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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25B
管理番号 1245644
審判番号 不服2010-2206  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-01 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2004-247139号「冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月9日出願公開、特開2006-64289号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年8月26日の出願であって、平成21年11月13日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月24日)、これに対し、平成22年2月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審にて平成23年4月14日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年6月3日付けで意見書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年2月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「圧縮機(CM)および凝縮器(CD)を室外ユニット(12)に配置すると共に、膨張手段(EV)および蒸発器(EP)を室内ユニット(14)に配置し、前記凝縮器(CD)からの液化冷媒を、第1管路系(22a)および膨張手段(EV)を介して蒸発器(EP)に供給し、該蒸発器(EP)を冷却後の気化冷媒を第2管路系(22b)を介して圧縮機(CM)へ帰還させるようにした冷却装置において、
前記室外ユニット(12)に設置され、前記凝縮器(CD)の下流側で前記第1管路系(22a)に接続する受液器(R)と、
前記室外ユニット(12)に配設され、前記圧縮機(CM)の下流側から分岐して前記受液器(R)の下流側で前記第1管路系(22a)に接続する第1バイパス管(46)と、
前記室内ユニット(14)に配設され、前記膨張手段(EV)の上流側で前記第1管路系(22a)から分岐して蒸発器(EP)の上流側に接続する第2バイパス管(52)と、
前記第1,第2バイパス管(46,52)および前記第1管路系(22a)の夫々に配設され、前記受液器(R)からの液化冷媒を第1管路系(22a)を介して膨張手段(EV)へ供給する状態または前記圧縮機(CM)からの気化冷媒を第1管路系(22a)を介して蒸発器(EP)へ供給する状態に冷媒供給経路を切替える切替手段(48,50,54,56)とを備え、
前記切替手段は、前記第1バイパス管(46)の途中に介挿され、該第1バイパス管(46)を開閉自在な第1バイパス弁(48)と、前記第1管路系(22a)における第1バイパス管(46)の接続部より上流側で、前記受液器(R)の下流側に介挿されて該第1管路系(22a)を開閉自在な第1開閉弁(50)と、前記第2バイパス管(52)の途中に介挿され、該第2バイパス管(52)を開閉自在な第2バイパス弁(54)と、該第1管路系(22a)における第2バイパス管(52)の分岐部より下流側で、膨張手段(EV)の上流側に介挿されて該第1管路系(22a)を開閉自在な第2開閉弁(56)とから構成され、
前記膨張手段(EV)は、前記蒸発器(EP)における出口側の第2管路系(22b)に取付けられた感温筒(TH)を備える温度作動膨張弁が用いられ、該膨張手段(EV)は、第2管路系(22b)を流通する気化冷媒の温度に応じて開閉され、
前記第1管路系(22a)における第2開閉弁(56)より下流側で、膨張手段(EV)の上流側の部位と、前記蒸発器(EP)から前記圧縮機(CM)に向かう第2管路系(22b)の所要区間とを近接させて熱交換する熱交換部(58)を備えている
ことを特徴とする冷却装置。」

第3 引用例
1.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平8-291956号公報(以下「引用例1」という。)には、「ホットガスデフロストを行なう冷凍機」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。)

ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】この発明は、冷凍自動車の冷凍庫、冷蔵庫等の貨物室や車室、又は冷凍倉庫(これらを被冷却部ということにする)の冷却に使用され、ホットガスデフロストを行なう冷凍機に関し、その冷媒配管を少なくするのに利用できる構成を得たものである。」
イ.段落【0006】
「【課題を解決するための手段】この発明は、冷却部Aと冷媒源部Bとを接続する管を少なくしてホットガスデフロストを行なう冷凍機の構成を得たもので、膨張弁6、エバポレータ7を持つ冷却部Aと、コンプレッサ1、コンデンサ3、レシーバタンク4を持つ冷媒源部Bとを、レシーバタンク4と膨張弁6とを接続する冷媒供給管5及びエバポレータ7の出口とコンプレッサ1の吸込口とを接続する冷媒戻り管10の2本の管で接続し、冷却部Aにおいて、弁11を持つ短絡管12を膨張弁6を短絡して冷媒供給管5とエバポレータの冷媒入口とに接続し、冷媒源部Bにおいて、弁13を持つ短絡管14をコンデンサ3、レシーバタンク4を短絡してコンプレッサの吐出口と冷媒供給管5とに接続してホットガスデフロストを行なう冷凍機を構成したものである。弁11、13は遠隔操作ができるように電磁弁とするのが望ましい。」
ウ.段落【0007】?段落【0009】
「【作用】弁11、13を閉じて冷凍機を運転すると、コンプレッサ1から吐出された高温の冷媒ガスは、従来と同様にコンデンサ3に入って液化され、レシーバタンク4に貯えられ、管5を通って膨張弁6からエバポレータ内に噴出し、管10からコンプレッサ1に戻り、被冷却部を冷却する。
弁11、13を開くと、冷媒ガスは抵抗の大きいコンデンサ3、膨張弁6を避けて管14、12を通り直接エバポレータ7に入って除霜を行なう。
この構成によれば、冷却部Aと冷媒源部Bとを接続する管は、冷媒供給管5、冷媒戻り管10の2本で足りるから、管材料が少なくて済むと共に、配管工事も容易になる。」
エ.図1には、短絡管14はコンプレッサ1の下流側から分岐してレシーバタンク4の下流側で冷媒供給管5に接続し、短絡管12は膨張弁6の上流側で冷媒供給管5から分岐してエバポレータ7の上流側に接続していることが図示されている。
オ.上記ウの記載内容及び図1の図示内容によれば、弁11、13は被冷却部を冷却する状態(レシーバタンク4からの液化冷媒を冷媒供給管5を介して膨張弁6へ供給する状態)と除霜する状態(コンプレッサ1からの気化冷媒を冷媒供給管5を介してエバポレータ7へ供給する状態)に切替える切替手段ということができる。

上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「コンプレッサ1およびコンデンサ3を冷媒源部Bに配置すると共に、膨張弁6およびエバポレータ7を冷却部Aに配置し、コンデンサ3からの液化冷媒を冷媒供給管5および膨張弁6を介してエバポレータ7に供給し、該エバポレータ7を冷却後の気化冷媒を冷媒戻り管10を介してコンプレッサ1へ帰還させるようにした冷凍機において、
冷媒源部Bに設置され、コンデンサ3の下流側で前記冷媒供給管5に接続するレシーバタンク4と、
冷媒源部Bに配設され、コンプレッサ1の下流側から分岐してレシーバタンク4の下流側で前記冷媒供給管5に接続する短絡管14と、
冷却部Aに配設され、前記膨張弁6の上流側で前記冷媒供給管5から分岐してエバポレータ7の上流側に接続する短絡管12と、
短絡管14、12の夫々に配設され、レシーバタンク4からの液化冷媒を冷媒供給管5を介して膨張弁6へ供給する状態またはコンプレッサ1からの気化冷媒を冷媒供給管5を介してエバポレータ7へ供給する状態に冷媒供給系路を切替える切替手段とを備え、
切替手段は、短絡管14の途中に介挿され、該短絡管14を開閉自在な弁13と、短絡管12の途中に介挿され、該短絡管12を開閉自在な弁11とから構成される冷凍機。」

2.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2003-336943号公報(以下「引用例2」という。)には、「冷却装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.段落【0034】?段落【0036】
「e.第5の実施形態
次に、本発明の第5の実施形態について図面を参照して説明する。同実施形態は、図5に示すように、上記各実施形態におけるバイパス管24に代えて、膨張弁22をバイパスするバイパス管61を採用したものである。
バイパス管61には、流路切換手段としての開閉弁62が介装されている。開閉弁62は、電気的に開閉制御されるものであり、冷却運転時には閉状態に保たれてバイパス管61の冷媒の通過を禁止し、除氷運転時には開状態に保たれてバイパス管61の冷媒の通過を許容する。これにより、圧縮機11から圧送された冷媒は、冷却運転時には膨張弁22側に供給され、除氷運転時にはバイパス管61側に供給されることになる。
また、受液器21から膨張弁22に冷媒を供給する供給管51のバイパス管61が分岐した位置より下流位置には、開閉弁63が介装されている。開閉弁64は、電気的に開閉制御されるものであり、冷却運転時には開状態に保たれて冷媒の通過を許容し、除氷運転時には閉状態に保たれて冷媒の通過を禁止する。これにより、蒸発器23の除氷運転時、膨張弁22への逆側からの冷媒の流入が禁止されて、圧縮機11から蒸発器23に確実に冷媒が供給されるようになっている。」

