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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1245433
審判番号 不服2008-30876  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-05 
確定日 2011-10-19 
事件の表示 特願2006- 59794「記号入力方法、及び、これを用いた通信端末機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月14日出願公開、特開2006-244506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年3月6日(パリ条約による優先権主張2005年3月4日、韓国)の出願であって、平成20年4月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月29日付けで手続補正がなされたが、同年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審において、平成22年4月6日付けで審尋がなされ、同年7月9日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年12月5日付け手続補正の補正却下の決定について

[補正却下の決定の結論]
平成20年12月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成20年12月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおりに補正された(なお、下線は、補正箇所を示すものとして、上記手続補正において審判請求人が付与したものである)。

「【請求項1】
指紋パターンを認識する指紋認識装置と、
登録過程時に、前記指紋認識装置によって認識された指紋パターンを記号にマッチングさせ、文字列を作成するタスクの実行中には、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する制御部と、
前記記号を含む複数の記号を保存し、前記制御部の制御によって、前記複数の記号にそれぞれ異なる指紋パターンをマッチングさせた情報を保存するメモリと、
前記制御部の制御によって、検索された記号を作成中の文字列に加えて表示する出力部と、
を含んで構成され、
前記指紋パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させる使用者の相異なる動作パターンで区分され、該動作パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させて指紋を動かす方向である
ことを特徴とする通信端末機。
【請求項2】
前記タスクが、メッセージングサービスのためにメッセージの内容を作成するタスクであることを特徴とする請求項1に記載の通信端末機。
【請求項3】
指紋認識装置を有する通信端末機で記号を文字列に入力する方法において、
前記指紋認識装置を介し認識された相異なる指紋パターンを、複数の記号にマッチングさせて、あらかじめ保存する段階と、
前記指紋認識装置を介して前記指紋パターンを認識する段階と、
前記指紋パターンにマッチングする、あらかじめ保存された前記記号を検索する段階と、
前記検索した記号を前記文字列に入力する段階と、
を含み、
前記指紋パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させる使用者の相異なる動作パターンで区別され、該動作パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させて指紋を動かす方向である
ことを特徴とする記号入力方法。
【請求項4】
前記文字列は、メッセージングサービスのために作成しているメッセージの内容であることを特徴とする請求項3に記載の記号入力方法。
【請求項5】
指紋認識装置を有する移動通信端末機で、メッセージを作成するタスクの実行中に、前記メッセージに記号を入力する方法において、
前記指紋認識装置を介して認識された指紋パターンと、前記記号とをマッチングさせて、これをあらかじめ保存する段階と、
前記タスクの実行によって作成中のメッセージの内容を表示する段階と、
前記指紋認識装置を介して前記指紋パターンが認識されると、前記記号を検索する段階と、
前記メッセージの内容である文字列に、前記検索した記号を組み合わせて表示する段階と、
を含み、
前記指紋パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させる使用者の相異なる動作パターンで区別され、該動作パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させて指紋を動かす方向である
ことを特徴とする記号入力方法。」

本件補正後の請求項1に係る補正は、
本件補正前の請求項1及び2を引用する請求項3を、請求項1にして独立請求項とするとともに、動作パターンを「前記指紋認識装置に指を接触させて指紋を動かす方向である」に限定するものである。

したがって、本件補正後の請求項1に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるか、すなわち、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する。

2.引用例
(1)特表2003-529130号公報
原査定の拒絶理由において引用された特表2003-529130号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。

ア.「【0007】
電話機のキーパッドでは、キー(例えば、携帯電話のキーパッド)数が不足するため、通常の電話機のキーパッドの各キーは文字グループと通常1つの数字を含んでいる。インターネットの使用やショートメッセージの入力でさえ、消費者のために多くの複雑さを強いるものである。
・・・(中略)・・・
【0009】
一つの解決策は、キーが表示するものの中から文字や記号を選択するのに単一キーの複数押しを用いるものである。このシステムは現在、大半の携帯電話のキーパッドに使用されている。それは、時間を浪費する方法であって、ユーザを苛立たせるものである。」

イ.「【0025】
(発明の概要)
各ユーザの指のパターンの違いを認識するよう構成された1以上の電子パッドからなる指紋検出装置を用いる。この種のパターンは、指全体或いはその一部の指特徴(例えば、大きさや形や色など)に関係するものである。このパターンはまた、指先(指紋、大きさ、形)や爪(形、大きさ、明るさ)などの表層特徴などの他の情報に関係する。」

