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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1245942
審判番号 不服2008-26817  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-20 
確定日 2011-10-31 
事件の表示 特願2004-166182「移動体通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月15日出願公開、特開2005-348167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成16年6月3日の出願であって,平成20年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年10月20日に審判請求がなされるとともに、平成20年11月19日付けで手続補正がなされ、平成23年2月18日付けで当審において拒絶理由の通知をし、これに対して、平成23年4月12日付けで意見書並びに手続補正書が提出されたものである。
その請求項1に係る発明は,平成23年4月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。)
「通信ネットワークを介して通信を行う通信手段を備えた移動体通信端末であって、
該通信手段で電話の発呼を受信したときに該電話の発呼の発信元に対して応答メールを送信する複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、該応答メールに含める応答内容が互いに異なる自動応答用のメッセージ情報を記憶するメッセージ情報記憶手段と、
該複数種類の自動応答動作モードからいずれか一つを利用者が選択するための自動応答動作モード選択手段と、
該複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応する自動応答用のメッセージ情報を利用者が入力するためのメッセージ情報入力手段と、
該複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、該応答メールを自動送信する曜日及び時間帯を規定する応答時間情報を記憶する応答時間情報記憶手段と、
該複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、該応答時間情報の曜日及び時間帯を利用者が入力するための応答時間情報入力手段と、
計時手段と、
該通信手段で電話の発呼を受信したときに、該自動応答動作モード選択手段で選択されている自動応答動作モードに対応する自動応答用のメッセージ情報を該メッセージ情報記憶手段から読み出し、該自動応答用のメッセージ情報を含む応答メールを、該電話の発呼の発信元の電話番号に対して送信するように、該通信手段を制御する制御手段と、
該自動応答動作モード及び該応答メールを送信しない通常動作モードのいずれかを利用者が選択するための動作モード選択手段とを備え、
上記制御手段は、上記複数種類の自動応答動作モードのいずれかが選択されている場合に、上記計時手段の出力に基づいて、上記自動応答動作モード選択手段で選択されている自動応答動作モードに対応する応答時間情報で規定される曜日及び時間帯にのみ、上記電話の発呼に対する上記応答メールの送信動作を行うように制御することを特徴とする移動体通信端末。 」

2.引用例
(1) 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-80384号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与、以下同様)。

a 「【0006】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、着信に対して直ちに応答できないときに発信者に応答しない理由を、着信者が発声することなくメッセージとして伝達することができる携帯端末およびメッセージ返信方法を提供することにある。」(段落【0006】の記載。)

