• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1245952
審判番号 不服2010-6074  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-19 
確定日 2011-10-31 
事件の表示 特願2004-281195「流体流れエンジン及び案内格子を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-127321〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成16年9月28日の出願(パリ条約による優先権主張2003年10月27日、欧州特許庁)であって、平成21年8月25日付けで拒絶理由が通知され、平成21年11月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月19日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成22年8月4日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成22年12月3日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成22年3月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年3月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)平成22年3月19日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年11月19日付けの手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の以下の(a)に示す請求項1ないし8を、(b)に示す請求項1ないし7に補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
流体流れエンジンであって、
駆動流体を供給する少なくとも1つの供給流路を含むタービンハウジングを形成する手段と、
回転軸線の周りで前記タービンハウジングに回転自在に支持された少なくとも1つのタービンロータと、
前記タービンロータの半径方向外側で該タービンロータを包囲する可変タービン外形の案内格子とを備え、該案内格子は、
羽根空間の一端限界を形成するノズルリング手段と、
前記羽根空間内にある複数の案内羽根であって、各々が、前記供給流路から前記タービンロータまで調節可能量の流体を供給するように旋回軸線の周りで旋回されかつ前記ノズルリングによって支持されている案内羽根と、
前記ノズルリング手段に接続されていて前記羽根を自由に動かす軸方向距離を固定するスペーサ手段であって、前記ノズルリングを貫通する少なくとも1つのボルト手段を含むスペーサ手段と、を含み、
前記ボルト手段は、一端にねじ切り部分を備えて前記ノズルリングにその一端をねじ込むことによってそれ自体がスペーサを形成し、一方、ボルト手段は溶融状態で加えられる温度耐性がある接続材料によって他端において前記羽根空間の軸方向距離で固定されることを特徴とした、流体流れエンジン。
【請求項2】
コンプレッサロータと、前記タービンロータと共通の軸とをさらに備えたターボ過給機として形成された、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項3】
前記ボルト手段は溶接シームによって固定されている、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項4】
前記ボルト手段は両ねじボルトを備えている、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項5】
前記タービンハウジングの一部は前記羽根空間の他端限界を形成するように前記ノズルリングの反対側に配置された装着リングを備えている、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項6】
前記ボルト手段は、前記羽根空間を少なくとも通過する長さにわたって滑らかな外面を有し、例えば、最大25の粗さ数Rz、より好ましくは最大16の粗さ及び/又は回転軸線に少なくともほぼ向かって形成する流線形輪郭を持つ、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項7】
請求項1?6の何れか一項に記載の案内格子を製造する方法であって、少なくとも1つの選択的な着脱自在スペーサが前記ノズルリングと前記タービンハウジングに設けられた一部との間にまず挿入され、該スペーサの長さは所望の公称距離に対応し、次いでボルト又はピン等が所定の距離で固定されるだけであり、その結果、前記スペーサが選択的に取り除かれる、方法。
【請求項8】
前記案内格子はそれを前記タービンハウジングに挿入する以前に最初に事前装着される、請求項7に記載の方法。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
流体流れエンジンであって、
駆動流体を供給する少なくとも1つの供給流路を含むタービンハウジングを形成する手段と、
回転軸線の周りで前記タービンハウジングに回転自在に支持された少なくとも1つのタービンロータと、
前記タービンロータの半径方向外側で該タービンロータを包囲する可変タービン外形の案内格子とを備え、該案内格子は、
羽根空間の一端限界を形成するノズルリング手段と、
前記羽根空間内にある複数の案内羽根であって、各々が、前記供給流路から前記タービンロータまで調節可能量の流体を供給するように旋回軸線の周りで旋回されかつ前記ノズルリングによって支持されている案内羽根と、
前記ノズルリング手段に接続されていて前記羽根を自由に動かす軸方向距離を固定するスペーサ手段であって、前記ノズルリングを貫通する少なくとも1つのボルト手段を含むスペーサ手段と、を含み、
前記ボルト手段は、一端にねじ切り部分を備えて前記ノズルリングにその一端をねじ込むことによってそれ自体がスペーサを形成し、一方、ボルト手段は溶融状態で加えられる温度耐性がある接続材料によって他端において前記羽根空間の軸方向距離で固定され、
前記タービンハウジングの一部は前記羽根空間の他端限界を形成するように前記ノズルリングの反対側に配置された装着リングを備えている、ことを特徴とした、流体流れエンジン。
【請求項2】
コンプレッサロータと、前記タービンロータと共通の軸とをさらに備えたターボ過給機として形成された、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項3】
前記ボルト手段は溶接シームによって固定されている、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項4】
前記ボルト手段は両ねじボルトを備えている、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項5】
前記ボルト手段は、前記羽根空間を少なくとも通過する長さにわたって滑らかな外面を有し、例えば、最大25の粗さ数Rz、より好ましくは最大16の粗さ及び/又は回転軸線に少なくともほぼ向かって形成する流線形輪郭を持つ、請求項1に記載の流体流れエンジン。
【請求項6】
請求項1?5の何れか一項に記載の案内格子を製造する方法であって、少なくとも1つの選択的な着脱自在スペーサが前記ノズルリングと前記タービンハウジングに設けられた一部との間にまず挿入され、該スペーサの長さは所望の公称距離に対応し、次いでボルト又はピン等が所定の距離で固定されるだけであり、その結果、前記スペーサが選択的に取り除かれる、方法。
【請求項7】
前記案内格子はそれを前記タービンハウジングに挿入する以前に最初に事前装着される、請求項6に記載の方法。」(なお、下線部は当審で付したものであり、補正箇所を示す。)

