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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08F |
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管理番号 | 1245884 |
審判番号 | 不服2008-12515 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-15 |
確定日 | 2011-10-24 |
事件の表示 | 特願2003-569698「イソブチレンおよびフルオロモノマー由来のポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月28日国際公開、WO2003/70791、平成17年6月16日国内公表、特表2005-517778〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年2月13日(パリ条約による優先権主張 2002年2月15日及び2003年2月4日 いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成16年8月13日に特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づく補正の翻訳文が提出され、平成18年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成19年7月3日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成20年2月13日付けで拒絶査定がなされ、同年5月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同年6月16日に審判請求書の手続補正書(方式)とともに手続補正書が提出され、同年7月9日付けで前置報告がなされ、当審で平成22年10月6日付けで審尋がなされたが、回答書が提出されなかったものである。 第2 平成20年6月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の結論] 平成20年6月16日付けの手続補正を却下する。 [理由」 1.補正の内容 平成20年6月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前の 「【請求項1】 次の交互構造単位: -[DM-AM]- を有する残基を少なくとも30mol%含むフッ素含有コポリマーであって、 ここでDMは、次の構造(I): ![]() を有するドナーモノマー由来の残基を表し、 ここでR^(1)は、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(4)のアルキルである;R^(2)は、メチル、直鎖、環状または分岐鎖のC_(1)?C_(20)アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される;そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し;ここで該コポリマーが、少なくとも5重量%のフッ素を含み、 該ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、イソプレノール、1-オクテン、およびジペンテンからなる群より1つ以上選択され、 該アクセプターモノマーが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ビニルフルオリド、ヘキサフルオロプロピレンおよびその混合物からなる群より1つ以上選択され、そして必要に応じてアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、N-アルキル置換アクリルアミド、アクリロニトリルおよびその混合物からさらに選択され、該アクセプターモノマーが、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドを含む、少なくとも1つの官能基を含む、 フッ素含有コポリマー。 【請求項2】 請求項1に記載のコポリマーであって、ここで構造単位-[DM-AM]-が、以下の構造単位(I)を有する残基を含む: ![]() ここでR^(1)およびR^(2)は、上のように定義される;R^(3)は、塩素およびフッ素からなる群より選択されるハライドを含む基である;そしてR^(4)およびR^(5)は、H、Cl、およびFからなる群より独立して選択される。 【請求項3】 請求項1に記載のコポリマーであって、構造(III): ![]() により記載される他のエチレン性不飽和アクリルモノマーから誘導される1つ以上の残基をさらに含み、 ここでYが、-NR^(3)_(2)、-O-R^(5)-O-C(=O)-NR^(3)_(2)、および-OR^(4)からなる群より選択され;R^(3)が、H、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキルおよび直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキロールからなる群より選択され;R^(4)は、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖、環状、または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキル、アルキロール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のフルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、シロキサンラジカル、ポリシロキサンラジカル、アルキルシロキサンラジカル、エトキシル化トリメチルシリルシロキサンラジカル、およびプロポキシル化トリメチルシリルシロキサンラジカルからなる群より選択され;そしてR^(5)は、二価の直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキル連結基である、コポリマー。 