ウ.「【0037】
(発明の実施の形態)
図1を参照するに、ユーザの指のそれぞれのパターンの違いを認識するよう構成した指紋検出パッド126を備える本発明の一実施例になる指検出インタフェース100が図示してある。この種のパターンの差異は翻って通信的に利用可能であり、人による入力が指を指紋検出装置に触れる操作を介して電子装置へ電子的に伝送されるようできる。
【0038】
本発明の一実施例になる指紋検出インタフェース100は、表示スクリーン122と、インジケータ光124と、コマンド釦128?136と、スイッチ138と、無線通信手段126と、をさらに備える。簡単に言えば、各人は指指102?120などの複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れるが、指紋検出装置100が今度は通信手段126を介して電話機やコンピュータなどの別の装置へその信号を伝送する。供給される入力信号種は、どの指又はどの指の一部が用いられ、その指でどんな動きがなされたかを含む複合的要因に基づくものである。例えば、各人は自らの右の親指を二度叩きして1つの信号を出力し、自らの左の人差し指を強打して他の信号を出力することができる。この種の指紋検出の方法と用途は、以下により詳細に説明する。かくして、指紋検出装置は、よりかさ張るコンピュータキーボードや電話機テンキーパッドや他のどんな入力装置にも代わって用いることができる。」

エ.「【0041】
上記したように、コマンド釦128?136には、幾つかの役立つ機能が備わっている。例えば、コマンド釦128,130は、装置を起動或いはプログラムするのに用いることができる。当然ではあるが、指紋検出装置はプログラムするか教示(teach)し、これにより数字や文字やマクロや他の動作のような対応する記号や機能を用いて特定の指紋をマッピングしなければならない。かくして、コマンド釦128,130を記録及び選択釦として機能させ、1以上の記号又は機能を選択して特定の指紋をもって写像されるようにできる。」

オ.「【0043】
図示の指紋装置は本発明の一実施例であるが、そのように限定されるものでないことは理解される。代替実施例では、指紋装置は、個別外部装置ではないコンピュータや電話機の一部として組み込むことができる。」

カ.「【0044】
図2を参照するに、マッピングテーブル200が図示してあり、それはデータベースシステムがどのように個々の指紋を一つ以上の対応する号や機能にマッピングできるかについて説明するものである。一実施例に従って示すように、マッピングテーブル200は、識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202を含んでいる。さらに、マッピングテーブル200は、特定の動きを機能記号へ割り当てるマップ指数204?210を含む。
【0045】
実例を挙げるに、識別番号212に対応する指をもって一回叩きすることで、数字「0」が生成され、これに対し同じ指の二度叩きが数字「6」を生成する。翻って、1回叩きと二回叩きだけを用いることにより、10個の算用数字の全てを人の手と一つの指紋パッドをもって入力することができる。同様に、この方法を、文字や、記号や、滑動(glide motion)210などを用いる機能の入力に拡張することができる。」

キ.「【0047】
特に、図2のマッピングテーブルは、指紋装置に局地的に、或いはデータベースに遠隔的に、或いは中央局に集中的にさえ格納できる。」

上記ア.?キ.及び関連する図の記載によれば、次のことがいえる。

A.上記イ.の「各ユーザの指のパターンの違いを認識するよう構成された1以上の電子パッドからなる指紋検出装置を用いる。この種のパターンは、指全体或いはその一部の指特徴(例えば、大きさや形や色など)に関係するものである。このパターンはまた、指先(指紋、大きさ、形)や爪(形、大きさ、明るさ)などの表層特徴などの他の情報に関係する。」の記載、
上記ウ.の「 図1を参照するに、ユーザの指のそれぞれのパターンの違いを認識するよう構成した指紋検出パッド126を備える本発明の一実施例になる指検出インタフェース100が図示してある。」の記載によれば、
指検出インタフェース100は、指紋を認識する指紋検出パッド126を備える。