b 「【0038】
この図2に示す携帯端末10において、マイクロホン221は、ユーザの通話音声等を電気信号(すなわちアナログ音声信号)に変換する。この通話音声のアナログ音声信号は、図示しないアンプにより増幅された後、DSP(Digital Signal Processor)204へ入力する。
【0039】
このときのDSP204は、当該アナログ音声信号を、所定のサンプリングレートでA/D(Analog/Digital)変換する。DSP204は、そのA/D変換により得られたディジタル音声データに対し、トランスポートブロック(TB:Transport Block)毎にCRC(Cyclic Redundancy Check)符号を付加し、チャネル符号化(すなわち誤り訂正符号化)およびインターリーブ処理を施す。なお、トランスポートブロックとは、物理レイヤが処理を行うデータの基本単位(MAC(Medium Access Control)レイヤから物理レイヤにデータが転送される単位)である。さらに、DSP204は、上記インターリーブ処理後のビット系列に対して、チャネル推定のためのパイロットビット等のオーバーヘッドを付加した後、データ変調する。DSP204は、データ変調マッピングされた位相平面上の同相(In-phase)および直交(Quadrature)成分を、それぞれ2階層の拡散符号系列で拡散する。DSP204は、その拡散後のチップデータ系列を、自乗余弦ルートナイキストフィルタで所定帯域(5MHz)に帯域制限した後、D/A(Digital/Analog)変換によりアナログ信号に変換する。そのD/A変換により得られたアナログ信号は、当該DSP204から送信部203へ送られる。
【0040】
送信部(TX)203は、上記DSP204からのアナログ信号を直交変調し、その直交
変調された中間周波数信号をさらに高周波信号(2GHz帯のRF信号)に周波数変換する。そして、送信部203は、その高周波信号を増幅し、その増幅後の高周波信号を、送信信号としてデュープレクサ201へ送出する。
【0041】
デュープレクサ201は、アンテナ共用器である。すなわち、当該デュープレクサ201は、送信信号と受信信号で1本の前記アンテナ200を共用し、アンテナ200からの受信信号を受信部(RX)202に送り、送信部203からの送信信号をアンテナ200へ送出する機能を備えたフィルタ回路により構成されている。
【0042】
受信部202は、アンテナ200およびデュープレクサ201を介して供給された高周波の受信信号を増幅し、その高周波の受信信号を中間周波数の信号に周波数変換し、さらに、その信号を自動利得制御により線形増幅して出力する。この受信部202から出力された信号は、DSP204へ入力する。
【0043】
このときのDSP204は、受信部202からの信号を直交検波(Quadraturedetection)し、その直交検波による同相および直交成分のアナログ信号を所定のサンプリングレートでA/D変換する。DSP204は、そのA/D変換によりディジタル値に変換された同相および直交成分を、自乗余弦ルートナイキストフィルタで帯域制限した後、受信信号の拡散符号と同一の拡散符号により逆拡散することで、伝搬遅延時間の異なる複数のマルチパス成分に時間分離する。さらに、DSP204は、上記時間分離した各パスのデータをコヒーレント(coherent)レイク(Rake)合成し、そのレイク合成後のデータ系列を、テインターリーブおよびチャネル復号(すなわち誤り訂正復号)した後、2値のデータ判定を行って、相手先の端末が送信してきたデータ系列を再生する。そして、DSP204は、その再生したデータ系列を、音声データとその他の通信データに弁別する。
【0044】
音声データは、DSP204によりD/A変換され、さらに図示しないアンプにより増幅された後、スピーカ212へ送られる。スピーカ212は、上記増幅されたアナログ音声信号により駆動される。これにより、通話相手先の端末からの通話音声が、当該スピーカ212から放音されることになる。
【0045】
また、上記DSP204は、上記通信データがどのようなデータであるのかを解析し、その解析結果に応じた処理を行う。例えば、上記通信データがテキストデータである場合、DSP204は、そのテキストデータを制御部205に送る。このときの制御部205は、上記テキストデータを表示部311へ表示する。また例えば、上記通信データが圧縮された画像データである場合、DSP204は、その圧縮画像デー夕を伸張した後、制御部205に送る。このときの制御部205は、その画像データを表示部311へ表示する。さらに例えば、上記通信データが圧縮された音声データである場合、DSP204は、その圧縮音声データを伸張し、スピーカ213或いは212へ出力する。すなわち、上記簡易情報が文字等のテキストデータや画像データである場合、それらメッセージや画像は表示部311の画面上に表示されることになり、簡易情報が音声データである場合、その音声はスピーカ213或いは212から出力されることになる。
【0046】
その他、上記DSP204は、前記呼び出し情報を検出した場合、その呼び出し情報の検出に応じて、着信音信号を生成する。その着信音信号は、図示しないアンプにより増幅された後、スピーカ213へ送られる。スピーカ213は、上記増幅された着信音信号により駆動される。これにより、呼び出し情報に応じた着信音が、当該スピーカ213から放音されることになる。
【0047】
記録部209は、フラッシュメモリなどの記憶保持動作が不要な書き換え可能なメモリからなる。この記録部209は、それぞれユーザが登録した電話番号や電子メールアドレス、住所録、前記簡易情報、返答メッセージ等を記録している。また、記録部209は、当該携帯端末の各種の設定値のうちでユーザが任意に設定可能な値の記録にも使用される。その他、記録部209は、送受信した電子メール等のデータ、画像データ、音声データなど、必要に応じて様々なデータを記録可能となっている。
【0048】
ROM(Read Only Memory)208は、制御部205が各部を制御するための制御プログラムや簡易情報や返答メッセージを扱う際の様々な信号処理を行うための簡易情報処理プログラム、各種の初期設定値、フォントデータなどを記憶している。なお、このROM208は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)のような書き換え可能なROMであってもよい。
【0049】
RAM(Random Access Memory)207は、制御部205が各種のデータ処理を行う際の作業領域や一時保存領域として、随時データを格納する。
【0050】
制御部205は、ROM208に格納されている制御プログラムに基づいて、各部の動作を制御すると共に、各種の演算処理を行う。また、制御部205は、簡易情報処理プログラムに基づいて、操作入力部206からの入力操作に応じた簡易情報(や返答メッセージ)の作成或いは選択、簡易情報の送受信、簡易情報の表示部311への表示やスピーカ213への出力等の制御、RAM207、記録部209等への記録や再生などの各種処理を行う。」(段落【0038】?【0050】の記載。)