(2)本件補正の目的
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「タービンハウジング」について、「前記タービンハウジングの一部は前記羽根空間の他端限界を形成するように前記ノズルリングの反対側に配置された装着リングを備えている」という事項を追加して限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 本件補正の適否についての判断
本件補正における請求項1に関する補正事項は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-1 特開平10-103070号公報(以下、「引用文献」という。)(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 タービンハウシングの壁と該タービンハウジング壁から隔たっているプレートとの間に可変ノズルベーン回動軸芯まわりに回動可能に配置された可変ノズルベーンと、前記タービンハウジング壁と前記プレートとにわたって延びて前記タービンハウジング壁と前記プレートとの間隔を決定する間隔決定部材と、を有する可変容量ターボチャージャにおいて、前記間隔決定部材は、前記タービンハウジング壁と前記プレートとにわたって延びる軸部と、該軸部よりも軸部半径方向外周側に位置し前記タービンハウジング壁の表面と前記プレートの表面との間で軸部軸方向に延びるスペーサ部と、からなり、前記軸部と前記スペーサ部は軸部軸方向に熱膨張量がほぼ同じとされていることを特徴とする可変容量ターボチャージャ。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可変ノズルタイプの可変容量ターボチャージャに関しする。
【0002】
【従来の技術】ターボチャージャの過給圧制御には、可変ノズルを用いるものと、ウエストゲートバルブを用いるものとがある。可変ノズルタイプのものでは、可変ノズルベーンをタービンホイールの入口に可変ノズルベーン回動軸芯まわりの回動可能に配置し、可変ノズルの開度を変化させタービンホイールに流入する排気ガス速度を変えてタービン回転速度を制御し、タービンの仕事量を制御する。特開昭62-139931号公報には、図5に示すように、可変ノズルベーンの可動性を確保するために、タービンハウジング壁51と可変ノズルを支持するプレート52との間に、ボルト53によって支持された筒状のスペーサ54を配置した構造が開示されている。」(段落【0001】及び【0002】)

