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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C21D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C21D
管理番号 1245892
審判番号 不服2010-3838  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-23 
確定日 2011-10-24 
事件の表示 特願2001-217611「高周波焼入方法及び冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月29日出願公開、特開2003- 27131〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月18日の出願であって、平成21年11月9日付で手続補正がなされ、平成21年11月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成22年2月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

結論
平成22年2月23日付けの手続補正を却下する。

理由
1.補正の内容
「本件補正」は、特許請求の範囲を、以下の(1)から(2)とする補正を含む。

(1)
「【請求項1】 リング状部材の温度上昇を抑制するための補助冷却装置であって、中空で円柱状の本体部と、該本体部の上部外周面に形成されたリング状接触部とを有し、前記リング状部材を下方から支える支持台と、該リング状部材の上部開口を塞ぐ蓋とを備え、前記本体部は、その内部に、補助冷却液が流れる液路が形成されたものであり、且つ、その下部に、前記液路を流れる補助冷却液が流入する流入口が形成されたものであり、且つ、その上部に、前記液路を流れてきた補助冷却液が噴出する噴出口が形成されたものであり、前記支持台は、前記リング状部材の下端面の一部と内周面の下部とに直接に接触して該リング状部材を支えて固定させるものであり、さらに、前記支持台は、前記リング状部材の内周面に噴射されて接触した補助冷却液が排出される排出孔が形成された底壁を有するものであることを特徴とする補助冷却装置。
【請求項2】 リング状部材の内周面と外周面を高周波焼入れする高周波焼入方
法において、前記リング状部材の内周面に向き合う位置に誘導加熱コイルを配置して、この内周面を焼入温度に誘導加熱して急冷し、その後、前記リング状部材の下端面が下に向き、この下端面を下方から支持台で支持すると共に、該リング状部材の外周面に向き合う位置に誘導加熱コイルを配置し、前記下端面とは反対側の上端面開口に蓋をし、前記リング状部材の内周面に補助冷却液を噴射してその温度上昇を抑制しながら、外周面を前記誘導加熱コイルで所定の焼入温度に誘導加熱して急冷することを特徴とする高周波焼入方法。」

(2)
「【請求項1】 リング状部材の内周面を補助冷却してその温度上昇を抑制すると共に前記リング状部材の外周面を急冷するための補助冷却装置であって、中空で円柱状の本体部と、該本体部の上部外周面に形成されたリング状接触部とを有し、前記リング状部材を下方から支える支持台と、該リング状部材の上部開口を塞ぐ蓋とを備え、前記本体部は、その内部に、補助冷却液が流れる液路が形成されたものであり、且つ、その下部に、前記液路を流れる補助冷却液が流入する流入口が形成されたものであり、且つ、その上部に、前記液路を流れてきた補助冷却液が前記内周面に向かって噴出する噴出口が形成されたものであり、前記支持台は、前記リング状部材の下端面の一部と内周面の下部とに直接に接触して該リング状部材を支えて固定させるものであり、さらに、前記支持台は、前記リング状部材の内周面に噴射されて接触した補助冷却液が貯められる凹部が形成された側壁と、前記凹部に貯められた補助冷却液が下方に排出される排出口とが形成された底壁とを有するものであることを特徴とする補助冷却装置。」

(合議体注:下線部は補正箇所を示す。)

2.当審の判断
本件補正は、請求項1に記載された「補助冷却装置」について、補正前の「リング状部材の温度上昇を抑制するため」のものから「リング状部材の内周面を補助冷却してその温度上昇を抑制すると共に前記リング状部材の外周面を急冷するため」のものへと変更する事項を含む。
しかし、補正前の「リング状部材の温度上昇を抑制するため」とは、焼入れされた内周面の温度上昇を抑制するという課題に対するものであるのに対して、補正後の「リング状部材の内周面を補助冷却してその温度上昇を抑制すると共に前記リング状部材の外周面を急冷するため」とは、「前記リング状部材の外周面を急冷する」という新たな課題にも対応するものであるから、本件補正の前後で請求項1に記載された発明の解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
また、本件補正は、請求項1に記載された「支持台」について、補助冷却液が「貯められる凹部が形成された側壁・・・を有するとの限定を付加する事項を含む。
しかし、補正前の補正前のいずれの請求項にも「凹部」に関する記載はないばかりでなく、凹部を形成する側壁という発明特定事項もないのであるから、補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の限定であるとはいえない。
したがって、このような補正は、特許法第17条の2第4項第2号の規定でいう「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」には該当しない。また、特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除、同第3号に規定された誤記の訂正、同第4号に規定された明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。
よって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)について
1.本願発明
本願補正は、上記第2のとおり却下されたから、本願発明は、平成21年11月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】 リング状部材の温度上昇を抑制するための補助冷却装置であって、中空で円柱状の本体部と、該本体部の上部外周面に形成されたリング状接触部とを有し、前記リング状部材を下方から支える支持台と、該リング状部材の上部開口を塞ぐ蓋とを備え、前記本体部は、その内部に、補助冷却液が流れる液路が形成されたものであり、且つ、その下部に、前記液路を流れる補助冷却液が流入する流入口が形成されたものであり、且つ、その上部に、前記液路を流れてきた補助冷却液が噴出する噴出口が形成されたものであり、前記支持台は、前記リング状部材の下端面の一部と内周面の下部とに直接に接触して該リング状部材を支えて固定させるものであり、さらに、前記支持台は、前記リング状部材の内周面に噴射されて接触した補助冷却液が排出される排出孔が形成された底壁を有するものであることを特徴とする補助冷却装置。」

