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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1245668
審判番号 不服2010-17779  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-06 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2005-177284「携帯情報端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-352603〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成17年6月17日の出願であり、平成22年4月27日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成22年8月6日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成22年1月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「基地局との間でセルラー通信を行うとともに、近距離通信装置との間で近距離通信を行うことができる携帯情報端末装置において、
基地局から盗難情報を受信するセルラー通信部と、
受信した盗難情報を記憶するメモリと、
上記近距離通信装置からの受信信号に基づいて、上記メモリに記憶されている盗難情報を上記近距離通信装置に送信する近距離通信部とを備えたことを特徴とする携帯情報端末装置。」

第2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-79777号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0016】
図1は、本発明の実施の形態のカードシステムの構成を示すブロック図である。
【0017】
カード100は、クレジットカードとしても利用できる非接触型のカードである。カード100は、カード読み取り装置200によって、データの書き込み、データの読み出しができる。
【0018】
カード100には、カード読み取り装置200と通信を行うための無線通信部(対読み取り装置通信部110)、及び、基地局(CS)300と無線通信を行うためのPHS無線部120が備えられている。すなわち、カード100がPHS無線部120によって、基地局300と無線通信を行うことで、通信端末として機能する。
【0019】
なお、利用者は、カード100を利用したい場合には、予め、カード発行機関に所定の申し込み手続きによる利用登録を行い、カード100の発行を受ける。
【0020】
カード読み取り装置200は、例えば、駅の改札機に固定的に設置され、また、バスやタクシーの料金収集装置に移動可能に設置される。カード読み取り装置200には、カード100と通信を行うための無線通信部(対カード通信部210)、及び、基地局(CS)300と無線通信を行うためのPHS無線部220が備えられている。PHS無線部220によって基地局300と無線通信を行うことで、カード読み取り装置200も通信端末として機能する。
【0021】
基地局300は、その各々が所定の範囲の通信端末(カード100及びカード読み取り装置200)と通信することができる通信エリアを構成している。また、複数の基地局300(複数の通信エリア)によって一つの一斉呼出エリア(PA:ページングエリア)が構成されている。なお、図1において、一斉呼出エリアは破線で表されており、基地局300a及び300bが同一の一斉呼出エリアに属している。また、図1に示す例では、基地局300aがカード100及びカード読み取り装置200aと、基地局300bがカード読み取り装置200bと、それぞれ通信を行っている。
【0022】
基地局300には、位置登録サーバ400がネットワークを介して接続されている。位置登録サーバ400は、通信端末(カード100及びカード読み取り装置200)が、どの一斉呼出エリアに存在するか(どの基地局と通信可能であるか)の情報を、該カード100の固有の情報と共に、位置登録データベース410に登録し保持している。そして、カード100及びカード読み取り装置200が他の一斉呼出エリアに移動する場合は、位置登録データベース410のデータが更新される。
【0023】
また、位置登録サーバ400には、認証サーバ500が接続されている。認証サーバ500は、カード100の認証情報(カード100の使用可否に関する情報)を、カード認証用データベース510に登録し保持している(図4参照)。」(段落【0016】?【0023】)

(イ)「【0024】
図2は、カード100の構成を示すブロック図である。
【0025】
カード100には、カード読み取り装置200と通信を行う対読み取り装置通信部110及びアンテナ150、基地局300との通信を行うPHS無線部120及びアンテナ160、カード100の各部を制御する制御部130、カード100の情報を表示する表示部140等から構成されている。
【0026】
対読み取り装置通信部110は、コイル状のアンテナ150に接続されている。カード100がカード読み取り装置200に接近すると、アンテナ150がカード読み取り装置200から発せられる磁界を受けて、電磁誘導作用によって交流の起電力が生じ、この起電力によって対読み取り装置通信部110を動作させる。そして、この起電力の強弱を、対読み取り装置通信部110の復変調回路によって信号に変換することで、カード読み取り装置200との間でデータの送受信ができる。
【0027】
PHS無線部120はアンテナ160に接続されており、アンテナ160を介して、基地局300からの電波を受信し、基地局300に電波を送信する。PHS無線部160は、ベースバンド部及びコーデック部が備えられ、アンテナ160からの高周波信号をデータ信号に変換し、またデータ信号を高周波信号に変換してアンテナ160に送ることで、基地局300との間でデータの送受信ができる。なお、このPHS無線部は音声通話機能(送話部や受話部)は持たず、データ通信機能及び通信のための位置登録機能のみを持っている。
【0028】
制御部130は、カード100の各部の制御を行う。表示部140は制御部130からの信号によって、カード100に記憶された情報や、カード読み取り装置200及び基地局300との通信によって取得した情報(例えば、カードの使用可否、プリペイド金額の残高等)を表示する。」(段落【0024】?【0028】)

