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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1245641
審判番号 不服2009-25272  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-21 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2003-274818「ギャップフィラー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日出願公開,特開2005- 39550〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は,平成15年7月15日に出願されたものであって,平成20
年9月5日付け拒絶理由通知に応答して同年10月28日付けで手続補正が
なされたが,平成21年9月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ,
これに対し,同年12月21日に拒絶査定不服審判が請求されると共に,同
日付けで手続補正がなされたものである。
その後,当審において平成23年3月23日付けで期間(発送の日(同年
3月29日)から60日以内)を指定して前置報告書を用いた審尋がなされ
たが,期間内に応答はなされなかった。
第2 平成21年12月21日付け手続補正の却下の決定
〈補正の却下の決定の結論〉
平成21年12月21日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を
却下する。
〈補正の却下の決定の理由〉
1 本件補正の概要
本件補正は,特許請求の範囲及び明細書の段落0006について補正を
しようとするものであり,そのうち,請求項1については,補正前,
「衛星信号或いは地上波信号を受信し,直接受信できないエリアに向けて
受信周波数と同一の周波数で再送信するギャップフィラー装置において,
受信信号を処理するための増幅回路,減衰回路等を備えた信号処理部と,
該信号処理部を制御する制御部と,再送信信号を検波する検波回路と,該
検波回路の検出信号の大きさから発振を検出する発振検出回路と,該発振
検出回路が発振を検出したら,発振発生を報知する報知手段とを備え,
前記発振検出回路が前記制御部であって,制御部のCPUは,発振を検出
したら前記報知手段を報知動作させ,更に前記増幅回路の動作電源をオフ
するか前記減衰回路の減衰量を最大にするか少なくとも一方の回路保護操
作をするようプログラムされて成ることを特徴とするギャップフィラー装
置。」
であったものを,本件補正により,
「衛星信号或いは地上波信号を受信し,直接受信できないエリアに向けて
受信周波数と同一の周波数で再送信するギャップフィラー装置において,
受信信号を処理するための増幅回路,減衰回路等を備えた信号処理部と,
該信号処理部を制御する制御部と,再送信信号を検波する検波回路と,該
検波回路の検出信号の大きさから発振を検出する発振検出回路と,該発振
検出回路が発振を検出したら,発振発生を報知する報知手段とを備え,
前記発振検出回路が前記制御部であって,制御部のCPUは,再送信信号
から発振を検出したら前記報知手段を報知動作させ,更に前記増幅回路の
動作電源をオフするか前記減衰回路の減衰量を最大にするか少なくとも一
方の回路保護操作をするようプログラムされて成ることを特徴とする
ギャップフィラー装置。」
としようとするものである。
2 補正の目的について
本件補正は,補正前の「制御部のCPUは,発振を検出したら前記報知
手段を報知動作させ」を「制御部のCPUは,再送信信号から発振を検出
したら前記報知手段を報知動作させ」とするものであるから,発明を特定
するための事項を限定するものであり,平成18年改正前特許法第17条
の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで,本件補正により特許請求の範囲の請求項1に記載しようとする
発明(以下,「本件補正発明」という。)が,出願の際,独立して特許を
受けることができるものであるか否かについて検討する。
3 本件補正発明
本件補正発明は,前記「1 本件補正の概要」に,本件補正により補正
しようとする発明として記載したとおりのものである。
4 刊行物の記載事項
(1) 文献1
これに対し,この出願の出願日前に頒布された刊行物であり,原査定
の拒絶の理由に引用された特表2000-506340号公報(以下,
「文献1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 公報第6ページ第3行から第7ページ第11行
「この発明は自動車電話システムに用いられる2本のアンテナとこれ
らの間を接続する2つの信号経路を備えたタイプのリピータ
(repeater;双方向増幅中継器)を監視する方法及び装置に関する。前
述の2つの信号経路は,自動車用電話から基地局に向けた信号を増幅
する上方向経路(uplink)と,基地局から自動車用電話へ向けた信号を
増幅する下方向経路(downlink)とにより成り立っている。
前記2つの信号経路は特定の信号周波数チャンネル或いは周波数帯
域のみを通過させるように設計された多数の連結増幅器列群
(amplifier chains)を備えている。
この部分では安定度試験が行われて,信号レベルを測定すること,
また被測定信号レベルがしきい値(threshold value)を越えているか
どうかのチェックすることを含んだ試験用の基準条件(criterion)を
適用すること(applying)によって,前述の2つのアンテナ間の正帰還
を含む不安定性によって,或いは攪乱雑音信号によって,起こり得る
連続的で強い信号が検出され安定度試験の結果に応じて当該連結増幅
器列の増幅利得が調節される。
セルラ電話システム(cellular telephone systems)において用いら
れるリピータは,受信された無線周波数帯信号を増幅してこの増幅さ
