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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1245321
審判番号 不服2010-20775  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-15 
確定日 2011-10-20 
事件の表示 特願2005-361794「写真撮影編集方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月28日出願公開、特開2007-163949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成17年12月15日の出願であって、平成22年6月3日付けで手続補正がなされたが、同年6月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月15日に審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
1.本願発明
本願の請求項4に係る発明は、平成22年6月3日付けの手続補正書の、特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「撮影空間内の一以上の被写体を照明する照明手段を備えた撮影側の撮影筐体と、
前記照明手段で照明されている被写体を撮影して撮影画像を作成する撮影手段と、
前記撮影画像を編集して編集画像を作成許容する編集手段を備えた編集側の編集筐体と、
前記撮影画像または/および前記編集画像を出力する出力手段とを有する写真撮影編集装置であって、
前記編集筐体と前記撮影筐体とはそれぞれ分離可能に構成され、
前記編集筐体に、撮影方向を前記撮影筐体側に向けた前記撮影手段を備え、
前記撮影筐体に、前記撮影手段による該撮影筐体越しの撮影を許容する窓部を備え、
前記編集手段を、
前記編集筐体の左右両側面の所定の取り付け位置に、該編集筐体の内部に埋設させてそれぞれ取り付け、
前記所定の取り付け位置を、前記撮影筐体と前記編集筐体を接続した筐体全体の奥行き方向と、鉛直方向とのそれぞれの方向において、前記編集手段の取り付け位置と前記撮影手段を備えた位置との少なくとも一部が一致する位置とした
写真撮影編集装置。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物及びそれに記載された発明

引用文献1:特開2003-178373号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、以下の記載がある。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばゲームセンターや遊園地、テーマパーク、旅館、観光施設等の施設に設置され、被写体を撮像してその撮像画像を編集し、その編集した編集画像及び前記撮像画像から所定の画像を印刷した写真シールを販売するような、写真シール自動販売方法とその装置、及び写真シールシートに関する。」

(1b)「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、撮像空間内の1以上の被写体を照明手段で照明し撮像手段で撮像して撮像画像を作成する撮像処理を許容し、編集対象の画像に対して編集手段で編集して編集画像を作成する編集処理を許容し、所定の画像を出力画像として出力手段で出力する写真シール自動販売方法又はその装置であって、前記撮像空間外に設定された編集空間内で、複数の前記入力手段での編集操作を実行させる写真シール自動販売方法又はその装置であることを特徴とする。
【0009】前記撮像空間は、カーテン等の部材で囲繞された空間、又は前記撮像手段に撮像され得る開放された空間であることを含む。前記編集空間は、カーテン等の部材で囲繞された空間、前記編集手段周辺の開放された空間、又は前記編集手段で編集操作を実行し得る空間であることを含む。
【0010】前記編集手段は、タッチペンとタッチパネルで構成する編集手段であることを含む。前記入力手段は、タッチペンであることを含む。前記複数の入力手段での編集操作は、1つの入力手段を伴う編集手段を複数備えての編集操作、複数の編集手段を伴う編集手段を1つ備えての編集操作、複数の編集手段を伴う編集手段を複数備えての編集操作であることを含む。」