なお、上記ウ.の「本発明の一実施例になる指検出インタフェース100が図示してある。」、「本発明の一実施例になる指紋検出インタフェース100」、「指紋検出装置100」の記載、
上記オ.の「 図示の指紋装置は本発明の一実施例であるが、」の記載によれば、
「指紋検出インタフェース」、「指紋検出装置」、「指紋装置」は、いずれも「指検出インタフェース」のことである。

B.上記エ.の「例えば、コマンド釦128,130は、装置を起動或いはプログラムするのに用いることができる。当然ではあるが、指紋検出装置はプログラムするか教示(teach)し、これにより数字や文字やマクロや他の動作のような対応する記号や機能を用いて特定の指紋をマッピングしなければならない。かくして、コマンド釦128,130を記録及び選択釦として機能させ、1以上の記号又は機能を選択して特定の指紋をもって写像されるようにできる。」の記載によれば、
指検出インタフェース100は、プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピングする。

C.上記カ.の「マッピングテーブル200は、識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202を含んでいる。さらに、マッピングテーブル200は、特定の動きを機能記号へ割り当てるマップ指数204?210を含む。」の記載、
上記キ.の「特に、図2のマッピングテーブルは、指紋装置に局地的に、或いはデータベースに遠隔的に、或いは中央局に集中的にさえ格納できる。」の記載によれば、
指検出インタフェース100は、識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202と、特定の動きを機能記号へ割り当てるマップ指数204?210とを含んだマッピングテーブルを格納する。
そして、上記ウ.の「各人は指指102?120などの複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れるが、指紋検出装置100が今度は通信手段126を介して電話機やコンピュータなどの別の装置へその信号を伝送する。供給される入力信号種は、どの指又はどの指の一部が用いられ、その指でどんな動きがなされたかを含む複合的要因に基づくものである。」の記載によれば、上記「特定の動き」は、指紋検出パッド126に触れる指の動きである。
さらに、上記カ.の「同様に、この方法を、文字や、記号や、滑動(glide motion)210などを用いる機能の入力に拡張することができる。」の記載、
図2の「symbol → #」、「number → 0」、「letter → s」等の記載によれば、
上記「マップ指数」は、特定の動きを記号、又は、数字、文字に割り当てるものである。

したがって、指検出インタフェース100は、識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202と、指紋検出パッド126に触れる指の特定の動きを記号、又は、数字、文字へ割り当てるマップ指数204?210とを含んだマッピングテーブルを格納する。

D.上記ウ.の「各人は指指102?120などの複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れるが、指紋検出装置100が今度は通信手段126を介して電話機やコンピュータなどの別の装置へその信号を伝送する。供給される入力信号種は、どの指又はどの指の一部が用いられ、その指でどんな動きがなされたかを含む複合的要因に基づくものである。例えば、各人は自らの右の親指を二度叩きして1つの信号を出力し、自らの左の人差し指を強打して他の信号を出力することができる。」の記載、
上記カ.の「 図2を参照するに、マッピングテーブル200が図示してあり、それはデータベースシステムがどのように個々の指紋を一つ以上の対応する号や機能にマッピングできるかについて説明するものである。・・・(中略)・・・実例を挙げるに、識別番号212に対応する指をもって一回叩きすることで、数字「0」が生成され、これに対し同じ指の二度叩きが数字「6」を生成する。翻って、1回叩きと二回叩きだけを用いることにより、10個の算用数字の全てを人の手と一つの指紋パッドをもって入力することができる。同様に、この方法を、文字や、記号や、滑動(glide motion)210などを用いる機能の入力に拡張することができる。」の記載によれば、
指検出インタフェース100は、各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成し、生成された記号、又は、数字、文字を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する。

上記A.?D.によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「指紋を認識する指紋検出パッド126を備え、
識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202と、指紋検出パッド126に触れる指の特定の動きを記号、又は、数字、文字へ割り当てるマップ指数204?210とを含んだマッピングテーブルを格納し、
プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピングし、
各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成し、生成された記号、又は、数字、文字を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する指検出インタフェース100。」

(2)特開2005-44339号公報
新たに引用した特開2005-44339号公報(平成17年2月17日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。