c 「【0054】
携帯端末に着信があったときに(S101,Yes)、受信者がその電話を受けるか否かは、所定のキーの操作が行われるか否かによる。所定のキーとは例えば受話キー300である。受話キー300以外の任意のキーが押下されたとき着信電話を受けた(オフフック状態となった)と等価に動作する機能であるエニキーアンサー機能が付属している場合、その機能はOFFとしてあることを前提としている。受話キー300が押下されると、オフフック状態となり、通話に移行する(S103)。そして、通話が終了するまで(S104)、通話が継続される。通話が終了すると、最初のステップS101へ戻る。
【0055】
受話キー300が押されない場合は、特定のキー操作の有無をチェックする(S105)。特定キー動作とは、例えば、ジョグダイアル301の長押しである。但し、これに限るものではない。エニキーアンサー機能がオン状態であっても、エニキーアンサーの対象外のキーが存在すれば、そのキーを、ステップS105の特定のキー操作に利用することが可能である。
【0056】
特定のキー操作が行われたときに(S105,Yes)、当該着信が非通知電話かどうかを判定する(S106)。非通知電話とは、発信者が自己の電話番号等を受信者へ通知することを拒否し、当該電話番号等が受信者へ通知されない発信をいう。非通知電話と判定された場合は(S106,Yes)、ステップS102に戻る。非通知電話の場合には返答メッセージを返信すべき相手が不明だからである。
【0057】
なお、一度、ステップS105からS106に移動し、返答メッセージが返信できないと判断されて(S106,Yes)、ステップ102に戻った場合は、ステップ105の特定のキー操作は無効(受け付けない)にしてもよい。また、返信ができないことを利用者に伝える何らかの表示を行ってもよい。
【0058】
非通知判定だけでなく、ショートメッセージサービスに対応している電話番号か否かをステップS106で判定してもよい。本発明における「ショートメッセージサービス」とは、通常、電話番号を宛先情報として共通の通信事業者間の携帯電話同士の間で比較的短い文字数のメッセージの送受信を行うことができるサービスである。電子メールは通信事業者間を問わず、また、携帯電話にも限らず、電子メールアドレスを宛先情報とする、という点で、ショートメッセージとは異なる。ショートメッセージサービスに対応していないときは、S106でYesとなる。ここで対応をしているかどうかとは、着信があった端末が利用できるショートメッセージサービスと同じサービスを、発呼側の端末が利用することができるかどうかを電話番号から判定することである。電話番号のサービス対応表は記録部209,ROM208に保持しておいてもよい。
【0059】
尚、ステップS106でYesのときは、ステップS102に戻るのではなく、電話を切ってからステップS101に戻り、着信を待ってもよい。
【0060】
ステップS107では、電話(接続)を切る。しかし電話を切るのは、ステップS109でメッセージを送信する前までに行えばよいので、ステップS108で返答メッセージが選択されたときに切っても、あるいは、ステップS109で送信される直前に切ってもよい。
【0061】
ステップS107で電話を切った後、返答メッセージを送信するので、電話を切る前に、その旨を伝える音声を流してもよい。例えば、「ただ今電話に出られません。メッセージを送信いたします」。音声を流す際は、全ての音声が流れ終わってから、電話を切ってもよい。もしくは、上述の選択(S108)、または、送信(S109)に応じて切ってもよい。
【0062】
ステップS107の次は、返答メッセージ選択のためのステップS108に移動する。図4に示されるような返答メッセージ選択画面がステップS108では表示される。、ユーザは、返答メッセージ選択画面において、予め作成、登録された返答メッセージの選択を行う。返答メッセージ選択画面では、ジョグダイアル301で選択(ジョグを回転)してジョグダイアル301を押すことで決定してもよい。返答メッセージに振られたナンバーに対応するキー302を押すことで決定してもよい。また、ジョグダイアル等に、他の機能の操作が割り当てられているときは、ステップS105のキー操作で解除することとする。図の例では、選択肢として「電車」「後でかけます」「会議中」を例として挙げているが、実際の返答メッセージはこれと同じ文字列であっても、あるいは、これに対応するより長い文字列であってもよい。【0063】
ステップS108では、予め設定しておくことで、返答メッセージの選択を自動で行ってもよいし、ステップS108で作成してもよい。選択した情報を次回に自動で送信するかどうかの選択を行ってもよい。この自動送信を行う場合、時間的な制限を持たせてもよい(すなわち、所定の時間の経過後は自動送信の機能を解除する)。あるいは、選択肢の表示の際には、選択肢の選択の履歴に応じて選択肢を並べ書えてもよい(例えば頻度順)。
【0064】
ステップS108で返答メッセージを選択した後は、ステップS109に移動する。では、ステップS108で選択された返答メッセージを本文にして、相手の電話番号を宛先にして、ショートメッセージを送信する。ステップS109で送信を行った後に、ステップS101に戻り、着信を待つ。
【0065】
以上ではメッセージとしてショートメッセージを例として説明したが、ショートメッセージ返信の代わりに、ステップS109においてメッセージを電子メール(e-mail)で返信してもよい。この場合、相手の電話番号を用いて記録部209に格納されている電話帳(アドレス帳)を検索し、相手の電子メールアドレスを確認する。ステップS109では、S108で選ばれた情報を本文やサブジェクト、または本文とサブジェクトの両方に入れて、確認されたアドレスに電子メールを送信する。尚、ステップS108では、本文用の情報とサブジェクト用の情報を両方選べるようにしてもよいし、サブジェクトに関しては、「電話保留の件」のような情報を自動で入れてもよい。もちろん、本文も自動でもよいし、それぞれ作成してもよい。」(段落【0054】?【0065】の記載。)