れた信号を全く同じ搬送周波数(carrier frequency)にて再伝送
(retransmits)するための装置である。
従って,一方のアンテナから再伝送された信号が対となる他方のア
ンテナによって一定以上のレベルで検出されて(be picked up),正帰
還とこれに関連する前述の特化された連結増幅器列群中の増幅器に
よって発振が維持される高強度の自己発振を引き起こしてしまうとい
う慮がある。
若しも下方向経路が発振状態となったならば,当該リピータが受け
持つ空間領域はこの領域内の自動車用電話を動作不能にしてしまう程
度まで電界的に攪乱されてしまう。逆に仮に上方向経路が発振状態に
なってしまうと関連した基地局にては基地内の受信装置をブロックし
てしまい正常機能特性を維持できなくするに足る高強度で連続的な信
号を受けとってしまうことになる。
従って,リピータの備えた2つのアンテナを取り付けるにあたって
は,両アンテナの間の信号絶縁度(isolation)が充分なものになって
いるかどうかについて最大限の注意が払われなくてはならない。
前記連結増幅器列群の増幅利得については,基地局から伝送されて
くる信号強度を初めとして幾つかの要素を考慮して選定されなくては
ならない。
然しながら,両アンテナ間の信号絶縁度を測ったり,日々変化する
(updating) 各種のパラメータ等の装置の変化をチェックすることは
難しい。
更には,両アンテナの間の信号絶縁度は一定ではなく,一般的に変
化する天候状態や移動する大型の金属物体その他色々な変動する外的
環境に依存している。従って,自己発振現象や他の強い連続的な信号
が再伝送されてしまうのを防止するためには,自動的で好ましくは連
続的な安定度合いの監視(monitoring)が必要となる。」
イ 公報第7ページ第26行から第28行
「本発明の目的は,夫々の連結増幅器列の増幅利得を調節してリピー
タの動作性能を維持するための安定度試験を遂行するために用いられ
る方法と装置を提供することである。」
ウ 公報第8ページ第4行から第11ページ第20行
「好ましい具体例を図示した添付図面を参照して本発明について更に
詳細に説明する。
図1は本発明に係る監視装置を備えたリピータのブロック図であ
り,
図2は,本発明の監視方法を例示する概略フローチャートである。
図1に示されるリピータは,基本的には先行文献の国際特許公開報
WO-95/31866中に開示されている装置と同種の装置である。
図示装置はリピータとセルラ自動車電話(図示せず)との間の無線
通信を行うための第1のアンテナ1と,対応する無線通信をリピータ
と基地局(図示せず)との間で行うための第2のアンテナ2を備え構
成されている。
第1のアンテナ1により受信された無線周波数帯信号は増幅された
後に全く同じ(第1の)搬送周波数で第2のアンテナ2によって再伝
送(放射)される。
同様に,第2のアンテナ2によって受信された無線周波数帯信号群
は全く同じ周波数(第2の)を保って第1のアンテナ1から再伝送さ
れる。
第1のアンテナと第2のアンテナは 複合化フィルタ3,13(duplex
filters) を介して2つの互いに逆方向に向けた伝送経路に接続され
ている。
伝送経路の一方は上方向経路100と称され,自動車用電話より対応
した基地局に向けて生成された信号を伝送するための伝送経路であ
り,下方向経路200は逆方向の信号を伝送するための伝送経路であ
る。
上方向経路100中では,第1アンテナ1で受信された信号波が重複
フィルタ3を介して複結合増幅器4(multicoupler amplifier)に供給
される。この復結合増幅器4は,該信号波を多数の並列接続された連
結増幅器列6に分配供給しており,更には結合器12(combiner)並び
に重複フィルタ13を介して第2のアンテナ2へと同信号波を供給す
る。
これに対応して下方向経路中では,第2のアンテナ2から供給され
た信号波群が重複フィルタ13を通り,複結合増幅器14から多数の
並列接続された連結増幅器列15,更に結合器5と重複フィルタ3を
経由して第1のアンテナ1へと伝送される。
連結増幅器列6及び15はそれぞれが特定の周波数チャンネル信号
を通過させるように設計されていて,第1の結合器7と局部発振器1
0,フィルタ8,第2の結合器9,多数の増幅器群17(その内の2
つのみが例示されている),フィルタ8の入力側に位置した制御可能
な減衰器18,伝送経路6における入力信号レベルを測定するための
ダイオード検波器19,特定状況で経路を通る信号を強力に減衰させ
るためのスイッチング要素20,出力電力増幅器11,そして電力増
幅器11の出力端における電力レベルを測定するためのダイオード検
波器21を含み構成されている。
ダイオード検波器19,21は,それぞれがA/D変換器を介して
デジタルプロセッサを含んだ制御ユニット22へと接続されている。
この制御ユニット22はまた,D/A変換器を介して前述減衰器18
及びスイッチング要素20にも結合されている。
図1に示されているように制御ユニット22は,上述したと同様に
下方向経路の連結増幅器列15中の対応する構成要素にも接続されて
いる。
このようにしてそれぞれの連結増幅器列6及び15の入力レベルと
出力電力レベルが測定され対応する減衰器18に依って増幅利得を制
御することが可能になる。
局部発振器10もまた制御可能に構成る。周波数チャンネルはス
イッチング要素20を用いて遮断(block)される。この遮断動作は,
リピータの不安定度に関して予想される状態をチェックする場合には
一時的なものであるが,もし連続的な攪乱雑音信号が存在する場合で
あれば継続的に(durably)行われる。
制御ユニット22は決められた試験を実行し試験結果に応じて各部
の調節を行うようにプログラムされている。望ましくは,リピータの
連続的な管理(supervision)と動作の遠隔制御そして各種パラメータ
の更新とを可能とするために,操作及び監視のためのセンタ(図示な
し)に電話用モデムを介して本装置を接続するようにする。
制御ユニット22はまた2つの計数器(counters)を含み構成されて