2.原査定の理由の概要
原審における拒絶査定(以下、「原査定」という。)の理由は、概略、以下のものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開平11-236619号公報
刊行物2:特開平11-61264号公報
(以下、刊行物1?2を「引用例1?2」という。)

3.引用例とその記載事項
(1)引用例1:特開平11-236619号公報
〔1a〕「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばブルドーザのような建設機械などに使用される履帯ブッシュおよびその製造方法に関する」
〔1b〕「【0013】また、本発明による履帯ブッシュの製造方法は、鋼からなる履帯ブッシュ素材を外周面側からの高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材の内周表面温度を焼入れ処理可能な温度に加熱した後に、(1)内周面からの冷却を先行して実施し、(2)かつ、内周面からの冷却を実施しながら、外周面からの加熱を行い、(3)次に、外周面からの冷却を施す一連の1回の焼入れ作業によって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成して、両焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を形成することを特徴とするものである。」
〔1c〕「【0021】・・・なお、前述の本発明の高周波加熱焼入れ法においては、とりわけ、内周面からの加熱焼入れを必要としないことから、内周面高周波加熱用コイルの制作がより困難な小径円筒状部品(小型の履帯ブッシュ)や非常に薄肉な円筒状部品(履帯ブッシュ)を安価に製造することができる。」
〔1d〕「【0027】誘導コイルを用いて履帯ブッシュの一部を移動加熱しながら、前述の内周面を先行して冷却し、かつ内周面からの冷却による外周面側の冷却を抑制するように配置してなる高周波コイルによって加熱し、続いて外周面を冷却する時差焼入れ方法は、焼入れ設備が大がかりにならず、かつ生産の自由度の高い方法である。この場合においても、例えば図1に示されているように履帯ブッシュ上下端面には遮蔽板1、遮蔽キャップ6が配置され、内周面冷却ノズル4が誘導加熱帯を先行冷却するようにして、外周面冷却が時間的遅れを持って行われるようにして、かつ履帯ブッシュ3を回転させながら、誘導加熱コイル2、内外周面冷却ノズル4、5を相対的にブッシュ軸方向に移動させて焼入れることが望ましい。」
〔1e〕「【0029】
【実施例】次に、本発明による履帯ブッシュとその製造方法の具体的実施例につき、図面を参照しつつ説明する。
【0030】(実施例1)本実施例で使用した鋼材成分が表1に示され、本実施例に使ったブッシュ形状が図3に示されている。焼入れ装置としては図2に示したような高周波移動焼入れ装置を使用した。なお、本焼入れ装置は外周部からの加熱を行う2段の高周波コイル8、9、ブッシュ内周面を冷却するための内周面冷却用ノズル10と外周面を冷却する外周面冷却用ノズル11とから構成されており、かつ移動加熱冷却は履帯ブッシュ下部から上部に移動焼入れするように行われる。また、内周面冷却用ノズル10はブッシュ内径部での水がブッシュ下部方向に滞留無く流れることを考慮して、内周面法線方向に対して適当な噴射角度を持たせるように構成されており、かつブッシュ下部端には内周面冷却用の冷却水の流れと外周面冷却用の冷却水の流れを仕切るための遮蔽板、ブッシュ上部端には内周面冷却用の冷却水の流れと外周面冷却用の冷却水の流れを仕切るためのキャップがそれぞれ設置されている。」
そして、図1に全体加熱高周波焼入れ装置概略図が示されている。