【請求項4】 請求項2に記載のコポリマーであって、ここで前記コポリマーの前記構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する、コポリマー。 【請求項5】 請求項1に記載のコポリマーであって、一般式V: ![]() の他のエチレン性不飽和モノマーから誘導される、1つ以上の残基をさらに含み、 ここで、R^(11)、R^(12)、およびR^(14)が、H、ハライド、CF_(3)、直鎖または分岐鎖の1個?20個の炭素原子のアルキル、6個?12個の炭素原子のアリール、不飽和な直鎖または分岐鎖の2個?10個の炭素原子のアルケニルまたはアルキニル、不飽和な直鎖または分岐鎖のハロゲンで置換された2個?6個の炭素原子のアルケニル、C_(3)?C_(8)のシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルからなる群から独立して選択され、そしてR^(13)が、H、ハライド、C_(1)?C_(6)アルキル、COOR^(18)からなる群から選択され、 ここでR^(18)は、H、アルカリ金属、C_(1)?C_(6)の直鎖、環状、または分岐鎖のアルキル基、グリシジル、およびアリールからなる群より選択される、コポリマー。 【請求項6】 請求項5に記載のコポリマーであって、ここで前記他のエチレン性不飽和モノマーが、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーからなる群より1つ以上選択される、コポリマー。 【請求項7】 請求項1に記載のコポリマーであって、ここで前記コポリマーが、500?16,000の数平均分子量および4より小さい多分散性指標を有する、コポリマー。 【請求項8】 請求項1に記載のコポリマーであって、共反応性の官能基を含む、コポリマー。 【請求項9】 請求項1に記載のコポリマーを含む、熱硬化性組成物。 【請求項10】 請求項9に記載の組成物であって、該組成物が、(a)コポリマーおよび(b)少なくとももう1つの成分を含み;ここで(a)が、反応性官能基を含み、そして(b)が、(a)の官能基と反応性である官能基を含む、組成物。 【請求項11】 請求項10に記載の組成物であって、ここで前記コポリマーの前記官能基が、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドからなる群より1つ以上選択される、組成物。 【請求項12】 請求項10に記載の組成物であって、ここで前記(b)の官能基が、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、アミド、アミン、オキサゾリン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、βヒドロキシアルキルアミド(hydroxyalkamide)、およびカルバメートからなる群より選択される、組成物。 【請求項13】 請求項10に記載の組成物であって、ここで(a)が、100?5,000グラム/当量の官能基当量を有する、組成物。 【請求項14】 請求項10に記載の組成物であって、ここで(a)が、40?60mol%のフルオロオレフィン単位、5?45mol%のシクロヘキシルビニルエーテル単位、5?45mol%のアルキルビニルエーテル単位、および3?15mol%のヒドロキシアルキルビニルエーテル単位を含む、硬化性フルオロポリマーをさらに含む、組成物。 【請求項15】 請求項14に記載の組成物であって、ここで前記フルオロオレフィンが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびビニルフルオリドからなる群より1つ以上選択される、組成物。 【請求項16】 請求項10に記載の組成物であって、ここで(a)における前記官能基の(b)における前記官能基に対する比が、0.7:1?2:1である、組成物。 【請求項17】 基材であって、ここで前記基材の少なくとも一部が、請求項9に記載される熱硬化性組成物でコーティングされている、基材。 【請求項18】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項10に記載の熱硬化性組成物でコーティングされている、基材。 【請求項19】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項14に記載の熱硬化性組成物でコーティングされている、基材。 【請求項20】 多層複合コーティングであって、以下: (A)着色されたフィルム形成ベースコート熱硬化性組成物から堆積されたベースコート層;および (B)該ベースコート層の少なくとも一部上にトップコート組成物から堆積された、実質的に顔料を含まないトップコート、を含み、 ここで、(A)および(B)の1つまたは両方が、請求項9に記載の熱硬化性組成物を含む、多層複合コーティング。 【請求項21】 多層複合コーティングであって、以下: (A)着色フィルム形成ベースコート熱硬化性組成物から堆積されたベースコート層; および (B)該ベースコート層の少なくとも一部上にトップコート組成物から堆積された、実質的に顔料を含まないトップコート、を含み、 ここで(A)および(B)の1つまたは両方が、請求項10に記載の熱硬化性組成物を含む多層複合コーティング。 【請求項22】 多層複合コーティングであって、以下: (A)着色フィルム形成ベースコート熱硬化性組成物から堆積されたベースコート層; および (B)該ベースコート層の少なくとも一部上にトップコート組成物から堆積された、実質的に顔料を含まないトップコート、を含み、 ここで(A)および(B)の1つまたは両方が、請求項14に記載の熱硬化性組成物を含む、多層複合コーティング。 