• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1245850
審判番号 不服2010-28119  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-13 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2005-219387号「等速自在継手及びその内方部材」拒絶査定不服審判事件〔平成19年2月8日出願公開、特開2007-32760号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年7月28日の出願であって、平成22年9月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成22年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「外方部材との間で角度変位を許容しながらトルクを伝達する等速自在継手に装備され、内径に形成された軸孔にシャフトを挿入してスプライン嵌合する内方部材であって、トラック溝が軸方向に形成された球面状の外径面を有して軸方向中央部が厚肉で軸方向両側部が薄肉となる形状を具備し、前記軸孔の軸方向中央部位のみに高周波焼入れによる熱処理で硬化層を形成して前記軸方向中央部位を部分的に内径側へ膨出させることで前記軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能とし、前記軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持したことを特徴とする等速自在継手の内方部材。」(なお、下線部は補正箇所を示す。)
上記補正は、新規事項を追加するものではなく、補正前の請求項1(平成22年1月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載された発明を特定するために必要な事項である「内方部材」について、球面状の外径面に「トラック溝が軸方向に形成された」との限定及び、「軸方向中央部が厚肉で軸方向両側部が薄肉となる」形状を具備するとの限定を付加し、「熱処理」について、「高周波焼入れによる」との限定を付加し、熱処理により軸方向中央部位を部分的に内径側へ膨出させた硬化層を、「軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能と」するものであるとの限定を付加し、熱処理で硬化する部位を特定する事項として、「軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持した」との限定を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例の記載事項
(1)特開2005-60726号公報
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-60726号公報(以下、「引用例1」という。)には、「疲労特性に優れた等速ジョイント内輪およびその製造方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波焼入れによる硬化層をそなえる、自動車や産業機械の動力伝達装置の駆動車軸などに用いる、疲労特性に優れた等速ジョイントの内輪ならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車の動力伝達装置において、その車輪側の駆動車軸では、図1に示すように、ドライブシャフト1からの動力を車輪のハブ2に伝えるために、等速ジョイント3を介するのが通例である。
この等速ジョイント3は、外輪4および内輪5の組み合わせになる。すなわち、外輪4のマウス部4aの内面に形成したボール軌道溝に嵌めるボール6を介して、マウス部4aの内側に内輪5を揺動可能に固定してなり、この内輪5にドライブシャフト1を嵌合する一方、外輪4のステム部4bをハブ2に例えばスプライン結合させることによって、ドライブシャフト1からの動力を車輪のハブ2に伝えるものである。」
イ.「【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
すなわち、図2に示すように、等速ジョイント内輪5は、図1に示したように、ドライブシャフト1が例えばスプライン結合する嵌合面5bに、又はさらにボール6の転動面5aに、表面硬化層7を有し、この表面硬化層7における旧オーステナイト粒径が該表面硬化層全厚にわたり12μm 以下であることを特徴とする。ここに、上記嵌合面5bではとりわけすべり転動疲労強度が高いことが要求される。」
ウ.図2から、内輪5には転動面5aが形成されるものであることが看取される。
エ.図2および上記摘記事項イ.から、内輪5のシャフト1とのスプライン結合嵌合面5bに形成される表面硬化層7は、嵌合面全体に形成されるものであることが看取される。

これら記載事項(及び図示内容)を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「マウス部4aとの間で角度変位を許容しながらトルクを伝達する等速ジョイント3に装備され、内径に形成された軸孔にドライブシャフト1を挿入してスプライン嵌合する内輪5であって、転動面5aが形成され、軸孔の嵌合面5b全面に高周波焼入れによる熱処理で表面硬化層7を形成する等速ジョイント3の内輪5。」

(2)特開昭62-251523号公報
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-251523号公報(以下、「引用例2」という。)には、「回転軸の連結方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
オ.「〈発明が解決しようとする問題点〉
しかしながら、上述従来の回転軸の連結方法は、各スプライン部の加工精度に限界があるために、外スプラインと内スプラインの相互間に隙間か生じ、動力伝達時にはそれが原因でスプライン部にガタつきが生じて振動発生や回転トルクのロス等を伴うといった欠点があった。
而して、第5図に示す様な自動車の車軸とホイール部との連結の場合には、アウトボードジョイント4の外スプライン4に歯すじ方向に捩れ(リード)を設け、動力伝達時の回転方向のガタ付きを無くす工夫が施されているが、一般にアウトボードジョイント4にはその耐久性や強度の面を考慮して焼入れ処理が施されるため、外スプライン4に歯すじ方向に設けられた捩れ(リード)がばらついてしまい、それによってまた新たな不具合が生じていた。