ク.「【0044】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、携帯端末に備えられたキーボード入力装置(以下「入力装置」という)100について説明する。この入力装置100は、複数の入力キー10を備え、携帯電話等の移動通信端末装置や、PDA(Personal Digital Assistant)のような携帯型の電子機器に利用される。
・・・(中略)・・・
【0046】
入力装置100は、各入力キー10に、複数の文字(文字群)が割り当てられている。なお、以下の説明では、各入力キー10により入力する文字として、日本語の文字形式の1つであるひらがなを例にとって説明する。
・・・(中略)・・・
【0050】
(入力キーの構成)
図2は、入力装置100に備えられている入力キー10aの構成を示す斜視図である。
【0051】
入力キー10aは、キートップ30aを有している。入力装置100の利用者はこのキートップ30aに指を接触させて入力キー10aを押下する。
【0052】
キートップ30aの表面には、キートップを押下する指、ペン先、その他、入力操作の際にキートップに接触するもの(以下「押下体」という)の位置を検出するセンサ部32が設けられている。センサ部32は押下体の押下位置を検出する位置検出手段であって、図3に示すように、その出力信号は後述する移動方向検出部34に供給されている。
【0053】
移動方向検出部34は、センサ部32により検出された押下体の押下位置の時間的変化を求めることによって、押下体がキートップ30a上を滑る方向(押下体の移動方向)を求めることができるように構成されている。
【0054】
本実施の形態において特徴的なことは、押下体の移動方向によって、各入力キー10に割り当てられた文字群の中から、いずれか一つの文字を指定できることである。このことによって、入力しようとする文字を少ない操作回数で指定することができ、迅速な文字入力を実現することが可能になる。」

ケ.「【0094】
また、図34の表におけるキーK10、K11への割当てに示すように、ひらがなの文字以外にも、ひらがな入力時に入力されることの多い記号(長音、句点、読点など)を割り当てることもできる。」

上記ク.ケ.によれば、引用例2には、以下の事項が記載されている。
「携帯電話等の移動通信端末装置に入力しようとする文字や記号を、キートップ30aのセンサ部32に接触した指の移動方向に基づいて指定すること」

3.対比
次に、本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「指紋を認識する指紋検出パッド126」は、本件補正発明の「指紋パターンを認識する指紋認識装置」に相当する。

(2)引用発明の「プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピングし」において、「プログラムするか教示する」は登録過程といえる。また「特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピング」することは、指紋パターンを記号にマッチングさせることといえる。
また、引用発明の「各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成し」は、指紋検出パッド126すなわち指紋認識装置によって指紋パターンが認識されると、その指紋パターンと指の動きに基づいて、マッピングテーブル200から記号を検索することといえる。
また、引用発明が、上記各動作を行うための手段を有することは自明である。
したがって、引用発明の上記各動作を行うための手段と、本件補正発明の「登録過程時に、前記指紋認識装置によって認識された指紋パターンを記号にマッチングさせ、文字列を作成するタスクの実行中には、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する制御部」は、ともに「登録過程時に、指紋パターンを記号にマッチングさせ、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する手段」の点で共通する。

(3)引用発明は「識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202と、指紋検出パッド126に触れる指の特定の動きを記号、又は、数字、文字へ割り当てるマップ指数204?210とを含んだマッピングテーブルを格納」するから、指検出インタフェース100が、マッピングテーブルを格納するメモリを有することは自明である。
そして、上記マッピングテーブルには記号が含まれ、その記号は、上記(2)に記載したように検索されるから、このメモリは上記(2)において検索される記号を保存する。
また、マッピングテーブルは指紋を記号にマッピングする情報を含むから、上記メモリは、指紋を記号にマッチングさせた情報を保存するといえる。
したがって、引用発明の上記メモリと、本件補正発明の「前記記号を含む複数の記号を保存し、前記制御部の制御によって、前記複数の記号にそれぞれ異なる指紋パターンをマッチングさせた情報を保存するメモリ」は、ともに「前記記号を保存し、前記記号に指紋パターンをマッチングさせた情報を保存するメモリ」の点で一致する。

(4)引用発明は「生成された記号、又は、数字、文字を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する」から、上記(2)において検索された記号を出力する出力手段を有するといえる。
したがって、引用発明の上記出力手段と、本件補正発明の「前記制御部の制御によって、検索された記号を作成中の文字列に加えて表示する出力部」は、ともに「検索された記号を出力する出力手段」の点で共通する。