【請求項23】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項20に記載の多層複合コーティングでコーティングされている、基材。 【請求項24】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項21に記載の多層複合コーティングでコーティングされている、基材。 【請求項25】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項22に記載の多層複合コーティングでコーティングされている、基材。」 を、 「【請求項1】 次の交互構造単位: -[DM-AM]- を有する残基を少なくとも30mol%含むフッ素含有コポリマーであって、 ここでDMは、次の構造(I): ![]() を有するドナーモノマー由来の残基を表し、 ここでR^(1)は、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(4)のアルキルである;R^(2)は、メチル、直鎖、環状または分岐鎖のC_(1)?C_(20)アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される;そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し;ここで該コポリマーが、少なくとも5重量%のフッ素を含み、 該ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、イソプレノール、1-オクテン、およびジペンテンからなる群より1つ以上選択され、 該アクセプターモノマーが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ビニルフルオリド、ヘキサフルオロプロピレンおよびその混合物からなる群より1つ以上選択され、そして必要に応じてアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、N-アルキル置換アクリルアミド、アクリロニトリルおよびその混合物からさらに選択され、該アクセプターモノマーが、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドを含む、少なくとも1つの官能基を含み、 ここで該コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する、 フッ素含有コポリマー。 【請求項2】 請求項1に記載のコポリマーであって、ここで構造単位-[DM-AM]-が、以下の構造単位(I)を有する残基を含む: ![]() ここでR^(1)およびR^(2)は、上のように定義される;R^(3)は、塩素およびフッ素からなる群より選択されるハライドを含む基である;そしてR^(4)およびR^(5)は、H、Cl、およびFからなる群より独立して選択される。 【請求項3】 請求項1に記載のコポリマーであって、構造(III): ![]() により記載される他のエチレン性不飽和アクリルモノマーから誘導される1つ以上の残基をさらに含み、 ここでYが、-NR^(3)_(2)、-O-R^(5)-O-C(=O)-NR^(3)_(2)、および-OR^(4)からなる群より選択され;R^(3)が、H、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキルおよび直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキロールからなる群より選択され;R^(4)は、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖、環状、または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキル、アルキロール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のフルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、シロキサンラジカル、ポリシロキサンラジカル、アルキルシロキサンラジカル、エトキシル化トリメチルシリルシロキサンラジカル、およびプロポキシル化トリメチルシリルシロキサンラジカルからなる群より選択され;そしてR^(5)は、二価の直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(20)のアルキル連結基である、コポリマー。 【請求項4】 請求項1に記載のコポリマーであって、一般式V: ![]() の他のエチレン性不飽和モノマーから誘導される、1つ以上の残基をさらに含み、 ここで、R^(11)、R^(12)、およびR^(14)が、H、ハライド、CF_(3)、直鎖または分岐鎖の1個?20個の炭素原子のアルキル、6個?12個の炭素原子のアリール、不飽和な直鎖または分岐鎖の2個?10個の炭素原子のアルケニルまたはアルキニル、不飽和な直鎖または分岐鎖のハロゲンで置換された2個?6個の炭素原子のアルケニル、C_(3)?C_(8)のシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルからなる群から独立して選択され、そしてR^(13)が、H、ハライド、C_(1)?C_(6)アルキル、COOR^(18)からなる群から選択され、ここでR^(18)は、H、アルカリ金属、C_(1)?C_(6)の直鎖、環状、または分岐鎖のアルキル基、グリシジル、およびアリールからなる群より選択される、コポリマー。 