(1c)「【0025】写真シール自動販売機1は、ボックス状の枠9の上辺から吊るしたカーテン8で囲繞し、中央より背面側に筐体2を設置している。なお、この図1では天井板の一部と正面のカーテン8の一部、及び左側面のカーテン8を省略しており、図2では、天井板の一部と左側面のカーテン8の一部、及び枠9の一部を省略している。
【0026】前記筐体2の前方には、普通人が2,3人横に並んだ状態でポーズをとって撮像できる程度の幅の撮像空間3が設けられ、前記筐体2の背面には普通人が2,3人横に並んで落書き編集できる程度の幅の編集空間4が設けられている。
【0027】前記筐体2の正面は、中央に丸型のOKボタン131、NGボタン132と、上向き三角及び下向き三角の2つのボタンからなる選択ボタン133で構成する正面入力装置13a(後述)を設ける。
【0028】前記正面入力装置13aの上には動画像や静止画像、文字画像等の画像を表示する正面ディスプレイ18aを設け、その上には被写体を撮像するデジタルカメラ17を設ける。
【0029】前記デジタルカメラ17を挟むようにして、筐体2の上部左右には被写体を照明する蛍光灯照明装置16,16を配設し、前記正面入力装置13aの左下には硬貨(又は紙幣)を投入する貨幣投入口15aを設ける。
【0030】筐体2の背面には、図2に示すように、被写体を撮像した静止画像、文字画像、落書き用ペン画像等の画像を表示する2つの背面ディスプレイ18b,18cを普通人がタッチし得る程度の高さに並設する。
【0031】前記背面ディスプレイ18b,18cにはタッチペンでタッチされた座標を検知するタッチパネル141,143を重ねて設け、その下にそれぞれのタッチペン142,144を配設して、背面入力装置14b,14cを構成する。筐体2の左側面下部には、写真シールシート5cを排出する排出口19aを設け、筐体2の内部右側には、各装置を制御するパソコン10(図1)を設ける。
【0032】筐体2の内部左側には、図3の部分拡大図(一部断面図)に示すように、前記排出口19aの近傍にプリンタ19を備える。該プリンタ19には、シール紙ユニット5をセットしており、該シール紙ユニット5はロール状に巻いたシール紙5aと正規品か否かを識別させる識別データ等のデータを記憶させたIDタグ5bで構成する。」

(1d)「【0038】蛍光灯照明装置16は、内蔵する蛍光灯を発光させて照明する照明装置であり、制御装置11の照明制御信号を受けて発光のON/OFFを実行する。デジタルカメラ17は、制御装置11からのシャッタ信号を受けて被写体の撮像を実行し、撮像した撮像画像を画像データとして制御装置11に送信する。なお、被写体がポーズを取っている間は被写体を動画撮影し、その動画像を画像データとして制御装置11に送信する。
【0039】正面ディスプレイ18aは、制御装置11からのRGB信号に従って、前記動画像及び撮像画像、文字画像等の画像を表示する。背面入力装置14(14b,14c)は、前述したようにタッチパネル141,143及びタッチペン142,144で構成され、該タッチペン142,144でタッチされた座標を入力信号として制御装置11に送信する。これにより、利用者が前記タッチペン142,144で落書き編集することを可能にしている。
【0040】この2つの背面入力装置14は、同一の撮像画像を表示して1つの撮像画像に対して2人が同時に落書き編集することを可能にしている。また、各背面入力装置14で落書き編集する撮像画像は、それぞれ単独で選択することも可能にしており、別々の撮像画像に対して同時に落書き編集することを可能にしている。
【0041】背面ディスプレイ18b,18cは、制御装置11からのRGB信号に従って、撮像画像、文字画像、落書き編集用のペン画像などの画像を表示する。これにより、利用者が落書き編集している画像を確認しつつ落書き編集を行うことを可能にしている。
【0042】この背面ディスプレイ18b,18cは、対応する背面入力装置14b,14cの入力に従って、表示する落書き編集画像等の画像をそれぞれ単独に変更することを可能にしている。」

(1e)「【0046】以上の構造により、撮像空間3内で被写体によって正面入力装置13aが操作され、正面ディスプレイ18aでポーズを確認させてデジタルカメラ17で撮像を実行し、編集空間4内で背面ディスプレイ18b,18cに表示した撮像画像に対して、背面入力装置14で落書き編集をさせ、該落書き画像及び該落書き画像の元となった撮像画像以外の落書きされていない撮像画像を印刷した写真シールシート5cを排出する。」