いる。
第1の計数器(特には示してない)は,所定の計測時間内で,検波
器19によって検出された入力信号レベルが例えば-70dBmといった値
に設定されているしきい値を越えていた時間すなわち割合時間長を測
定する。
第2の計数器は,基本的には上述した割合時間長と同じものを測定
するが,これは信号レベルがしきい値を越えている多数のGSM細分
時間区(GSM time slots:1-8)と表現される。
検波器19は本実施例では2秒となっている測定期間の間に検出さ
れた最大レベル値及び最少レベル値をも記録登録する。同様に検波器
21は計測期間の間に検出された電力レベルの最大値を記録登録す
る。
続いて安定度試験ならびに監視過程について図2のフローチャート
図に基づいて説明する。測定が上方向経路6について行われる場合に
ついて説明し,試験結果に基づいての全ての調整作業が対応した上方
向経路6に対して行われる。全く同様な調整作業が下方向経路16に
関しても行われ,装置の良好なバランスが得られる。
リピータの動作が開始された時,或いは異常待機解除(an alarm
reset)にともなう動作再開時,停電後復帰時,或いは動作パラメータ
が更新された場合等には,上方向経路中の個々の連結増幅器列6に対
して安定度試験が(図2に従って)開始される。
最初に,対応する減衰器18によって増幅利得は,安定動作時余裕
値(stability margine balue)と称される決められた定常利得値をか
なり大きく越えるような値に一時的に増加させられる。安定動作時余
裕値は2つのアンテナ1,2間の信号絶縁度に対して充分な余裕幅
(margine)が確保できるような値が選ばれ,一般的には10-20dBの範
囲,例えば13dBに設定される。
続いて所定の測定過程(T1)が,ある周波数チャンネルが安定であり
動作に適した状態であるか,それとも2つのアンテナ間での正帰還に
基づく自己発振や充分抑圧されているべき連続的攪乱信号等による不
安定が見られる状態であるかを確認するために繰り返し実行される。
この測定時間はおよそ2秒で,個々の連結増幅器列6について以下
のような各パラメータ(variables)が計測される。すなわち,
-検波器19により検出された入力信号レベルの最大値及び最少値;
-第1計数器或いは第2計数器に記憶された(registered),入力信号
レベルがしきい値(例えば-70dBm)を越えていた割合時間長;
-検波器21によって検出された出力電力レベル;,が得られる。
続いて制御ユニット22のデジタルプロセッサは,不安定性或いは
障害(disturbance)に対する次のような試験基準(criterion;試験過
程・判定条件)を適用し判定を行う。
-入力信号レベルがしきい値を測定期間の少なくとも90%,特には
97%相当の時間越えている;
-出力電力が27dBmを越えている;そして,
-異なる時間区(time slots)での入力信号レベルの最大値と最少値の
間の差が10dBより小さい。
試験基準が全て満たされない場合,すなわち,少なくとも上記した
3つの部分的基準の一つに合致しない場合には,前述測定が数回繰り
返されて(符号1b),約30秒の間で試験結果が変化していない場合
には,増幅利得が前記定常値に設定されてリピータは継続的に繰り返
される測定(T1)によって監視されながらの通常通りの動作を開始す
る。
一方,もし試験基準が不安定性や攪乱信号(符号1a)が発生し得る
ことを示している場合には,入力信号レベルに対してのしきい値が,
測定で得られた最大値よりも5dBだけ下の値にまで増加させられ,ス
イッチング要素20が当該チャンネルが遮断状態となるように機能せ
しめられる(T2)。」
以上の記載事項及び図面の記載から,文献1には以下の発明(以下,
「引用発明」という。)が記載されている。
「自動車電話システムに用いられる,基地局又はセルラ自動車電話か
ら受信された無線周波数帯信号を増幅してこの増幅された信号を全く
同じ搬送周波数にてセルラ自動車電話又は基地局に再伝送するための
リピータにおいて,
減衰器18と,電力増幅器11と,電力増幅器11の出力端におけ
る電力レベルを測定するためのダイオード検波器21と,特定状況で
経路を通る信号を強力に減衰させるためのスイッチング要素20を有
する,特定の周波数チャンネル信号を通過するように設計された連結
増幅器列6及び15とを備え,
さらに,デジタルプロセッサを含んだ制御ユニット22を有し,
ダイオード検波器21は,A/D変換器を介して制御ユニット22
へと接続され,制御ユニット22はまた,D/A変換器を介して減衰
器18及びスイッチング要素20にも結合され,
制御ユニット22は,決められた試験を実行し試験結果に応じて各
部の調節を行うようにプログラムされ,
所定の測定過程(T1)を有し,該測定過程(T1)は,ダイオード検波器
21によって検出された出力電力レベルを得,制御ユニットは,出力
電力が27dBmを超えていることを試験基準とする判定を行い,
試験基準が正帰還に基づく自己発振を含む不安定性が発生し得るこ
とを示している場合には,スイッチング要素20が当該チャンネルが
遮断状態となるように機能させ,試験基準が満たされない場合は,継
続的に繰り返される測定(T1)によって監視されながらの通常通りの動
作を行うように機能させ,
リピータの連続的な管理と動作の遠隔制御を可能とするために,操
作及び監視のためのセンタに電話用モデムを介して接続するようにさ
れている
ことを特徴とするリピータ。」
なお,「検波器21」は「ダイオード検波器21」と同一のものと認
められるから,上記のように認定した。
(2) 文献2
同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-30
8695号公報(以下,「文献2」という。)には,図面と共に以下の
事項が記載されている。
ア 「【0041】ところで,この第1の実施形態のシステムでは,高
層ビルの屋上等にギャップフィラー装置GFaを設置している。
ギャップフィラー装置GFaは,静止衛星SAT1からの放送信号を
受信し増幅したのち,この受信した放送信号を同一周波数を保持した