【請求項5】 請求項4に記載のコポリマーであって、ここで前記他のエチレン性不飽和モノマーが、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーからなる群より1つ以上選択される、コポリマー。 【請求項6】 請求項1に記載のコポリマーであって、ここで前記コポリマーが、500?16,000の数平均分子量および4より小さい多分散性指標を有する、コポリマー。 【請求項7】 請求項1に記載のコポリマーであって、共反応性の官能基を含む、コポリマー。 【請求項8】 請求項1に記載のコポリマーを含む、熱硬化性組成物。 【請求項9】 請求項8に記載の組成物であって、該組成物が、(a)コポリマーおよび(b)少なくとももう1つの成分を含み;ここで(a)が、反応性官能基を含み、そして(b)が、(a)の官能基と反応性である官能基を含む、組成物。 【請求項10】 請求項9に記載の組成物であって、ここで前記コポリマーの前記官能基が、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドからなる群より1つ以上選択される、組成物。 【請求項11】 請求項9に記載の組成物であって、ここで前記(b)の官能基が、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、アミド、アミン、オキサゾリン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、βヒドロキシアルキルアミド(hydroxyalkamide)、およびカルバメートからなる群より選択される、組成物。 【請求項12】 請求項9に記載の組成物であって、ここで(a)が、100?5,000グラム/当量の官能基当量を有する、組成物。 【請求項13】 請求項9に記載の組成物であって、ここで(a)が、40?60mol%のフルオロオレフィン単位、5?45mol%のシクロヘキシルビニルエーテル単位、5?45mol%のアルキルビニルエーテル単位、および3?15mol%のヒドロキシアルキルビニルエーテル単位を含む、硬化性フルオロポリマーをさらに含む、組成物。 【請求項14】 請求項13に記載の組成物であって、ここで前記フルオロオレフィンが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびビニルフルオリドからなる群より1つ以上選択される、組成物。 【請求項15】 請求項9に記載の組成物であって、ここで(a)における前記官能基の(b)における前記官能基に対する比が、0.7:1?2:1である、組成物。 【請求項16】 基材であって、ここで前記基材の少なくとも一部が、請求項8に記載される熱硬化性組成物でコーティングされている、基材。 【請求項17】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項9に記載の熱硬化性組成物でコーティングされている、基材。 【請求項18】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項13に記載の熱硬化性組成物でコーティングされている、基材。 【請求項19】 多層複合コーティングであって、以下: (A)着色されたフィルム形成ベースコート熱硬化性組成物から堆積されたベースコート層;および (B)該ベースコート層の少なくとも一部上にトップコート組成物から堆積された、実質的に顔料を含まないトップコート、を含み、 ここで、(A)および(B)の1つまたは両方が、請求項8に記載の熱硬化性組成物を含む、多層複合コーティング。 【請求項20】 多層複合コーティングであって、以下: (A)着色フィルム形成ベースコート熱硬化性組成物から堆積されたベースコート層; および (B)該ベースコート層の少なくとも一部上にトップコート組成物から堆積された、実質的に顔料を含まないトップコート、を含み、 ここで(A)および(B)の1つまたは両方が、請求項9に記載の熱硬化性組成物を含む多層複合コーティング。 【請求項21】 多層複合コーティングであって、以下: (A)着色フィルム形成ベースコート熱硬化性組成物から堆積されたベースコート層; および (B)該ベースコート層の少なくとも一部上にトップコート組成物から堆積された、実質的に顔料を含まないトップコート、を含み、 ここで(A)および(B)の1つまたは両方が、請求項13に記載の熱硬化性組成物を含む、多層複合コーティング。 【請求項22】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項19に記載の多層複合コーティングでコーティングされている、基材。 【請求項23】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項20に記載の多層複合コーティングでコーティングされている、基材。 【請求項24】 基材であって、ここで該基材の少なくとも一部が、請求項21に記載の多層複合コーティングでコーティングされている、基材。」 と補正するものである。 2.補正の目的について 本件補正は、次の補正事項Aを含むものである。 補正事項A:補正前の請求項1に、「該コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する」との事項を付加。 補正事項Aは、補正前の請求項1に、発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である「該コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する」との事項を付加するものである。 そこで、上記補正事項Aについて検討すると、これは、補正前の請求項1に記載したものをさらに限定するものであるから、補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものであると認められる。 したがって、請求項1に係る本件補正は、いわゆる限定的減縮を目的とするものと認められる。 3.独立特許要件について 上記第2 2.