上記記載事項、図示内容を総合すると、引用例2には、次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されている。
「バイパス管61に開閉弁62を介装すると共に膨張弁22に冷媒を供給する供給管51にも開閉弁63を介装することにより、冷媒の供給の切替えを確実に行うこと。」

3.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭57-23657号(実開昭58-126679号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、「製氷機の脱氷装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.実用新案登録請求の範囲
「圧縮機(1)から凝縮器(2)、受液器(3)及び製氷板(4)を介して再び圧縮機(1)に至る冷媒循環路(5)を形成した製氷機において、前記冷媒循環路(5)に常開及び常閉切換弁(6)(8)介して切換自在に接続される受液器(3)からポンプ(7)及び製氷板(4)を介して再び受液器(3)に至る解氷循環路(9)を形成したことを特徴とする製氷機の脱氷装置。」
イ.明細書1ページ15行?2ページ7行
「これを図示実施例について説明すると(1)は圧縮機を示し、該圧縮機(1)の吐出側から凝縮器(2)、受液器(3)及び製氷板(4)を介して再び圧縮機(1)の吸入側に至る冷媒循環路(5)が形成され、該循環路(5)には受液器(3)と製氷板(4)との間及び製氷板(4)と圧縮機(1)との間にそれぞれ設けられる常開の切換弁(6a)(6b)と受液器(3)に連るポンプ(1)と製氷板(4)との間及び製氷板(4)と受液器(3)との間にそれぞれ設けられる常閉の切換弁(8a)(8b)とを介して切換自在に接続される受液器(3)からポンプ(7)及び製氷板(4)を介して再び受液器(3)に至る解氷循環路(9)が形成されている。図中(10)は受液器(3)と製氷板(4)との間に設けられる膨張弁を示す。」
ウ.上記記載及び図示内容からみて、受液器(3)から製氷板(4)に至る冷媒回路は、常開の切換弁(6a)を介した膨張弁(10)を有する回路に対して常閉の切換弁(8a)を介した回路はバイパス回路ということができ、この冷媒回路の切換はそれぞれに設けられる切換弁(6a)(8a)によって行われるものである。

上記記載事項、図示内容、認定事項を総合すると、引用例3には、次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されている。
「バイパス回路に切換弁(8a)を介装すると共に膨張弁(10)を有する回路にも切換弁(6a)を介装し、冷媒回路の切換はそれぞれに設けられる切換弁(6a)(8a)によって行うこと。」

4.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平11-23111号公報(以下「引用例4」という。)には、「冷凍システム」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.段落【0014】
「【発明の実施の形態】以下、この発明を冷凍システムに具体化した実施の形態について、図1に基づいて詳細に説明する。図1において、1は、水冷式製氷機として構成された水冷式冷凍装置である。この水冷式冷凍装置は、圧縮機11、水冷式凝縮器12、受液器13、膨張機構としての感温膨張弁14、製氷用蒸発器15が冷媒配管により順次接続されている。製氷用蒸発器15は、図示しない製氷器に配設されたもので、製氷器に流水される冷水を製氷するものである。14aは、前記感温膨張弁14の感温筒であって、圧縮機11の吸入ガス配管に配設されている。また、水冷式凝縮器12は、冷却水配管31、32によりクーリングタワー3に接続されており、冷却水配管31に介装された冷却水ポンプ33により、凝縮器用冷却水が供給される。水冷式凝縮器12に供給された冷却水は、この水冷式凝縮器にて加熱され、クーリングタワー3において外気により冷却されるように構成されている。クーリングタワー3は、施設されたビルの共用設備であり、前記冷却水配管31、32には、図面に例示した空気調和機4等の他の製品が接続されている。従って、水冷式凝縮器12への冷却水量は、冷却水配管31中に設けられた水量調節弁18により、夏季の最大負荷時を基準として設定されている。」
イ.図1には、感温膨張弁14は、製氷用蒸発器15の出口側の配管に配設された感温筒14aを備えることが図示されている。