(c)「【0007】本発明実施例の可変容量ターボチャージャ1は、図4に示すように、タービン2とコンプレッサ3を有し、タービン2はエンジン排気通路に配置されてエンジン排気ガスのエネルギー(速度エネルギーおよび熱エネルギー)で回転され、コンプレッサ3はエンジン吸気通路に配置され、タービン2によって駆動されて吸気を圧縮してエンジンに過給し、それによってエンジントルク、エンジン出力を増大させる。過給圧(コンプレッサ出口圧)制御は、タービン2のロータ(タービンホイール)4入口に設けた可変ノズルベーン5(傾きが可変の多数のノズルベーンでその傾きを変えることによりノズル開口面積が変化しそれを通過する排気ガスの速度を変化させるノズルベーン)の開度を制御することによって行われる。
【0008】本発明実施例の可変容量ターボチャージャ1は、図1、図2、図4に示すように、可変ノズルベーン5と、可変ノズルベーン5とは別部材からなりタービンハウジング壁7とプレート8との間隔を決定する間隔決定部材9とを有する。可変ノズルベーン5はタービンハウジングの一円周上に多数(たとえば、10枚以上)設けられており、間隔決定部材9はタービンハウジングの一円周上に複数(可変ノズルベーン5の枚数よりは少ない、たとえば、3ケ所)設けられている。
【0009】可変ノズルベーン5は、タービンハウシング6の壁7とタービンハウジング壁7から隔たっているプレート8(可変ノズル5をノズル回動軸芯まわりに回動可能に支持するノズルプレート)との間に可変ノズルベーン回動軸芯まわりに回動可能に配置されている。可変ノズルベーン5の側面(軸方向端面)とタービンハウシング壁7の表面7a(可変ノズルベーン5側の表面)との間、および可変ノズルベーン5の側面(軸方向端面)とプレート8の表面8a(可変ノズルベーン5側の表面)との間には、それぞれ、隙間δ1、δ2があり、この隙間の存在によって、可変ノズルベーン5はタービンハウジング壁7およびプレート8に対して回動可能となっている。
【0010】間隔決定部材9は、タービンハウジング壁7とプレート8とにわたって延びている。間隔決定部材9は、タービンハウジング壁7とプレート8とにわたって延びる軸部9aと、軸部9aよりも軸部半径方向外周側に位置しタービンハウジング壁7の表面7aとプレート8の表面8aとの間で軸部軸方向に延びるスペーサ部9bと、からなる。スペーサ部9bの軸方向両端の端面は、それぞれ、タービンハウジング壁7の表面7aと、プレート8の表面8aに当接され、所定の力で圧接される。軸部9aは、その端部で、タービンハウジング壁7の表面7aを越えてさらに延びタービンハウジング壁7内に突入または挿通しており、かつプレート8の表面8aを越えてさらに延びプレート8を挿通している。」(段落【0007】ないし【0010】)