に記載したとおり、請求項1に係る本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、請求項1に係る本件補正が、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものか否かについて以下検討する。 (1)請求項1に係る発明 本件補正により補正された明細書(以下、「補正明細書」という。)の請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 次の交互構造単位: -[DM-AM]- を有する残基を少なくとも30mol%含むフッ素含有コポリマーであって、 ここでDMは、次の構造(I): ![]() を有するドナーモノマー由来の残基を表し、 ここでR^(1)は、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(4)のアルキルである;R^(2)は、メチル、直鎖、環状または分岐鎖のC_(1)?C_(20)アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される;そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し;ここで該コポリマーが、少なくとも5重量%のフッ素を含み、 該ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、イソプレノール、1-オクテン、およびジペンテンからなる群より1つ以上選択され、 該アクセプターモノマーが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ビニルフルオリド、ヘキサフルオロプロピレンおよびその混合物からなる群より1つ以上選択され、そして必要に応じてアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、N-アルキル置換アクリルアミド、アクリロニトリルおよびその混合物からさらに選択され、該アクセプターモノマーが、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドを含む、少なくとも1つの官能基を含み、 ここで該コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する、 フッ素含有コポリマー。」 (2)引用刊行物 刊行物A:米国特許第3380974号明細書(平成18年12月28日付け拒絶理由通知書における引用文献1) (3)引用刊行物の記載事項 本願の優先日より前に頒布されたことが明らかな刊行物Aには、以下のとおりのことが記載されている。 摘示ア 「この発明は、フッ素含有ポリマー、特にテトラフルオロエチレン、イソブチレン及びエチレン性不飽和酸又は酸誘導体に由来する単位を含むコポリマーに関する。」(第1欄10?13行) 摘示イ 「ポリマーは、53-67%の結合したテトラフルオロエチレン、32-44%の結合したイソブチレン、0.01-12%の、以下に特に詳細に定義される重合可能な酸性化合物又はその誘導体、そして任意に、0-11%の、以下にさらに詳述されるエチレン性不飽和化合物から選ばれる4番目の成分を含む3元及び4元のコポリマーである。ここで使われるパーセントの数字は、ここ及び全体にわたって重量パーセントの値である。」(第1欄41?48行) 摘示ウ 「 例1 400mlの銀で内張りされた振とう管に、0.3gのベンゾイルパーオキサイド、5ml(5.3g)のアクリル酸及び200mlの脱酸素された蒸留水が入れられた。管は、アセトンと固体二酸化炭素の混合物で冷却され、真空にされ、そこに60gのテトラフルオロエチレンと25gのイソブチレンが入れられた。水が振とう管に注入され、管は振とうされながら、80℃で内部圧2100p.s.i.(ポンド毎平方インチ)ほどまで加熱された。管は、必要なら水を注入することにより再加圧されながら、80℃で1900-2100p.s.i.で12時間加熱された。そして冷却されて、揮発性物質が脱気された。」(第4欄38?51行) 摘示エ 「 例4 テトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸コポリマーが例2-Aの方法によって用意された。混合機中で攪拌しながら粗生成物をメタノールで洗浄し、ひき続きろ過及び乾燥することによって精製された。」(第6欄62?68行) 摘示オ 「 例13 50gのテトラフルオロエチレンと50gのイソブチレンとの混合物、1gのアクリル酸、0.3gのベンゾイルパーオキサイド、100mlの水及び100mlのtert-ブチルアルコールが、例1の方法で処理され、そして生成物が例4の方法で精製された。93℃の粘着温度を有する54.7gのテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸コポリマーが得られた。・・・このコポリマーは45.01%のフッ素を含み、・・・この分析結果は、59.2/39.4/1.4のテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸重量比に相当する。」(第8欄7?31行) (4)刊行物に記載された発明 刊行物Aには、摘示ア?オからみて、「テトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸コポリマーであって、59.2/39.4/1.4のテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸重量比であり、45.01重量%のフッ素を含むコポリマー」の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。 (5)対比 補正発明1と刊行物発明とを対比する。 