5.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2003-269809号公報(以下「引用例5」という。)には、「冷却装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.段落【0049】
「そして上記した一連の配管には代替フロン等の熱媒体が封入されている。また膨張弁5の感温筒13は、加熱部11と電動弁10の間に設けられ、加熱部11を出て電動弁10に至る間の冷媒温度を検知する。すなわち通常の冷却装置においては、膨張弁の感温筒は、蒸発装置の出口近傍に設けられるが、本実施形態では、膨張弁5の感温筒13は、蒸発装置6の出口から離れた部位に設けられ、さらに感温筒13の取付け部位と、蒸発装置6の間には加熱部11が存在する。」
イ.図1には、膨張弁5は、蒸発装置6の出口側の配管に配設された感温筒13を備えることが図示されている。

6.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭62-9811号(実開昭63-116864号)のマイクロフィルム(以下「引用例6」という。)には、「冷凍装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.明細書10ページ6?9行
「第5図には第2実施例を示すが、これは減圧機構として温度式膨張弁14を使用し、上記バイパス管9を、感温筒15の取付け位置よりも蒸発器7側に接続した構造のものである。」
イ.第5図には、温度式膨張弁14は、蒸発器7の出口側の第2ガス管8(第5図の符号は誤り)に配設された感温筒15を備えることが図示されている。

7.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭58-13303号(実開昭59-118975号)のマイクロフィルム(以下「引用例7」という。)には、「冷凍装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.明細書1ページ14行?2ページ14行
「第1図は従来の冷凍装置の冷媒回路の例を示すもので、圧縮機1を出た高圧高温の冷媒ガスは凝縮器2にて放熱し、凝縮液化して冷媒液となり熱交換器3に入る。こゝで、後述の蒸発器5より出た低圧低温の冷媒ガスと熱交換して冷やされ、過冷却された冷媒液となる。熱交換器3を出た冷媒液は膨張弁4に至り、こゝで、減圧されて低圧低温となり蒸発器5に入る。蒸発器5にて冷媒は周囲より熱を奪う冷却作用を行い、蒸発・気化して冷媒ガスとなる。蒸発器5を出た冷媒ガスは前述の熱交換器3にて冷媒液と熱交換して温度を高められた後、ふたたび圧縮機1に戻り冷凍サイクルが完了する。
こゝで、熱交換器3は前記のように凝縮器2より出た冷媒液を過冷却して、蒸発器5での冷却作用を高める効果があり低い蒸発温度の冷凍装置に常用されるが、蒸発器5を出た冷媒ガスは熱交換器3に於て温度が高められるために、圧縮機1に入る冷媒ガスの温度が高まることになる。」
イ.第1図には、膨張弁4の上流側の部位と蒸発器5から圧縮機1に向かう部位を熱交換器3により熱交換させることが図示されている。

8.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭57-67200号(実開昭58-169454号)のマイクロフィルム(以下「引用例8」という。)には、「冷凍装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.明細書1ページ18行?3ページ1行
「第1図によりフロート弁を使用している従来の冷凍装置について説明する。
圧縮機1により圧縮された高温、高圧の冷媒は凝縮器2にて液化され、吸入管3と熱交換部4で熱交換的に接触している乾燥器5を通る。ここで吸入管4と乾燥器5とを、熱交換器4で熱交換させているのは、冷却器6より圧縮機1へ戻る比較的温度の低い冷媒と熱交換させる事により、高圧液冷媒の過冷却を促進し、冷凍能力を向上させる為のものである。過冷却された冷媒液は、フロート弁7に流れていく。このフロート弁7の働きとしては、圧縮機1が運転中は、凝縮器2で冷却された冷媒液が溜まっていき、これによりフロート(図示せず)が浮いて弁を開方向に動作させ、キャピラリチューブ8へ液冷媒を送るが、圧縮機1停止時には、弁を閉じ、従って、高圧2相冷媒(主としてガス分)は、冷却器6側流れないようになっている。これにより、冷凍効果を持たない高圧冷媒ガスが、圧縮機1の停止中に、背圧により冷却器6側へ流れて、蒸発器6の温度が上昇する事を防止しており、冷凍装置の運転効率を高めている。フロート弁7を通った冷媒は、キャピラリチューブ8、冷却器6、吸入管3を通り、圧縮機1へ戻る冷凍サイクルとなっている。」
イ.第1図には、キャピラリチューブ8の上流側の部位と冷却器6から圧縮機1に向かう部位を熱交換部4により熱交換させることが図示されている。

