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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1245642
審判番号 不服2010-908  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-15 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2005-363386「液晶表示装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月17日出願公開,特開2006-216936〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成9年3月24日に出願した特願平09-069553号(以下「原出願」という。)の一部を,平成17年12月16日に新たな特許出願としたものであって,平成21年9月7日付けで拒絶理由通知がされ,これに対して同年10月27日に手続補正書及び意見書が提出されたが,同年11月17日付けで,拒絶査定がされた。
そして,平成22年1月15日に,拒絶査定に対する審判請求がされるとともに手続補正書が提出され,その後当審において,平成23年4月20日付けで審尋がされ,同年6月2日に回答書が提出されたものである。

第2 平成22年1月15日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)の却下について

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲について,補正前の請求項1ないし8を,補正後の請求項1ないし5に補正し,また,明細書の段落【0007】及び【0010】を補正するものであって,本件補正による補正前後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。

(本件補正前)
「【請求項1】
透明絶縁性基板と,ゲート電極およびゲート配線と,半導体層と,上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極,ソース電極配線およびドレイン電極と,上記ゲート電極およびゲート配線と上記半導体層の間に形成された絶縁膜と,上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極を有する第一の基板,および上記第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板を備えた液晶表示装置の製造方法において,
上記ゲート電極およびゲート配線は,AlまたはAl合金,およびAlより硬度が高い金属を順次成膜して二層膜を形成する工程と,上記二層膜の表面をブラシにより洗浄した後レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程により形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
Alより硬度が高い金属膜は,Al合金膜と同じエッチング液あるいはエッチングガスによりエッチングできる金属により形成されることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
Alより硬度が高い金属膜は,Al合金膜よりエッチング速度が大きい金属により形成されることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
二層膜のエッチング条件は,Alより硬度が高い金属膜の方が,Al合金膜よりも速くエッチングされる条件であることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
二層膜のエッチング工程において,ドライエッチング法を用い,上記ドライエッチングのエッチングガスに酸素を含有させることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項6】
Alより硬度が高い金属膜は,上記二層膜のエッチングおよびエッチングレジストの除去後に,除去されることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
Alより硬度が高い金属は,ブラシ洗浄により上記金属の表面に傷が生じない硬度を有する金属であることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項8】
Alより硬度が高い金属は,Cr,Ti,Ta,またはMoのいずれかである請求項1?7記載の液晶表示装置の製造方法。」

(本件補正後)
「【請求項1】
透明絶縁性基板と,ゲート電極およびゲート配線と,半導体層と,上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極,ソース電極配線およびドレイン電極と,上記ゲート電極およびゲート配線と上記半導体層の間に形成された絶縁膜と,上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極を有する第一の基板,および上記第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板を備えた液晶表示装置の製造方法において,
上記ゲート電極およびゲート配線は,上記透明絶縁性基板上に直接AlまたはAl合金を成膜した後,このAlまたはAl合金を被覆するようにAlより硬度が高い金属を成膜して二層膜を形成する工程と,上記二層膜の表面をブラシにより洗浄した後レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程により形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
Alより硬度が高い金属膜は,Al合金膜と同じエッチング液あるいはエッチングガスによりエッチングできる金属により形成されることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
Alより硬度が高い金属膜は,上記二層膜のエッチングおよびエッチングレジストの除去後に,除去されることを特徴とする請求項1?2のいずれか一項記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
Alより硬度が高い金属は,ブラシ洗浄により上記金属の表面に傷が生じない硬度を有する金属であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
Alより硬度が高い金属は,Cr,Ti,Ta,またはMoのいずれかである請求項1?4記載の液晶表示装置の製造方法。」

2 補正事項の整理
本件補正による,本願の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についての補正事項は,以下のとおりである。(下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
(1)補正事項1
補正前の請求項3?5を削除し,補正前の請求項6?8を,補正後の請求項3?5とする。さらに,補正前の請求項6?8の各請求項に記載された引用請求項を,上記請求項の削除による請求項の番号の付け替えに伴い,変更する。
(2)補正事項2
補正前の請求項1の「AlまたはAl合金,およびAlより硬度が高い金属を順次成膜して二層膜を形成する工程」を,「上記透明絶縁性基板上に直接AlまたはAl合金を成膜した後,このAlまたはAl合金を被覆するようにAlより硬度が高い金属を成膜して二層膜を形成する工程」と補正して,補正後の請求項1とする。
(3)補正事項3
本願の明細書の段落【0007】,【0010】を,特許請求の範囲の補正に対応して補正する。

