手続補正を「本件補正」という。)。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

本件補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1につき、補正前の

「基板上において、第1導電型半導体層、実質的に真性半導体の結晶質光電変換層および逆導電型半導体層を含む結晶質光電変換ユニットの少なくとも1つを含む薄膜光電変換装置の製造方法であって、
前記結晶質光電変換層をプラズマCVDで堆積する条件として、
プラズマ反応室内に導入される反応ガスの主成分としてシラン系ガスと水素ガスを含み、そのシラン系ガスに対する水素ガスの流量比が50倍以上であり、
前記プラズマ反応室内の圧力が600Pa以上に設定され、前記プラズマ反応室内において前記基板を加熱するためのヒータは用いられず、
前記反応室内においてプラズマを生じさせるために300mW/cm^(2)以上のパワー密度で高周波電力が印加され、
前記基板は前記高周波電力の印加によって生じるプラズマの作用によって昇温するが、その昇温時の最高温度は230℃を越えないように調整されることを特徴とする製造方法。」

を、

「基板上において、第1導電型半導体層、実質的に真性半導体の結晶質光電変換層および逆導電型半導体層を含む結晶質光電変換ユニットの少なくとも1つを含む薄膜光電変換装置の製造方法であって、
前記結晶質光電変換層をRFプラズマCVDで堆積する条件として、
プラズマ反応室内に導入される反応ガスの主成分としてシラン系ガスと水素ガスを含み、そのシラン系ガスに対する水素ガスの流量比が50倍以上であり、
前記プラズマ反応室内の圧力が600Pa以上に設定され、前記プラズマ反応室内において前記基板を加熱するためのヒータは用いられず、
前記反応室内においてプラズマを生じさせるために500mW/cm^(2)以上のパワー密度で高周波電力が印加され、
前記基板は前記高周波電力の印加によって生じるプラズマの作用によって昇温するが、その昇温時の最高温度は150℃以上であり230℃を越えないように調整されることを特徴とする製造方法。」

に補正する内容を含むものである。

2 補正の内容

上記1の補正は、補正前の請求項1の「プラズマCVD」を「RFプラズマCVD」に限定し、同じく「300mW/cm^(2)以上のパワー密度で高周波電力が印加され」との特定事項を「500mW/cm^(2)以上のパワー密度で高周波電力が印加され」と限定し、同じく「昇温時の最高温度は230℃を越えないように調整され」を「昇温時の最高温度は150℃以上であり230℃を越えないように調整され」と限定するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件

本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)引用刊行物の記載

原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-243704号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法であって、前記光電変換装置は基板上に形成された少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、前記光電変換ユニットの少なくとも1つはプラズマCVD法によって順次積層された1導電型半導体層と、結晶質シリコン系薄膜光電変換層と、逆導電型半導体層とを含むものであり、前記光電変換ユニットに含まれる少なくとも前記結晶質光電変換層を前記プラズマCVD法で堆積する条件として、プラズマ反応室内の圧力が5Torr以上であり、前記反応室内において第1の放電電極上に前記基板が配置され、前記第1の放電電極に対向して第2の放電電極が配置され、前記第1と第2の放電電極の互いに対向する主面は2cm以下の距離で隔てられており、前記第1と第2の放電電極の少なくとも一方の前記対向主面上において、前記基板の周縁から前記対向主面に平行な方向に1?5cmの範囲内の距離だけ隔てられた帯域内の少なくとも一部において1?5mmの高さの隆起部が設けられていることを特徴とするシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法。」

イ「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は薄膜光電変換装置の製造方法とその方法に関し、特に、シリコン系薄膜光電変換装置の低コスト化と性能改善に関するものである。なお、本明細書において、「多結晶」と「微結晶」と「結晶質」の用語は、薄膜光電変換装置の技術分野で通常用いられているように、部分的に非晶質状態を含むものをも意味するものとする。」