(1f)「【0068】仮に、他の実施形態として図8の(I)に示すように背面ディスプレイ18b,18cを筐体2の右側面に並設し、その右側に編集空間4を設けた場合であれば、筐体2が不必要に大きくなって無駄なスペースSが発生する上、利用者の編集空間4への出入り口が同一になるためすれ違えるだけの横幅を設ける必要が発生して、編集空間4を広くする必要がある。したがって、販売回転率を向上する上では有効であるが、空間(スペース)の使い方としてはベストと言い難い。
【0069】他の実施形態としては、図9の(J)に示すように、筐体2を分割して撮像空間3の奥にデジタルカメラ17を備えた筐体2を設け、手前に設けた編集空間4の手前側に背面ディスプレイ18b,18cを備えた筐体2’を設けてもよい。前記撮像空間3と編集空間4をカーテン8で仕切れば、前述の(H)と同様の効果が得られる。
【0070】また、他の実施形態として、図9の(K)に示すように撮像空間3の手前側に背面ディスプレイ18b,18cを備えた筐体2’を設けてもよい。この場合、撮像空間4は枠9(図示省略)で囲繞せず、編集空間4と通路を兼ねるようにできる。
【0071】これにより、空間利用の効率がさらに向上し、例えば編集空間4の手前が通路であった場合、前記編集空間4との区分けがないために心理的に広く感じさせることができる。
【0072】従来の写真シール自動販売機では、利用者は撮像のポーズを取るときを他人に見られたくないという心理があることから、撮像空間(編集空間を含む)をカーテン8で囲繞しているが、編集している様子を見られることについてはそのような心理がないため、編集空間4を囲繞する必要性は乏しく、省略しても差し支えない。
【0073】以上のことから、図10の斜視図に示す実施形態のように、写真シール自動販売機1を壁Wに密着させて設置する場合は、筐体2が壁から遠くなるようにして設置すると最も効率的に空間を利用することができる。
【0074】筐体2の背面側に該当する編集空間4は、開放された空間にして通路を兼ねることができ、また楽しそうに利用者が編集している様子が他の利用者の利用意欲を刺激して、それ自体が写真シール自動販売機1の宣伝となって売上向上を見込むことができる。
【0075】またこのように編集空間4を開放した場合は、従来はカーテン8で囲繞された写真シール自動販売機1と、それを利用するため並んで待っている利用者がいただけの閉鎖的な雰囲気の施設内が、利用者が楽しく編集している開放的で健全な雰囲気に一新され、施設のイメージが明るく改善される。」

(1g)「【図8】


(1h)「【図9】


(1i)「【図10】



これらの記載及び図面を含む刊行物1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「ボックス状の枠(9)内に筐体(2)を設置し、
前記筐体の前方には、枠の上辺から吊るしたカーテン(8)で囲繞し、普通人が2,3人横に並んだ状態でポーズをとって撮像できる程度の幅の撮像空間(3)を設け、
前記筐体の背面には普通人が2,3人横に並んで落書き編集できる程度の幅の編集空間(4)が設けられ、
前記筐体の正面には被写体を撮像するデジタルカメラ(17)を設け、
前記デジタルカメラを挟むようにして、筐体の上部左右には被写体を照明する蛍光灯照明装置(16,16を)配設し、
筐体の背面には、被写体を撮像した静止画像、文字画像、落書き用ペン画像等の画像を表示する2つの背面ディスプレイ(18b,18c)を普通人がタッチし得る程度の高さに並設し、
前記背面ディスプレイにはタッチペンでタッチされた座標を検知するタッチパネル(141,143)を重ねて設け、その下にそれぞれのタッチペン(142,144)を配設して、背面入力装置(14b,14c)を構成した
写真シール自動販売装置。」(以下「引用発明」という。)

3.対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「枠の上辺から吊るしたカーテンで囲繞し、普通人が2,3人横に並んだ状態でポーズをとって撮像できる程度の幅の撮像空間」、「被写体を照明する蛍光灯照明装置」及び「デジタルカメラ」は、それぞれ、本願発明の「撮影空間」、「被写体を照明する照明手段」及び「撮影手段」に相当する。
また、引用発明の「背面入力装置」は、被写体を撮像した静止画像、文字画像、落書き用ペン画像等の画像をタッチペンで編集するためのものであるから、本願発明の「編集手段」に相当する。
そうすると、引用発明の「筐体」は、本願発明の「編集筐体」に相当する。しかも、引用発明では、筐体の正面には被写体を撮像するデジタルカメラを設けているから、該「筐体」は、「編集筐体に、撮影方向を前記撮影筐体側に向けた前記撮影手段を備え」ている点で本願発明と共通する。
また、引用発明の2つの背面入力装置(本願発明の「編集手段」に相当)が、筐体(本願発明の「編集筐体」に相当)の所定の取り付け位置に、それぞれ取り付けられていることは明らかである。
以上のことから、引用発明の「写真シール自動販売装置」が「撮影画像または/および前記編集画像を出力する出力手段とを有する写真撮影編集装置」としての機能を有していることがわかる。