上記a?cの記載事項から、引用例1には、
「携帯端末において、記録部、ROM、制御部を備え、
記録部は、それぞれユーザが登録した電話番号や電子メールアドレス、住所録、簡易情報、返答メッセージ等を記録し、
ROMは、制御部が簡易情報や返答メッセージを扱う際の様々な信号処理を行うための簡易情報処理プログラムなどを記憶し、
制御部は、簡易情報処理プログラムに基づいて、操作入力部からの入力操作に応じた簡易情報や返答メッセージの作成或いは選択、簡易情報の送受信などの各種処理を行うもので、
携帯端末に着信があったときに、特定のキー操作が行われたときに、電話を切るステップと、
電話を切った後、返答メッセージを送信するため、次のステップにおいて、返答メッセージ選択のため返答メッセージ選択画面が表示され、ユーザは、返答メッセージ選択画面において、予め作成、登録された「電車」「後でかけます」「会議中」等の返答メッセージの選択を行うもので、
この返答メッセージ選択のステップは、予め設定しておくことで、返答メッセージの選択を自動で行ってもよいし、また、このステップで返答メッセージを作成してもよく、さらに、選択した情報を次回に自動で送信するかどうかの選択を行っても良く、
また、この自動送信を行う場合、時間的な制限(すなわち、所定の時間の経過後は自動送信の機能を解除する)を持たせてもよいものであり、
そして、次のステップでは、選択された返答メッセージを本文にして、相手の電話番号に基づく宛先に対して、ショートメッセージまたは電子メールを送信する、
携帯端末。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(2) 引用例2
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-64218号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