(d)「【0013】つぎに、本発明の各実施例に特有な構成とその作用を説明する。本発明の第1実施例においては、図1、図2に示すように、間隔決定部材9が、所定の軸方向両端面間距離を有する拡径部10をもつ段付きスタッドボルトから構成される。スタッドボルトの拡径部10の、拡径部以外の部分の外径よりも径が大きい部分が、スペーサ部9bを構成しており、このスペーサ部9b以外の部分(拡径部10の、拡径部以外の部分の外径よりも径が小さい部分を含む)が軸部9aを構成している。したがって、軸部9aとスペーサ部9bとは互いに一体である。この一体構成は、軸部9aとスペーサ部9bとが拡径部10においてほぼ同じ熱膨張量を示す構造を提供する。
【0014】軸部9aの両端部にはねじが形成されている。軸部の一端はタービンハウジング壁7内に突入し、タービンハウジング壁7に形成されたねじ穴にねじ込まれて固定される。軸部9aのタービンハウジング壁7との連結、固定には、排気ガスのねじ穴を通しての外気への洩れを抑制するとともに部品点数の増加を抑える上で、ナット構造を用いないことが望ましい。タービンハウジング壁7のねじ穴が外気へ貫通していない場合で、タービンブレードより上流側で排気通路の2位置間にわたって延びている場合は、ねじ穴を通して排気ガスの多少の洩れがあっても、性能低下などの問題が生じないので、そのようにねじ穴を設けてもよい。スタッドボルトのタービンハウジング壁7への固定においては、拡径部10の端面がタービンハウジング壁7の表面に当たる位置までねじ込むことによって、スタッドボルトは自然にタービンハウジング壁7に対して位置決めされる。したがって、高精度の位置決め治具は不要である。
【0015】軸部9aの他端はプレート8に形成されたボルト穴(ねじが切られていない穴)を挿通して延びており、プレート8を越えた軸部部分にナット11を螺合し、ナット11と拡径部10との間にプレート8をはさみこんでいる。組付においては、タービンハウジング壁7に打ちこまれたスタッドボルトにプレート8をのせてプレート8の表面8aを拡径部10の端面に当接させ、これによってプレート8を自然に拡径部10に対して位置決めし、この状態でスタッドボルトにナット11をしめこむ。したがって、高精度の位置決め治具は不要である。これによって、プレート8の表面8aとタービンハウジング壁7の表面7aとの間隔は拡径部10の軸方向長さに自動的に設定され、その状態でプレート8がスタッドボルトを介してタービンハウジング壁7に固定される。
【0016】拡径部10の軸方向長さは、可変ノズルベーン5両端部間の間隔決定部材軸方向長さに、可変ノズルベーン5両端部とタービンハウジング壁7の表面7aおよびプレート8の表面8aとの間隔δ1、δ2を加えた長さに等しい。いいかえれば、この状態で、可変ノズルベーン5両端部とタービンハウジング壁7の表面7aおよびプレート8の表面8aとの間に隙間δ1、δ2が確保され、この隙間の存在によって、可変ノズルベーン5はタービンハウジング壁7およびプレート8に干渉せずに回動可能となる。」(段落【0013】ないし【0016】)

(e)「【0018】本発明の第2実施例においては、図3に示すように、間隔決定部材9を構成する軸部9aとスペーサ部9bは、互いに別体であり、軸部9aがスタッドボルトからなり、スペーサ部9bは筒状部材からなる。そして、軸部9aとスペーサ部9bが互いに別体のため、エンジン運転時には、排気ガスにさらされるスペーサ部9bの方が軸部9aより高温になるが、スペーサ部9bを構成する材料の熱膨張率α_(s) を軸部9aを構成する材料の熱膨張率α_(r) よりも小さくすることによって、軸部9aとスペーサ部9bの熱膨張量をほぼ同じにすることができる。この場合、エンジン運転時にスペーサ部9bの温度と軸部9aの温度がT_(s) 、T_(r) になるとすると、T_(s) α_(s) =T_(r) α_(r) の関係がほぼ成立するように、スペーサ部9bを構成する材料と軸部9aを構成する材料を選定する。スペーサ部9bを構成する材料の熱膨張率α_(s) を軸部9aを構成する材料の熱膨張率α_(r) よりも小さくする構成が、軸部9aとスペーサ部9bの熱膨張量を互いにほぼ同じにする構成を提供する。」(段落【0018】)

(f)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の可変容量ターボチャージャの可変ノズルベーン近傍の断面図である。
【図2】図1の部分の正面図である。
【図3】本発明の第2実施例の可変容量ターボチャージャの可変ノズルベーン近傍の断面図である。
【図4】本発明の第1、第2実施例に適用可能な可変容量ターボチャージャの全体断面図である。
【図5】従来の可変容量ターボチャージャの可変ノズルベーン近傍の断面図である。
【符号の説明】
1 可変容量ターボチャージャ
2 タービン
3 タービンホイール
6(審決注;「5」の誤記と認める。) 可変ノズルベーン
7 タービンハウジング壁
7a タービンハウジング壁の表面
8 プレート
8a プレートの表面
9 間隔決定部材
9a 軸部
9b スペーサ部
10 拡径部
11 ナット 」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】)