3 補正目的の適否及び新規事項の有無
(1)補正事項1について
補正事項1は,特許法第17条の2第4項(平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第1号に掲げる,請求項の削除を目的とするものに該当する。
(2)補正事項2について
ア 本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「本願の出願当初の明細書等」という。)の段落【0020】?【0021】,【0030】?【0031】,及び【0072】,並びに図1,図5及び図14から,補正事項2が,本願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内において行われたものであることは明らかである。
イ したがって,補正事項2は,特許法第17条の2第3項(平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)の規定に適合する。
ウ 補正事項2は,補正前の請求項1の記載に対して,「上記透明絶縁性基板上に直接」という事項,及び「を成膜した後,このAlまたはAl合金を被覆するように」という事項を付加するとともに,「Al又はAl合金」と「Alより硬度が高い金属を」との間から「,および」を削除し,かつ,「Alより硬度が高い金属を」と「成膜し」の間から「順次」を削除したものである。
「,および」と「順次」を削除していることは,意味の上での相違をもたらすものではないから,補正事項2は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「上記ゲート電極およびゲート配線は,AlまたはAl合金,およびAlより硬度が高い金属を順次成膜して二層膜を形成する工程」を,限定的に減縮するものである。
エ そうすると,補正事項2は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
(3)補正事項3について
補正事項3は,補正事項2による,本願の特許請求の範囲の請求項1の補正に伴うものであり,上記(2)で検討したとおり,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
(4)小括
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たす。

4 独立特許要件についての検討
上記3において検討したとおり,上記補正事項2は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するから,補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項に適合するか),以下に検討する。

(1)本願補正発明
補正後の本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,再掲すると,次のとおりである。
「【請求項1】
透明絶縁性基板と,ゲート電極およびゲート配線と,半導体層と,上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極,ソース電極配線およびドレイン電極と,上記ゲート電極およびゲート配線と上記半導体層の間に形成された絶縁膜と,上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極を有する第一の基板,および上記第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板を備えた液晶表示装置の製造方法において,
上記ゲート電極およびゲート配線は,上記透明絶縁性基板上に直接AlまたはAl合金を成膜した後,このAlまたはAl合金を被覆するようにAlより硬度が高い金属を成膜して二層膜を形成する工程と,上記二層膜の表面をブラシにより洗浄した後レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程により形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」