(5)引用発明の「識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202と、指紋検出パッド126に触れる指の特定の動きを記号、又は、数字、文字へ割り当てるマップ指数204?210とを含んだマッピングテーブル」は、指紋ID指数202を複数のマップ指数204?210によって区分しているといえる。指紋ID指数は指紋パターンに対応するものであり、各マップ指数は「指紋検出パッド126に触れる指の特定の動きを記号、又は、数字、文字へ割り当てる」から、指紋認識装置に指を接触させる使用者の相異なる動作パターンに対応するものである。したがって、引用発明と本件補正発明は、ともに「前記指紋パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させる使用者の相異なる動作パターンで区分され」の点で共通する。

(6)引用発明の「指検出インタフェース」と、本件補正発明の「通信端末機」は、ともに「機器」の点で一致する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「指紋パターンを認識する指紋認識装置と、
登録過程時に、指紋パターンを記号にマッチングさせ、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する手段と、
前記記号を保存し、前記記号に指紋パターンをマッチングさせた情報を保存するメモリと、
検索された記号を出力する出力手段と、
を含んで構成され、
前記指紋パターンは、前記指紋認識装置に指を接触させる使用者の相異なる動作パターンで区分された
ことを特徴とする機器」

そして、本件補正発明と引用発明は以下の点で相違する。
<相違点1>(本件補正発明の「通信端末機」に係る相違点)
本件補正発明は「通信端末機」であるのに対し、引用発明は「指検出インタフェース」である点。

<相違点2>(本件補正発明の「制御部」に係る相違点)
「登録過程時に、指紋パターンを記号にマッチングさせ、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する手段」が、本件補正発明では「制御部」であるの対し、引用発明では「制御部」ではない点。
登録過程時に、記号とマッチングさせる指紋パターンが、本件補正発明では「前記指紋認識装置によって認識された」ものであるのに対し、引用発明では、指紋検出パッド126によって認識されたものかどうか不明である点。
記号を検索する時点が、本件補正発明では、「文字列を作成するタスクの実行中」であるのに対し、引用発明では「文字列を作成するタスクの実行中」であるかどうか不明である点。

<相違点3>(本件補正発明の「メモリ」に係る相違点)
メモリに保存される記号が、本件補正発明では「複数の記号」であるのに対し、引用発明では、「複数の記号」であるかどうか不明である点。
「前記記号に指紋パターンをマッチングさせた情報」が、本件補正発明では「前記複数の記号にそれぞれ異なる指紋パターンをマッチングさせた情報」であり、この情報を「前記制御部の制御によって」メモリに保存するの対し、引用発明ではそのような情報であるかどうか不明であり、情報をメモリに保存する制御も不明である点。

<相違点4>(本件補正発明の「出力部」に係る相違点)
出力手段が、本件補正発明では、記号を「作成中の文字列に加えて表示する出力部」であり、「前記制御部の制御によって」表示するの対し、引用発明では、記号を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する手段であり、「制御部の制御によって」出力するものでもない点。

<相違点5>(本件補正発明の「動作パターン」に係る相違点)
本件補正発明の「動作パターン」は、「前記指紋認識装置に指を接触させて指紋を動かす方向である」のに対し、引用発明の「指紋検出パッド126に触れる指の特定の動き」は、そのようなものではない点。

4.判断

<相違点1>について
引用例1には、「図示の指紋装置は本発明の一実施例であるが、そのように限定されるものでないことは理解される。代替実施例では、指紋装置は、個別外部装置ではないコンピュータや電話機の一部として組み込むことができる。」が記載されている(上記オ.参照)。
してみると、引用発明を上記代替実施例に基づいて電話機に組み込むことにより、引用発明を通信端末機とすることは容易に想到し得ることである。

<相違点2>について
装置に制御部を設けて、制御部が装置の種々の情報処理や動作を行うことは周知である。
また、指紋認識装置に指紋を登録する際に、その指紋認識装置によって認識された指紋を登録することは周知である。
また、電話機が文字列を作成するタスクを実行することは、例えば、電子メールの送信メッセージを作成するタスク等で周知であり、そのタスクの実行中に、ユーザが記号を入力することも周知である。
してみると、引用発明を電話機に組み込むとともに、ユーザが記号を入力するために、指を指紋検出パッド126に触れる時点を、「文字列を作成するタスクを実行中」とし、
その電話機に周知の制御部を設けて、その制御部が「プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピング」するとともに、「各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成」し、
また、記号等にマッピングする「特定の指紋」を、指紋検出パッド126によって認識されたものとして、
引用発明が上記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えたものとすることは容易に想到し得ることである。