即ち、ボールベアリング1に付与するプレロードはボールベアリング1のボールとその転動面との間隙をセンタナット7の締付けトルクによって管理し調整しているため、外スプライン4の捩れ量が大きい場合にはボールベアリング1に付与すべきプレロードが外スプライン4の捩れ部分に吸収されてしまい、結果としてボールベアリング1に付与すべくプレロードの正確な管理が不可能になり、ボールベアリング1の耐久性が低下し、走行時のドライブフィーリングが悪化することもあるという不具合があった。
この発明の目的は上述従来技術に基づく回転軸の連結方法の問題点を解決すべき技術的課題とし、連結部のガタつきを無くしスムーズな回転トルクの伝達を可能にして機械製造産業における動力伝達技術利用分野に益する優れた回転軸の連結方法を提供せんとするものである。」(第2ページ右上欄第1行?左下欄第14行)
カ.「〈問題点を解決するための手段・作用〉
上述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの発明の構成は前述問題点を解決するために、外スプラインを有する回転軸と内スプラインを有する回転体の一方を硬質金属材とし、他方を軟質金属材とし、軟質金属材側のスプライン部の一部を焼入れ処理によってマルテンサイト化し、そのマルテンサイト化され膨出した部位を硬質金属材側のスプライン部に係合させるようにして、回転軸の外スプラインを回転体の内スプラインに圧入するようにした技術的手段を講じたものである。」(第2ページ左下欄第15行?右下欄第5行)
キ.「8はこの発明の回転軸の連結方法が採用される自動車のホイール組付け部であり、車両本体に支持される回転体としてのホイール部9と、該ホイール部9にエンジンの回転トルクを伝達する回転軸としてのアウトボードジョイント4より成る。
ホイール部9はナックル10の略円筒状のケーシング部11の内側にボールベアリング1を介してアクスルハブ2が嵌入され、該アクスルハブ2の車両外側よりに設けられたフランジ部12に複数のボルト13・・・とそれに対応するナット14・・・を介してホイール15が固定されている。
そして、アクスルハブ2は焼入れ処理を施さない鋼材より形成され、その軸芯部には所定形状の内スプライン3が形成され、更に、内スプライン3の表面側の開口縁部16には、その内周全域に亘り高周波焼入れが施され、その部位がマルテンサイト化されて内スプライン3の中心方向に幾分膨出し、各歯の間隔も幾分狭くなるようにされている。」(第2ページ右下欄第11行?第3ページ左上欄第9行)
ク.「尚、この発明の実施態様は上述実施例に限るものでないことは勿論であり、例えば、内スプライン3の焼入れ処理を施す部位は、第3図に示す様に、開口縁部16に限らず軸方向の他の部位であってもよく、又、第4図に示す様に周方向に数ヶ所スポット的に設けるようにしてもよい等地の種々の態様が採用可能である。」(第3ページ左下欄第11行?17行)
ケ.「又、軟質金属材側の焼入れ処理部位はスプライン部の全面ではなく、その一部に設けるようにしたことにより、加工に際しての微調整が可能になり、最適なスプライン嵌合が可能になるという優れた効果が秦される。」(第3ページ右下欄第8行?12行)

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「マウス部4a」は、その意味又は機能などからみて、前者の「外方部材」に相当し、以下同様に、「等速ジョイント3」は「等速自在継手」に、「ドライブシャフト1」は「シャフト」に、「内輪5」は「内方部材」に、「転動面5a」は「溝」に、「表面硬化層7」は「硬化層」にそれぞれ相当する。したがって、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は、
[一致点]
「外方部材との間で角度変位を許容しながらトルクを伝達する等速自在継手に装備され、内径に形成された軸孔にシャフトを挿入してスプライン嵌合する内方部材であって、溝が形成され、軸孔に高周波焼入れによる熱処理で硬化層を形成する等速自在継手の内方部材。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
相違点1:本願補正発明は、内方部材が、トラック溝が軸方向に形成された球面状の外径面を有して軸方向中央部が厚肉で軸方向両側部が薄肉となる形状を具備するものであるのに対し、引用発明の内輪5は、転動面5aに形成される溝が、「トラック溝」であるかどうかが不明であり、また、「球面状の外径面を有して軸方向中央部が厚肉で軸方向両側部が薄肉となる形状」を具備するものではない点。
相違点2:本願補正発明は、「軸孔の軸方向中央部位のみに高周波焼入れによる熱処理で硬化層を形成して前記軸方向中央部位を部分的に内径側へ膨出させることで前記軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能とし、前記軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持」するものであるのに対し、引用発明は、高周波焼入れによる熱処理での硬化層を内輪5の軸孔の軸方向全体に形成するものである点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
内側の継手と外側の継手、及び球状部材を備え、一方の継手から他方の継手にトルクを伝達する等速ジョイントの技術分野において、内側の継手に球状部材が転動するトラック溝を軸方向に形成すること、内側の継手の形状を球面状の外径面を有し軸方向中央部が厚肉で軸方向両側部を薄肉とすることは、特開2003-113856号公報(図1,2A?2Fを参照)、特開2003-194088号公報(段落【0026】、図1を参照)、特開2000-227123号公報(図2?8,10を参照)等に見られるように周知であり、軸孔に高周波焼入れによる熱処理で硬化層を形成する点に特徴を有する引用発明において、内輪5に上記の周知の構成を適用して上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
引用例2には、図3及び上記摘記事項オ.?ケ.(特に摘記事項ク.)の記載から、アクスルハブ2の内スプライン3と、アウトボードジョイント4の外スプライン5にてスプライン嵌合するものにおいて、アクスルハブ2とアウトボードジョイント4が嵌合する軸孔の開口縁部以外の箇所のみに高周波焼入れ処理を施して膨出させ、該膨出部にてアクスルハブ2の内スプライン3とアウトボードジョイント4の外スプライン5とを押圧状態とすることにより、スプライン嵌合部のガタつきを防止することが開示されているといえる。
