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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1245646
審判番号 不服2010-2369  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-04 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2006-176235「角速度センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日出願公開、特開2008- 8634〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・拒絶の理由
本願は、平成18年6月27日の出願であって、明細書及び特許請求の範囲について平成20年7月14日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、同じく、平成21年11月9日付けで補正がなされ(以下、「補正2」という。)、同年12月18日付け補正却下の決定により補正2を却下するとともに、同日付けで拒絶査定がなされ(送達:平成22年1月5日)、これに対し、平成22年2月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
そして、原査定の拒絶の理由は、補正1によって補正された本願の特許請求の範囲に記載の各発明は、出願前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開2000-155029号公報(発明の名称:角速度センサ、出願人:松下電器産業株式会社、公開日:平成12年6月6日、以下、「引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、というものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。
(本件補正前)
「ベース部と該ベース部から延びる複数のアーム部とを有する音叉型振動子と、
該音叉型振動子の前記ベース部を表面で支持する支持部と、
前記支持部の前記表面の反対側の面である裏面に設けられた防振部と、
前記支持部を前記防振部を介し実装する実装部と、を具備し、
前記防振部は、前記支持部を前記表面以外の前記裏面を含む面でのみ支持し、かつ前記ベース部が支持された前記表面の領域を前記裏面に投影した第1領域の少なくとも一部を含む第2領域に設けられていることを特徴とする角速度センサ。」
(本件補正後)
「ベース部と該ベース部から延びる複数のアーム部とを有する音叉型振動子と、
該音叉型振動子の前記ベース部を表面で支持する支持部と、
前記支持部の前記表面の反対側の面である裏面に設けられた防振部と、
前記支持部を前記防振部を介し実装する実装部と、を具備し、
前記防振部は、前記支持部を前記表面以外の前記裏面を含む面でのみ支持し、かつ前記ベース部が支持された前記表面の領域を前記裏面に投影した第1領域の少なくとも一部を含む第2領域に設けられており、 前記音叉型振動子は、前記複数のアーム部が前記複数のアーム部の方向の面に平行に開閉するように振動する駆動モードで駆動し、前記複数のアーム部の方向の面に垂直にツイスト振動する検出モードで角速度を検出し、 前記第2領域は、前記音叉型振動子の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記支持部の前記裏面に投影した領域を含むことを特徴とする角速度センサ。」(下線は補正箇所を明示するために当審で付した。)。
この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である音叉型振動子について、「前記音叉型振動子は、前記複数のアーム部が前記複数のアーム部の方向の面に平行に開閉するように振動する駆動モードで駆動し、前記複数のアーム部の方向の面に垂直にツイスト振動する検出モードで角速度を検出」するとの限定を付加すると共に、同じく、第2領域について、「前記第2領域は、前記音叉型振動子の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記支持部の前記裏面に投影した領域を含む」との限定を付加するものである。
よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例である前記特開2000-155029号公報には、次の事項(a)ないし(e)が図面とともに記載されている。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 四面のうちの二面に少なくとも一対の駆動電極を設けた四角柱状の駆動電極振動体と、この駆動電極振動体と平行に設けられかつ四面のうちの一面に少なくとも一対の検出電極を設けた四角柱状の検出電極振動体と、前記駆動電極振動体と前記検出電極振動体との一端を一体に接続する接続部と、この接続部の根元を支持する支持台と、この支持台の下部を固着するとともに複数の端子挿入孔を設け、かつこの端子挿入孔に前記駆動電極あるいは検出電極と電気的に接続される端子を絶縁物を介して挿通させる金属製の基台と、この基台の上面を覆う金属製のカバーと、前記基台の下方に設けられるとともにこの基台の端子を実装する孔を設け、かつ前記検出電極振動体の検出電極から角速度により発生する出力電圧を処理する電子部品を設けた回路基板とを備え、前記基台と回路基板との間に間隙を設けた状態で前記基台の端子を回路基板の孔に実装して端子と孔とを固定した角速度センサ。
・・・・
【請求項4】 基台と回路基板との間隙に位置して振動減衰体を設けた請求項1記載の角速度センサ。」
(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航空機、車両等の移動体の姿勢制御やナビゲーションシステム等に用いられる角速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の角速度センサとしては、特開平8-170917号公報に開示されたものが知られている。
【0003】以下に、従来の角速度センサについて、図面を参照しながら説明する。図6は従来の角速度センサにおける基台に音叉を固着した状態を示す斜視図、図7は同角速度センサの側断面図である。
