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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1245606 |
審判番号 | 不服2010-15033 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-06 |
確定日 | 2011-10-28 |
事件の表示 | 特願2000- 98295「CADシステムにおける図形修正方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月12日出願公開、特開2001-282861〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成12年3月31日の出願であって、平成21年11月4日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成22年1月12日付けで手続補正がなされたが、平成22年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成22年7月6日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、以下のとおりのものである。 「二次元図形に記入される寸法線、寸法補助線および寸法値などの寸法関連記号の表示位置が、前記二次元図形の修正に応じて自動修正されるCADシステムにおける図形修正装置において、 前記寸法関連記号の近傍に、仕上げ記号および面粗度などの付加記号を配置する付加記号配置手段(23)と、 前記付加記号の表示位置の位置座標を、対応する前記寸法関連記号の表示位置の位置座標の関数として記憶する付加記号位置記憶手段(24)と、 前記二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると、前記修正後の寸法関連記号の表示位置の位置座標を前記関数に代入して、前記付加記号の表示位置の位置座標を修正する付加記号位置修正手段(28)と、 前記位置修正後の付加記号と他の付加記号または寸法関連記号との重なりを検知する重なり検知手段(29)とを具備し、 重なりが検知されると、前記位置修正後の付加記号の位置をさらに修正することを特徴とするCADシステムにおける図形修正装置。」 なお、平成22年7月6日付けでなされた手続補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を新たな請求項1として繰り上げるとともに、補正前の請求項3を削除し、補正前の請求項4を新たな請求項2として繰り上げるものである。 3 刊行物 (1)これに対して,原審拒絶理由で引用された,「SX/G 設計支援システム コマンド使用手引書 応用編 エディション14,富士通株式会社,1991年6月30日,初版,p.49-79」(以下,「刊行物1」という)には、次のアないしクの事項が記載されているとともに、ケの事項を読み取ることができる。 ア 「可変図形(パラメトリック図形)とは,図形の各部の寸法としてパラメタを持った図形であり,パラメタに値を指定することにより図形の各部の形状を変化させることができる。」(49頁左欄1行ないし4行) イ 「標準部品の代わりに可変図形と呼ばれる可変寸法を持った図形を導入し,部品配置のときに可変寸法に寸法値を設定することにより,部品の形状を変化させて配置することができる。」(49頁左欄13行ないし16行) ウ 「可変直線寸法は,図形の水平・垂直方向の変形を規定する。(中略)可変直線寸法の作成はPMLINコマンドにより行い,」(49頁右欄3行ないし8行) エ 「3.2.1 可変寸法線 寸法変数(中略)を持った寸法線であり,利用者が寸法変数に寸法値を指定することにより,寸法線及び寸法線に対応する図形を変形することができる。」(51頁左欄1行ないし4行) オ 「1)可変対象領域 可変寸法線により移動される要素を指定するためのものとして,可変対象領域がある。可変直線寸法線の可変対象領域に属する要素は,水平(可変水平寸法線の場合)又は垂直(可変垂直寸法線の場合)に移動される。」(51頁左欄23行ないし27行) カ 「3.3.2 可変直線寸法による移動 可変直線寸法線に寸法値を指定することにより,可変対象領域内の要素がどのように移動されるかを述べる。 (中略) ・要素の移動方向は,可変寸法線に平行であり,寸法値の指定により,拡大と縮小の2とおりである。 (図3.25,図3.26参照)」(58頁右欄29行ないし59頁左欄8行) キ 54頁左欄図3.19,59頁左欄図3.25,図3.26,60頁図3.30,図3.31,図3.32には,可変直線寸法線(寸法線寸法値,寸法補助線を含む)が移動する点が開示されている。 ク 「f)移動の対象となる要素 可変対象領域に含まれる要素の内,移動の対象となるものは,次のとおりである。 (中略) ・線分(半無限線を含む,無限線を除く) (中略) ・文字列 (中略) ・矢印 (中略) ・仕上げ記号 ・面指示記号 (中略) ・可変直線寸法線」(61頁左欄23行ないし右欄23行) ケ 刊行物1の図3.25?図3.33及び関連する記載事項を参酌すれば、図形を変形させれば、これに応じて、寸法線寸法値や寸法補助線を含む可変直線寸法線も移動することが記載されていると理解できる。 また、直接的な図示はされていないが、上記キに示すとおり、仕上げ記号や面指示記号も図形とともに移動する対象となっていることから、結局のところ、図形を変形させれば、これに応じて、寸法線寸法値や寸法補助線を含む可変直線寸法線、仕上げ記号及び面指示記号などが図形とともに移動することが記載されていると理解できる。 してみると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という)が記載されている。 コ 「 パラメタに値を指定することにより図形の各部の形状を変化させることができる可変図形を導入し、部品の形状を変化させて配置することができ、可変直線寸法は、図形の水平・垂直方向の変形を規定し、可変直線寸法線の可変対象領域に属する要素は、水平又は垂直に移動されるものであり、 前記可変直線寸法線に寸法値を指定することにより、可変対象領域内の要素である線分、文字列、矢印、仕上げ記号、面指示記号、可変直線寸法線(寸法線寸法値、寸法補助線を含む)が図形とともに移動する、 設計支援システムの可変図形設計装置」 4 本願発明と刊行物発明との対比 (1)刊行物発明は、「設計支援システムの可変図形設計装置」であって、二次元図形に記入される要素を表示するものであることは明らかである。 また、刊行物発明の可変直線寸法線は、寸法線であって、寸法線寸法値及び寸法補助線を含むものであるから、本願発明の「寸法線、寸法補助線及び寸法値などの寸法関連記号」に相当する。 