d 「本発明の目的は、スケジュールを参照して適切な応答メッセージを着信側から発呼側へ送信が可能な携帯端末装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、無線電話網との接続を行う通信手段と、少なくとも時間を指定して作成された1又は複数のスケジュールが登録された記憶手段と、前記記憶手段に登録された前記スケジュール毎に対応して設定された応答メッセージを記憶する不揮発性メモリと、着信時の時刻が前記記憶手段に登録された前記スケジュールの1つの設定時間帯に含まれるとき、前記通信手段を介して回線接続を行い、前記着信時刻に対応する前記スケジュールの内容に最適な応答メッセージを前記不揮発性メモリから選択して送信する制御手段を備えることを特徴とする携帯端末装置を提供する。
」(【0007】?【0008】の記載。)

e 「図3に示すように、スケジュール300は、日付301、開始時間302a、終了時間302b、カテゴリ303、タイトル304、及び応答メッセージ305を備えて構成されている。カテゴリ303は、「会議」、「営業」、「作業」、「移動」、「プライベート」等であり、タイトル304は「グループ会議」、「ミーティング」、「××へ移動」、「打ち合わせ」、「○○会社へ営業」、「宴会」、「英会話学校」等である。カテゴリ303の内容に応じて適切な内容の応答メッセージ305が設定されるカテゴリ303の内容が同じであれば、応答メッセージ305の内容も同じになる。例えば、カテゴリ305(審決注:「303」の誤記と認める。)が「会議」であれば、応答メッセージ305は、同じ「只今、会議中のため、電話に出られません」になる。この応答メッセージ305とカテゴリ303との対応は、予め携帯端末装置1の製造メーカー側で用意されるほか、ユーザが独自に作成することもできる。ただし、自作したカテゴリに対しては、ユーザにより応答する応答メッセージを指定又は新たに作成する必要がある。」(【0017】の記載。)

f 「【0023】
一方、着信時刻が含まれるスケジュール設定がRAM16内に存在したとき、CPU部15は着信に対して応答する(S204)。ここで、着信時刻が「「1日」の11時12分であったとする。図3を参照すると、11時12分に含まれるスケジュールが、10:00?12:00にカテゴリ「会議」でタイトル「グループ会議」のスケジュールに存在する。そこで、CPU部15は、着信時刻に跨るスケジュールのカテゴリ「会議」に対応する応答メッセージ「只今、会議中のため、電話に出ることができません」をROM17から読み出し(S205)、周辺制御回路14へ出力する。
【0024】
周辺制御回路14はCPU部15から応答メッセージの送信を指示されると、応答メッセージを基地局へ送信できる形式の信号に処理し、この信号を変復調部13へ出力する。変復調部13は、周辺制御回路14からの信号を変調し、無線部12へ出力する。無線部12はCPU15から回線接続の指示があると、変復調部13からの信号に周波数変換や電力増幅を施した後、アンテナ11から電波として送信することで、基地局との接続を行い、回線接続後に、応答メッセージを送信する(S206)。応答メッセージの送信が終了すると、CPU部15は周辺制御回路14に対して回線の切断を指示し、この指示を受けた周辺制御回路14は回線切断用の信号を生成し、これを変復調部13へ送出する。変復調部13は回線切断用の信号を変調して無線部12に送り、無線部12では変調された回線切断用の信号を基地局へ送信することで、回線が切断され(S207)、着信応答処理が終了する。
【0025】
このように、着信者が会議等で電話に出られない場合でも、予め設定したカテゴリが着信時間に含まれるとき、自動的に着信応答がなされ、回線接続後に設定したカテゴリに応じた適切な応答メッセージが自動的に送信されるので、発呼者は着信者が会議中等であることを応答メッセージの内容から把握できるため、通話が出来なくとも着信者の置かれた状況を理解することが可能になる。
【0026】
上記実施の形態においては、図3に示すように、設定したメッセージの時間帯に着信があれば、どの発呼者に対しても当該メッセージが送信される。したがって、着信者がメッセージを送りたくない発呼者に対してもメッセージが送られてしまうことになる。そこで、図5に示すように、応答の可否(応答可否401)をユーザ(着信者)が予め設定(Yes→“Y”,No→“N”)できるようにしておけば、メッセージを送りたくないときには送信を拒否することができる。Yes,No等の指定のほか、時間(応答可時間402)で指定することもできる。
【0027】
或いは、指定した相手からの着信に対してのみメッセージを送るようにすることもできる。それには、図6のように、応答指定501の欄を設け、応答したい相手の電話番号を予め指定できるようにすればよい。」(段落【0023】?【0027】の記載。)