高周波焼入れを施すことによる、部材の変質、及びそれに伴う体積変化は、当業者が普通に知り得ることである。そうすると、引用発明のように内輪5にドライブシャフト1をスプライン嵌合するものにおいて、内輪5の嵌合のために形成される軸孔全体に高周波焼き入れ処理を施した場合に、高周波焼入れ処理箇所の体積変化により寸法誤差が生じ、それに起因して嵌合部にガタが発生することは、広く知られた技術課題である。
してみると、引用発明において、前記技術課題を解決する手段として、引用例2に開示された事項を採用し、軸孔の開口縁部以外の最適な箇所のみに高周波焼入れ処理を施して内輪5とドライブシャフト1との嵌合部に押圧箇所を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、高周波焼入れにより形成される膨出部の押圧による反力を考慮して、高周波焼入れを施す箇所として部材の強度の最も高い「軸孔の軸方向中央部位」を選択することに、格別の困難性はない。
そうしてみると、引用発明において、引用例2に開示された事項を適用して「軸孔の軸方向中央部位のみに高周波焼入れによる熱処理で硬化層を形成して前記軸方向中央部位を部分的に内径側へ膨出させることで前記軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能とし、前記軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持」することは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明、引用例2に開示された事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に開示された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、審判請求書において、「本願発明(審決注:本審決における「本願補正発明」に対応する。以下同様)では、厚肉の軸方向中央部における軸孔の軸方向中央部位のみに硬化層を形成してその軸方向中央部位を内径側へ膨出させることで軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能となる構成要件(A)(B)を具備することにより、シャフトとのスプライン嵌合でガタをなくすことが可能であり、また、シャフトに捩りトルクが負荷されても、その捩りの支点となるシャフトのスプライン根元部に応力が集中するだけでなく、圧入状態となっている軸方向中央部位にも応力がかかり易くなり、シャフトのスプライン根元部にかかる応力集中を分散、緩和することができ、その応力が集中する軸方向中央部が厚肉のため、内方部材の強度も確保することができます。一方、軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持した構成要件(C)を具備することにより、雌スプライン部の寸法精度も確保できます。
このように、本願発明は、軸方向中央部が厚肉である点、軸方向中央部位のみに硬化層を形成してその軸方向中央部位を内径側へ膨出させることで軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能とした点、および軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持した点を構成要件(A)(B)(C)とすることにより、内方部材の強度と雌スプライン部の寸法精度の両方を確保することができると共に、シャフトとのスプライン嵌合でガタをなくし、シャフトのスプラインにかかる応力集中を分散、緩和することができるという特有の効果を奏します。」 と主張している。
しかしながら、押圧力のかかる膨出部を形成する箇所として、内方部材の最も強度が高い「軸孔の軸方向中央部位」を選択することは、「II.4.(2)相違点2について」で述べたように格別な困難性はなく、部材の最も強度が高い「軸孔の軸方向中央部位」が、その部材の最も厚肉な部分となることは、当業者が容易に把握し得たことである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成22年1月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「外方部材との間で角度変位を許容しながらトルクを伝達する等速自在継手に装備され、内径に形成された軸孔にシャフトを挿入してスプライン嵌合する内方部材であって、球面状の外径面を有する形状を具備し、前記軸孔の軸方向中央部位のみに熱処理による硬化層を形成して前記軸方向中央部位を部分的に内径側へ膨出させたことを特徴とする等速自在継手の内方部材。」

2.引用例の記載事項
引用例1及び引用例2の記載事項並びに引用発明は、前記II.2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.1.の本願補正発明から、「内方部材」についての限定事項である、球面状の外径面に「トラック溝が軸方向に形成された」との事項及び「軸方向中央部が厚肉で軸方向両側部が薄肉となる」形状を具備するとの事項を省き、「熱処理」についての限定事項である「高周波焼入れによる」との事項を省き、「硬化層」についての限定事項である「軸方向中央部位でシャフトが圧入状態可能と」するためのものであるとの事項を省き、熱処理で硬化する部位を特定する限定事項である「軸方向中央部位を除く軸方向両側部位を未熱処理部分として維持した」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3.及び4.に記載したとおり、引用発明及び引用例2に開示された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び引用例2に開示された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び引用例2に開示された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-30 
結審通知日 2011-08-31 
審決日 2011-09-14 
出願番号 特願2005-219387(P2005-219387)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16D)
P 1 8・ 575- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 川上 溢喜
特許庁審判官 冨岡 和人
所村 陽一
発明の名称 等速自在継手及びその内方部材  
代理人 熊野 剛  
代理人 城村 邦彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