(2)上記(1)(a)ないし(f)及び図面の記載から分かること

(ア)上記(1)(a)ないし(f)及び図面の記載から、引用文献には、可変容量ターボチャージャ1のタービン2が記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(f)及び図面の記載から、引用文献に記載されたタービン2は、エンジン排気ガスを供給する少なくとも1つの入口を含むタービンハウジング6を形成するタービンハウジング壁7と、回転軸線の周りで前記タービンハウジング6に回転自在に支持された少なくとも1つのロータ4と、前記ロータ4の半径方向外側で該ロータ4を包囲する可変タービン外形の可変ノズルベーン5部分とを備え、該可変ノズルベーン5部分は、羽根空間の一端限界を形成するプレート8と、前記羽根空間内にある複数の可変ノズルベーン5であって、各々が、前記入口からロータ4まで調節可能量の排気ガスを供給するように可変ノズルベーン回動軸芯の周りで回動されかつ前記プレート8によって支持されている可変ノズルベーン5と、前記プレート8に接続されていて前記可変ノズルベーン5を自由に動かす軸方向距離を固定する間隔決定部材9であって、前記プレート8を貫通する少なくとも1つの軸部9aを含む間隔決定部材9を含み、前記軸部9aは、一端にねじを備えて前記プレート8にその一端を挿通することによってそれ自体がスペーサを形成し、一方、軸部9aは他端において前記羽根空間の軸方向距離で固定されている、タービン2であることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「タービン2であって、
排気ガスを供給する少なくとも1つの入口を含むタービンハウジング6を形成するタービンハウジング壁7と、
回転軸線の周りで前記タービンハウジング6に回転自在に支持された少なくとも1つのロータ4と、
前記ロータ4の半径方向外側で該ロータ4を包囲する可変タービン外形の可変ノズルベーン5を含む部分とを備え、該可変ノズルベーン5を含む部分は、
羽根空間の一端限界を形成するプレート8と、
前記羽根空間内にある複数の可変ノズルベーン5であって、各々が、前記入口からロータ4まで調節可能量の排気ガスを供給するように可変ノズルベーン回動軸芯の周りで回動されかつ前記プレート8によって支持されている可変ノズルベーン5と、
前記プレート8に接続されていて前記可変ノズルベーン5を自由に動かす軸方向距離を固定する間隔決定部材9であって、前記プレート8を貫通する少なくとも1つの軸部9aを含む間隔決定部材9と、を含み、
前記軸部9aは、一端にねじを備えて前記プレート8にその一端を挿通することによってそれ自体がスペーサを形成し、一方、軸部9aは他端において前記羽根空間の軸方向距離で固定されている、タービン2。」

2-2 本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明における「流体流れエンジン」とは、「タービン又は二次空気ポンプのような流体流れエンジン」を意味する(明細書の段落【0001】を参照)。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明における「タービン2」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「流体流れエンジン」に相当し、以下同様に、「排気ガス」は「駆動流体」に、「入口」は「供給通路」に、「タービンハウジング6」は「タービンハウジング」に、「タービンハウジング壁7」は「手段」に、「ロータ4」は「タービンロータ」に、「可変ノズルベーン5を含む部分」は「案内格子」に、「プレート8」は「ノズルリング手段」に、「可変ノズルベーン5」は「案内羽根」に、「可変ノズルベーン回動軸芯」は「旋回軸線」に、「回動」は「旋回」に、「間隔決定部材9」は「スペーサ手段」に、「軸部9a」は「ボルト手段」に、それぞれ相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明は、
「流体流れエンジンであって、
駆動流体を供給する少なくとも1つの供給流路を含むタービンハウジングを形成する手段と、
回転軸線の周りで前記タービンハウジングに回転自在に支持された少なくとも1つのタービンロータと、
前記タービンロータの半径方向外側で該タービンロータを包囲する可変タービン外形の案内格子とを備え、該案内格子は、
羽根空間の一端限界を形成するノズルリング手段と、
前記羽根空間内にある複数の案内羽根であって、各々が、前記供給流路から前記タービンロータまで調節可能量の流体を供給するように旋回軸線の周りで旋回されかつ前記ノズルリングによって支持されている案内羽根と、
前記ノズルリング手段に接続されていて前記羽根を自由に動かす軸方向距離を固定するスペーサ手段であって、前記ノズルリングを貫通する少なくとも1つのボルト手段を含むスペーサ手段と、を含む、流体流れエンジン。」
である点で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違する。