刊行物発明の「テトラフルオロエチレン」、「イソブチレン」及び「アクリル酸」は、補正発明1の「アクセプターモノマーとしてのテトラフルオロエチレン」、「ドナーモノマーとしてのイソブチレン」及び「アクリル酸」に、それぞれ相当することは明らかである。 そして、刊行物発明のコポリマーは、59.2/39.4/1.4のテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸重量比を有するものであり、この重量比をモル比に換算すると、テトラフルオロエチレン、イソブチレン及びアクリル酸の分子量がそれぞれ100、56及び72であることから、45.0/53.5/1.5のテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸コポリマーmol%比を有するものと計算され、結局、53.5mol%のイソブチレン単位を含むものであることから、補正発明1の「コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する」と重複一致するものである。 さらに、刊行物発明の「アクリル酸」が、補正発明1の「アクセプターモノマーが、カルボン酸を含む、少なくとも1つの官能基を含む」に相当することも明らかである。 また、刊行物発明のコポリマーは45.01重量%のフッ素を含むものであることから、補正発明1の「コポリマーが、少なくとも5重量%のフッ素を含み」と重複一致するものである。 そして、刊行物発明のコポリマーは、「テトラフルオロエチレン」と「イソブチレン」と「アクリル酸」とが共重合しているものであるから、「テトラフルオロエチレン」に由来する単位と「イソブチレン」に由来する単位との交互構造単位を有する残基を含むことも明らかであるといえる。 したがって、補正発明1と刊行物発明とは、「次の交互構造単位: -[DM-AM]- を有する残基を含むフッ素含有コポリマーであって、 ここでDMは、次の構造(I): ![]() を有するドナーモノマー由来の残基を表し、 ここでR^(1)は、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(4)のアルキルである;R^(2)は、メチル、直鎖、環状または分岐鎖のC_(1)?C_(20)アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される;そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し;ここで該コポリマーが、少なくとも5重量%のフッ素を含み、 該ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、イソプレノール、1-オクテン、およびジペンテンからなる群より1つ以上選択され、 該アクセプターモノマーが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ビニルフルオリド、ヘキサフルオロプロピレンおよびその混合物からなる群より1つ以上選択され、そして必要に応じてアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、N-アルキル置換アクリルアミド、アクリロニトリルおよびその混合物からさらに選択され、該アクセプターモノマーが、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドを含む、少なくとも1つの官能基を含み、 ここで該コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する、 フッ素含有コポリマー。」の点で一致し、次の相違点で一応相違する。 <相違点> 交互構造単位:-[DM-AM]-を有する残基の含有量について、補正発明1では、少なくとも30mol%含むと規定されているのに対し、刊行物発明では、その点が明記されていない点。 (6)相違点に対する判断 補正発明1において規定する「交互構造単位: -[DM-AM]- を有する残基を少なくとも30mol%含むフッ素含有コポリマー」を製造することに関して、補正明細書には、「本発明の交互性コポリマーは、以下の工程を包含する方法により、調製される:(a)構造Iの1種またはそれ以上のドナーモノマーを含有するドナーモノマー組成物を提供する工程;(b)1種またはそれ以上のアクセプターモノマーを含有するエチレン性不飽和モノマー組成物を(a)と混合して、全モノマー組成物を形成する工程;および(c)遊離ラジカル開始剤の存在下にて、該全モノマー組成物を重合させる工程。本発明の実施態様では、このエチレン性不飽和モノマー組成物には、前述で定義されたような、構造CR^(4)_(2)=CR^(3)R^(5)のモノマーが挙げられる。」(段落【0052】)と記載されている。 これに対して、刊行物発明に係るコポリマーを製造するに際しては、「50gのテトラフルオロエチレンと50gのイソブチレンとの混合物、1gのアクリル酸」の混合物を、「0.3gのベンゾイルパーオキサイド」の存在下で重合させるものであり(摘示ウ及びオ)、刊行物Aにおける「テトラフルオロエチレン」、「イソブチレン」及び「ベンゾイルパーオキサイド」が、補正明細書における「アクセプターモノマー」、「ドナーモノマー」及び「遊離ラジカル開始剤」にそれぞれ相当することは明らかであるから、コポリマーの製造方法の点で刊行物Aにおけるものと補正明細書におけるものとで差異は見当たらない。 また、同じく、補正明細書には、「本発明の方法の実施形態では、構造Iのモノマーは、アクセプターモノマーの量に基づいて、モル過剰で存在している。所望の交互構造の形成を促すために、本発明では、構造Iの過剰モノマーの任意の量が使用され得る。構造Iのモノマーの過剰量は、アクリルアクセプターモノマーの量に基づいて、少なくとも10mol%、ある場合には、25mol%まで、典型的には、50mol%まで、ある場合には、アクリルアクセプターモノマー量に基づいて、100mol%までであり得る。