ウ「【発明が解決しようとする課題】前述のような結晶質シリコン系薄膜光電変換層を含む多結晶型光電変換装置においては、以下のような問題がある。すなわち、多結晶シリコンであろうと部分的に非晶質相を含む微結晶シリコンであろうと、それを太陽電池の光電変換層として用いる場合には、結晶質シリコンの吸収係数を考えれば、太陽光を十分に吸収させるためには少なくとも数μmから数十μmもの膜厚が要求される。これは、非晶質シリコン光電変換層の場合に比べれば1桁弱から2桁も厚いことになる。
【0012】しかるに、これまでの技術によれば、プラズマCVD法によって低温で良質の結晶質シリコン系薄膜を得るためには、温度,反応室内圧力,高周波パワー,ならびにガス流量比というような種々の成膜条件パラメータを検討しても、その成膜速度は非晶質シリコン膜の場合と同程度もしくはそれ以下であって、たとえば0.6μm/hr程度にしかならなかった。この問題を言い換えれば、結晶質シリコン薄膜光電変換層は非晶質シリコン光電変換層の何倍から何10倍もの成膜時間を要することになり、光電変換装置の製造工程のスループットの向上が困難となって低コスト化の妨げとなる。
【0013】上述のような従来技術の課題に鑑み、本発明の目的は、低温プラズマCVD法で形成する結晶質シリコン系光電変換層の成膜速度を高めて製造工程のスループットを向上させ、かつ光電変換装置の性能を改善することにある。」

エ「【0021】結晶質シリコン系薄膜光電変換層105の堆積時において、プラズマCVD反応室内圧力が5Torr以上に設定される。そのときの高周波パワー密度は100mW/cm^(2) 以上であることが好ましい。また、反応室内に導入されるガスの主成分としてシラン系ガスと水素ガスを含み、かつシラン系ガスに対する水素ガスの流量比は50倍以上にされることが好ましく、100倍以上にされることがさらに好ましい。」

オ「【0038】
【実施例】以下において、本発明の実施例の製造方法によるシリコン系薄膜光電変換装置としてのシリコン系薄膜太陽電池が、参考例の製造方法による太陽電池とともに説明される。
【0039】(参考例1)まず、図1の実施の形態に類似して、参考例1としての多結晶型シリコン薄膜太陽電池の作製が試みられた。この参考例1の太陽電池における光電変換層105を堆積するために、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法において、7Torrの反応室圧力、1:170のシランと水素の流量比、300mW/cm^(2) の放電パワー密度、そして2cmの電極間距離の条件のもとでプラズマを発生させようとしたが、プラズマが不安定で2つの電極表面近傍に分離したり放電が停止して成膜することができなかった。
【0040】(参考例2)次に、図1の実施の形態に類似して、参考例2としての多結晶型シリコン薄膜太陽電池が実際に作製された。ガラス基板101上に裏面電極110として、厚さ300nmのAg膜102とその上の厚さ100nmのZnO膜103のそれぞれがスパッタリング法によって形成された。裏面電極110上には、厚さ30nmでリンドープされたn型微結晶シリコン層104、厚さ3μmでノンドープの結晶質シリコン薄膜光電変換層105、および厚さ15nmでボロンドープされたp型微結晶シリコン層106がそれぞれRFプラズマCVD法により成膜され、nip光電変換ユニット111が形成された。光電変換ユニット111上には、前面電極107として、厚さ80nmの透明導電性ITO膜がスパッタリング法にて堆積され、その上に電流取出のための櫛形Ag電極108が蒸着法にて堆積された。
【0041】結晶質シリコン薄膜光電変換層105は、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法により堆積された。そのときに用いられた反応ガスにおいてはシランと水素の流量比が1:170で混合され、反応室の圧力は7Torrに設定された。また、放電パワー密度は300mW/cm^(2) であり、基板温度は180℃に設定された。
【0042】この参考例2の多結晶型シリコン薄膜太陽電池に入射光109としてAM1.5の光を100mW/cm^(2) の光量で照射したときの出力特性においては、開放端電圧が0.501V、短絡電流密度が22.9mA/cm^(2) 、曲線因子が76.5%、そして変換効率が8.89%であった。ただし、この太陽電池の膜面に平行な局所的な場所における変換効率の分布には、約13%の変動が含まれていた。
【0043】(実施例1)実施例1においては、参考例2に類似した多結晶型シリコン薄膜太陽電池が作製された。すなわち、この実施例1は、アンカー部を有する放電電極を用いて結晶質光電変換層105が堆積されたことのみにおいて参考例2と異なっている。このとき、アンカー部として半径5mmの半球状の隆起物が用いられた。それらの隆起物は基板の周縁から1.5cmの距離だけ隔てられ、8個の隆起部が等間隔に配置されていた。そして、1.8cmの電極間距離の条件のもとにおいて、結晶質光電変換層105が堆積された。
【0044】この実施例1の多結晶型シリコン薄膜太陽電池に参考例2の場合と同じ条件で光照射したときの出力特性は参考例2の太陽電池とほとんど変わらなかったが、太陽電池の膜面に平行な局所的な場所における変換効率の分布は約7%の範囲内の変動に収まっていた。すなわち、実施例1の太陽電池では、参考例2に比べて、半導体層の膜面に平行な方向における均一性が改善され、1つの基板上の太陽電池における変換効率の場所的な不均一性が改善され得ることがわかる。」