【0004】図6、図7において、1はコ字柱状の音叉で、この音叉1は一対の柱部2とこの柱部2の端部を接続する接続部3とで構成されている。そして、前記音叉1の一対の柱部2のそれぞれの外側面には駆動圧電素子4が設けられるとともに、この駆動圧電素子4を設けた側面と同一面状に参照圧電素子5が設けられている。そしてまた、前記音叉1における前記駆動圧電素子4および参照圧電素子5を設けた側面と異なる側面には一対の検知圧電素子6を設けている。7は金属製の支持部材で、この支持部材7は前記音叉1の接続部3の根元を支持している。8は金属製の基台で、この基台8は前記支持部材7の下面を上面に固着するとともに、この基台8には複数の端子挿入孔9を設けており、この端子挿入孔9に端子10を絶縁物11を介して挿通させ、さらにこの端子10は前記音叉1の駆動圧電素子4、参照圧電素子5および検知圧電素子6と電気的に接続している。12は回路基板で、この回路基板12は前記基台8の下方に設けられるとともに、前記基台8の端子10と電気的に接続されているリード線13に半田付けによって電気的に接続され、かつ前記音叉1の検知圧電素子6から角速度により発生する出力電圧を処理する電子部品14を上面に設けている。15は支持台で、この支持台15は、スタットボルト16により前記基台8および回路基板12を支持している。17は金属製のカバーで、このカバー17は前記音叉1、基台8および回路基板12を内側に収容するとともに、前記支持台15を覆っている。
【0005】以上のように構成されている従来の角速度センサについて、次にその動作を説明する。
【0006】前記音叉1の駆動圧電素子4に交流電圧を印加することにより前記音叉1が駆動方向の固有振動数で駆動方向に速度vで屈曲振動している状態において、音叉1が音叉1の中心軸まわりに角速度ωで回転すると、前記音叉1の一対の柱部2にF=2mvωのコリオリ力が発生する。このコリオリ力により前記検知圧電素子6に発生する電荷を前記回路基板12の電子部品14で増幅し、出力電圧として外部コンピュータ(図示せず)で測定することにより角速度を検出していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構成では、図7に示すように前記基台8と回路基板12とをスタットボルト16で支持台15に接続しているため、このスタットボルト16を介して外部より振動が侵入することになり、そしてこの振動は音叉1に加わるため、その結果として角速度センサに角速度を付加しない状態においても、音叉1の検知圧電素子6に電荷が発生し、角速度センサの出力特性が劣化してしまうという課題を有していた。」
(c)「【0008】本発明は上記従来の課題を解決するもので、角速度センサに角速度を付加しない状態において、外部より振動が加わっても、その振動が検出電極振動体に伝わるのを少なくして角速度センサの出力特性が劣化するのを未然に防止することができる角速度センサを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の角速度センサは、四面のうちの二面に少なくとも一対の駆動電極を設けた四角柱状の駆動電極振動体と、この駆動電極振動体と平行に設けられかつ四面のうちの一面に少なくとも一対の検出電極を設けた四角柱状の検出電極振動体と、前記駆動電極振動体と前記検出電極振動体との一端を一体に接続する接続部と、この接続部の根元を支持する支持台と、この支持台の下部を固着するとともに複数の端子挿入孔を設け、かつこの端子挿入孔に前記駆動電極あるいは検出電極と電気的に接続される端子を絶縁物を介して挿通させる金属製の基台と、この基台の上面を覆う金属製のカバーと、前記基台の下方に設けられるとともにこの基台の端子を実装する孔を設け、かつ前記検出電極振動体の検出電極から角速度により発生する出力電圧を処理する電子部品を設けた回路基板とを備え、前記基台と回路基板との間に間隙を設けた状態で前記基台の端子を回路基板の孔に実装して端子と孔とを固定したもので、この構成によれば、角速度センサに角速度を付加しない状態において、外部より振動が加わっても、その振動が検出電極振動体に伝わるのを少なくして角速度センサの出力特性が劣化するのを未然に防止することができるものである。」
(d)「【0014】以下、本発明の実施の形態における角速度センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0015】図1は本発明の実施の形態1における角速度センサの分解斜視図、図2は同角速度センサの側断面図である。
【0016】図1、図2において、21は水晶製の音叉で、この音叉21は四角柱状の駆動電極振動体22と、この駆動電極振動体22と平行に設けられた四角柱状の検出電極振動体23と、前記駆動電極振動体22と検出電極振動体23との一端を一体に接続する接続部24とにより構成されている。前記駆動電極振動体22の4つの側面には、それぞれ金からなる駆動電極25を設けている。また、前記検出電極振動体23の表面および裏面には金からなるモニタ電極26が設けられるとともに、この検出電極振動体23の内側の側面には金からなるGND電極27(図示せず)が設けられ、かつ外側の側面には金からなる一対の検出電極28が設けられている。29は直方体形状をなす金属製の支持台で、この支持台29は前記接続部24の根元を支持している。30は金属製の基台で、この基台30は前記支持台29の下部を固着するとともに、複数の端子挿入孔31を設けており、この端子挿入孔31の内側面には絶縁物32を設けている。そして、前記基台30の端子挿入孔31に、前記絶縁物32を介して端子33を挿通している。また、前記基台30の端子33は前記駆動電極25、検出電極28、GND電極27およびモニタ電極26とリード線33aによりそれぞれ電気的に接続されている。34は金属製のカバーで、このカバー34は前記基台30の上面を覆うように設けており、このカバー34と基台30とにより、前記駆動電極振動体22、検出電極振動体23および接続部24からなる音叉21を内側に収納している。35は回路基板で、この回路基板35は前記基台30の下方に設けられるとともに、下面に電子部品36を設けており、この電子部品36により前記検出電極振動体23の検出電極28から角速度により発生する出力電圧を端子33を介して入力し、出力電圧に変換している。また前記回路基板35には孔37を設けており、この孔37に前記端子33を実装し、そして前記基台30と回路基板35との間に間隙38を設けて、前記端子33と回路基板35とを半田付けしている。」
(e)「【0028】さらに、本発明の実施の形態1における角速度センサにおいては、前記基台30と回路基板35との間に間隙38を設ける構成としたが、図5に示す本発明の実施の形態4のように、間隙38の代わりに前記基台30と回路基板35との間隙38に位置して樹脂からなる振動減衰体41を設けても良いものである。この構成によれば、基台30と回路基板35との間隙38に位置して振動減衰体41を設けているため、外部から侵入しようとする振動を基台30と回路基板35との間に設けた端子33および振動減衰体41により減衰させることができるとともに、振動減衰体41により基台30と回路基板35とを強固に固着することができるという作用効果を有するものである。」

