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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1245662 |
審判番号 | 不服2010-16251 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-20 |
確定日 | 2011-10-27 |
事件の表示 | 特願2004-258718「レンズ、光学系、並びに光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 72237〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2004年9月6日の出願(特願2004-258718号)であって、平成21年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成22年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成23年4月27日付けで審尋がなされ、同年7月11日付けで回答書が提出された。 第2 平成22年7月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定について [補正の却下の決定の結論] 平成22年7月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「負屈折を示す媒質で形成されたことを特徴とするレンズ。」が 「負屈折を示す媒質で形成されたレンズであって、 前記レンズは凹面または凸面を備えたことを特徴とするレンズ。」と補正された。 本件補正における請求項1の補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「レンズ」について「凹面または凸面を備えた」ものであると限定して特定するものである。よって、本件補正における請求項1の補正は、特許請求の範囲について、いわゆる限定的に減縮することを目的とする補正、すなわち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正である。 2 独立特許要件違反についての検討 (1)そこで、本件補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。 (2)本願補正発明 本願補正発明は、平成22年7月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記「第2 平成22年7月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。) (3)引用例 ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物であるJ.B.Pendry,"Negative Refraction Makes a Perfect Lens",Physical Review Letters,2000年10月30日,Vol. 85, No.18,p.3966-p.3969(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(日本語訳を記載する。下線は当審が付した。) 「通常のレンズでは、像の鮮明さは常に光の波長によって制限される。これまでにはなかったレンズの代替物、負屈折率物質の平板、は、輻射的に伝達するものではないが、2次元像の全てのフーリエ成分を集中させる能力を備える。そのような「スーパーレンズ」が、最新の技術を用いて、マイクロ波帯域において実現され得る。我々が行ったシミュレーションによれば、可視光においてレンズとして作用するものが、銀の簿板の形で実現され得る。この光学部材が、対象物を数ナノメートルの解像で分析する。」(第3966ページ上段の論文要旨欄) 「昔からのレンズではない、レンズに変わるものがある。負屈折率を示す物質は、両平型の平板の形状であっても光を集光させる。図1に、屈折率を n = -1 (6) として、そのようは平板の集光作用が描かれている。少し考えてみると、光はこの物質の中では表面に水平な面に対して負の角度で進んでいるので、この図がスネルの屈折の法則に従っていることがわかる。このシステムの他の特徴は、単純な光線の作図によって二重集光効果が示されることにある。光源から距離d1だけ離れた位置に置かれた厚さd2の厚さの平板を伝搬する光が、 z = d2 - d1 (7) のときに第2の集光位置に達する。この物質の隠された秘密は、誘電率も透磁率も負となることである。この例においては、 ε = -1, μ = -1 (8) となる。」(第3966ページ左欄第4行?第3967ページ右欄第1行) 「(図1) 」 イ 引用例1に記載された発明 上記記載(図面の記載も含む)を総合すると、引用例1には、「負屈折率物質の平板であってレンズの作用を有するスーパーレンズ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 ウ 本願の出願前に頒布された刊行物であるC. G. Parazzoli, et al.,"Performance of a negative index of refraction lens",Applied Physics Letters,2004年4月26日,Vol.84, No.17,p.3232-p.3234(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(日本語訳を記載する。下線は当審が付した。) 「負屈折率の平凹レンズが設計され、製作された。そのようなレンズは、何年もの間、要求され続けてきたが、シミュレーションや製作技術の発達によって、ほんの最近になってやっとそれが実現された。この報告書において、そのようなレンズの、シミュレーション、製作、及び、作用について報告する。レンズは対象物側の場を映し、ガウス光学どおりの結果を再生する。電磁スペクトルのマイクロ波周波数領域において負屈折率を示す曲面レンズを、(凸面が)同じ曲率半径を有する平凸の正屈折率レンズと比較した。」(第3232ページ上段の論文要旨欄) 「1968年に、ベセラゴは負屈折率材質(NIM)の存在を仮定(予言)した。近年、NIMは、基板上に配置される伝導性要素の適切な組み合わせにより、また、伝達線の手法により、マイクロ波領域に形成されている。光学構造もまた負屈折率を示す。」(第3232ページ左欄第1-6行) 「結論として、我々は、負屈折率を持つ平凹レンズを作成した。NIMレンズは、通常のレンズに比べて、より強い集光力を有し、より軽く、収差が少ない。このレンズのシミュレートされたものと計測されたものの場の分布は、良い一致を見ることができた。レンズは物側の場を適正に結像し、負屈折率を用いると幾何光学の標準的な法則に従った。以上のように、作成した負屈折率を有する曲面光学要素の性能を示すことができた。」(第3234ページ右欄第16-25行) 3 対比 (1)ここで、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者が「負屈折を示す媒質で形成されたレンズ。」の発明である点で一致することは明らかである一方で、次の点で相違する。 (2)相違点 本願補正発明が「レンズは凹面または凸面を備える」のに対して、引用発明1においては、その点についての限定がない点。 4 判断 引用例2には「負屈折率を持つ平凹レンズ」の発明が記載されている。負屈折率を持つ平凹レンズにおいては、「負屈折率」に起因する光の屈折作用に、レンズ表面(凹面)に起因する屈折作用が加わるものであるから、引用発明においても、光の屈折作用(焦点距離など)を調整するために、引用例2に記載された発明を適用して「凹面(または凸面)を備える」ものとして、上記相違点に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5 むすび したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成22年7月20日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成22年7月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。) 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成22年7月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明と引用発明(「負屈折率物質の平板であってレンズの作用を有するスーパーレンズ。」の発明)とを対比すると、両者は「負屈折を示す媒質で形成されたことを特徴とするレンズ。」の発明である点で一致し、両者に相違するところがないことは明らかである。 よって、本願発明は引用発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、特許を受けることができない。 4 補足(回答書に提示された補正案について) 請求人は、平成23年7月11日付けで提出された回答書において補正案を提示し補正の機会を求めているが、当該補正案における請求項1に係る発明は、願書に添付した特許請求範囲の請求項4に係る発明(以下「当初請求項4発明」という。)と同じものである。 当初請求項4発明に対しては、原審において、平成21年12月15日付けの拒絶理由の通知において拒絶の理由(理由2,3)が示され、請求人が検討して意見を述べ、補正する機会が与えられたところ、何らの対応(意見書の提出及び手続補正)もなされないまま指定期間が経過したため拒絶査定がなされ、また、審判請求の時点において、請求人により実質的に当初請求項4発明を削除する補正がなされたものである。 上記の原審における経緯に鑑みれば、補正の機会を逸した現時点において、上記の当初請求項4発明を補正後の新たな請求項1とする請求人提示の補正案を認めることはとうていできないと言わざるを得ないから、補正の機会を与えることなく審決する。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-25 |
結審通知日 | 2011-08-30 |
審決日 | 2011-09-13 |
出願番号 | 特願2004-258718(P2004-258718) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B) P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山村 浩 |
特許庁審判長 |
村田 尚英 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 吉川 陽吾 |
発明の名称 | レンズ、光学系、並びに光学装置 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 勝村 紘 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 市原 卓三 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 山下 元 |
代理人 | 村松 貞男 |