(2)引用発明

上記(1)において、引用刊行物1の【0041】に記載の「結晶質シリコン薄膜光電変換層105」は、【請求項1】の「結晶質シリコン系薄膜光電変換層」及び「前記結晶質光電変換層」に対応する構成であると認められる。

そうすると、引用刊行物1には、
「シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法であって、
前記光電変換装置は基板上に形成された少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、前記光電変換ユニットの少なくとも1つはプラズマCVD法によって順次積層された1導電型半導体層と、結晶質シリコン系薄膜光電変換層と、逆導電型半導体層とを含むものであり、
前記結晶質シリコン系薄膜光電変換層は、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法により堆積され、そのときに用いられる反応ガスにおいてはシランと水素の流量比が1:170で混合され、反応室の圧力は7Torrに設定され、放電パワー密度は300mW/cm^(2) であり、基板温度は180℃に設定され、
前記反応室内において第1の放電電極上に前記基板が配置され、
前記第1の放電電極に対向して第2の放電電極が配置され、
前記第1と第2の放電電極の互いに対向する主面は2cm以下の距離で隔てられており、
前記第1と第2の放電電極の少なくとも一方の前記対向主面上において、前記基板の周縁から前記対向主面に平行な方向に1?5cmの範囲内の距離だけ隔てられた帯域内の少なくとも一部において1?5mmの高さの隆起部が設けられているシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は、「基板上に形成された少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、前記光電変換ユニットの少なくとも1つはプラズマCVD法によって順次積層された1導電型半導体層と、結晶質シリコン系薄膜光電変換層と、逆導電型半導体層とを含む」シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法であるから、「基板上において、第1導電型半導体層、実質的に真性半導体の結晶質光電変換層および逆導電型半導体層を含む結晶質光電変換ユニットの少なくとも1つを含む薄膜光電変換装置の製造方法」である点で本願補正発明と一致する。

イ 引用発明において、
「前記結晶質シリコン系薄膜光電変換層は、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法により堆積され、そのときに用いられる反応ガスにおいてはシランと水素の流量比が1:170で混合され、反応室の圧力は7Torrに設定され」
るものであり、「7Torr」は、約933Paであるから、引用発明は、本願補正発明の
「前記結晶質光電変換層をRFプラズマCVDで堆積する条件として、
プラズマ反応室内に導入される反応ガスの主成分としてシラン系ガスと水素ガスを含み、そのシラン系ガスに対する水素ガスの流量比が50倍以上であり、
前記プラズマ反応室内の圧力が600Pa以上に設定され」
との構成を有する。

ウ 以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、

「基板上において、第1導電型半導体層、実質的に真性半導体の結晶質光電変換層および逆導電型半導体層を含む結晶質光電変換ユニットの少なくとも1つを含む薄膜光電変換装置の製造方法であって、
前記結晶質光電変換層をRFプラズマCVDで堆積する条件として、
プラズマ反応室内に導入される反応ガスの主成分としてシラン系ガスと水素ガスを含み、そのシラン系ガスに対する水素ガスの流量比が50倍以上であり、
前記プラズマ反応室内の圧力が600Pa以上に設定される製造方法。」