(2)引用例1の記載と引用発明
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され,原出願の出願前に日本国内で頒布された特開昭64-84668号公報(平成21年11月24日付け拒絶査定における「引用文献2」。以下「引用例1」という。)には,第1図とともに次の記載がある。(下線は当審で付加したもの。以下同じ。)
・「本発明は薄膜トランジスタに係り,特に動作速度の改良に関するものである。」(第1頁左側欄第20行?右側欄第1行)
・「また,薄膜トランジスタは半導体面積を大きくすることが容易であるため現在主にアクティブマトリクスパネルのスイッチ素子として用いられており,このアクティブマトリクスパネルは,走査電極と信号電極のマトリクスの交点部に形成された画素毎にスイッチ素子を設け,このスイッチ素子をオン/オフすることにより画素信号に基づいて画素の表示/非表示を制御している。走査電極は,一般にゲートラインと呼ばれ,信号電極はドレインラインと呼ばれている。前記ゲートラインには,スイッチ素子のゲート電極が接続されており,1本のゲートラインに接続されるゲート電極の数は水平走査線方向の画素の数に等しい。ゲートライン及びゲート電極には同一の金属が用いられるため,ゲートラインの抵抗はゲート電極に用いる金属のシート抵抗により大きく変化する。このため,ゲート信号の伝播遅延時間を短くするためにはゲート電極にシート抵抗の少ない金属を用いる必要がある。またゲート電極及びゲートラインを微細化することにより開口率を上げ画面のコントラストを向上させることができるが,微細化に伴い配線抵抗が増大するため従来のようにゲート電極にクロムやタンタルのようなシート抵抗の大きな金属を用いている場合,微細化も制限されていた。」(第2頁左上欄第13行?右上欄第17行)
・「第1図は,本発明の一実施例である逆スタガー形の薄膜トランジスタの略断面図である。
同図において,ガラス,石英またはサファイア等の絶縁性基板1の略中央部にはスパッタ法または蒸着法により形成された約1500Åの厚さのアルミニウム(Al)から成る第1の金属層と,その第1の金属層の上に同じくスパッタ法または蒸着法等により形成された約500Åの厚さのクロム(Cr)から成る第2の金属層が形成されている。このアルミニウム2とこのアルミニウム2の上に積層されたクロム3は,ゲート電極4を形成しており,そのゲート電極4を被覆して窒化シリコン(SiN)からなるゲート絶縁膜である絶縁膜5が約3000Åの厚さに絶縁性基板1上に形成されている。この絶縁膜5は例えば,プラズマCVD法により形成する。さらに,絶縁膜5の上にはアモルファスシリコンからなる半導体薄膜6が所定の厚さに形成されており,そしてその半導体薄膜6の上のチャネル形成領域7を除く部分にスパッタ法または蒸着法によりアルミニウム(Al)モリブデン(Mo)等からなるソース電極7及びドレイン電極8が形成されている。」(審決注:下線部の「ソース電極7及びドレイン電極8」は,「ソース電極8及びドレイン電極9」の誤記である。)(第2頁左下欄第12行?右下欄第13行)
・「アルミニウム2のの上に高融点金属であるクロム3を積層したため,後の製造工程で熱処理を行っても剛性の高いクロム3にアルミニウム2が被覆されているためアルミニウム2にヒロックなどの変形がほとんど生じなくなった。」(第3頁左上欄第9行?第13行)
・「また,本発明を例えば液晶ディスプレイ等のアクティブマトリクスパネルのスイッチ素子に用いた場合には,ゲート電極及びゲートラインの配線抵抗が従来よりも大幅に小さくなるのでゲート信号の伝搬遅延時間が著しく短縮される。また,ゲートラインの配線抵抗を従来よりも増加することなくゲート電極及びゲートラインの微細化が可能となり,その結果開口率を大きくできるので,画面のコントラストが向上する。」(第3頁右下欄第12行?第20行)

(2-2)引用発明
ア 上記(2-1)及び引用例1の第1図を参照すると,引用例1には,ガラス等の絶縁性基板1と,ゲート電極4およびゲートラインと,上記ゲート電極4を被覆するゲート絶縁膜である絶縁膜5と,半導体薄膜6と,上記半導体薄膜6上のソース電極8及びドレイン電極9と,からなる逆スタガー形の薄膜トランジスタを有する基板を備えた液晶ディスプレイであって,上記ゲート電極4及びゲートラインが上記絶縁性基板に直接形成されたアルミニウムと,当該アルミニウム上に形成されたクロムからなる,液晶ディスプレイが記載されている。
イ 引用例1に直接開示されているのは液晶ディスプレイの構造であるが,これを得るためには,その各要素を形成する製造段階を経なければならないことは当然である。そこで,上記液晶ディスプレイの要素の一つであるゲート電極4およびゲートラインが形成される際の製造段階について検討すると,第1図には,絶縁性基板1上に直接アルミニウムが形成され,その上にクロムが積層されて形成され,両金属層が同一形状にパターニングされていることが見て取れるから,このゲート電極4の形成には,絶縁性基板1の上に直接アルミニウムを成膜した後,このアルミニウムの上にクロムを成膜して二層膜を形成する工程を経ていることが明らかである。
したがって,引用例1には,上記アで認定した液晶ディスプレイについて,その製造方法として,ゲート電極4およびゲートラインが,絶縁性基板1の上に直接アルミニウムを成膜した後,このアルミニウムを被覆するようにクロムを成膜して二層膜を形成する工程を含んで形成されることが,実質的に記載されていると認められる。
ウ よって,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ガラス等の絶縁性基板1と,ゲート電極4およびゲートラインと,上記ゲート電極4を被覆するゲート絶縁膜である絶縁膜5と,半導体薄膜6と,上記半導体薄膜6上のソース電極8及びドレイン電極9と,からなる逆スタガー形の薄膜トランジスタを有する基板を備えた液晶ディスプレイの製造方法において,
上記ゲート電極4およびゲートラインは,上記ガラス等の絶縁性基板1上に直接アルミニウムを成膜した後,このアルミニウムを被覆するようにクロムを成膜して二層膜を形成する工程を含んで形成される液晶ディスプレイの製造方法。」