まま,上記静止衛星SAT1からの放送信号を受信できないビル陰な
どのエリアに向け再送信するもので,例えば次のように構成され
る。」
イ 「【0087】(第7の実施形態)この発明の第7の実施形態は,
ギャップフィラー装置に,自装置の動作状態を表すモニタ情報を生成
してこれをモニタセンタに伝送する機能を持たせ,モニタセンタにお
いて上記モニタ情報を基にギャップフィラー装置の動作状態を監視す
るようにしたものである。
【0088】図15はこの実施形態に係わるシステムの第1の実施例
を示すものである。同図において,ギャップフィラー装置GFgは下
り放送信号の受信レベルや中継放送信号の送信レベルなどの自装置の
動作状態を表す要素を一定の時間間隔で検出してこれをもにた情報と
してメモリに蓄積する。
【0089】これに対しモニタセンタMCaは,定期的或いは任意の
タイミングでモニタ情報の送信要求を生成し,この送信要求を地上網
NWを介して上記ギャップフィラー装置GFgへ送出する。そうする
と,ギャップフィラー装置GFgは,メモリからモニタ情報を読み出
してこれを上記地上網NWを介してモニタセンタMCaへ伝送する。
なお,このときモニタセンタMCaへ伝送するモニタ情報は,最新の
モニタ情報のみであってもよいが,前回の伝送タイミングから今回の
伝送タイミングまでに蓄積されたモニタ情報をすべて伝送するように
してもよい。
【0090】すなわち,モニタセンタMCaは,サービスエリアに点
在する複数のギャップフィラー装置からポーリング方式によりモニタ
情報を収集し,この収集したモニタ情報を表示またはプリントアウト
する。また,それとともにモニタ情報の内容を基にギャップフィラー
装置の動作状態が正常であるか否かを判定し,その判定結果を表示す
る。
【0091】このような構成であれば,各ギャップフィラー装置GF
gの動作状態をモニタセンタMCaにおいて集中管理することがで
き,効率的な保守が可能となる。またモニタ情報の収集をポーリング
方式により行っているので,多数ののギャップフィラー装置のモニタ
情報を効率良く収集することができる。
【0092】図16はこの実施形態に係わるシステムの第2の実施例
を示すものである。同図において,各ギャップフィラー装置GFhと
モニタセンタMCbとの間は衛星通信回線を介して接続される。そし
て,ギャップフィラー装置GFhは,上記衛星通信回線を介してモニ
タセンタMCbからモニタ情報の送信要求が到来するごとに,メモリ
からモニタ情報を読み出してこのモニタ情報を衛星通信用の信号
フォーマットに変換したのち,衛星通信回線を介してモニタセンタM
Cbへ送信する。
【0093】このような構成によれば,既存の静止衛星の衛星通信回
線を利用して各ギャップフィラー装置からモニタ情報を収集すること
ができるので,地上網NWを使用した通信回線を不要にできる。
【0094】なお,以上述べた各例では,ギャップフィラー装置GF
g,GFhのモニタ情報をモニタセンタMCa,MCbからのポーリ
ングにより収集する場合について説明した。しかし,このポーリング
による収集機能に加えて,ギャップフィラー装置GFg,GFhに動
作状態の自己判定機能を持たせ,動作異常が検出された場合にギャッ
プフィラー装置GFg,GFhからモニタセンタMCa,MCbを呼
び出して,上記異常に係わるモニタ情報をモニタセンタMCa,MC
bに通知するようにしてもよい。
【0095】このようにすると,ギャップフィラー装置で動作異常が
発生するとその旨をモニタセンタが即時知ることができ,この結果よ
り迅速な復旧処置を講じることが可能となる。」
(3) 文献3
同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物であって,原査定の拒絶
の理由に引用された特開昭64-062926号公報(以下,「文献
3」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・公報第1ページ右下欄第4行から第2ページ右上欄第2行
「自動車電話等の移動通信では,サービス地域であっても周囲の地形
や建物の影響で無線基地局と移動局との間で電波の伝搬損失が大き
く,通信が困難な弱電界地域と呼ばれる場所がある。このような弱電
界地域を救済する手段として,ブースタと呼ばれる無線中継装置があ
る。
従来のブースタ構成例を第2図に示す。ブースタ装置は受信アンテ
ナ1(利得G_(1)),A級アンプを用いた増幅部2(利得G_(2))および送
信アンテナ3(利得G_(3))から構成されており,受信信号4を受信し
増幅した後に送信信号5として伝送する。信号4と信号5は同一の無
線チャネルであり,中継装置利得GはG=G_(1)・G_(2)・G_(3)である。6
は受信アンテナ1における送信信号の回り込み信号であり,送受信ア
ンテナ間伝搬損失量をL_(6)としたとき,信号6は信号5に対しレベル
が1/L_(6)倍となる。したがって,G_(loop)=G/L_(6)は回り込み信号の
ループ利得である。
ここで,G_(loop)が1よりも大きい場合(L_(6)<G),系は不安定と
なり発振を起こす。発振状態では,正常な通信における信号電力レベ
ルよりも大きな(例えば数十dB,中継装置の飽和出力にほぼ等し
い)不要信号が送信され,通信システムに悪影響を与える。従って,
送受信アンテナ間伝搬損失量L_(6)が中継装置利得Gよりも十分に大き
くなるように配慮する必要がある。しかし,中継装置を設置した時点
では送受信アンテナ間伝搬損失量が十分であったとしても,送受アン
テナの周辺に電波を反射する物体が通過または建設された等,送受信
アンテナ間伝搬損失量を低減させる要因があるとG_(loop)が1よりも大
きくなり中継装置が発振する場合がある。
このため,従来技術では発振により大きなレベルの不要波が送信さ
れることに着目し,7のレベル検出器により送信信号電力をモニタ
し,8の制御器では送信信号電力が一定値(例えば,中継装置の飽和
出力よりも数dB低い値)を越えた場合に発振が起きたと判断し,中
継装置の動作を停止あるいは増幅部2の利得を低減していた。」
(4) 文献4