<相違点>
(1)ボルト手段の固定手段に関して、本願補正発明においては、「前記ボルト手段は、一端にねじ切り部分を備えて前記ノズルリングにその一端をねじ込むことによってそれ自体がスペーサを形成し、一方、ボルト手段は溶融状態で加えられる温度耐性がある接続材料によって他端において前記羽根空間の軸方向距離で固定され」るのに対し、引用発明においては、「前記軸部9aは、一端にねじを備えて前記プレート8にその一端を挿通することによってそれ自体がスペーサを形成し、一方、軸部9aは他端において前記羽根空間の軸方向距離で固定されている」点(以下、「相違点1」という。)。
(2)「装着リング」に関して、本願補正発明においては、「タービンハウジングの一部は前記羽根空間の他端限界を形成するように前記ノズルリングの反対側に配置された装着リングを備えている」のに対して、引用発明においては、そのような「装着リング」を備えていない点(以下、「相違点2」という。)。

2-3 相違点についての検討及び判断
(1)相違点1について
本願補正発明において、「溶融状態で加えられる温度耐性がある接続材料によって固定する」とは、「半田付け又は溶接」を意味する(段落【0005】、【0006】、【0021】及び【0022】を参照。)。
ところで、タービンの技術分野において、部材を半田付け又は溶接によって固定することは、周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、平成21年8月25日付け拒絶理由通知書において提示された刊行物である特開2002-38967号公報の段落【0033】、【0047】及び図面、特許第2947582号公報の第6欄第49行ないし第7欄第7行及び図面、特開2001-3706号公報の段落【0004】及び図面、特開平7-324601号公報の【要約】、【特許請求の範囲】の請求項1及び2、段落【0010】ないし【0012】及び図面、特開2002-38904号公報の【要約】、【特許請求の範囲】の請求項1ないし請求項8、段落【0019】、【0023】、【0037】ないし【0042】及び図面等の記載を参照。)にすぎない。
また、本願補正発明は、「この距離は、半田付け又は(好ましくは)溶接シーム30によるねじ16の溶接によって固定されるので、ねじ16は回転が防止され、同時に揺れ及び振動によるねじ穴25から望ましくないねじ外れを有効に回避する。」(本願明細書の段落【0021】を参照。)という作用効果を奏するものであるが、一般的に、ねじの回転やねじ外れを防止するために、半田付け又は溶接を行うことも、周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2000-249130号公報の段落【0003】、特開平9-42262号公報の段落【0002】及び図面等の記載を参照。)にすぎない。
また、本願の発明の詳細な説明において、ねじ込みと溶接の向きは逆にしても良い(段落【0022】を参照。)とされているように、どちらをねじ込みとし、どちらを溶接するかは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
してみれば、引用発明において、周知技術1及び2を適用して、ボルト手段をノズルリングにその一端をねじ込むとともに他端において溶接することにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
タービンの技術分野において、「タービンハウジングの一部は羽根空間の他端限界を形成するようにノズルリングの反対側に配置された装着リングを備えている」ことは、周知技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開2002-256877号公報の段落【0024】及び図面、特開2001-207858号公報の【特許請求の範囲】、段落【0005】、【0012】及び図面、特開2000-337158号公報の段落【0011】、【0024】及び図面、等の記載を参照。)にすぎない。
してみれば、引用発明において、周知技術3を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし3から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。

(3)小括
以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4 まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年3月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 の[理由]の1(1)(a)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(特開平10-103070号公報)の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]の2 2-1(1)ないし(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]の1(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2の[理由]の2 2-1ないし2-4に記載したとおり、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし3から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。


4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-07 
結審通知日 2011-06-08 
審決日 2011-06-21 
出願番号 特願2004-281195(P2004-281195)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02B)
P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 治彦  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
西山 真二
発明の名称 流体流れエンジン及び案内格子を製造する方法  
代理人 山崎 幸作  
代理人 小野 新次郎  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