<相違点3>について
記号が、例えば「#」「*」「!」「?」のように、複数存在することは周知である。
また、引用発明は、複数の指を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成するものであるから、マッピングテーブルの情報は、複数の指の異なる指紋パターンを、記号、又は、数字、文字にマッピングする情報である。
また、制御部の制御によって、情報をメモリに保存することは周知である。
してみると、引用発明において、複数の指の異なる指紋パターンを周知の複数の記号にマッピングして、マッピングテーブルの情報を、異なる指紋パターンを複数の記号にマッピングする情報とし、その情報を、周知の制御部の制御によってメモリに保存することにより、
引用発明を、上記相違点3に係る本件補正発明の構成を備えたものとすることは容易に想到し得ることである。

<相違点4>について
電話機がディスプレイを備え、そのディスプレイが、入力された記号を作成中の文字列に加えて表示することは周知である。
また、制御部の制御によって、文字列や記号をディスプレイに表示させることも周知である。
してみると、引用発明を、ディスプレイのような出力部を有する電話機に組み込み、
その出力部が、生成された記号を作成中の文字列に加えて表示することにより、引用発明が、上記相違点4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。

<相違点5>について
引用例2には、「携帯電話等の移動通信端末装置に入力しようとする文字や記号を、キートップ30aのセンサ部32に接触した指の移動方向に基づいて指定すること」が記載されている。
引用発明は、電話機やコンピュータなどに入力する記号、又は、数字、文字を、指紋検出パッド126に触れた指の動きに基づいて生成するが、その文字や記号を指定するための「指の動き」として、引用例2に記載された「指の移動方向」を採用することに格別困難性はない。
また、指とその指紋は一体であるから、「指の移動方向」が「指紋を動かす方向」でもあることは自明である。
してみると、引用発明に引用例2の記載事項を適用し、「指の動き」を「指紋を動かす方向」として、引用発明が上記相違点5に係る本件補正発明の構成を備えたものとすることは容易に想到し得ることである。

そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明、引用例2の記載事項、及び、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用例2の記載事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.補正却下の決定のむすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成20年12月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年7月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「指紋パターンを認識する指紋認識装置と、
登録過程時に、前記指紋認識装置によって認識された指紋パターンを記号にマッチング
させ、文字列を作成するタスクの実行中には、前記指紋認識装置によって前記指紋パター
ンが認識されると前記記号を検索する制御部と、
前記制御部の制御によって、検索された記号を作成中の文字列に加えて表示する出力部
と、
を含んで構成されることを特徴とする通信端末機。」

第4 引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項及び引用発明は、前記第2、2.(1)に記載したとおりであり、以下に引用発明を再記する。

<引用発明>
「指紋を認識する指紋検出パッド126を備え、
識別番号212のような数字識別番号の形で指紋を格納する指紋ID指数202と、指紋検出パッド126に触れる指の特定の動きを記号、又は、数字、文字へ割り当てるマップ指数204?210とを含んだマッピングテーブルを格納し、
プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピングし、
各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成し、生成された記号、又は、数字、文字を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する指検出インタフェース100。」

第5 対比

(1)引用発明の「指紋を認識する指紋検出パッド126」は、本願発明の「指紋パターンを認識する指紋認識装置」に相当する。

(2)引用発明の「プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピングし」において、「プログラムするか教示する」は登録過程といえる。また「特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピング」することは、指紋パターンを記号にマッチングさせることといえる。
また、引用発明の「各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成し」は、指紋検出パッド126すなわち指紋認識装置によって指紋パターンが認識されると、その指紋パターンと指の動きに基づいて、マッピングテーブル200から記号を検索することといえる。
また、引用発明が、上記各動作を行うための手段を有することは自明である。
したがって、引用発明の上記各動作を行うための手段と、本願発明の「登録過程時に、前記指紋認識装置によって認識された指紋パターンを記号にマッチングさせ、文字列を作成するタスクの実行中には、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する制御部」は、ともに「登録過程時に、指紋パターンを記号にマッチングさせ、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する手段」の点で共通する。