(3)対比
ア 引用発明の「ガラス等の絶縁性基板1」,「ゲート電極4およびゲートライン」,及び「半導体薄膜6」が,それぞれ,本願補正発明の「透明絶縁性基板」,「ゲート電極およびゲート配線」,及び「半導体層」に相当する。
イ 引用発明の「上記半導体薄膜6上のソース電極8」及び「ドレイン電極9」は,半導体薄膜6と共に薄膜トランジスタを構成することは明らかであるから,本願補正発明の「上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極」および「ドレイン電極」に相当する。
ウ 引用発明のゲート電極4およびゲートラインは同一の材料で形成されていること,及び,技術常識からみて,ゲート電極上のゲート絶縁膜は必要に応じてゲートライン上にも存在し,ゲート電極およびゲートラインと半導体薄膜との間の絶縁をするものと認められることから,引用発明の「上記ゲート電極4を被覆するゲート絶縁膜である絶縁膜5」は,本願補正発明の「上記ゲート電極およびゲート配線と上記半導体層の間に形成された絶縁膜」に相当する。
エ 引用発明の「を有する基板」は,本願補正発明の「を有する第一の基板」に相当する。
オ 引用発明の「液晶ディスプレイ」は,本願補正発明の「液晶表示装置」に相当する。
カ 引用例1において,クロムは剛性の高い金属として用いられているが,クロムはアルミニウムより硬度が高い金属であることは自明であるから,引用発明の「クロム」は本願補正発明の「Alより硬度が高い金属」に相当し,引用発明の「上記ガラス等の絶縁性基板1上に直接アルミニウムを成膜した後,このアルミニウムを被覆するようにクロムを成膜して二層膜を形成する工程」は,本願補正発明の「上記透明絶縁性基板上に直接AlまたはAl合金を成膜した後,このAlまたはAl合金を被覆するようにAlより硬度が高い金属を成膜して二層膜を形成する工程」に相当する。
キ 以上によれば,本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「透明絶縁性基板と,ゲート電極およびゲート配線と,半導体層と,上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極,およびドレイン電極と,上記ゲート電極およびゲート配線と上記半導体層の間に形成された絶縁膜と,を有する第一の基板を備えた液晶表示装置の製造方法において,
上記ゲート電極およびゲート配線は,上記透明絶縁性基板上に直接AlまたはAl合金を成膜した後,このAlまたはAl合金を被覆するようにAlより硬度が高い金属を成膜して二層膜を形成する工程を含んで形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」

<相違点>
・相違点1
本願補正発明は,「上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極,ソース電極配線およびドレイン電極」と「上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極」を有する「第一の基板」を備えた液晶表示装置の製造方法であるのに対し,引用発明は,基板が「ソース電極配線」を有することについて明記がなく,また,「上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極」を有することについて明記がない点。
・相違点2
本願補正発明は,「上記第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板」を備えた液晶表示装置の製造方法であるのに対し,引用発明では,「第二の基板」について明記がない点。
・相違点3
本願補正発明は,ゲート電極およびゲート配線の形成に際して,「上記二層膜の表面をブラシにより洗浄した後レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程」を有しているのに対し,引用発明は,この工程について記載がない点。

(4)相違点についての判断
(4-1)相違点1について
液晶表示装置において,各画素が画素電極を有し,各画素電極に薄膜トランジスタを介して画像信号が印加されることは技術常識といえる。そして,薄膜トランジスタが設けられる第一の基板において,薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極のうち,一方の電極であるソース電極がデータ線と一体で形成されるとともに,他方の電極であるドレイン電極が画素電極に電気的に接続されることは,以下の周知例1にみられるように当然の構成である。
したがって,引用発明において,ソース電極とドレイン電極のうち,一方の電極であるソース電極をデータ線と一体で形成して「ソース電極配線」を有するものとするとともに,他方の電極であるドレイン電極を画素電極に電気的に接続して「上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極」を有するものとすることは,当業者が容易になし得たことである。