同じくこの出願前に頒布された刊行物である特公平5-084087
号公報(以下,「文献4」という。)には,図面と共に以下の事項が記
載されている。
・第6欄第8行から第7欄第13行
「[実施態様]
次に,本発明に係る無線中継用ブースターアンプの利得制御方法に
ついてこれを適用する無線中継用ブースターアンプとの関係において
好適な実施態様を挙げ,添付の図面を参照しながら以下詳細に説明す
る。
第2図において,参照符号20は本実施態様に係る無線中継用ブー
スターアンプの制御方法を適用する無線中継用ブースターアンプを示
す。当該無線中継用ブースターアンプ20は,基本的に,増幅器22
と,当該増幅器22に受信信号24を供給する受信アンテナ26と,
増幅器22からの信号を送信信号28として送信する送信アンテナ3
0および本発明の要部に係る利得制御部32とから構成される。
前記受信アンテナ26で受信された信号は利得制御部32を構成す
る可変減衰器34,36を介して前記増幅器22の入力端子に導入さ
れ,当該増幅器22で増幅された後,分波器38を介して前記送信ア
ンテナ30に導入される。この場合,分波器38において本線信号と
しての前記増幅器22の出力信号V_(anp)から一部の信号が分岐され,当
該分岐された信号は検波器40を介し出力信号V_(det)としてAGC
(Automatic Gain Control)ループ制御回路42および発振停止回路
44を構成する比較器46,48の負入力端子に導入される。前記比
較器46,48の正入力端子には,夫々,基準電圧発生器50,52
からの基準電圧V_(R1),V_(R2)が導入されており,検波器40の出力信号
V_(det)と当該基準電圧V_(R1),V_(R2)との電圧差に応じて比較器46,48の
出力端子に,夫々,アナログ信号としての電圧信号V_(C1),パルス信号
としての電圧信号V_(C2)が発生する。
前記比較器46の出力信号V_(C1)は減衰量制御器54によつて減衰量
制御信号V_(A1)に変換された後,前記可変減衰器36の減衰量制御端子
AT1に導入される。一方,比較器48の出力信号V_(C2)に基づき発振判
定部56によつて当該無線中継用ブースターアンプ20が発振してい
るか否かが判定され,発振判定部56からその判定結果に基づき判定
信号V_(D2)が減衰量制御器58に導入される。減衰量制御器58は前記
判定信号V_(D2)に基づき減衰量制御信号V_(A2)を発生し,前記可変減衰器3
4の減衰量制御端子AT2に供給する。可変減衰器34は前記減衰量制
御信号V_(A2)に応じてその減衰量ATNが制御される。なお,前記発振判定
部56は後述する所定時間内にパルス状の電圧信号V_(C2)が2個以上到
来したときに当該無線中継用ブースターアンプ20が発振状態にある
ものと特定するようタイマ等から構成されている。」
(5) 文献5
同じくこの出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-098
130号公報(以下,「文献5」という。)には,図面と共に以下の事
項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,移動無線システムの不感地対策
として設備される無線中継装置に関し,特に,入出力アンテナ間の結
合によって発生する異常発振の検出回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車電話システムや携帯電話システムなどの移動無
線システムにおいては,山の陰,基地局から遠い所などの電波の届か
ない不感地に無線中継装置を配置し,無線基地局からの電波を中継増
幅して不感地域の移動機に電波を送出し,移動機からの電波を中継増
幅して無線基地局に対して送出してサービスの向上を図っている。
【0003】図3は従来の無線中継装置のブロック図である。図にお
いて,1は無線基地局側のアンテナ,2は送受分波器,3は基地局か
ら移動機に対する下り回線信号を増幅する下り系増幅部,4は移動機
から基地局に対する上り回線信号を増幅する上り系増幅部,5は送受
分波器,6は移動機側のアンテナ,7はAPC動作判定回路である。
【0004】下り系増幅部3と上り系増幅部4には,それぞれ,可変
減衰器31,41,増幅器32,42,結合器33,43,検波器3
4,44,APC回路35,45が備えられている。この下り系増幅
部3と下り系増幅部4は回路構成及び動作が同じなので上り系増幅部
4について説明する。
【0005】増幅器42は,多周波(多チャネル)の信号を同時に共
通増幅するため,相互変調歪が発生しないように直線性の優れた線形
増幅器が備えられている。しかし,実用上は,平均的チャネル数で経
済設計されているため,通話チャネルの数がお多い場合や,移動側の
アンテナ6の近くに移動機が近づいた場合などの過入力の場合,非直
線領域で増幅することとなり,相互変調歪が発生する場合がある。こ
れを防ぐため,自動電力制御(APC)回路45を設け,増幅器42
の出力レベルが規定値を超えたとき,結合器43で抽出した出力レベ
ルに比例した電圧を検波器44で検波し,APC回路45で直流増幅
し,可変減衰器45の減衰量を大きくして増幅器42の入力レベルを
抑圧して線形領域で動作するようになっている。
【0006】このような中継装置を現場に設置するとき,基地局側ア
ンテナ1と移動機側アンテナ6の設置位置や向きによってはアンテナ
間が結合し,基地局側アンテナ1の出力が移動機側アンテナ6に廻り
込むと正帰還による異常発振が起こる。そこで,両方のアンテナの設
置には,アンテナ間の廻り込み量が小さく異常発振が起こらないよう
に細心の注意が払われる。しかし,設置後,例えばアンテナ1または
アンテナ2の近傍にビル等の構造物が建設されて,構造物の反射等に
よりアンテナ間の廻り込み量が大きくなると,異常発振が起こり増幅
器の出力が飽和レベルに達し,正常動作できないばかりか,部品の過
熱などの損傷が発生して通信不能の状態となる。
【0007】APC動作判定回路7は,このような異常発振が起きた
とき,上り系,下り系の両方の増幅器42,32の供給電源を断にし