構造Iのモノマーのモル過剰が高すぎるとき、そのプロセスは、商業規模では、経済的ではあり得ない。」(段落【0053】)と記載されており、請求人は平成19年7月3日に提出した意見書において「本発明は、過剰のドナーモノマーを使用することを教示しており、これは、所望の交互の構造を形成することを促進します。」と主張している。 これに対して、刊行物Aにおけるテトラフルオロエチレンとイソブチレンとは共に50gずつ仕込まれている(摘示オ)のであるから、両者の仕込みモル数を計算すると、テトラフルオロエチレンとイソブチレンの分子量がそれぞれ100と56であることから、テトラフルオロエチレンが0.50molでイソブチレンが0.89molと算出され、その結果イソブチレンの方がテトラフルオロエチレンに比べて78mol%過剰に存在していることになるから、過剰のドナーモノマーを使用する点においても、刊行物Aにおけるものと補正明細書におけるものとで差異は見当たらない。 さらに、同じく、補正明細書には、「本発明の方法のさらに他の実施態様では、この構造CR^(4)_(2)=CR^(3)R^(5)を有するモノマーは、その全モノマー組成の少なくとも15mol%、ある場合には、17.5mol%まで、典型的には、少なくとも20mol%、ある場合には、25mol%の量で存在している。このCR^(4)_(2)=CR^(3)R^(5)モノマーは、さらに、その全モノマー組成の50mol%まで、ある場合には、47.5mol%まで、典型的には、45mol%まで、ある場合には、40mol%までの量で、存在し得る。使用されるCR^(4)_(2)=CR^(3)R^(5)モノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。これらのCR^(4)_(2)=CR^(3)R^(5)モノマーは、このモノマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。」(段落【0054】)と記載されている。 これに対して、刊行物Aにおけるテトラフルオロエチレン、イソブチレン及びアクリル酸の仕込みモル比を計算すると、上記の量に加えて、分子量72のアクリル酸を1g加えていることから、35.5/63.5/1.0のテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸モノマーmol%比と算出され、テトラフルオロエチレンが全モノマー組成の35.5mol%の量で存在していることになるから、アクセプターモノマーの仕込みモル比の点においても、刊行物Aにおけるものと補正明細書におけるものとで差異は見当たらない。 そうすると、コポリマーを製造する方法において、刊行物Aにおけるものと補正明細書におけるものとで差異は見当たらないし、刊行物Aにおいても過剰のドナーモノマーを使用していることから、請求人も主張しているとおり、所望の交互構造、すなわち補正発明1における「交互構造単位:-[DM-AM]-」が形成されているということができるし、その含有量についても、刊行物Aに係るコポリマーは、上記のとおり、45.0/53.5/1.5のテトラフルオロエチレン/イソブチレン/アクリル酸コポリマーmol%比を有するものと計算され、テトラフルオロエチレン及びイソブチレン共に、30mol%よりも15mol%以上大きな値を有するものであることから、当該交互構造単位が全体に対して少なくとも30mol%含んでいる蓋然性が高いということができる。 してみると、相違点は実質的な相違点ではない。 (7)まとめ したがって、補正発明1は、その出願の優先日前日本国内において頒布された刊行物である刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 4. むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反しており、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 原査定の妥当性についての判断 1.本願発明 上記のとおり、平成20年6月16日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1?25に係る発明は、平成19年7月3日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 次の交互構造単位: -[DM-AM]- を有する残基を少なくとも30mol%含むフッ素含有コポリマーであって、 ここでDMは、次の構造(I): ![]() を有するドナーモノマー由来の残基を表し、 ここでR^(1)は、直鎖または分岐鎖のC_(1)?C_(4)のアルキルである;R^(2)は、メチル、直鎖、環状または分岐鎖のC_(1)?C_(20)アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される;そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し;ここで該コポリマーが、少なくとも5重量%のフッ素を含み、 該ドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、イソプレノール、1-オクテン、およびジペンテンからなる群より1つ以上選択され、 該アクセプターモノマーが、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ビニルフルオリド、ヘキサフルオロプロピレンおよびその混合物からなる群より1つ以上選択され、そして必要に応じてアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、N-アルキル置換アクリルアミド、アクリロニトリルおよびその混合物からさらに選択され、該アクセプターモノマーが、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、イソシアネート、キャップ化イソシアネート、アミド、アミン、アセトアセテート、メチロール、メチロールエーテル、オキサゾリンカルバメート、およびβ-ヒドロキシアルキルアミドを含む、少なくとも1つの官能基を含む、 フッ素含有コポリマー。」 