まず、上記記載事項(a)ないし(e)及び図1,2,5に示された記載内容から、次の技術事項が読み取れる。
ア 「接続部24と該接続部24から延びる駆動電極振動体22及び検出電極振動体23とを有する音叉21と、該音叉21の前記接続部24をその側面で支持する支持台29及び前記支持台29の下部を固着する基台30と、前記基台30の前記支持台29の下部を固着する面の反対側の面である裏面に設けられた振動減衰体41と、前記基台30を前記振動減衰体41を介し実装する回路基板35と、を具備する角速度センサ。」

また、上記記載事項(e)及び図5の記載内容によれば、振動減衰体41は、基台30と回路基板35との間にある間隔38に代わって両者の間に全面的に設けられるものであるから、
イ 「振動減衰体41は、基台30をその裏面で支持し、かつ接続部24が支持された支持台29の側面及び支持台29の下部の領域を前記裏面に投影した領域を含むような領域に設けられている。」ことになる。

また、上記記載事項(b)及びその中で従来技術として挙げられた特開平8-170917号公報の記載内容を参酌すると、引用例に記載の角速度センサも、本願補正発明と同様に、
ウ 「音叉21は、駆動電極振動体22及び検出電極振動体23が前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23の方向の面に平行に屈曲振動するように振動する駆動モードで駆動し、前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23の方向の面に垂直に互いに逆方向にたわみ振動する検出モードで角速度を検出する。」ものと解するのが自然である。

さらに、引用例に記載の角速度センサは、音叉21は本願補正発明と同様の作用を奏する(上記ウ)ものであるから、引用例に記載の角速度センサにおいても、駆動モードと検出モードとの共通のノードは、本願補正発明と同様に検出モードのノードとなるところ、振動減衰体41は、基台30と回路基板35との間に全面的に設けられるものであるから、
エ 「検出モードのノードを基台30に投影した領域は、振動減衰体41が全面的に設けられた領域に含まれる。」こととなる。

