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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1245504
審判番号 不服2011-5225  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-08 
確定日 2011-10-21 
事件の表示 特願2004-210123「中空状動力伝達シャフト」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日出願公開、特開2006- 26697〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、平成16年7月16日の特許出願であって、同21年9月11日付けで拒絶の理由が通知され、同21年11月13日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同22年5月19日に拒絶の理由が通知され、同22年7月30日に意見書が提出されたが、同22年12月7日付けで拒絶の査定がなされたものである。
その後、平成23年3月8日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされた。
本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項2に係る発明は、平成21年11月13日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書、願書に添付した図面の記載からみて、上記請求項1ないし請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、次のとおりである。
「軸方向中間部が大径部に形成されると共に、該大径部よりも軸方向両側部がそれぞれ小径部に形成された中空状動力伝達シャフトにおいて、
表面異常層を除去した鋼製のパイプ素材の軸方向両端部にのみ又は軸方向全域にスウェージング加工を施して製造され、前記大径部の肉厚が前記小径部の肉厚よりも小さく形成されていることを特徴とする中空状動力伝達シャフト。」

第2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-90325号公報(以下単に「刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。
1 刊行物記載の事項
刊行物には以下の事項が記載されている。
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等のドライブシャフトに用いられる等速ジョイントが両端に連結された中間シャフトに関するものである。」
イ 段落【0012】
「【実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1において、10はエンジンの回転を車輪に伝達するドライブシャフトで、中間シャフトである中空シャフト11、中空シャフト11の両端にインナレース12,13が夫々スプライン嵌合されたエンジン側及び車輪側の等速ジョイント14,15により構成されている。中空シャフト11の両端部18は、等速ジョイント14,15が角度変位したときに中空シャフト11が等速ジョイント14,15のアウタレース16,17と干渉しないように中央部分19より外径が小さく形成されている。中央部分19は外径を大きくして剛性アップを図っている。中空シャフト11は、一例として、炭素鋼のパイプ材を軸線方向に延びないように両端を規制した状態で、外周を殴打して外径を所定寸法に収縮させ軸線上に軸穴20を設けてスエージングにより形成され、両端の小径部分18は中央の大径部分19より外径を収縮された分だけ肉厚が厚くなっている。中空シャフト11の寸法は車種によって異なるが、一般的には全長200?650mm、両端部18の外径16?30mm、内径3?21mm、中央部分の外径29?39mm、内径20?31mmに形成され、中空シャフト11の内径と外径との比は0.15?0.8である。」
ウ ここで、摘記事項イにおける「中空シャフト11は、一例として、炭素鋼のパイプ材を軸線方向に延びないように両端を規制した状態で、外周を殴打して外径を所定寸法に収縮させ軸線上に軸穴20を設けてスエージングにより形成され、両端の小径部分18は中央の大径部分19より外径を収縮された分だけ肉厚が厚くなっている。」の記載から、少なくとも中空シャフト11の軸方向両端部にスエージング加工が施されていることは明らかである。
2 刊行物記載の発明
上記ア、イの摘記事項及びウの認定事項を本件出願の発明に照らして整理すると刊行物には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「軸方向の中央部分が大径部分19に形成されると共に、該大径部分19よりも軸方向の両端部分がそれぞれ小径部分18に形成された動力伝達用の中空シャフト11において、
炭素鋼のパイプ材の少なくとも軸方向の両端部分にスエージング加工を施して製造され、前記大径部分19の肉厚が前記小径部分18の肉厚よりも小さく形成されている動力伝達用の中空シャフト。」(以下、「引用発明」という。)

第3 対比
本件出願の発明と引用発明とを対比すると以下のとおりである。
引用発明の「軸方向の中央部分」は本件出願の発明の「軸方向中間部分」に相当し、以下同様に、「大径部分19」は「大径部」に、「軸方向の両端部分」は「軸方向両側部」ないし「軸方向両端部」に、「小径部分18」は「小径部」に、「動力伝達用の中空シャフト11」は「中空状動力伝達シャフト」に、「炭素鋼のパイプ材」は「鋼製のパイプ素材」に、「スエージング加工」は「スウェージング加工」に、それぞれ相当する。
したがって、本件出願の発明と引用発明とは、以下の一致点と相違点とを有しているということができる。
<一致点>
「軸方向中間部が大径部に形成されると共に、該大径部よりも軸方向両側部がそれぞれ小径部に形成された中空状動力伝達シャフトにおいて、
鋼製のパイプ素材の軸方向両端部にスウェージング加工を施して製造され、前記大径部の肉厚が前記小径部の肉厚よりも小さく形成されている中空状動力伝達シャフト。」
<相違点1>
鋼製のパイプ素材が、本件出願の発明では、表面異常層を除去したものであるのに対して、引用発明では、そのようなものではない点。
<相違点2>
鋼製のパイプ素材のスウェージング加工を施す部分に関して、本件出願の発明では、「軸方向両端部にのみ又は軸方向全域に」としているのに対して、引用発明では、少なくとも軸方向の両端部分である点。

第4 相違点についての検討
ア <相違点1>について
機械加工が施される鋼製の素材について、脱炭層に代表される表面異常層を除去することは、例えば、原査定の際に、機械構造用に使用される鋼管に熱処理や鍛造加工が施される場合、素材に脱炭があると耐疲労寿命等の製品品質に影響を及ぼすことは、技術常識であるとして例示された特開平6-145793号公報の段落【0002】に記載されているほか、原査定の拒絶の理由に引用文献2として挙げられた特開平6-63613号公報の段落【0015】及び【0027】、同じく引用文献3として挙げられた特開2003-321713号公報の段落【0021】及び【0022】にその旨示されているように従来周知である。
そして、この従来周知の事項は、鋼製の素材に施される機械加工の種類を問わず適用可能であることを考慮すると、当該周知の事項を引用発明に適用して鋼製のパイプ素材から表面異常層を除去することは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到するところである。
イ <相違点2>について
スウェージング加工を少なくともパイプ素材の軸方向両端部に施せば、それはパイプ素材の軸方向両端部にのみとなるか軸方向全域となるかのどちらかであることは明らかである。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
ウ <作用ないし効果>について
本件出願の発明の採用する構成によってもたらされる効果も、引用発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

第5 むすび
したがって、本件出願の発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-22 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-08 
出願番号 特願2004-210123(P2004-210123)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇田川 辰郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
菅澤 洋二
発明の名称 中空状動力伝達シャフト  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  

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