(3) 引用例3
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-331369号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

g 「【0007】さらに、緊急の用件やユーザの状況と発信相手によっては確実に通知をして欲しい場合があるが、上記マナーモードやドライブモードが設定されていると、その通知を見過ごしてしまうことが少なくなかった。
【0008】なお、ユーザの状況に応じて通知制御を行うものとして、上述した公報に開示されているように、ユーザの通話状態に応じてアラーム通知を制御するものがある。しかし、これは単にスケジュールに設定されたアラームの時刻にアラーム通知を行うものであって、例えば会議中とか勤務中といったように、ユーザ個人ののスケジュール内容にまで関連付けて通知制御を行うものではない。
【0009】本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、ユーザ個人のスケジュール内容に関連付け、アラーム時刻や着呼時など、通知が必要なときに、そのときのユーザの状況に適した通知方法により通知を行うことのできる情報端末装置を提供することを目的とする。」(段落【0007】?【0009】の記載。)

h 「【0033】以上のようにしてユーザが逐一各項目を設定していくこともできるが、予め提供されている項目を利用してスケジュール登録を行うこともできる。すなわち、普段よく使用する設定内容をアイコン化にしておき、スケジュールを登録する際には、ユーザがアイコン49を選択し、これを左側のスケジュール画面に張り付けるだけで登録を済ますことができる。
【0034】提供されるアイコンの一例としては以下のようなものが考えられる。
・睡眠中(重要度レベル5、全面禁止)
・通勤中(重要度レベル2、マナーモードもしくはドライブモード)
・勤務中(重要度レベル3、マナーモード)
・会議中(重要度レベル4、マナーモード)
・指定外の時間帯(重要度レベル1、着信音による通知)
・アラーム通知(通知方法任意)
・発呼指定(発呼を促す、もしくは強制的に指定接続先に発呼する)
・ユーザ設定(任意レベル、任意通知方法)
また、図3に示すように、ユーザは初期設定の重要度レベルおよび通知方法を一括して登録することができ、例えば睡眠中や通勤など、毎日同じ時間帯の行動に対しては登録の手間を減らすことができる。この場合、項目51で曜日、項目52で期間を設定して一括登録を行う。」(段落【0033】?【0034】の記載。)

