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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V |
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管理番号 | 1245325 |
審判番号 | 不服2010-23567 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-20 |
確定日 | 2011-10-20 |
事件の表示 | 特願2005-205864号「埋込型照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 1日出願公開、特開2007- 26829号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年7月14日の出願であって、平成22年7月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。 第2 平成22年10月20日付けの手続補正の却下 [補正却下の決定の結論] 平成22年10月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正後の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「施工面に埋め込み設置される一面が開口した器具本体と、器具本体内に収納されて器具本体の一面側へ光を照射する光源と、前記器具本体の一面開口を閉塞するとともに光源の光を透過させ、前記施工面と面一に設けられた発光面を有する透光パネルとを備え、前記透光パネルは、前記器具本体の一面開口を閉塞する形状を有する複数の透光部材を接合してなる積層構造を有し、前記透光部材間の接合部位には各透光部材を接合すると共に光を拡散する光拡散部が設けられていることを特徴とする埋込型照明器具。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物 (1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-100107号公報(以下「引用例」という。)には、埋込型発光装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0028】本実施形態の埋込型発光装置1は、図1乃至図3に示すように、箱状のケーシング2の上面開口部3に、透視性硝子板4、透光性拡散部材5、及び第二透視性硝子板6を積層した合せ硝子Gを備えている。また、第二透視性硝子板6の下方には、導光板7及び光拡散反射板8が配設され、導光板7の一端側の側面に発光ダイオード9が埋設されている。」 イ 「【0033】また、第二透視性硝子板6は、透視性硝子板4と同様、無色透明な強化硝子から構成されているが、この硝子板6には突起物19が形成されておらず、透光性拡散部材5の下面に面接触している。そして、透視性硝子板4、透光性拡散部材5、及び第二透視性硝子板6は、夫々透明な接着剤によって接着されている。」 ウ 「【0061】・・・透光性拡散部材5及び第二透視性硝子板6を、透視性硝子板4と同等の長さに形成するとともに、第二透視性硝子板6と導光板7との間に、第二透視性硝子板6の長さより所定長さ(太陽電池10の幅に相当)だけ短く、太陽電池10の厚み以上の透明部材(例えばアクリル板)を介装するようにしてもよい。このように構成すると、合せ硝子G,G’が全体に亘って貼り合わされるため、合せ硝子G,G’の強度が向上し、さらに安全性を高めることが可能になる。」 エ 図1の記載より、合せ碍子Gの透視性碍子板4がケーシング2の上面開口部3を閉塞する形状を有している点が看取できる。 オ 図9の記載より、埋込型発光装置1のケーシング2(筐体40、41)が地面42に埋め込み設置されており、透視性碍子板4の発光面が地面42と面一に設けられている態様が看取できる。 上記各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例には次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。 「地面42に埋め込み設置されたケーシング2の上面開口部3に、透視性硝子板4、透光性拡散部材5、及び第二透視性硝子板6を積層した合せ硝子Gを設け、該第二透視性硝子板6の下方には、導光板7が配設され、該導光板7の一端側の側面に発光ダイオード9が埋設され、合せ碍子Gの透視性碍子板4がケーシング2の上面開口部3を閉塞する形状を有しており、透視性碍子板4の発光面が地面42と面一に設けられ、透視性硝子板4、透光性拡散部材5、及び第二透視性硝子板6は、夫々透明な接着剤によって接着されている埋込型発光装置。」 (2)同じく本願の出願前に頒布され、原査定において周知技術を示す刊行物として提示された特開2005-128216号公報(以下「周知例1」という。)には、旋光板、光学素子、集光バックライトシステムおよび液晶表示装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。 カ 「【0079】 (各層の積層) 本発明の光学素子は単に光路に配置するだけではなく、貼り合わせて用いる事も出来る。・・・ 【0080】 前記各層の積層は、作業性や、光の利用効率の観点より各層を接着剤や粘着剤を用いて積層することが望ましい。・・・ 【0081】 各層および(粘)接着層には、必要に応じて拡散度合い調整用に更に粒子を添加して等方的な散乱性を付与することや、紫外線吸収剤、酸化防止剤、製膜時のレベリング性付与の目的で界面活性剤などを適宜に添加することができる。」 (3)同じく本願の出願前に頒布され、原査定において周知技術を示す刊行物として提示された特開2005-128219号公報(以下「周知例2」という。)には、光学素子、集光バックライトシステムおよび液晶表示装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。 キ 「【0145】 (各層の積層) 本発明の光学素子は単に光路に配置するだけではなく、貼り合わせて用いる事も出来る。・・・ 【0146】 前記各層の積層は、作業性や、光の利用効率の観点より各層を接着剤や粘着剤を用いて積層することが望ましい。