(ウ)「【0029】
図3は、カード読み取り装置200の構成を示すブロック図である。
【0030】
カード読み取り装置200には、カード100と通信を行う対カード通信部210及びアンテナ250、基地局300と通信を行うPHS無線部220及びアンテナ260、カード読み取り装置200の各機能を制御する制御部230等から構成されている。
【0031】
対カード通信部210は、コイル状のアンテナ250に接続されている。対カード通信部210は、アンテナ250を経由して発する磁界の電磁誘導によって、近接されたカード100に起電力を生じさせ、電力を供給する。カード読み取り装置200は、磁界によって生じる交流の起電力の強弱を、対カード通信部210の復変調回路によって信号に変換することで、カード100との間でデータの送受信ができる。
【0032】
PHS無線部220はアンテナ260に接続されており、アンテナ260を介して、基地局300からの電波を受信し、基地局300に電波を送信する。PHS無線部220は、ベースバンド部及びコーデック部が備えられ、アンテナ260からの高周波信号をデータ信号に変換し、またデータ信号を高周波信号に変換してアンテナ260に送ることで、基地局300との間でデータの送受信ができる。」(段落【0029】?【0032】)

(エ)「【0037】
次に、位置登録サーバ400は、認証サーバ500に対して、カード100の認証情報を問合わせる。認証サーバ500は、カード認証用データベース510を参照して、問い合わせを受けたカード100の情報がカード認証用データベース510に使用禁止カードとして登録されているかを検索する。カード認証用データベース510には、カードを紛失した等の理由によて使用が禁止されたカードの情報が記憶されている(図4参照)。カード認証用データベース510に該カードが使用禁止カードとして登録されていれば、そのカードに関する情報を位置登録サーバ400に通知する。位置登録サーバ400は、この通知を受けて、基地局300を介して、該カード100及び同一の一斉呼出エリア内にあるカード読み取り装置200に、該カードの使用を禁止する旨の通知を同報する。この通知により該カード100の使用が不許可となる。また、危険度が高いカード100が使用されようとした場合には、予め契約した警備会社などに通報を行う。」(段落【0037】)

(オ)「【0042】
カード100は、一斉呼出エリアに変更があるか否かを判定している(処理1001)。カード100が存在する一斉呼出エリアに変更がない場合は、以後の処理を行わずにこの処理で待機する。カード100が移動しハンドオフが行われることにより、一斉呼出エリアの変更があったと判定した場合は、処理1002に移行する。この判定は、ハンドオフ時にカード100と基地局300とで通信する制御チャネルのメッセージの中の、基地局300の情報であるCSID中に含まれる一斉呼出エリアのIDを参照して判定する。
【0043】
処理1002では、基地局300に対して位置登録要求信号を送信して、カード100の位置に関する情報を、位置登録サーバ400の位置登録データベース410に登録するように要求する。
【0044】
位置登録サーバ400への位置登録が終了すると、位置登録サーバ400は位置情報の登録が完了した旨、及び、認証サーバ500から取得した当該カードに関する情報がカード100に送信される。
【0045】
カード100はこの当該カードに関する情報を受信すると(処理1003)、受信した当該カードに関する情報を、制御部130に備えられているメモリ等の記憶装置に記憶する。次に、当該カードに関する情報(カードの使用期間等の使用条件や、使用禁止の登録がされていた場合には、カードが使用できない旨)を、表示部140に表示する(処理1004)。」(段落【0042】?【0045】)