してみると両者は、
「撮影空間内の一以上の被写体を照明する照明手段を備え、
前記照明手段で照明されている被写体を撮影して撮影画像を作成する撮影手段と、
前記撮影画像を編集して編集画像を作成許容する編集手段を備えた編集側の編集筐体と、
前記撮影画像または/および前記編集画像を出力する出力手段とを有する写真撮影編集装置であって、
前記編集筐体に、撮影方向を前記撮影筐体側に向けた前記撮影手段を備え、
前記編集手段を、
前記編集筐体の所定の取り付け位置に、それぞれ取り付けた
写真撮影編集装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

(相違点1)
編集手段を、本願発明では、編集筐体の左右両側面の所定の取り付け位置に、該編集筐体の内部に埋設させて取り付けているのに対して、引用発明では、編集筐体の背面に取り付けており、該編集筐体の内部に埋設させて取り付けているかどうか不明な点。

(相違点2)
本願発明では、照明手段を備えた撮影側の撮影筐体を編集筐体とは分離可能に設け、該撮影筐体に、撮影手段による該撮影筐体越しの撮影を許容する窓部を備え、編集手段の取り付け位置を、前記撮影筐体と前記編集筐体を接続した筐体全体の奥行き方向と、鉛直方向とのそれぞれの方向において、前記編集手段の取り付け位置と前記撮影手段を備えた位置との少なくとも一部が一致する位置としたのに対して、引用発明では、そのような撮影筐体を有しておらず、照明手段を編集筐体に設けている点。

上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
編集手段を撮影手段と別体に設けた装置においては、編集手段をどのように配置するかは、当業者が、かなりの自由度をもって任意に選択しうる事項である(上記摘記事項(1f)?(1i)参照)。
また、編集手段を編集筐体の左右両側面に設けることも、ごく普通に行われている周知技術である(特開2005-284297号公報参照)。
そして、編集手段を、編集筐体の内部に埋設させて取り付けるかどうかは、編集手段の大きさや構造、使用する態様や他の部材との位置関係等を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうる事項である。
したがって、引用発明に、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点2について)
本願発明や引用発明のように、筐体を組合せて構成する装置においては、どういう筐体の組合せにするか、どの機能をどの筐体に設けるか、及び、それらの筐体をどのように配置するか等は、配置スペースや使い勝手等の種々の要因を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうる事項である(上記摘記事項(1f)?(1i)参照)。
したがって、引用発明の照明手段を、筐体(本願発明の「編集筐体」に相当)とは別個の筐体に設け、それを編集筐体前方に配置することは、レイアウトやメンテナンス等の種々の要因を考慮して、当業者が適宜採用しうる事項である。その場合に、該撮影筐体に、撮影手段による該撮影筐体越しの撮影を許容する窓部を備えることは、当業者が当然考慮すべき事項である。
また、編集手段の取り付け位置と撮影手段の位置は、鉛直方向については、編集手段も撮影手段も、ともに利用者が同一の姿勢で正視する可能性があることを考慮すれば、同程度の位置とすることに、格別の困難性はない。奥行き方向については、不要なスペースを排除するという当業者の技術常識を参酌すれば、それらが干渉しない限り、重複して配置しようとすることは、当業者が適宜採用しうる事項である。
してみると、引用発明に、上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明の効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-18 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-06 
出願番号 特願2005-361794(P2005-361794)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 橋本 直明
森林 克郎
発明の名称 写真撮影編集方法およびその装置  
代理人 永田 良昭  

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