て動作を停止させるために設けられている。図4は異常発振と過入力
のときの出力レベルを示す特性例図であり,(A)は異常発振のとき
を示し,(B)は過入力のときを示す。移動機の通話チャネル数が増
えたり,移動機がアンテナ6の近くに来たときは,図4(B)のよう
に過入力状態が発生する。このときは,直ちにAPC回路45が動作
して出力レベルが抑えられる。一方,異常発振が始まると,図4
(A)のように,出力レベルが急激に上昇する。出力レベルが上昇し
て規定値を超えるとAPC回路45が働き,可変減衰器41の減衰量
が大きくなり増幅器のループ利得が下がると発振は停止する。そこで
出力レベルが下がってAPC回路45が元に戻ると再び異常発振が起
きて出力レベルが急激に上昇する。このような間欠発振が繰り返され
るが,APC回路ではピーク検波を行い,最大出力レベル電圧相当分
にて比較機能に供給する。
【0008】APC動作判定回路7には,比較機能とタイマー機能が
備えられており,上り系,下り系のAPC回路35,45の出力値を
監視し,所定の値を超えたとき,その出力値が一定時間,例えば,9
0秒,10分間または30分間を経過したとき発振が継続していると
判定し,上り系,下り系の増幅器42,32の供給電源を断にする。
このとき同時にランプを点灯し,警報音を発し,さらに,中継装置の
動作を遠方監視している有人局へ故障情報を送るようになっている
が,図示は省略した。」
イ 「【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施例を示す回路構成図であ
る。図において,アンテナ1,6,送受分波器2,5,下り増幅部
3,上り系増幅部4は図3の従来と同じである。本発明では,従来の
APC動作判定回路7の代わりに,46?52の異常発振検出回路を
設けて,過入力のときは出力を出さず,異常発振のときのみ出力を出
して増幅器42,32の供給電源を停止するように構成したことを特
徴とするものである。
【0015】
【実施例】図1において,46はバッファアンプ,47はハイパス
フィルタ(HPF),48は増幅器,49はピーク検出回路,50は
バッファアンプ,51は積分回路,52は比較器である。
【0016】図2は図1の異常発振検出回路の各部の波形例図であ
り,(A)は異常発振時の波形を示し,(B)は過入力時の波形を示
す。
【0017】図1の異常発振検出回路は,APC回路45の入力信
号,すなわち,検波器44の出力を取り入れる。この入力はAPC回
路から出力される制御電圧を取り入れてもよい。そしてバッファアン
プ46(無くてもよい)によってHPF47の影響をなくしHPF4
7でフェージングによる数十Hzの成分を除く。図4(A)の異常発
振は,APC回路45の時定数によって周期が数百Hz?数kHzで
間欠発振を呈し出力の有無を繰り返す。一方,移動無線ではフェージ
ングにより数10Hz以下の変動で出力の有無を繰り返している。そ
のため,上記のように,HPF47でフェージングによる変動を取り
除き異常発振の成分(数百Hz?数kHz)のみを抽出する。このH
PF47の出力は図2(A)の(a)のような波形となる。次に,増
幅器48(省くことも可)で若干増幅して(b)のような波形とな
る。次に,ピーク検波回路49で波形(c)とし,バッファアンプ5
0を介して積分回路51で積分すると波形(d)のようになる。この
信号(d)を比較器52に入力し,予め設定した時間から求めたしき
い値(REF)と比較し,しきい値を超えたとき異常発振と判定して
上り系,下り系増幅器42,32の供給電源を停止させる。
【0018】一方,過入力のときは,図2(B)の各波形のようにな
り,過入力になったときAPC回路45が働いて増幅器42の出力レ
ベルが下がるので積分波形は(d)のようになり,比較器52のしき
い値を超えないので上り系,下り系増幅器42,32の電源はそのま
ま供給されて装置の正常動作が続けられる。
【0019】アンテナ間結合が上りと下りで周波数特性をもつとき
は,同様の異常発振検出回路46?52を下り系増幅部3に設け
る。」
5 対比
(1) 引用発明の「自動車電話システム」は,「基地局」及び「自動車」の
いずれも陸上に存在する陸上無線通信に属するものであることは明らか
であるから,引用発明の「自動車電話システムに用いられる」「無線周
波数帯信号」は,本件補正発明の「地上波信号」に相当し,引用発明の
「全く同じ搬送周波数」は本件補正発明の「同一の周波数」に相当し,
引用発明の「再伝送」は本件補正発明の「再送信」に相当するから,引
用発明の「リピータ」と,本件補正発明の「ギャップフィラー装置」
は,「地上波信号を受信し,受信周波数と同一の周波数で再送信」する
「装置」である点で共通する。
(2) 引用発明の「電力増幅器11」は本件補正発明の「増幅回路」に,引
用発明の「減衰器18」は本件補正発明の「減衰回路」に相当するか
ら,引用発明は本件補正発明の「信号処理部」に相当する構成を有して
いるといえる。
(3) 引用発明の「電力増幅器11の出力端」の信号は図1の記載から「再
伝送」される信号であることが明らかであるから,引用発明の「電力増
幅器の出力端における電力レベルを測定するためのダイオード検波器2
1」は本件補正発明の「再送信信号を検波する検波回路」に相当し,引
用発明の「電力増幅器の出力端における電力レベル」は本件補正発明の
「検波回路の検出信号の大きさ」に相当する。
(4) 引用発明の「ダイオード検波器21」は「A/D変換器を介して制御
ユニット22へと接続され」ており,引用発明の「制御ユニット22」
は「信号を強力に減衰させるスイッチング要素20」にも「結合」され
ているから,引用発明の「制御ユニット22」は本件補正発明の「制御
部」に相当し,引用発明の「デジタルプロセッサ」は本件補正発明の
「CPU」に相当する。
そして,引用発明は「正帰還に基づく自己発振を含む不安定性が発生
し得ることを示している場合」を「制御ユニット22」の「決められた
試験」の「測定過程(T1)」により「判定」するものであるから,引用発
明の「制御ユニット22」は本件補正発明の「検出回路」が「制御部」