<周知例1>
特開平7-287251号公報(以下「周知例1」という。)には,図11,図14とともに,以下の記載がある。
・「【0003】図14は,そのような従来のアクティブマトリックス方式の液晶表示素子の一方の絶縁性基板に設けられた薄膜トランジスタ(以下,TFTという)2および保持容量素子1の部分を説明するための断面説明図である。図14においてガラス,石英などからなる透明絶縁性基板3にAl,Ta,Cr,ITOなどからなる保持容量素子の一方の電極である保持容量電極11,Al,Taなどの金属から陽極酸化により形成されたAl_(2)O_(3),Ta_(2)O_(5)などからなる保持容量膜12,ITOなどからなる画素電極13が順次設けられている。また薄膜トランジスタ2部では,Al,Ta,Cr,Siなどからなるゲート電極21,Al,Taなどの金属から陽極酸化により形成された第1のゲート絶縁膜22aおよびSi_(3)N_(4),SiO_(2)などからなる第2のゲート絶縁膜22b,アモルファスシリコンなどからなる半導体層23,Al,Ta,Crなどからなるソース電極24,ドレイン電極25が順次積層されて形成されている。なお10は保護膜である。」
・「【0004】TFT2と保持容量素子1とのあいだには画素電極13の部分があり,対向する透明絶縁性基板に設けられた電極とのあいだに印加される電圧により両透明絶縁性基板間に注入された液晶材料の旋光性により各画素ごとに点灯,非点灯が制御されるようになっている。(後略)」
・「【0006】つぎに動作について説明する。TFT2はゲート電極21に印加される走査信号により半導体層23に流れる電流がON,OFFされる。ON時にはソース電極24に印加された画像信号により半導体層23に電流が流れ,ドレイン電極25を通じて画素電極13に電圧が印加されるとともに,保持容量素子1が充電される。(後略)」
・「【0031】
【実施例】本発明の液晶表示素子はマトリックス状に画素が形成され,各画素に少なくともTFTなどからなるスイッチング素子と前述のデューティ駆動のための保持容量素子と画素電極が設けられ,さらに配向膜などが設けられた一方の透明絶縁性基板と,前記画素電極と対向する電極および配向膜などが少なくとも設けられた他方の透明絶縁性基板とが,前記電極が対向するように一定間隙を保持して周縁で接着されている。その間隙に液晶材料が注入され,透明絶縁性基板の外側にさらに偏光板がそれぞれ設けられている。スイッチング素子のTFTの構造は前記従来例と同じ構造や他の周知の構造に形成され,他の部分の構成なども従来用いられている液晶表示素子と同様の構成で形成される。(後略)」
・「【0033】・・・また図11に保持容量素子1,TFT2,画素電極13からなる1画素分のTFT2側透明絶縁性基板3の平面図を示すように,各画素のあいだにゲート線9およびデータ線8などの金属配線が相互に接触しないように交差して設けられている。このいずれかの金属配線と保持容量膜12にするための金属膜とが同じ材料で形成されることにより,同じ金属膜の部分的陽極酸化により金属配線と保持容量膜とが一度で形成され,工数減少になるとともに,金属配線に段差が少なくなるため好ましい。なお図11において21?25は図14と同じ部分を示している。」
上記摘記事項を参酌すると,図11及び図14からは,薄膜トランジスタがソース電極24とドレイン電極25を有し,上記ソース電極24がデータ線8と一体で形成され,また,上記ドレイン電極25と画素電極13が電気的に接続されている構成が見てとれる。

(4-2)相違点2について
液晶表示装置において,薄膜トランジスタが設けられる第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板を備えることは,上記周知例1(段落【0031】参照)にみられるように当然の構成である。
したがって,引用発明において,「上記第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板」を備えた「液晶表示装置」とすることは,当業者が容易になし得たことである。

(4-3) 相違点3について
ア 絶縁基板上に,薄膜トランジスタのゲート電極及びゲート配線を形成する場合に,導電膜上にレジストを形成し,エッチングする工程を行うことは,慣用的になされることであり,また,二層構造のゲート電極及びゲート配線を形成する場合においても,二層膜を形成する工程と,レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程を行うことは,以下の周知例2にみられるように,周知の技術である。
そして,引用発明のゲート電極も,二層膜をパターニングしていることは明らかであるから,引用発明においても,二層膜を形成する工程の後,レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程を行うことは,通常行われる工程であると認められる。