2.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、引用文献1(米国特許第3380974号明細書)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものを含むものである。 3.引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明 引用文献1は、上記第2 3.(2)の刊行物Aと同じであるから、引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明は、上記第2 3.(3)及び(4)に記載したとおりである。 以下、引用文献1に記載された発明を刊行物発明ともいう。 4.対比 本願発明1と刊行物発明とを対比する。 本願発明1は、上記第2 2.に記載したとおり、補正発明1から、フッ素含有コポリマーについて、「該コポリマーの構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成する」との発明特定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する補正発明1が、前記第2 3.に記載したとおり、刊行物発明と同一であるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物発明と同一である。 第4 請求人の主張の検討 請求人は、平成19年7月3日に提出した意見書において、「引用文献1は、過剰のアクセプターモノマーを使用することのみを教示しています。対照的に、本発明は、過剰のドナーモノマーを使用することを教示しており、これは、所望の交互の構造を形成することを促進します。引用文献1では、本発明のような交互構造のポリマーは作製されておらず、本発明とは異なります。」と主張している。 しかしながら、上記「第2 3.(6)」で述べたとおり、引用文献1(刊行物A)におけるテトラフルオロエチレンとイソブチレンとの仕込みモル数を計算すると、テトラフルオロエチレンが0.50molでイソブチレンが0.89molと算出され、その結果イソブチレンの方がテトラフルオロエチレンに比べて過剰に存在している、すなわち、過剰のドナーモノマーを使用していると認められるのであるから、この点において両者に差異はなく、結局のところ、引用文献1においても交互構造のポリマーが作製されているといわざるを得ない。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 また、請求人は、審判請求書の請求の理由において、「本願発明は、ドナーモノマーおよびアクセプターモノマーの交互構造単位を少なくとも30mol%含むフッ素含有コポリマーであって、このコポリマーのドナーモノマーについての構造単位(I)が、コポリマーの少なくとも30mol%を構成することを特徴としていますが、引用文献1の構造単位(I)に対応する部分であるイソブチレンの量は、10.5mol%にすぎません。 引用文献1のコポリマーに組み込まれるイソブチレンのmol%を、全てのテトラフルオロエチレンおよびアクリル酸が反応してコポリマーを形成すると推定して、計算しました。 テトラフルオロエチレン、イソブチレン、およびアクリル酸の反応によって得られた反応生成物の重量は、54.7g(0.57mol)です。モル数を以下のように計算しました。 テトラフルオロエチレン 50g/100mw=0.5mol アクリル酸 1g/72mw=0.01mol イソブチレン 3.7g/56mw=0.06mol イソブチレンの量は、(0.06mol/0.57mol)×100=10.5mol%です。」と主張している。 しかしながら、上記「第2 3.(6)」で述べたとおり、引用文献1(刊行物A)のコポリマーは、摘示オに記載のとおり、その成分比の分析結果が示されているのであって、その分析結果から当該コポリマーに組み込まれるイソブチレンは、53.5mol%と計算されるから、請求人の上記主張ないし上記計算は誤りであるし、そもそも請求人が上記計算で使用したモノマー量としての「イソブチレン 3.7g」が何を根拠とした数字であるのか全く不明である。(引用文献1の例13においては、摘示オのとおり、「50gのイソブチレン」が用いられている。) したがって、請求人の上記主張も採用することができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1、すなわち、平成19年7月3日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての原査定の理由1は、妥当なものである。 したがって、他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-05-31 |
結審通知日 | 2011-06-01 |
審決日 | 2011-06-14 |
出願番号 | 特願2003-569698(P2003-569698) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C08F)
P 1 8・ 572- Z (C08F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中川 淳子、大熊 幸治 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
藤本 保 小野寺 務 |
発明の名称 | イソブチレンおよびフルオロモノマー由来のポリマー |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 安村 高明 |