(カ)「【0048】
図6は、カード読み取り装置200が行う位置登録の処理を示すフローチャートである。
【0049】
カード読み取り装置200は、一斉呼出エリアに変更があるか否かを判定している(処理2001)。カード読み取り装置200が存在する一斉呼出エリアに変更がない場合は、以後の処理を行わずにこの処理で待機する。カード読み取り装置200が移動しハンドオフが行われることにより、一斉呼出エリアの変更があったと判定した場合は、処理2002に移行する。この一斉呼出エリアの変更の判定は、カード100と同様に、CSID中に含まれる一斉呼出エリアのIDを参照して判定する。
【0050】
処理2002では、基地局300に対して位置登録要求信号を送信して、カード読み取り装置200の位置に関する情報を、位置登録サーバ400の位置登録データベース410に登録するように要求する。
【0051】
位置登録サーバ400への位置登録が終了すると、位置登録サーバ400は、登録が完了したカード読み取り装置200の存在する一斉呼出エリア内に存在するカード100のうち、使用が禁止されているカード100の情報がカード読み取り装置200に送信される。
【0052】
カード読み取り装置200はカード100の情報を受信すると(処理2003)、まず、既に制御部230に備えられているメモリ等の記憶装置に記憶されている、使用が禁止されているカード100の情報を削除する(処理2004)。次に、新たに受信した使用が禁止されているカード100の情報を記憶する。(処理2005)。
【0053】
このように、新たにカードの情報を受信すると、既に記憶されているカードの情報を削除して、新たに受信したカードの情報を記憶するので、カード読み取り装置200の記憶容量を大きくする必要がない。
【0054】
図7は、基地局側(位置登録サーバ400及び認証サーバ500)で行われる、カード100の位置登録の処理を示すフローチャートである。
【0055】
基地局300は、カード100からの位置登録要求(図5の処理1002)があるか否かを監視している(処理3001)。位置登録要求がない場合は、要求があるまでこの処理が繰り返され、待機する。位置登録要求があったと判定したときは、処理3002に移行する。
【0056】
処理3002では、基地局300は、位置登録要求を受けたカード100に関する情報を登録するように位置登録サーバ400に要求する。そして、位置登録サーバ400は、位置登録要求を受けたカード100が属している一斉呼出エリア、該カード100の電話番号等の情報を、位置登録データベース410に登録する。
【0057】
次に、位置登録サーバ400は、認証サーバ500に対して、位置登録要求を受けたカード100の情報の検索を要求する(処理3003)。
【0058】
検索要求を受けた認証サーバ500は、要求のあったカード100の電話番号に基づいてカード認証用データベース510を検索し、当該カードの使用が禁止されている旨の登録がされているか否かを判定する(処理3004)。使用禁止であるとの登録がされていれば、該電話番号のカードは使用が禁止されている旨の通知を位置登録サーバ400に送る(処理3005)。使用禁止であるとの登録がされていなければ、使用可能である旨の通知を位置登録サーバ400に送る(処理3006)。
【0059】
次に、位置登録サーバ400は、認証サーバ500から使用禁止である旨の通知を受け取ると、基地局300を介して、そのカード100、及び、同一の一斉呼出エリア内に存在するカード読み取り装置200に対して、使用禁止である旨の通知を送信する(処理3007)。」(段落【0048】?【0059】)

(キ)「【0066】
次に、カード認証用データベース510に使用禁止であると登録されているカード100が使用されようとした場合の処理について説明する。
【0067】
図9は、カード読み取り装置200の行う、不正なカードが使用されようとした場合の処理を示すフローチャートである。
【0068】
カード読み取り装置200は、カード100がカード読み取り装置200の対カード通信部210によって読み込まれたか否かを判定している(処理5001)。カード100が読み込まれない場合は、読み込みがあるまでこの処理が繰り返され、待機する。カード100が読み込まれたと判定すると、該カード100と通信を行い、該カード100の情報(例えば、電話番号)を取得する(処理5002)。
【0069】
次に、位置登録時に(図8の処理4004)、又は、その後(図7の処理3007)取得した使用が禁止されているカードの情報を参照し、読み込んだカード100の使用が禁止されているものとして登録されているか否かを判定する(処理5003)。当該カードの使用が禁止されている場合は処理5004に移行する。使用が禁止されていない場合は処理5007に移行し、該カード100の使用を許可し、所定の処理(例えば、カードからの金額引き落とし等の処理)を行う。
【0070】
処理5004では、カードの使用禁止の情報から、カードの危険度を参照し、危険度が予め設定されている値よりも大きいか否かを判定する。危険度が所定の値よりも大きい場合は、処理5006に移行し、危険度が所定の値よりも小さい場合は処理5005に移行する。
【0071】
処理5005では、該カード100の使用を不許可に設定する。このとき、カード読み取り装置200からカード100に対して使用ができない旨を送信して、カード100の表示部140にその旨を表示してもよい。
【0072】
処理5006では、カード読み取り装置200のPHS無線部220によって、予め設定した警備会社等に発呼を行い、危険度の高いカードが使用された旨を通報する。このとき当該カードが使用不可能とするか、使用可能とするかのいずれかとすることができる。」(段落【0066】?【0072】)