・・・ 【0147】 各層および(粘)接着層には、必要に応じて拡散度合い調整用に更に粒子を添加して等方的な散乱性を付与することや、紫外線吸収剤、酸化防止剤、製膜時のレベリング性付与の目的で界面活性剤などを適宜に添加することができる。」 3 対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「地面42」は本願補正発明の「施工面」に相当し、以下同様に、「ケーシング2」は「器具本体」に、「透視性碍子板4」及び「第二透視性碍子板6」は「複数の透光部材」に、「透光性拡散部材5」は「光拡散部」に、「合せ碍子G」は「透光パネル」に、「発光ダイオード9」は「光源」に、「埋込型発光装置」は「埋込型照明器具」にそれぞれ相当する。 引用発明の「ケーシング2」は「上面開口部3」を有しているから、引用発明は、本願補正発明の「一面が開口した器具本体」との要件を備える。 引用発明の埋込型発光装置において、発光ダイオード9がケーシング2内に収納されていることは明らかであり(上記ア参照)、当該発光ダイオード9の光がケーシング2の上面開口部3側へ照射されることも明らかであるから、引用発明は、本願補正発明における「器具本体内に収納されて器具本体の一面側へ光を照射する光源」との要件を備える。 引用発明の「合せ碍子G」の最も上側に配置された「透視性碍子板4」は、「ケーシング2」の「上面開口部3」を閉塞する形状を有しており、また、当該透視性碍子板4の上面である発光面は地面42と面一に設けられている。また、当該「合せ碍子G」は、本願補正発明の「透光パネル」に相当する構成であって、発光ダイオード9の光を透過させることは明らかである。以上のことから、引用発明は、本願補正発明の「前記器具本体の一面開口を閉塞するとともに光源の光を透過させ、前記施工面と面一に設けられた発光面を有する透光パネル」との要件を備える。 引用発明の「合せ碍子G」は、それぞれ同等の長さとされた透視性碍子板4と透光性拡散部材5と第二透視性碍子板6とを積層した構造であるから(上記ウ参照)、透視性碍子板4と第二透視性碍子板6とは同じ平面形状を有しているといえ、さらに、上述のとおり、合せ碍子Gの最も上側に配置された透視性碍子板4はケーシング2の上面開口部3を閉塞する形状を有しているのであるから、引用発明は、本願補正発明の「前記透光パネルは、前記器具本体の一面開口を閉塞する形状を有する複数の透光部材を接合してなる積層構造を有し、前記透光部材間の接合部位には光を拡散する光拡散部が設けられている」との要件を備える。 したがって、本願補正発明と引用発明は、 「施工面に埋め込み設置される一面が開口した器具本体と、器具本体内に収納されて器具本体の一面側へ光を照射する光源と、前記器具本体の一面開口を閉塞するとともに光源の光を透過させ、前記施工面と面一に設けられた発光面を有する透光パネルとを備え、前記透光パネルは、前記器具本体の一面開口を閉塞する形状を有する複数の透光部材を接合してなる積層構造を有し、前記透光部材間の接合部位には光を拡散する光拡散部が設けられている埋込型照明器具」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明では、光拡散部が接合機能を備えており、その両側の透光部材を接合しているのに対して、引用発明では、透光性拡散部材5はそれ自体には接合機能はなく、その表裏両面に配された透明な接着剤によって透視性碍子板4と第二透視性碍子板6とを接合している点。 上記相違点について検討する。 例えば周知例1、2に記載されているように(上記カ及びキ参照)、複数の層を接着剤を用いて積層してなる照明装置の光学素子において光拡散性を有する接着剤を用いることは、当該技術分野において周知の技術的事項である。そうすると、引用発明において、透視性碍子板4と第二透視性碍子板6とを、透光性拡散部材5及びその表裏両面に配した透明な接着剤によって接合させることに代えて、上記周知例1、2に記載されるような光拡散性を有する接着剤層を採用し、該接着剤層に透視性碍子板4と第二透視性碍子板6との接合及び光の拡散の双方の機能を発揮させるようにして、上記相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。 そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び周知例1、2の記載事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成22年10月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年1月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「施工面に埋め込み設置される一面が開口した器具本体と、器具本体内に収納されて器具本体の一面側へ光を照射する光源と、前記器具本体の一面開口を閉塞するとともに光源の光を透過する透光パネルとを備え、前記透光パネルは、前記器具本体の一面開口を閉塞する形状を有する複数の透光部材を接合してなる積層構造を有し、前記透光部材間の接合部位には各透光部材を接合すると共に光を拡散する光拡散部が設けられていることを特徴とする埋込型照明器具。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記第2の2に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の3に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-18 |
結審通知日 | 2011-08-23 |
審決日 | 2011-09-06 |
出願番号 | 特願2005-205864(P2005-205864) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F21V)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 光治 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 栗山 卓也 |
発明の名称 | 埋込型照明器具 |
代理人 | 水尻 勝久 |
代理人 | 坂口 武 |
代理人 | 北出 英敏 |
代理人 | 西川 惠清 |