さらに、刊行物発明において、「パラメタに値を指定することにより図形の各部の形状を変化させ」、「可変直線寸法線に寸法値を指定することにより、可変対象領域内の要素である」「可変直線寸法線が図面とともに移動する」ことは、二次元図形の修正に応じて寸法関連記号の表示位置が自動修正されることと等価である。 それゆえ、本願発明と刊行物発明とは、「二次元図形に記入される寸法線、寸法補助線および寸法値などの寸法関連記号の表示位置が、前記二次元図形の修正に応じて自動修正されるCADシステムにおける図形修正装置」である点で一致する。 刊行物発明における可変対象領域内の要素である仕上げ記号、面指示記号は、本願発明の「仕上げ記号および面粗度などの付加記号」に相当する。 刊行物1において、該付加記号が寸法関連記号の近傍に配置されるとの明示的な記載はないが、設計支援システムの可変図形設計装置である刊行物発明は、製図における通常の図示方法に従って、付加記号が寸法関連記号の近傍に配置されると解するのが自然である。 それゆえ、刊行物発明は、付加記号配置手段を明示的に備えるものではないが、本願発明の「寸法関連記号の近傍に、仕上げ記号および面粗度などの付加記号を配置する付加記号配置手段」に相当する手段を備えていると解するのが適当である。 刊行物発明は、可変対象領域内の要素である図形の付加記号も該図形とともに移動するものであって、上述したように、「パラメタに値を指定することにより図形の各部の形状を変化させ」、「可変直線寸法線に寸法値を指定することにより、可変対象領域内の要素である」「可変直線寸法線が図形とともに移動する」ことは、寸法関連記号の表示位置が二次元図形の修正に応じて自動修正されることと等価であるから、二次元図形の修正に応じて寸法関連記号の表示位置が修正されると、これに伴い、図形とともに移動する付加記号の表示位置の位置座標が、修正された寸法関連記号の表示位置に関連して修正されると解するのが自然である。 それゆえ、刊行物発明は、付加記号位置修正手段を明示的に備えるものではないが、「二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると」「前記付加記号の表示位置の位置座標を修正する付加記号位置修正手段」に相当する手段を備えていると解するのが適当であり、本願発明と刊行物発明とは、「二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると」「前記付加記号の表示位置の位置座標を修正する付加記号位置修正手段」を備えている点で共通する。 (2)したがって、両者は、 「二次元図形に記入される寸法線、寸法補助線および寸法値などの寸法関連記号の表示位置が、前記二次元図形の修正に応じて自動修正されるCADシステムにおける図形修正装置において、 前記寸法関連記号の近傍に、仕上げ記号および面粗度などの付加記号を配置する付加記号配置手段と、 前記二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると、前記付加記号の表示位置の位置座標を修正する付加記号位置修正手段と、 を具備するCADシステムにおける図形修正装置。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。 相違点a 付加記号の表示位置の位置座標の修正について、本願発明は、「付加記号の表示位置の位置座標を、対応する寸法関連記号の表示位置の位置座標の関数として記憶する付加記号位置記憶手段」を具備し、「二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると、前記修正後の寸法関連記号の表示位置の位置座標を前記関数に代入して、前記付加記号の表示位置の位置座標を修正する」のに対し、刊行物発明は、そのように関数を用いて付加記号の表示位置の位置座標を修正するものか否か明らかではない点。 相違点b 本願発明は、「位置修正後の付加記号と他の付加記号または寸法関連記号との重なりを検知する重なり検知手段とを具備し、重なりが検知されると、前記位置修正後の付加記号の位置をさらに修正する」のに対し、刊行物発明は、この点が明らかではない点。 5 相違点についての検討 相違点aについて 刊行物発明は、二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると前記付加記号の表示位置の位置座標を修正するものであるから、刊行物1に具体的な記載はないものの、前記寸法関連記号の表示位置の位置座標と前記付加記号の表示位置の位置座標とは一定の関係に関連付けられて修正されるものである。 そして、前記寸法関連記号の表示位置の位置座標と前記付加記号の表示位置の位置座標とを一定の関係に関連付けることは、前記付加記号の表示位置の位置座標を、対応する前記寸法関連記号の表示位置の位置座標の関数とすることと等価である。 そうすると、刊行物発明において、付加記号の表示位置の位置座標を修正するに際して、 「前記付加記号の表示位置の位置座標を、対応する前記寸法関連記号の表示位置の位置座標の関数として記憶する付加記号位置記憶手段」を備え、「前記二次元図形の修正に応じて前記寸法関連記号の表示位置が修正されると、前記修正後の寸法関連記号の表示位置の位置座標を前記関数に代入して、前記付加記号の表示位置の位置座標を修正する」ようにすることに格別困難な点はなく、当業者が容易に推考しえた程度のことである。 相違点bについて CAD分野において図面上好ましくない記号等の重なりを修正する点は周知技術(例えば特開平5-61927号公報、特開平2-114382号公報、特開平8-161359号公報参照)である。してみれば、「位置修正後の付加記号と他の付加記号または寸法関連記号との重なりを検知する重なり検知手段とを具備し、重なりが検知されると、前記位置修正後の付加記号の位置をさらに修正する」ようにすることは、周知技術の単なる付加であって、当業者が容易に推考しえた程度のことである。 そして、これら相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 6 むすび したがって、本願発明は、刊行物発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-29 |
結審通知日 | 2011-08-31 |
審決日 | 2011-09-14 |
出願番号 | 特願2000-98295(P2000-98295) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加舎 理紅子 |
特許庁審判長 |
吉村 博之 |
特許庁審判官 |
板橋 通孝 溝本 安展 |
発明の名称 | CADシステムにおける図形修正方法および装置 |
代理人 | 阪本 清孝 |
代理人 | 田邉 壽二 |
代理人 | 田中 香樹 |