i 「【0051】このようなスケジュール内容と関連付けた通知制御による具体的な効果としては、例えば毎日ほぼ決まった時間帯に通勤をしている場合に、スケジュール上にその通勤時間帯を登録しておけば、自動的にマナーモードなどに切替えが行われる。これにより、その都度モードを切り替えるといった操作の煩わしさや、切り替え忘れなどを防ぐことができる。
【0052】また、自分の状況と発信相手との重要度比較によって携帯電話機能の着呼時の通知制御を行った場合の効果としては、以下のようなことが考えられる。例えば、15:00?16:00の間に会議があることをスケジュールに登録し、そのスケジュールの重要度レベルを「4」、スケジュール優先の通知方法を「留守番電話」、発信者優先の通知方法を「マナーモード」として設定しておいたとする。このときの設定された内容はスケジュール機能用RAM13に格納される。
【0053】15:00?16:00の時間帯に友人、知人や発信者番号通知無しの相手からの着信があった場合、その着信信号は無線回路21で受信され、通信制御部22を介してCPU11に伝えられる。
【0054】CPU11は、通信制御部22からの着呼信号および発信者番号通知を受けると、電話帳機能用RAM14をアクセスして、発信者番号通知を利用して発信相手の重要度レベルを取得する。これと同時に、CPU11はスケジュール機能用RAM13を参照して、着呼時刻におけるスケジュール登録内容からそのきのスケジュールの重要度レベルを取得する。
【0055】ここで、発信相手の重要度レベルが「2」または「1」であるとすると、スケジュール登録内容である会議に設定された重要度レベル「4」を越えることはないので、スケジュール優先通知として、留守番電話による対応処理が行われる。つまり、両者の重要度レベルを比較した結果、スケジュールの重要度レベルより発信相手の重要度レベルの方が低いと判定されると、CPU11から通知制御部25へ留守番電話処理を実行するように制御命令が発行される。
【0056】また、このとき、仮に上長や取引先からの連絡であった場合には、その発信者番号通知を利用して取得される重要度レベルは「5」であり、スケジュール登録内容の会議に設定してある重要度レベル「4」を越えるため、発信相手優先通知として、マナーモードによりユーザに通知がなされる。つまり、両者の重要度レベルを比較した結果、スケジュールの重要度レベルより発信相手の重要度レベルの方が高いと判定されると、CPU11から通知制御部25へユーザ希望の通知方法(例えばLEDなど)の実行を要求する制御命令が発行される。これにより、通知制御部25でLED制御部31に制御が移されて、LED点滅回路32の点滅が実行され、ユーザへ通知がなされる。」(段落【0051】?【0056】の記載。)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「携帯端末」は、本願発明の「通信ネットワークを介して通信を行う通信手段を備えた移動体通信端末」に相当する。
(2)引用発明の「返答メッセージ」は、「次回に自動で送信する」ことができるものであるから、本願発明の「自動応答用のメッセージ情報」に相当し、当該「返答メッセージ」を記録する「記録部」は、本願発明の「自動応答用のメッセージ情報を記憶するメッセージ情報記憶手段」に相当する。
(3)引用発明の「登録された「電車」「後でかけます」「会議中」等の返答メッセージ」は、本願発明の「応答内容が互いに異なる自動応答用のメッセージ情報」に相当し、引用発明は、「予め作成、登録された「電車」「後でかけます」「会議中」等の返答メッセージの選択を行う」ものであって、さらに、「予め設定しておくことで、返答メッセージの選択を自動で行ってもよい」ものであるため、本願発明の「複数種類の自動応答動作モードからいずれか一つを利用者が選択するための自動応答動作モード選択手段」を備えているといえる。
(4)引用発明は「返答メッセージを作成しても」よいものであって、「操作入力部206からの入力操作に応じた」返答メッセージの作成等の処理をおこなうものであることから、本願発明の「自動応答用のメッセージ情報を利用者が入力するためのメッセージ情報入力手段」を備えることは明らかである。
(5)引用発明は、「自動送信を行う場合、時間的な制限を持たせてもよい」ことから、本願発明の「計時手段」を備えること、そして、「応答メールを自動送信する時間帯を規定する応答時間情報を記憶する応答時間情報記憶手段」を備えることは明らかである。
(6)引用発明は、「簡易情報プログラム」を記憶し、簡易情報処理プログラムに基づいて、操作入力部からの入力操作に応じた簡易情報や返答メッセージの作成或いは選択、簡易情報の送受信などの各種処理を行う「制御部」を備えており、当該「制御部」は、本願発明の「制御手段」に相当する。
(7)引用発明は、「携帯端末に着信があったときに、特定のキー操作が行われたときに、電話を切るステップと、電話を切った後、返答メッセージを送信するため、次のステップにおいて、返答メッセージ選択のため返答メッセージ選択画面が表示され」るため、本願発明の「自動応答動作モード及び該応答メールを送信しない通常動作モードのいずれかを利用者が選択するための動作モード選択手段」を備えている。
(8)引用発明は「自動送信を行う場合、時間的な制限(すなわち、所定の時間の経過後は自動送信の機能を解除する)を持たせてもよい」ことから、本願発明と、「数種類の自動応答動作モードのいずれかが選択されている場合に、計時手段の出力に基づいて、応答時間情報で規定される時間帯にのみ、電話の発呼に対する応答メールの送信動作を行うように制御する」点で共通している。