(3)引用発明は「生成された記号、又は、数字、文字を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する」から、上記(2)において検索された記号を出力する出力手段を有するといえる。
したがって、引用発明の上記出力手段と、本願発明の「前記制御部の制御によって、検索された記号を作成中の文字列に加えて表示する出力部」は、ともに「検索された記号を出力する出力手段」の点で共通する。

(4)引用発明の「指検出インタフェース」と、本願発明の「通信端末機」は、ともに「機器」の点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「指紋パターンを認識する指紋認識装置と、
登録過程時に、指紋パターンを記号にマッチングさせ、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する手段と、
検索された記号を出力する出力手段と、
を含んで構成されたことを特徴とする機器」

そして、本願発明と引用発明は以下の点で相違する。
<相違点1>(本願発明の「通信端末機」に係る相違点)
本願発明は「通信端末機」であるのに対し、引用発明は「指検出インタフェース」である点。

<相違点2>(本願発明の「制御部」に係る相違点)
「登録過程時に、指紋パターンを記号にマッチングさせ、前記指紋認識装置によって前記指紋パターンが認識されると前記記号を検索する手段」が、本願発明では「制御部」であるの対し、引用発明では「制御部」ではない点。
登録過程時に、記号とマッチングさせる指紋パターンが、本願発明では「前記指紋認識装置によって認識された」ものであるのに対し、引用発明では、指紋検出パッド126によって認識されたものかどうか不明である点。
また、記号を検索する時点が、本願発明では、「文字列を作成するタスクの実行中」であるのに対し、引用発明では「文字列を作成するタスクの実行中」であるかどうか不明である点。

<相違点3>(本願発明の「出力部」に係る相違点)
出力手段が、本願発明では、記号を「作成中の文字列に加えて表示する出力部」であり、「前記制御部の制御によって」表示するの対し、引用発明では、記号を電話機やコンピュータなどの別の装置へ出力する手段であり、「制御部の制御によって」出力するものでもない点。

第5 判断

<相違点1>について
上記第2、4.「<相違点1>について」に記載したとおり、引用発明を引用例1に記載された代替実施例「指紋装置は、個別外部装置ではないコンピュータや電話機の一部として組み込むことができる。」(上記オ.参照)に基づいて電話機に組み込むことにより、引用発明を通信端末機とすることは容易に想到し得ることである。

<相違点2>について
上記第2、4.「<相違点2>について」に記載したとおり、
装置に制御部を設けて、制御部が装置の種々の情報処理や動作を行うことは周知である。
また、指紋認識装置に指紋を登録する際に、その指紋認識装置によって認識された指紋を登録することは周知である。
また、電話機が文字列を作成するタスクを実行することは、例えば、電子メールの送信メッセージを作成するタスク等で周知であり、そのタスクの実行中に、ユーザが記号を入力することも周知である。
してみると、引用発明を電話機に組み込むとともに、ユーザが記号を入力するために、指を指紋検出パッド126に触れる時点を、「文字列を作成するタスクを実行中」とし、
その電話機に周知の制御部を設けて、その制御部が「プログラムするか教示することにより、特定の指紋を記号、又は、数字、文字にマッピング」するとともに、「各人が複数の指を用い、入力信号を出力しようとして指紋検出パッド126に触れると、マッピングテーブル200を用いて、触れた指の個々の指紋とその指の動きの複合的要因に基づいて記号、又は、数字、文字を生成」し、
また、記号等にマッピングする「特定の指紋」を、指紋検出パッド126によって認識されたものとして、
引用発明が上記相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは容易に想到し得ることである。

<相違点3>について
上記第2、4.「<相違点4>について」に記載したとおり、
電話機がディスプレイを備え、そのディスプレイが、入力された記号を作成中の文字列に加えて表示することは周知である。
また、制御部の制御によって、文字列や記号をディスプレイに表示させることも周知である。
してみると、引用発明を、ディスプレイのような出力部を有する電話機に組み込み、
その出力部が、生成された記号を作成中の文字列に加えて表示することにより、引用発明が、上記相違点3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-17 
結審通知日 2011-05-24 
審決日 2011-06-06 
出願番号 特願2006-59794(P2006-59794)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 文雄篠塚 隆  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
松尾 俊介
発明の名称 記号入力方法、及び、これを用いた通信端末機  
代理人 笹島 富二雄  

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