(2)引用例2:特開平11-61264号公報
〔2a〕【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、例えばブルドーザのような建設機械などに使用される履帯ブッシュおよびその製造方法に関する」
〔2b〕「【0020】誘導コイルを用いて履帯ブッシュの一部を移動加熱しながら、前述の内周面を先行して冷却し、外周面を冷却する時差焼き入れする方法は、焼き入れ設備が大がかりにならず、かつ生産の自由度の高い方法である。この場合においても、例えば図3に示されているように、履帯ブッシュ1の上下端面には遮蔽板4,4’が配置され、内周面冷却ノズル5が誘導加熱帯を先行冷却するとともに、外周面冷却ノズル6による冷却が実質的な時間的遅れを持って行われるように配置されて誘導加熱コイル7および内外周面冷却ノズル5,6をブッシュ軸方向に相対的に移動しながら移動焼き入れされることが望ましい。」
そして、図3に、誘導加熱コイルを用いた焼き入れ装置を示す断面図が示されている。

4.当審の判断
(1)引用例1に記載された発明
引用例1には、〔1a〕「履帯ブッシュおよびその製造方法」に関し、〔1c〕の「非常に薄肉な円筒状部品(履帯ブッシュ)を安価に製造する」の記載、〔1e〕の「本実施例に使ったブッシュ形状が図3に示されている」の記載、及び図3から、〔1a〕の「履帯ブッシュ」とは、薄肉の円筒状部品であるといえる。
そして、[1d]の「例えば図1に示されているように履帯ブッシュ上下端面には遮蔽板1、遮蔽キャップ6が配置され、内周面冷却ノズル4が誘導加熱帯を先行冷却するようにして、外周面冷却が時間的遅れを持って行われるようにして、かつ履帯ブッシュ3を回転させながら、誘導加熱コイル2、内外周面冷却ノズル4,5を相対的にブッシュ軸方向に移動させて焼入れることが望ましい。」の記載から、図1に示された全体加熱高周波焼入れ装置は、履帯ブッシュを焼入れする際に使用する装置であって、履帯ブッシュ上下端面に遮蔽板1、遮蔽キャップ6が配置された構成を有しているといえる。
また、上記[1d]、〔1e〕の記載と図1を併せてみれば、該装置は、「遮蔽板1」と「履帯ブッシュ3を回転させながら、誘導加熱コイル2、内外周面冷却ノズル4、5を相対的にブッシュ軸方向に移動させ」るものの内、「遮蔽板1」を支持する部分(以下、「遮蔽板1」と当該部分を併せて、「履帯ブッシュの下面を支持する台」という。)を有しており、履帯ブッシュの内周面冷却用の水が内周面冷却ノズル4から噴射する構造を有している。
さらに、「ブッシュ内径部での水がブッシュ下部方向に滞留無く流れる」ものであって、かかる水が滞留しないように水が排出される箇所があることは明らかであるから、該装置は、履帯ブッシュの下面を支持する台の下部には排水箇所が存在するといえる。
以上、引用例1に記載される事項について検討した点を本願発明の記載に倣って表現すると、引用例1には、
「薄肉の円筒状部品である履帯ブッシュを焼入れする際に使用する装置であって、
履帯ブッシュの内周面冷却用の水が内周面冷却ノズル4から噴射する構造を有し、
履帯ブッシュ上端面に遮蔽キャップ6が配置され、
履帯ブッシュの下面を支持する台と、さらに、
該台の下部には排水箇所が存在している装置。」
が記載されているといえる。(以下、「引用例1発明」という。)

(2)本願発明と引用例1発明との対比
引用例1発明の「薄肉の円筒状部品である履帯ブッシュ」、「履帯ブッシュ上端面に遮蔽キャップ6が配置され」た構造、「履帯ブッシュの下面を支持する台」は、それぞれ、本願発明の「リング状部材」、「該リング状部材の上部開口を塞ぐ蓋とを備え」、「前記リング状部材を下方から支える支持台」に相当する。
そして、引用例1発明は、「内周面冷却ノズル4」から、リング状部材の内周面冷却用の水をリング状部材の中心位置に立設された位置から噴射するものであるから、当然、噴射する水が流入する口、水路及びこの水路からきた水が噴出する口を有していると解される。
してみれば、引用例1発明の「履帯ブッシュの内周面冷却用の水が内周面冷却ノズル4から噴射する構造を有し」は、本願発明の「前記本体部は、その内部に、冷却液が流れる液路が形成されたものであり、且つ、その下部に、前記液路を流れる冷却液が流入する流入口が形成されたものであり、且つ、その上部に、前記液路を流れてきた冷却液が噴出する噴出口が形成されたもの」に相当する。
また、引用例1発明の「該台の下部には排水箇所が存在している」は、本願発明の「前記支持台は、前記リング状部材の内周面に噴射されて接触した冷却液が排出される 」に相当する。
さらに、引用例1発明は、リング状部材である薄肉の円筒状部品である履帯ブッシュを焼入れする際に使用する装置であり、焼入れには冷却の処理装置が伴うから、これは、本願発明の「リング状部材の冷却装置」に相当する。