以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「カード100は、カード読み取り装置200と通信を行うための無線通信部(対読み取り装置通信部110)、及び、基地局(CS)300と無線通信を行うためのPHS無線部120を備え、カード100がPHS無線部120によって、基地局300と無線通信を行うことで、通信端末として機能し、
対読み取り装置通信部110は、コイル状のアンテナ150に接続され、カード100がカード読み取り装置200に接近すると、アンテナ150がカード読み取り装置200から発せられる磁界を受けて、電磁誘導作用によって交流の起電力が生じ、この起電力によって対読み取り装置通信部110を動作させ、この起電力の強弱を、対読み取り装置通信部110の復変調回路によって信号に変換することで、カード読み取り装置200との間でデータの送受信ができ、
認証サーバ500のカード認証用データベース510には、カードを紛失した等の理由によって使用が禁止されたカードの情報が記憶され、
位置登録サーバ400への位置登録が終了すると、認証サーバ500から取得した当該カードに関する情報が基地局300からカード100に送信され、カード100はこの当該カードに関する情報を受信すると、受信した当該カードに関する情報を、制御部130に備えられているメモリ等の記憶装置に記憶し、当該カードに関する情報(カードの使用期間等の使用条件や、使用禁止の登録がされていた場合には、カードが使用できない旨)を、表示部140に表示し、
カード読み取り装置200の存在する一斉呼出エリア内に存在するカード100のうち、使用が禁止されているカード100の情報がカード読み取り装置200に送信され、カード読み取り装置200は前記カード100の情報を受信すると、制御部230に備えられているメモリ等の記憶装置に記憶し、
駅の改札機等に設置されたカード読み取り装置200は、カード100が読み込まれたと判定すると、該カード100と通信を行い、該カード100の情報(例えば、電話番号)を取得し、位置登録時に、又は、その後取得した使用が禁止されているカードの情報を参照し、読み込んだカード100の使用が禁止されているものとして登録されているか否かを判定し、当該カードの使用が禁止されている場合は、カードの使用禁止の情報から、カードの危険度を参照し、危険度が予め設定されている値よりも大きいか否かを判定し、危険度が所定の値よりも小さい場合は、該カード100の使用を不許可に設定し、カード読み取り装置200からカード100に対して使用ができない旨を送信して、カード100の表示部140にその旨を表示してもよく、危険度が所定の値よりも大きい場合は、カード読み取り装置200のPHS無線部220によって、予め設定した警備会社等に発呼を行い、危険度の高いカードが使用された旨を通報することを特徴とするカードシステム。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-302923号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「[産業上の利用分野]
本発明は、無線電話機の盗難対策システムに関し、特に、無線電話機が盗難されたときの早期回収を可能とする無線電話機の盗難対策システムに関する。
[従来の技術]
近年では、無線電話機の小型化が進み、携帯できる無線電話機が普及し始めている。従って、盗難の機会も増大し、有効な盗難対策が必要となってきている。
ところで、従来の無線電話機の盗難対策システムでは、暗証番号を無線電話機に記憶させることにより、その暗証番号を知らない者がその無線電話機を使えないようにしていた。
[解決すべき問題点]
上述した従来の無線電話機の盗難対策システムでは、盗難にあう前に、暗証番号を電話機に記憶させることを忘れていたら効果がないという問題点があった。
また、盗難後は処置の施しようが無いという問題点があった。
本発明は、上記問題点にかんがみてなされたもので、無線電話機が盗難されたときの早期回収を可能とする無線電話機の盗難対策システムの提供を目的とする。」(第1頁2欄第2行?第2頁3欄第8行)