であることに相当する。
さらに,引用発明の「制御ユニット22」は「デジタルプロセッサ」
により動作するものであるから,引用発明と,本件補正発明は,いずれ
も動作について「プログラムされ」たものであることも明らかである。
(5) 引用発明の「試験基準が正帰還に基づく自己発振を含む不安定性が発
生し得ることを示している場合には,スイッチング要素20が当該チャ
ンネルが遮断状態となるように機能させ」は,少なくとも当該チャンネ
ルについての「リピータ」としての機能を停止させるものであるから,
引用発明の「スイッチング要素20が当該チャンネルが遮断状態となる
ように機能させ」は本件補正発明の「回路保護操作をする」ことと共通
する。
(6) 引用発明の「監視のためのセンタに電話用モデムを介して接続」は,
監視の結果を報知し得るものであるから,本件補正発明の「報知手段」
と「報知手段」である点で共通している。
(7) よって,本件補正発明と引用発明は以下の点で一致する。
「地上波信号を受信し,受信周波数と同一の周波数で再送信する装置に
おいて,
受信信号を処理するための増幅回路,減衰回路等を備えた信号処理部
と,該信号処理部を制御する制御部と,再送信信号を検波する検波回路
と,該検波回路の検出信号の大きさを検出する検出回路と,報知手段と
を備え,
前記検出回路が前記制御部であって,制御部のCPUは,再送信信号か
ら発振を検出したら回路保護操作をするようプログラムされて成ること
を特徴とする装置。」
そして,以下の各点で相違する。
相違点1 本件補正発明は「衛星信号或いは地上波信号を受信し,直接
受信できないエリアに向けて」「再送信するギャップフィラー
装置」であるのに対し,引用発明は「自動車電話システムに用
いられる」再送信を行う「リピータ」である点。
相違点2 本件補正発明は「検波回路の検出信号の大きさから発振を検
出する」のに対し,引用発明は検波回路の検出信号の大きさを
検出しているものの,それによって「発振を検出」しているか
は定かでない点。
相違点3 本件補正発明は「発振検出回路」が「発振を検出したら」発
振の発生を報知する「報知手段」を備え,「再送信信号から発
振を検出したら前記報知手段を報知動作させ」るのに対し,引
用発明には報知をする手段が存在するものの,発振を検出して
報知する手段を有しているか定かでない点。
相違点4 本件補正発明は,「発振を検出したら」「更に前記増幅回路
の動作電源をオフするか前記減衰回路の減衰量を最大にするか
少なくとも一方の回路保護操作」をするものであるのに対し,
引用発明は,発振を検出した場合に「スイッチング要素20」
によって「経路を通る信号を強力に減衰させる」ものの,「減
衰回路18」の減衰をさせるものであるか否かは定かでない
点。
6 当審の判断
(1) 相違点1について
この出願の出願前,衛星放送などを直接受信できないエリアに同一周
波数で再送信する「ギャップフィラー装置」は,例えば文献2(摘記箇
所ア参照。)に記載されているように当該分野では広く知られているも
のであり,技術的にも引用発明の「リピータ」と共通するものであるか
ら,文献1記載の「リピータ」の技術を周知の「ギャップフィラー装
置」として構成することは,当業者であれば適宜なし得る程度のことで
ある。
(2) 相違点2について
ア この出願の出願前,同一周波数で中継をする無線中継装置におい
て,中継の動作中に,送信出力が過大となることをもって系に発振が
生じていることを検出することは,例えば文献3(摘記箇所参
照。),文献4(摘記箇所参照。),文献5(摘記箇所アの段落00
07,摘記箇所イ参照。)に記載されているように周知の事項である
から,引用発明の検波回路の検出出力を発振の検出に用いるようにす
ることは,当業者であれば適宜なし得ることである。
イ また,引用発明では「出力電力が27dBmを超えていることを試験基
準とする判定」をしているが,前記アの周知技術を知る当業者であれ
ば,引用発明の「出力電力が27dBmを超えていることを試験基準とす
る判定」をすることが,発振を判定する機能をも有するものと理解す
ることができるから,「検波回路の検出信号の大きさから発振を検出
する」ことは,引用発明が記載された文献1に記載されているに等し
い事項でもある。
(3) 相違点3について
この出願前,無線中継装置において,異常を検出して報知するように
構成することは,例えば文献2(摘記箇所イ参照。),文献5(摘記箇
所アの段落0008参照。)に記載されているよう,この出願の出願
前,当該分野では周知の事項であり,引用発明の「監視のための」報知
手段について,発振などの異常をも報知可能とするように構成すること
は,当業者であれば適宜なし得る程度のことにすぎない。
(4) 相違点4について
同一周波数で無線中継をする装置において,系に発振が生じた場合,
増幅器の電源を断としたり,増幅器の利得を減少させたり,減衰器の減
衰量を増すことで増幅の停止や系の増幅率の減少を図り,発振の停止を
するようにすることは,例えば文献3(摘記箇所の最終段落参照。),
文献5(摘記箇所アの段落0008,摘記箇所イの段落0017参
照。)に記載されているように,この出願の出願前,当該分野では周知
の事項であり,このような手段を,引用発明の保護手段である「スイッ
チング手段20」に代え採用することは,当業者であれば適宜なし得る
程度のことにすぎない。
(5) そして,引用発明にこれら周知技術を適用し,本件補正発明のように
することにより生じる作用は,当業者であれば予測可能な程度のものに
すぎない。
(6) 本件審判請求人の主張について
ア 本件審判請求人(以下,「請求人」という。)は,平成22年1月
22日付けで補正された本件審判請求の理由において,「リピータが
自動車電話の再送信制御を実施している状態で常に再送信信号を監視
する構成とはなっていない(相違点1)。」(「4.本願発明と引用
発明の対比」の欄)と相違を挙げ,「これは,所定の決められた時に
異常判定動作を行うもので,再送信動作中に継続されて異常判定が成
されると解釈することはできない。よって,リピータが自動車電話の
再送信制御を実施している状態で常に再送信信号を監視する構成とは