以上の技術事項アないしエを総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「接続部24と該接続部24から延びる駆動電極振動体22及び検出電極振動体23とを有する音叉21と、
該音叉21の前記接続部24をその側面で支持する支持台29及び前記支持台29の下部を固着する基台30と、
前記基台30の前記支持台29の下部を固着する面の反対側の面である裏面に設けられた振動減衰体41と、
前記基台30を前記振動減衰体41を介し実装する回路基板35と、を具備し、 前記振動減衰体41は、前記基台30を前記裏面で支持し、かつ前記接続部24が支持された前記支持台29の側面及び前記支持台29の下部の領域を前記裏面に投影した領域を含むような領域に設けられており、
前記音叉21は、前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23が前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23の方向の面に平行に屈曲振動するように振動する駆動モードで駆動し、前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23の方向の面に垂直に互いに逆方向にたわみ振動する検出モードで角速度を検出し、
前記振動減衰体41が設けられた領域は、前記音叉21の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記基台30の前記裏面に投影した領域を含む角速度センサ。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア まず、引用発明における、「駆動電極振動体22及び検出電極振動体23」、「音叉21」、「振動減衰体41」、「回路基板35」、「屈曲振動するように振動する駆動モード」、及び「互いに逆方向にたわみ振動する検出モード」は、本願補正発明の、「複数のアーム部」、「音叉型振動子」、「防振部」、「実装部」、「開閉するように振動する駆動モード」、及び「ツイスト振動する検出モード」にそれぞれ相当する。
イ また、引用発明における「接続部24」は、「支持台29」の側面に支持され、両者は一体化されているから、引用発明における「接続部24」と「支持台29」とを一体的に見れば、これは、本願補正発明の「ベース部」に相当すると言える。そうすると、引用発明における「基台30」は、本願補正発明における「支持部」に相当することとなる。
してみると、引用発明における「接続部24と該接続部24から延びる駆動電極振動体22及び検出電極振動体23とを有する音叉21と、該音叉21の前記接続部24をその側面で支持する支持台29及び前記支持台29の下部を固着する基台30と、前記基台30の前記支持台29の下部を固着する面の反対側の面である裏面に設けられた振動減衰体41と、前記基台30を前記振動減衰体41を介し実装する回路基板35と、を具備し、」は、本願補正発明における「ベース部と該ベース部から延びる複数のアーム部とを有する音叉型振動子と、該音叉型振動子の前記ベース部を表面で支持する支持部と、前記支持部の前記表面の反対側の面である裏面に設けられた防振部と、前記支持部を前記防振部を介し実装する実装部と、を具備し、」に相当すると言える。
ウ また、支持台29の側面を基台30の裏面に投影した領域は、該支持台29の下部の領域を該裏面に投影した領域の一部を為すものであるから、上記相当関係アを踏まえると、引用発明における「前記振動減衰体41は、前記基台30を前記裏面で支持し、かつ前記接続部24が支持された前記支持台29の側面及び前記支持台29の下部の領域を前記裏面に投影した領域を含むような領域に設けられており、」は、本願補正発明における「前記防振部は、前記支持部を前記表面以外の前記裏面を含む面でのみ支持し、かつ前記ベース部が支持された前記表面の領域を前記裏面に投影した第1領域の少なくとも一部を含む第2領域に設けられており、」に相当すると言える。
エ 同様に、上記相当関係アを踏まえると、引用発明における「前記音叉21は、前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23が前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23の方向の面に平行に屈曲振動するように振動する駆動モードで駆動し、前記駆動電極振動体22及び検出電極振動体23の方向の面に垂直に互いに逆方向にたわみ振動する検出モードで角速度を検出し、」は、本願補正発明における「前記音叉型振動子は、前記複数のアーム部が前記複数のアーム部の方向の面に平行に開閉するように振動する駆動モードで駆動し、前記複数のアーム部の方向の面に垂直にツイスト振動する検出モードで角速度を検出し、」に相当すると言える。
オ 同様に、上記相当関係アを踏まえると、引用発明における「前記振動減衰体41が設けられた領域は、前記音叉21の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記基台30の前記裏面に投影した領域を含む」は、本願補正発明における「前記第2領域は、前記音叉型振動子の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記支持部の前記裏面に投影した領域を含む」に相当すると言える。