(イ)「[実施例]
以下、図面にもとづいて本発明の実施例を説明する。
第1図は、本発明の一実施例に係る無線電話機の盗難対策システムの処理手順を示す図である。ここでは、盗難電話機の呼に対する処理方法の選択により、方式Aと方式Bの二つの方式を例にあげて説明する。
まず、無線電話機の盗難を確認した加入者1は、無線電話の運用会社に無線電話機の盗難届け4を提出する。すると、運用会社は電話局2へ通知し、電話局2で盗難電話機番号を登録する(処理5)。
一方、盗難者が発呼を行ない、盗難電話機3から電話局2に発呼信号6が上がってきたとする。すると、電話局2は、盗難電話機3に対して盗難通知信号7を送信し、その電話機が盗難状態にあることを通知する。そして、この通知を受け取った盗難電話機3は、盗難通知内容とともに先に発呼した相手先の電話番号を内蔵された不揮発性メモリに記憶させる(処理8)。これは、後日回収されたときに読み出すことにより、盗難電話機であることを確認するとともに、その電話機の使用者に事情を問うことを可能にさせるものである。」(第2頁4欄第4行?5欄第8行)

第3 対 比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「駅の改札機等に設置されたカード読み取り装置200」は、本願発明の「近距離通信装置」に相当する。
(2)引用発明の「カード100」は、「基地局(CS)300と無線通信を行うためのPHS無線部120を備え、カード100がPHS無線部120によって、基地局300と無線通信を行うことで、通信端末として機能し」、「カード読み取り装置200と通信を行うための無線通信部(対読み取り装置通信部110)」を備えるから、本願発明の「基地局との間でセルラー通信を行うとともに、近距離通信装置との間で近距離通信を行うことができる携帯情報端末装置」と「基地局との間でセルラー通信を行うとともに、近距離通信装置との間で近距離通信を行うことができる通信端末」である点で対応するといえる。
(3)引用発明の「当該カードに関する情報」は、「カードの使用期間等の使用条件や、使用禁止の登録がされていた場合には、カードが使用できない旨」であるから、本願発明の「盗難情報」と「情報」である点で対応する。
(4)引用発明は、「当該カードに関する情報が基地局300からカード100に送信され、カード100はこの当該カードに関する情報を受信する」から、引用発明の「基地局(CS)300と無線通信を行うためのPHS無線部120」は、本願発明の「基地局から盗難情報を受信するセルラー通信部」と「基地局から情報を受信するセルラー通信部」である点で対応する。
(5)引用発明の「制御部130に備えられているメモリ等の記憶装置」は、受信した当該カードに関する情報を記憶するから、本願発明の「受信した盗難情報を記憶するメモリ」と「受信した情報を記憶するメモリ」である点で対応する。
(6)引用発明の「対読み取り装置通信部110」は、「コイル状のアンテナ150に接続され、カード100がカード読み取り装置200に接近すると、アンテナ150がカード読み取り装置200から発せられる磁界を受けて、電磁誘導作用によって交流の起電力が生じ、この起電力によって対読み取り装置通信部110を動作させ、この起電力の強弱を、対読み取り装置通信部110の復変調回路によって信号に変換することで、カード読み取り装置200との間でデータの送受信ができ」、「駅の改札機等に設置されたカード読み取り装置200は、カード100が読み込まれたと判定すると、該カード100と通信を行い、該カード100の情報(例えば、電話番号)を取得」しているから、本願発明の「上記近距離通信装置からの受信信号に基づいて、上記メモリに記憶されている盗難情報を上記近距離通信装置に送信する近距離通信部」と「上記近距離通信装置からの受信信号に基づいて、情報を上記近距離通信装置に送信する近距離通信部」である点で対応する。