以上より、両者は、
「リング状部材のための冷却装置であって、
中空で円柱状の本体部と、該本体部の上部外周面に形成されたリング状接触部とを有し、前記リング状部材を下方から支える支持台と、
該リング状部材の上部開口を塞ぐ蓋とを備え、
前記本体部は、その内部に、冷却液が流れる液路が形成されたものであり、且つ、その下部に、前記液路を流れる冷却液が流入する流入口が形成されたものであり、且つ、その上部に、前記液路を流れてきた冷却液が噴出する噴出口が形成されたものであり、
前記支持台は、前記リング状部材の下端面と周面の下部とに直接に接触して該リング状部材を支えて固定させるものであり、さらに、
前記支持台は、前記リング状部材の内周面に噴射されて接触した冷却液が下方より排出される箇所を有するものであることを特徴とする冷却装置。」である点で一致する。

しかしながら、次の点イ?ハで相違する。
イ.「冷却装置」が、本願発明は「温度上昇を抑制するための補助冷却装置」であるのに対し、引用例1発明では、これが不明である点。
ロ.本願発明は、支持台は「冷却液が排出される排出孔が形成された底壁を有する」のに対し、引用例1発明では、これが不明である点。
ハ.本願発明は、支持台がリング状部材と接触する面がリング状部材の下端面の「一部」と「内周面」の下部であるのに対して、引用例1発明では下端面の「全面」と「外周面」の下部である点で相違する。

(3)相違点についての判断
相違点イについて
引用例1の〔1b〕「【0013】また、本発明による履帯ブッシュの製造方法は、鋼からなる履帯ブッシュ素材を外周面側からの高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材の内周表面温度を焼入れ処理可能な温度に加熱した後に、(1)内周面からの冷却を先行して実施し、(2)かつ、内周面からの冷却を実施しながら、外周面からの加熱を行い、(3)次に、外周面からの冷却を施す一連の1回の焼入れ作業によって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成して、両焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を形成する」の記載、特に「内周面からの冷却を実施しながら、外周面からの加熱を行い、次に、外周面からの冷却を施す」の記載からすると、引用例1発明に係る加熱高周波焼入れ装置の使用形態は、内周面の焼入れ後、内周面を冷却しながら外周面を加熱しているから、「リング状部材の(内周面の)温度上昇を抑制するため」のものであるといえるし、また、「冷却」は、焼入れ処理自体のための冷却ではなく、外周面からの加熱に対応して内周面を補完的に行う冷却であるから、補助冷却機能を担っていると解される。
よって、この点は、両者の実質的な差異ではない。

相違点ロについて
引用例2は、引用例1と同様の誘導加熱コイルを用いた焼入れ装置を開示しており(〔2a〕)、その図3では、リング状部材の下端面を支持する治具4’の底部に排水口が設けられている。
したがって、引用例1発明に係るリング状部材の内周面に噴射されて接触した冷却液が下方より排出される箇所として、引用例2の図3に記載されているように(〔2b〕)、補助冷却液が排出される排出孔を底部に形成することは、当業者が容易になし得る事項である。

相違点ハについて
リング状部材の支持台とリング状部材の接触面の関係は、リング状部材を支えて固定するものであるのだから、固定するという作用効果からみて、当該接触面をリング状部材の下端面の一部と内周面の下部とするか、下端面の全部と外周面の下部とするかは、当業者が適宜なし得る設計的事項にとどまる。

したがって、本願発明は、本出願前に国内で頒布された刊行物である引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-23 
結審通知日 2011-08-25 
審決日 2011-09-06 
出願番号 特願2001-217611(P2001-217611)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C21D)
P 1 8・ 121- Z (C21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 義三  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 山本 一正
野田 定文
発明の名称 高周波焼入方法及び冷却装置  
代理人 吉村 勝博  

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