<周知例2>
特開平5-323373号公報(以下「周知例2」という。)には,図1?5とともに,以下の記載がある。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示パネル等に使用される薄膜トランジスタパネルの製造方法に関する。」
・「【0012】まず,ドラム回転方式であり対向ターゲット方式であるマグネトロンスパッタ電極を有し,基板温度を200℃まで昇温可能なスパッタリング装置を用いて,ガラス基板2上にゲート電極及びゲートバスラインを形成する。スパッタリング装置内にセットしたガラス基板2を基板温度200℃に加熱してから放置して室温まで冷却した後,回転ドラムを6回転/分で回転させ,圧力約0.001TorrのArガス雰囲気中において,DCスパッタリング法によりAlをスパッタリングし,ガラス基板2上に厚さ約50nmのAl膜4を形成する。続いて,同一装置内で真空を破らずに室温で,回転ドラムを6回転/分で回転させ,圧力約0.001TorrのArガス雰囲気中において,DCスパッタリング法によりCrをスパッタリングし,Al膜4上に厚さ約80nmのCr膜6を形成する(図1(a))。このAl膜4とCr膜6の二層膜の上に,幅が5μmのゲートパターンを有するレジスト膜8を形成する。このレジスト膜8をマスクとして,RIE(反応性イオンエッチング)によりCCl_(4) +O_(2) ガスによりCr膜6をエッチングし,続いてBCl_(3) +Cl_(2 )ガスによりAl膜4をエッチングする(図1(b))。その後レジスト膜8を除去して,Al膜10aの上層にCr膜10bが形成されたゲート電極10が完成する。」

イ 液晶表示装置の製造において,レジスト膜塗布前にブラシ洗浄を行うことは,以下の周知例3,4,5にみられるように周知技術であり,さらに,液晶表示装置の製造のためのレジスト処理システムにブラシ洗浄装置が組み込まれることが,周知例3,4にみられるように周知の装置構成であることから,液晶表示装置の製造において,レジスト膜の塗布前にブラシ洗浄を行うことはごく一般的な発想であると認められる。
また,液晶表示装置の製造における一工程として,金属膜の表面に対しブラシ洗浄を行うことは,周知例1,5にみられるように,周知技術である。

<周知例3>
特開平7-135171号公報(以下「周知例3」という。)には,以下の記載がある。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,主に半導体素子やLCD基板などの製造工程において,ウエハやLCDガラス板等の被塗布物表面に塗布した例えばレジスト膜などの塗膜を加熱して乾燥処理する塗膜の処理方法及び処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば,半導体デバイスの製造プロセスでは,半導体ウエハのレジスト膜にフォトリソグラフィー技術を用いて所定の回路パターンを転写し,現像処理することなどが行われている。このようなリソグラフィー工程におけるレジスト処理技術は,ステッパ(マスクアライナ)の機能・特性並びに後のドライエッチングの性能を最大限に引き出すために重要である。」
・「【0014】
【実施例】以下,添付の図面を参照しながら本発明の種々の実施例について説明する。図1に示すように,レジスト処理システム1の一端側にカセットステーション(ローダ部)2が設けられ,多数枚の半導体ウエハWを収容したカセットが搬入されるようになっている。ローダ部2には複数の処理室6,7,8,9,12,13を含む第1のプロセス部15が連結されている。(後略)」
・「【0015】処理室6?14は移送路4の両側に配設されている。第1プロセス部15の移送路4の一方側にはブラシ洗浄室6,高圧ジェット洗浄室7,アドヒージョン室8,クーリング室9が順に並んでいる。さらに第2プロセス部17の移送路4の一方側には塗膜処理室50,塗膜処理室10,プリベーキング室11が順に並んでいる。
【0016】第1プロセス部15の移送路4の他方側にはレジスト塗布室12およびレジスト除去室13が順に並んでいる。レジスト塗布室12にはスピンコータ(図示せず)が設けられている。さらに第2プロセス部17の移送路4の他方側には2台の現像室14が並んでいる。」
・「【0023】次に,図3及び図4を参照しながら第1実施例の塗膜処理方法について説明する。ステーション2にカセットを搬入し,移載アーム機構3によりカセットから1枚のウエハWを取り出し,これを第1プロセス部15に搬入する。ウェハWを処理室6でブラシ洗浄し,処理室7で高圧ジェット洗浄し,スピン乾燥し,さらに処理室8でアドヒージョン処理する(工程S1)。ウエハWを処理室9で冷却し,これを処理室12に搬入し,ここでウエハW表面にレジスト溶液をスピン塗布する(工程S2)。」