9.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平11-351680号公報(以下「引用例9」という。)には、「冷房装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.【要約】
「【課題】 エバポレータの冷却能力を高めるようにした冷房装置であって、かつ設置場所が自由でかつ外部からの衝撃に強い冷房装置を提供する。
【解決手段】 コンプレッサ1で高温高圧とされたガス状冷媒は、コンデンサ2にて凝縮して高温高圧の気液混合冷媒となり、内部熱交換器3に導かれてエバポレータ5を通過した低温低圧のガス状冷媒によって充分な過冷却が行われる。この過冷却された冷媒は、膨張弁4にて断熱膨張され、乾き度がきわめて低い状態でエバポレータ5に導かれる。これにより、エバポレータ5における冷却能力が大幅に向上することとなる。また、冷房サイクルを衝撃に強い筐体20に収め衝撃が加わらない場所に設置することで、衝撃に対する安全性が高まる。」
イ.図1(A)には、膨張弁4の上流側の部位とエバポレータ5からコンプレッサ1に向かう部位を内部熱交換器3により熱交換させることが図示されている。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能又は構造、作用からみて、引用発明の「コンプレッサ1」は、本願発明の「圧縮機(CM)」に相当し、以下同様に、
「コンデンサ3」は「凝縮器(CD)」に、
「冷媒源部B」は「室外ユニット(12)」に、
「膨張弁6」は「膨張手段(EV)」に、
「エバポレータ7」は「蒸発器(EP)」に、
「冷却部A」は「室内ユニット(14)」に、
「冷媒供給管5」は「第1管路系(22a)」に、
「冷媒戻り管10」は「第2管路系(22b)」に、
「冷凍機」は「冷却装置」に、
「レシーバタンク4」は「受液器(R)」に、
「短絡管14」は「第1バイパス管(46)」に、
「短絡管12」は「第2バイパス管(52)」に、
それぞれ、相当する。
また、後者の「レシーバタンク4からの液化冷媒を冷媒供給管5を介して膨張弁6へ供給する状態またはコンプレッサ1からの気化冷媒を冷媒供給管5を介してエバポレータ7へ供給する状態に冷媒供給系路を切替える」「切替手段」は、前者の「前記受液器(R)からの液化冷媒を第1管路系(22a)を介して膨張手段(EV)へ供給する状態または前記圧縮機(CM)からの気化冷媒を第1管路系(22a)を介して蒸発器(EP)へ供給する状態に冷媒供給経路を切替える」「切替手段(48,50,54,56)」に相当する。
そして、後者の「短絡管14の途中に介挿され、該短絡管14を開閉自在な」「弁13」は、前者の「前記第1バイパス管(46)の途中に介挿され、該第1バイパス管(46)を開閉自在な」「第1バイパス弁(48)」に相当し、後者の「短絡管12の途中に介挿され、該短絡管12を開閉自在な」「弁11」は、前者の「前記第2バイパス管(52)の途中に介挿され、該第2バイパス管(52)を開閉自在な」「第2バイパス弁(54)」に相当するから、両者は、切替手段が、第1バイパス管の途中に介挿され、該第1バイパス管を開閉自在な第1バイパス弁と、第2バイパス管の途中に介挿され、該第2バイパス管を開閉自在な第2バイパス弁を含む点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「圧縮機および凝縮器を室外ユニットに配置すると共に、膨張手段および蒸発器を室内ユニットに配置し、前記凝縮器からの液化冷媒を、第1管路系および膨張手段を介して蒸発器に供給し、該蒸発器を冷却後の気化冷媒を第2管路系を介して圧縮機へ帰還させるようにした冷却装置において、
前記室外ユニットに設置され、前記凝縮器の下流側で前記第1管路系に接続する受液器と、
前記室外ユニットに配設され、前記圧縮機の下流側から分岐して前記受液器の下流側で前記第1管路系に接続する第1バイパス管と、
前記室内ユニットに配設され、前記膨張手段の上流側で前記第1管路系から分岐して蒸発器の上流側に接続する第2バイパス管と、
前記受液器からの液化冷媒を第1管路系を介して膨張手段へ供給する状態または前記圧縮機からの気化冷媒を第1管路系を介して蒸発器へ供給する状態に冷媒供給経路を切替える切替手段とを備え、
前記切替手段は、前記第1バイパス管の途中に介挿され、該第1バイパス管を開閉自在な第1バイパス弁と、前記第2バイパス管の途中に介挿され、該第2バイパス管を開閉自在な第2バイパス弁を含む
冷却装置。」