(4)判断
以上の相当関係(3)を総合し整理すると、結局、両者は、実質的に相違しない。
そして、本願補正発明が明細書に記載の効果を奏することは、引用発明から当業者が十分に予測可能なものであって格別のものであるともいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)予備的検討
ア 対比
上記(4)判断においては、引用発明における「接続部24」と「支持台29」とを一体的に見て、これが本願補正発明の「ベース部」に相当することを前提に(前記(3)対比)検討したが、引用発明における「接続部24」が本願補正発明における「ベース部」に相当するとし、引用発明おける「支持台29」と該支持台29の下部を固着する「基台30」とを一体的に見て、これが、本願補正発明における「支持部」に相当すると見ることもできる。
そこで、本願補正発明と引用発明とに、このような相当関係があるとした場合についても、以下、念のために検討しておく。

イ 上記「ア 対比」と前記「(3)対比ア、ウ、エ、オ」で説示した相当関係を踏まえ、両者を対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「ベース部と該ベース部から延びる複数のアーム部とを有する音叉型振動子と、
該音叉型振動子の前記ベース部を支持する支持部と、
前記支持部の裏面に設けられた防振部と、
前記支持部を前記防振部を介し実装する実装部と、を具備し、
前記防振部は、前記支持部を前記裏面を含む面でのみ支持し、かつ前記ベース部が支持された領域を前記裏面に投影した第1領域の少なくとも一部を含む第2領域に設けられており、
前記音叉型振動子は、前記複数のアーム部が前記複数のアーム部の方向の面に平行に開閉するように振動する駆動モードで駆動し、前記複数のアーム部の方向の面に垂直にツイスト振動する検出モードで角速度を検出し、
前記第2領域は、前記音叉型振動子の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記支持部の前記裏面に投影した領域を含む角速度センサ。」
(相違点)
・相違点:音叉型振動子のベース部が、
本願補正発明では、支持部の表面で支持されているのに対し、引用発明では、基台30に固着された支持台29の側面で支持されている点。

ウ 判断
一般に、角速度センサにおいて、本願補正発明のように、音叉型振動子のベース部を支持部の表面で支持することは、以下に示すように周知技術である。
この点については、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-271479号公報(発明の名称:角速度センサ、出願人:シチズン時計株式会社、公開日:平成16年9月30日)の図2に示された、支持基板2上に設けられた圧電振動体3や、特開2003-57035号公報(発明の名称:振動ジャイロおよび振動ジャイロ素子の製造方法、出願人:松下電器産業株式会社、公開日:平成15年2月26日)の図1に示された、支持基板10上に設けられた音叉型振動子2を参照のこと。
よって、引用発明における音叉21の接続部24(本願補正発明の「ベース部」に相当する。)を基台30に固着された支持台29の側面で支持することに代えて、周知技術を適用して、基台30に固着された支持台29の表面で支持するようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明が明細書に記載の効果を奏することは、引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測可能なものであって格別のものであるともいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、やはり、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、補正1によって補正された明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「ベース部と該ベース部から延びる複数のアーム部とを有する音叉型振動子と、
該音叉型振動子の前記ベース部を表面で支持する支持部と、
前記支持部の前記表面の反対側の面である裏面に設けられた防振部と、
前記支持部を前記防振部を介し実装する実装部と、を具備し、
前記防振部は、前記支持部を前記表面以外の前記裏面を含む面でのみ支持し、かつ前記ベース部が支持された前記表面の領域を前記裏面に投影した第1領域の少なくとも一部を含む第2領域に設けられていることを特徴とする角速度センサ。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の事項及び引用発明は、上記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から、音叉型振動子についての限定事項である「前記音叉型振動子は、前記複数のアーム部が前記複数のアーム部の方向の面に平行に開閉するように振動する駆動モードで駆動し、前記複数のアーム部の方向の面に垂直にツイスト振動する検出モードで角速度を検出」する旨を削除すると共に、第2領域についての限定事項である「前記第2領域は、前記音叉型振動子の前記駆動モードと前記検出モードとの共通のノードを前記支持部の前記裏面に投影した領域を含む」旨を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比、(4)判断」で説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願補正発明が、前記「2.(5)予備的検討」で説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-26 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-12 
出願番号 特願2006-176235(P2006-176235)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌谷口 智利  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 松浦 久夫
森 雅之
発明の名称 角速度センサ  
代理人 片山 修平  

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