<周知例4>
特開平8-255789号公報(以下「周知例4」という。)には,以下の記載がある。
・「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,例えばレジスト膜のような溶剤による液状塗布膜を,LCD基板等の基板上やこの上に形成された層の上に形成するための処理装置及び処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に,半導体技術の分野では,LCD基板の上に形成された半導体層,絶縁体層,電極層を選択的に所定のパターンにエッチングする場合に,半導体ウエハの場合と同様にパターン部のマスキングとして層の表面にレジスト膜を形成することが行われている。
【0003】例えば,レジスト膜の形成方法として,角形のLCD基板(以下に基板という)を,処理容器内に配設される載置台上に載置固定した状態で,処理容器の開口部を蓋体で閉止して,処理容器と載置台を回転させ,例えば,この基板上面の中心部に溶剤と感光性樹脂とからなるレジスト液を滴下し,そのレジスト液を基板の回転力と遠心力とにより基板中心部から周縁部に向けて放射状に拡散させて塗布する処理方法が知られている。」
・「【0052】上記レジスト塗布・現像処理システムは,図11に示すように,基板Gを搬入・搬出するローダ部90と,基板Gの第1処理部91と,中継部93を介して第1処理部91に連設される第2処理部92とで主に構成されている。なお,第2処理部92には受渡し部94を介してレジスト膜に所定の微細パターンを露光するための露光装置95が連設可能になっている。」
・【0054】上記第1処理部91は,X,Y,Z方向の移動及びθ回転可能なメインアーム80の搬送路102の一方の側に,基板Gをブラシ洗浄するブラシ洗浄装置120と,基板Gを高圧ジェット水で洗浄するジェット水洗浄装置130と,基板Gの表面を疎水化処理するアドヒージョン処理装置105と,基板Gを所定温度に冷却する冷却処理装置106とを配置し,搬送路102の他方の側に,この発明の塗布膜形成装置である塗布処理装置107及び塗布膜除去装置108を配置してなる。」
・「【0058】上記のように構成される塗布・現像処理システムにおいて,カセット96内に収容された未処理の基板Gはローダ部90の搬出入ピンセット99によって取出された後,第1処理部91のメインアーム80に受け渡され,そして,ブラシ洗浄装置120内に搬送される。このブラシ洗浄装置120内にてブラシ洗浄された基板Gは引続いてジェット水洗浄装置130内にて高圧ジェット水により洗浄される。この後,基板Gは,アドヒージョン処理装置105にて疎水化処理が施され,冷却処理装置106にて冷却された後,この発明に係る塗布膜形成装置107にて,上述した手順によりフォトレジストすなわち感光膜が塗布形成され,引続いて塗布膜除去装置108によって基板Gの辺部の不要なレジスト膜が除去される。したがって,この後,基板Gを搬出する際には縁部のレジスト膜は除去されているので,メインアーム80にレジストが付着することもない。そして,このフォトレジストが加熱処理装置109にて加熱されてベーキング処理が施された後,露光装置95にて所定のパターンが露光される。そして,露光後の基板Gは現像装置110内へ搬送され,現像液により現像された後にリンス液により現像液を洗い流し,現像処理を完了する。」

<周知例1>
前記周知例1(特開平7-287251号公報)には,以下の記載がある。
・「【0040】[実施例1]図1は本発明の液晶表示素子の一実施例の保持容量素子部分を示す断面説明図である。ガラス,石英などからなる透明絶縁性基板の表面にITO,Al,Ta,Crなどからなる保持容量素子1の一方の電極である保持容量電極11,Al,Taなどの金属から陽極酸化により形成されたAl_(2)O_(3),Ta_(2)O_(5)などからなる保持容量膜12a,12b,保持容量素子1部以外の画素用の電極と連続して形成され,ITOなどからなる画素電極13が順次形成されている。保持容量電極11には透明なITOを用いれば液晶表示素子の開口率を低下させないため好ましい。」
・「【0044】まず,図2(a)に示されるように,透明絶縁性基板3上に,たとえばITOなどからなる保持容量電極11をCVD法,スパッタ法,蒸着法などで形成する。ついで図2(b)に示されるように,たとえばTaからなる金属膜121とAlからなる金属膜122のように異なった種類の金属膜をスパッタ法,蒸着法などで順次形成する。これらの金属膜はのちに酸化膜にするもので,それぞれ1000?2000Å程度形成される。このとき,成膜装置内のダストの影響で金属膜121,122にダストAが取り込まれたり,ピンホールBが発生することがあるが,別個の成膜装置で第1および第2の金属膜121,122を順次形成すれば,同じ位置にダストAやピンホールBが存在する確率は極めて小さい。とくに,第1の金属膜121を形成後,一旦ブラシ洗浄,超音波洗浄などの洗浄処理をすることにより,つぎに形成する第2の金属膜122を貫通するような大きな露出するダストは除去されるので,より効果的である。」