したがって、本願発明の用語を用いて表現すると両者は、
「基地局との間でセルラー通信を行うとともに、近距離通信装置との間で近距離通信を行うことができる通信端末において、
基地局から情報を受信するセルラー通信部と、
受信した情報を記憶するメモリと、
上記近距離通信装置からの受信信号に基づいて、情報を上記近距離通信装置に送信する近距離通信部とを備えたことを特徴とする通信端末。」
で一致するものであり、次の(1)、(2)の点で相違している。

(1)本願発明は、「携帯情報端末装置」であるのに対し、引用発明は、通信端末として機能する「カード」である点。

(2)本願発明では、基地局から受信し、メモリに記憶し、近距離通信部に送信する「情報」が「盗難情報」であるのに対し、引用発明では、基地局から受信し、メモリに記憶する「情報」は、当該カードに関する情報で「カードが使用できない旨」を含むものであるが、「盗難情報」とは明記されておらず、かつ、この当該カードに関する情報は、カード100の表示部140に表示するものであり、カード100からカード読み取り装置200に送信する「情報」は、該カード100の情報(例えば、電話番号)であって、読み取り装置200が取得する使用が禁止されているカードの情報は、基地局300から送信されている点。

第4 当審の判断
上記相違点について検討する。
・相違点(1)について
公衆電波に加えて近距離無線通信機能を備え、駅の改札等の近距離通信装置との間で近距離無線通信により情報を送受信する携帯電話(携帯情報端末装置)は、本願出願前周知の技術(例えば、特開2003-223656号公報、特開2002-42189号公報参照)である。
したがって、引用発明において、通信端末として機能する「カード100」を「携帯情報端末装置」とすることは、当業者が容易になし得ることある。

・相違点(2)について
引用例2には、盗難電話機3に対して盗難通知信号7を送信し、その電話機が盗難状態にあることを通知し、この通知を受け取った盗難電話機3は、盗難通知内容を内蔵された不揮発性メモリに記憶させ、後日回収されたときに読み出すことにより、盗難電話機であることを確認することが記載されており、引用発明の基地局から受信し、メモリに記憶する「カードが使用できない旨」を含む「当該カードに関する情報」を「盗難情報」とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
引用例1には、「カード読み取り装置200からカード100に対して使用ができない旨を送信して、カード100の表示部140にその旨を表示してもよい。」(段落【0071】)と記載されており、カード読み取り装置200とカード100間で近接無線通信により「カードの使用禁止の情報」を送受信することが示されている。
そして、携帯通信装置から、盗難等により不正利用されることを防止するための情報を送信することは、本願出願前周知の技術(例えば、特開2002-288569号公報、段落【0009】「本発明は、盗難、偽造、変造等により不正使用されることを防止することができる取引遂行装置等を提供することを課題とする。」段落【0044】?【0047】「携帯通信機器10は、電子証明書を受信して、電子証明書記録部12に記録する。ここで、携帯通信機器10を使用して商取引を行う場合、取引情報送信部14は電子証明書記録部12から電子証明書を読み出して、近距離通信部24を介してカードリーダ30に送信する(S10)。ここで、近距離通信部36は、携帯通信機器10から電子証明書を受信し、認証判定部34へ送る。認証判定部34は、携帯通信機器10から送信された電子証明書が真正なものであるか否かを判定する(S12)。ここで、電子証明書が不正であれば(S12、No)、認証判定部34は、34は取引不許可を示す取引不許可信号を生成し」の記載、特開2001-313985号公報、段落【0007】、【0008】「PHS端末機(以下PHSと略称する。)のうちPHS1は、盗難を認識すると、基地局3に向けて第1の盗難情報信号を発信する機能と、PHS2に向けて第2の盗難情報信号を通知する機能を有する。PHS2はPHS1からの第2の盗難情報信号を受信すると基地局に向けて盗難管理センタ宛中継転送する機能を有する。」の記載参照)である。
したがって、携帯通信装置から、盗難等により不正利用されることを防止するための情報を送信する上記周知技術を考慮すれば、引用発明において、基地局から受信し、メモリに記憶した「使用が禁止されているカードの情報」を含む「当該カードに関する情報」を対読み取り装置通信部110でカード読み取り装置200に送信するようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-24 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-14 
出願番号 特願2005-177284(P2005-177284)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 安久 司郎
鈴木 重幸
発明の名称 携帯情報端末装置  
代理人 大槻 聡  

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