したがって,本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
通信ネットワークを介して通信を行う通信手段を備えた移動体通信端末であって、
該通信手段で電話の発呼を受信したときに応答メールに含める応答内容が互いに異なる自動応答用のメッセージ情報を記憶するメッセージ情報記憶手段と、
複数種類の自動応答動作モードからいずれか一つを利用者が選択するための自動応答動作モード選択手段と、
該複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応する自動応答用のメッセージ情報を利用者が入力するためのメッセージ情報入力手段と、
該応答メールを自動送信する時間帯を規定する応答時間情報を記憶する応答時間情報記憶手段と、
計時手段と、
該通信手段で電話の発呼を受信したときに、該自動応答動作モード選択手段で選択されている自動応答動作モードに対応する自動応答用のメッセージ情報を該メッセージ情報記憶手段から読み出し、該自動応答用のメッセージ情報を含む応答メールを、該電話の発呼の発信元の電話番号に対して送信するように、該通信手段を制御する制御手段と、
該自動応答動作モード及び該応答メールを送信しない通常動作モードのいずれかを利用者が選択するための動作モード選択手段とを備え、
上記制御手段は、上記複数種類の自動応答動作モードのいずれかが選択されている場合に、上記計時手段の出力に基づいて、応答時間情報で規定される時間帯にのみ、上記電話の発呼に対する上記応答メールの送信動作を行うように制御することを特徴とする移動体通信端末。

(相違点1)
本願発明では、電話の発呼を受信したときに該電話の該電話の発呼の発信元に対して応答メールを送信する複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、自動応答用のメッセージ情報を記憶しているのに対し、引用発明では、複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けては、メッセージ情報を記憶していない点。
(相違点2)
本願発明では、複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、該応答メールを自動送信する曜日及び時間帯を規定する応答時間情報を記憶する応答時間情報記憶手段と、
該複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、該応答時間情報の曜日及び時間帯を利用者が入力するための応答時間情報入力手段を備えるのに対し、引用発明では、応答メールを自動送信する時間帯を規定している応答時間情報を記憶はしているが、本願発明のように、複数種類の自動応答動作モードそれぞれに対応付けて、曜日及び時間帯を規定する応答時間情報を記憶はしておらず、そして、応答時間情報入力手段を備えるかどうかも明らかでない点。
(相違点3)
本願発明では、自動応答動作モード選択手段で選択されている自動応答動作モードに対応する応答時間情報で規定される曜日及び時間帯にのみ、応答メールの送信動作を行うように制御するのに対し、引用発明では、所定の応答時間情報で規定される時間帯にのみ、応答メールの送信動作を行うように制御する点。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると,
(相違点1?3について)
携帯端末装置において、ユーザのスケジュール(日付け、曜日、時間帯等)を入力、設定するとともに、当該スケジュールの状況に応じて、発信元に対してそれぞれ応答動作を変えるようにする(応答を行わないことも含む)ことは、引用例2,3の上記d?iに記載されているように周知の技術であり、また、当該周知技術は、発信元に対しての電話に出られない場合に、自動応答を行うものである点で引用発明と共通している。
そして、応答メールによる自動応答動作を行う引用発明に、当該周知技術を採用し、相違点1?3に係る構成とすることに、格別な点はない。
また、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記引用例2、3に記載された周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、上記引用例2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5.むすび
以上より,本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許をうけることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-23 
結審通知日 2011-08-26 
審決日 2011-09-08 
出願番号 特願2004-166182(P2004-166182)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 誠巳  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 稲葉 和生
近藤 聡
発明の名称 移動体通信端末  
代理人 黒田 壽  
代理人 中村 弘通  

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