<周知例5>
特開平2-132833号公報(以下「周知例5」という。)には,以下の記載がある。
・「実施例
以下,第1図を参照して本発明による薄膜配線の実施例を説明する。
即ち,例えばホウ珪酸ガラスからなる絶縁基板11上に例えば真空蒸着した後パターンニングした膜厚100nmのITO薄膜l2設け,更に第2導電膜として膜厚30nmのCr薄膜14,第1導電体薄膜として膜厚100nmのAl薄膜l3,第3導電体薄膜として膜厚30nmのTa薄膜15をDCスバッタ法により連続蒸着した。この構成においては,超純水によるブラシ洗浄および発煙硝酸による洗浄によても孔食反応は見られず,良好な洗浄が可能である。続いて,フォトレジストによりエッチングマスクを形成し,例えばTa薄膜15をシュウ酸系,Al薄膜l3を燐酸-硝酸系,Cr薄膜14を硝酸セリウム系にてエッチングを行ない,発煙硝酸にてレジスト除去を施すことにより良好なAl配線パターンを形成することができた。」(第2頁左下欄第17行?右下欄第15行)

ウ したがって,引用発明において,ゲート電極となる金属の二層膜を形成する工程の後,上記アのとおり,レジストを形成して上記二層膜をエッチングする工程を行うことは通常行うことであって,その際に,上記イの一般的な発想に基づき,レジスト膜の塗布前にブラシ洗浄を行うことは,当業者が直ちに想到し得ることである。
そして,周知例1,5にみられるように,高融点金属等の硬度が高い金属膜表面に対しては,ブラシ洗浄が可能であることは周知のことであるから,引用発明のアルミニウムにクロムが積層された二層膜に対して,ブラシ洗浄を実施したうえでレジストを形成し,エッチングを行うようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
エ よって,引用発明のゲート電極およびゲート配線の形成に際して,本願補正発明のごとく,「上記二層膜の表面をブラシにより洗浄した後レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程」を行うことは,当業者が容易になし得ることである。

(5)まとめ
以上のとおり,引用発明において,上記相違点1,2,3に係る本願補正発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得たことである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
よって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について
1 本願発明について
平成22年1月15日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項1(平成21年10月27日に提出された手続補正書により補正された請求項1)に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「【請求項1】
透明絶縁性基板と,ゲート電極およびゲート配線と,半導体層と,上記半導体層と共に薄膜トランジスタを構成するソース電極,ソース電極配線およびドレイン電極と,上記ゲート電極およびゲート配線と上記半導体層の間に形成された絶縁膜と,上記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極を有する第一の基板,および上記第一の基板と共に液晶材料を挟持する第二の基板を備えた液晶表示装置の製造方法において,
上記ゲート電極およびゲート配線は,AlまたはAl合金,およびAlより硬度が高い金属を順次成膜して二層膜を形成する工程と,上記二層膜の表面をブラシにより洗浄した後レジストを形成し,上記二層膜をエッチングする工程により形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」

2 引用発明
引用発明は,上記第2,4,(2),(2-2)で認定したとおりである。

3 対比・判断
上記第2の3で検討したとおり,本願補正発明は,本願発明の発明特定事項を全て含み,かつ,これをより限定したものである。
そして,本願発明の発明特定事項を全て含み,かつ,これをより限定したものである本願補正発明が,上記第2,4に記載したとおり,引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 結言
以上検討したとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-23 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-12 
出願番号 特願2005-363386(P2005-363386)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 充雄  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 恩田 春香
小川 将之
発明の名称 液晶表示装置の製造方法  
代理人 竹中 岑生  
代理人 大岩 増雄  
代理人 児玉 俊英  
代理人 村上 啓吾  

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