なっていない。」(同)と主張し,さらに,「「通常通りの動作を開
始する。」も,通常通りの試験動作を開始すると解釈するのが妥当で
あり,試験基準値を満たしているかどうか所定の測定過程(T1)によ
り監視する工程を継続させる解釈するのが自然である。よって,再送
信信号自体を測定して判断する動作を行うものではない。」(同)と
も主張している。
イ しかしながら,文献1の「T1」における安定性試験は明らかにアン
テナからの入力信号があることを前提としたものであり(公報第10
ページ第27行から第11ページ第3行記載の3つの計測パラメータ
は,入力がなければ計測できないことからも明らか。),しかも,最
初の状態では「スイッチング要素20」は遮断状態にないのだから,
出力電力増幅器11の出力は,入力されたものが増幅されており,文
献1の「T1」における安定性試験は,リピータとしての動作状態,す
なわち再送信動作をしている状態でなされていることが明白である。
そして,文献1のものは,「最初に,対応する減衰器18によって
増幅利得は,安定動作時余裕値(stability margine balue)と称され
る決められた定常利得値をかなり大きく越えるような値に一時的に増
加させられ」(公報第10ページ第18行から第20行),その後,
「増幅利得を前記定常値に設定されてリピータは継続的に繰り返され
る測定(T1)によって監視されながらの通常通りの動作を開始する。」
(公報第11ページ第14行から第17行)というものである。
ここで,「通常」とはこの「増幅率」が「定常値」であることをい
うものであることが明らかであり,既に説明したように「T1」の時点
ではリピータとしての動作状態にあったのだから,文献1の「通常通
りの動作を開始する」とは,増幅率を定常値にして,「測定(T1)に
よって監視されながら」,「動作」を「開始する」と解釈されるもの
であり,最初の「安定度試験」の後は通常の動作において監視されな
がらの動作をしていることが明白である。
ウ よって,文献1のものは「再送信動作中に継続されて異常判定が成
され」,しかも,「再送信信号自体を測定して判断する動作を行う」
ものであることは明らかであり,これと異なる請求人の主張は採用で
きない。
エ なお,仮に,請求人の主張のような相違があるとしても,「再送信
信号自体を測定」し「再送信動作中に継続されて異常判定が成され」
るようにされたものは既に検討したように周知(「(2) 相違点2につ
いて」ア参照。)であり,引用発明に周知技術を採用し本願のように
することは適宜なし得る程度のことにすぎない。
(7) したがって,本件補正発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて
当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規
定により特許を受けることができないものである。
7 補正の却下の決定のまとめ
以上検討したように,本件補正発明は,平成18年改正前特許法第17
条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たして
おらず,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条
第1項の規定により,却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり本件補正は却下されたから,この出願の特許請求の範囲の
請求項1に記載された発明 (以下,「本願発明」という。) は,「第2
〈補正の却下の決定の理由〉1」に本件補正前の請求項1として記載した
とおりのものである。
2 刊行物の記載事項
刊行物の記載事項は,前記「第2〈補正の却下の決定の理由〉4」に示
したとおりのものである。
3 対比及び判断
本願発明は,前記「第2〈補正の却下の決定の理由〉2」で検討したよ
うに,本件補正発明の「制御部のCPUは,再送信信号から発振を検出し
たら前記報知手段を報知動作させ」の「再送信信号から」という発明特定
事項を省いたものであるから,本件補正発明の発明を特定するために必要
としていた事項の一部を省いたものである。
すると,前記「第2〈補正の却下の決定の理由〉5」で対比し,同
「6」で検討したように,本願発明の発明を特定するために必要な事項を
全て含み,更にその発明を特定するために必要な事項を限定したものであ
る本件補正発明が,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明
をすることができたものであるから,本願発明も同様に,引用発明及び周
知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容
易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許
を受けることができないものである。
4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項
規定により特許を受けることができないものである。
したがって,この出願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒
絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-18 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-08 
出願番号 特願2003-274818(P2003-274818)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 典之  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 齊藤 健一
稲葉 和生
発明の名称 ギャップフィラー装置  
代理人 石田 喜樹  

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