である点で一致し、以下の点a及びbで相違するものと認められる。

a 本願補正発明では、プラズマ反応室内において基板を加熱するためのヒータは用いられず、基板が高周波電力の印加によって生じるプラズマの作用によって昇温する時の最高温度は150℃以上であり230℃を越えないように調整されるのに対して、引用発明では、反応室において基板を加熱するためのヒータが用いられるのか否か不明であり、「基板温度は180℃に設定され」る点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明において、反応室内においてプラズマを生じさせるために500mW/cm^(2)以上のパワー密度で高周波電力が印加されるのに対して、引用発明において、結晶質シリコン系薄膜光電変換層がRFプラズマCVD法により堆積されるときに用いられる放電パワー密度が300mW/cm^(2) である点(以下「相違点2」という。)。

(4)判断

ア 上記相違点1について検討する。
RFプラズマCVD法による結晶質シリコン薄膜光電変換層の堆積において、基板がプラズマの作用によって昇温することは、技術常識より明らかであるから、「基板温度は180℃に設定され」る引用発明において、ヒーターを使用するか否かは、基板温度を設定した温度にするために追加的な加熱が必要であるか否かに応じて当業者が適宜選択しうる事項であり、ヒーターを用いないようにすることに格別の困難があるものとは認められない。そして、引用発明において、ヒーターを用いないことにより、「180℃に設定され」る基板温度を、高周波電力の印加によって生じるプラズマの作用によって昇温する時の最高温度とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 上記相違点2について検討する。
引用刊行物1には、「結晶質シリコン系薄膜光電変換層105の堆積時において、プラズマCVD反応室内圧力が5Torr以上に設定される。そのときの高周波パワー密度は100mW/cm^(2) 以上であることが好ましい」ことが記載されている(【0021】参照。)。
上記記載に照らせば、引用発明において、「放電パワー密度」は、300mW/cm^(2)に限らず、当業者が設計上適宜の大きさを採用できるものというべきである。そして、放電パワー密度を500mW/cm^(2)以上とすることに、格別の困難があるとは認められない。

ウ 本願補正発明における数値限定の意義について

本願明細書の記載を見ても、相違点1及び相違点2に係る「基板が高周波電力の印加によって生じるプラズマの作用によって昇温する時の最高温度が150℃以上であり230℃を越えないように調整される」及び「反応室内においてプラズマを生じさせるために500mW/cm^(2)以上のパワー密度で高周波電力が印加される」との数値限定は、いずれも設計的事項の域を超えるものではなく、本願補正発明において、かかる限定により格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。

エ 請求人の主張について

請求人は、審判請求の理由の3.(1)において、
「引用発明においては、基板の加熱の有無に関しては直接的に言及されていません。しかしながら、参考例2では、「基板温度は180℃に設定された。」と記載されており(段落「0041」の末尾)、プラズマCVDにおいては、基板がヒータによって加熱されるとの技術常識を加味すれば、引用文献1の参考例2においては、基板を加熱するためのヒータを用い、そのヒータの温度を180℃に設定したと解するのが相当であることから、「基板温度180℃」との記載からは、引用発明における基板の昇温時の最高温度(実測温度)は明らかではないというべきです。」
と主張する。
しかし、ヒータによる加熱の有無にかかわらず、引用刊行物【0041】の記載からは、堆積時の基板温度を180℃に設定することが理解されるから、請求人の上記主張は採用できない。

オ 小括

以上の検討によれば、本願補正発明は、引用発明及び引用刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび

以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2、2に補正前のものとして示したとおりである。

2 引用刊行物の記載及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用刊行物1及び引用発明は、それぞれ、上記第2、3(1)及び(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、上記第2、3(3)での検討に照らして、本願発明では、プラズマ反応室内において基板を加熱するためのヒータは用いられず、基板が高周波電力の印加によって生じるプラズマの作用によって昇温する時の最高温度は230℃を越えないように調整されるものであるのに対して、引用発明では、反応室において基板を加熱するためのヒータが用いられるのか否か不明であり、「基板温度は180℃に設定され」るものである点(以下「相違点3」という。)で、両者は相違し、その余の点において一致するものと認められる。

相違点3は、上記第2、3(4)アで検討した相違点1の内容に含まれるものであるところ、同検討に照らして、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用刊行物1に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用刊行物1に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-16 
結審通知日 2011-08-17 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2001-35301(P2001-35301)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 聖司  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 北川 創
稲積 義登
発明の名称 薄膜光電変換装置の製造方法  
代理人 吉本 力  
代理人 新宅 将人  

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