[相違点1]
切替手段について、本願発明では、「前記第1,第2バイパス管(46,52)および前記第1管路系(22a)の夫々に配設され」るものであって、「前記第1バイパス管(46)の途中に介挿され、該第1バイパス管(46)を開閉自在な第1バイパス弁(48)と、前記第1管路系(22a)における第1バイパス管(46)の接続部より上流側で、前記受液器(R)の下流側に介挿されて該第1管路系(22a)を開閉自在な第1開閉弁(50)と、前記第2バイパス管(52)の途中に介挿され、該第2バイパス管(52)を開閉自在な第2バイパス弁(54)と、該第1管路系(22a)における第2バイパス管(52)の分岐部より下流側で、膨張手段(EV)の上流側に介挿されて該第1管路系(22a)を開閉自在な第2開閉弁(56)とから構成される」のに対して、引用発明では、「短絡管14、12の夫々に配設され」るものであって、「短絡管14の途中に介挿され、該短絡管14を開閉自在な弁13と、短絡管12の途中に介挿され、該短絡管12を開閉自在な弁11とから構成される」点。

[相違点2]
膨張手段について、本願発明では、「蒸発器(EP)における出口側の第2管路系(22b)に取付けられた感温筒(TH)を備える温度作動膨張弁が用いられ」、「第2管路系(22b)を流通する気化冷媒の温度に応じて開閉され」るものであるのに対して、引用発明では、膨張弁6がどのようなものであるのか明らかでない点。

[相違点3]
本願発明は、「第1管路系(22a)における第2開閉弁(56)より下流側で、膨張手段(EV)の上流側の部位と、前記蒸発器(EP)から前記圧縮機(CM)に向かう第2管路系(22b)の所要区間とを近接させて熱交換する熱交換部(58)を備えている」のに対して、引用発明は、冷媒供給管5と冷媒戻り管10の間に熱交換部を備えていない点。

第5 当審の判断
[相違点1について]
引用発明は、弁13,11を開くことにより、冷媒ガスは抵抗の大きいコンデンサ3、膨張弁6を避けて抵抗の少ない短絡管14,12側に流れ、コンプレッサ1からの冷媒ガスをエバポレータ7に供給し、デフロストを行うようにしたものであるが、流路の切替えにあたり、より完全に冷媒の流れを切り替えるために、コンデンサ3および膨張弁6を設けた冷媒供給管5側にも同様な切替弁を設け、これらを開閉制御することは、例えば、引用例2記載事項、引用例3記載事項に示されるように、それ自体周知の事項にすぎず、相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、請求人は意見書において、引用例2、3について、受液器の存在から室外機側の回路に開閉弁を設けることを導き出せない旨主張しているが、引用例2、3を例示したのは、上記「第3」の「2.」、「3.」に記載したとおり、メイン管(供給管、膨張弁を有する回路)とバイパス管(バイパス管、バイパス回路)にそれぞれ開閉弁(開閉弁、切換弁)を設ける点であり、請求人の主張は理由がない。

[相違点2について]
冷凍装置において、蒸発器の出口側に配設された感温筒を備える温度作動膨張弁を用いることは、例えば引用例4?6に示されるように周知であるので、かかる周知技術を引用発明に適用することは当業者が適宜なし得た事項にすぎず、相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3について]
冷凍装置において、冷凍能力の向上等を目的として、膨張弁の上流側管路と蒸発器から圧縮機へ向かう管路との間で熱交換を行うようにすることは、例えば引用例7?9に示されるように周知であるので、かかる周知技術を引用発明に適用することは当業者が適宜なし得た事項であり、その際、熱交換部と開閉弁および膨張手段との配置関係は当業者が適宜設計し得た事項にすぎず、相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明及び周知技術から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-26 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-12 
出願番号 特願2004-247139(P2004-247139)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 佳久保 克彦  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 松下 聡
青木 良憲
発明の名称 冷却装置  
代理人 山本 喜幾  
代理人 多賀 久直  
代理人 山田 健司  

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