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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1245997
審判番号 不服2008-25434  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-02 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2003-401751「無機質化粧板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年6月23日出願公開、特開2005-162825〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成15年12月1日の出願であって、平成18年4月27日付けの拒絶理由通知に対して、同年6月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年8月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月2日に審判請求がされ、同月31日に明細書及び審判請求書についての手続補正書がされた後、平成22年11月18日付けの審尋に対して、平成23年1月18日に回答書が提出されたものである。

第2 平成20年10月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成20年10月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成20年10月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲における「塗料」についての請求項1?3を削除し、本件補正前の請求項4に対応する「無機質化粧板の製造方法」を新たな請求項1とした上で、本件補正前の請求項4で引用する本件補正前の請求項1の「水希釈性の合成樹脂エマルションを固形分基準で95?45質量%含有し且つコロイダルシリカを固形分基準で5?55質量%含有し」を、「水希釈性の合成樹脂エマルションを固形分基準で90?55質量%含有し且つコロイダルシリカを固形分基準で10?45質量%含有し」とし、「無機質化粧板の製造方法」を、「製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板の製造方法」にする補正を含むものである。

2 新規事項の追加の有無及び補正の目的要件
この出願の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0013】に、コロイダルシリカを固形分基準で10?45質量%含有することが好ましいことが記載されていると認められ、また、同段落【0011】に「本発明の無機質化粧板の製造方法は、塗布乾燥直後に高度に積載しても耐ブロッキング性に優れ…た無機質化粧板を製造することができる。」と、製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板の製造方法が記載されていると認められ、上記補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
そして、上記補正は、補正前の請求項4(において引用する補正前の請求項1)の発明を特定するために必要な事項である「水希釈性の合成樹脂エマルション」について「固形分基準で95?45質量%含有し」を「固形分基準で90?55質量%含有し」に、同じく「コロイダルシリカ」について「固形分基準で5?55質量%含有し」を「固形分基準で10?45質量%含有し」に限定し、同じく「無機質化粧板」を、「製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板」に限定するものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明である、
「無機質基材の表面に下層塗膜層を形成し、該下層塗膜層の表面に、バインダー成分として水希釈性の合成樹脂エマルションを固形分基準で90?55質量%含有し且つコロイダルシリカを固形分基準で10?45質量%含有し、該合成樹脂エマルションの合成樹脂成分がα、β不飽和単量体の共重合体であって、そのイオン性がアニオン系、アニオン-ノニオン系又はノニオン系のものであり、且つ該コロイダルシリカのpHが8.4?11.5であるエマルション塗料を用いて表面塗膜層を形成することを特徴とする製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板の製造方法。」(以下、「本件補正発明」という。また、本件補正後の明細書を「本件補正明細書」という。)
が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(補正前の請求項4を補正後の請求項1とする補正が平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものであるか)について検討する。

[新規性進歩性について]
(1) 引用刊行物及び引用刊行物に記載された事項
ア 引用刊行物
・特開2002-256203号公報(原査定で引用された引用文献4。「刊行物1」という。)
・特開2001-146560号公報(原査定で引用された引用文献2。「刊行物2」という。)

イ 刊行物1の記載事項
・摘示事項1-a:
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は水性塗料用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】 従来、フッ化ビニリデン系樹脂は、耐候性、耐熱性、耐薬品性が良好であり高温で溶剤に溶解するため焼き付け型の塗料として広く使用されている。このフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデン単独重合体やフッ化ビニリデンとフルオロオレフィン(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等)との共重合体が提案されている。
【0003】 また、フルオロオレフィンとシクロヘキシルビニルエーテル及びその他各種の単量体との共重合体は、室温で有機溶剤に可溶であり、塗料として用いた場合に透明で高光沢を有し、しかも高耐候性、撥水撥油性、耐汚染性、非粘着性などの優れた特性を備えた塗膜を与えることが知られており(例えば、特開昭55-44083号公報を参照。)、建築などの内装用、外装用の耐候性塗料の分野で使用が増大しつつある。」
・摘示事項1-b:
「【0004】 一方、近年、大気汚染等環境保全などの観点から、有機溶剤の使用の規制が強まりつつあり、有機溶剤を用いない水性塗料や粉体塗料に対する社会的要望が高まっている。
【0005】 かかる観点から、フッ素樹脂についても、水性分散化の検討がなされており、フッ化ビニリデン系樹脂では、フッ化ビニリデン系樹脂粒子の存在下にアクリルモノマを乳化重合させる方法(例えば、特開平3-8884号公報、特開平4-325509号公報等を参照。)が提案されている。
【0006】 また、フルオロオレフィンとシクロヘキシルビニルエーテル及びその他各種の単量体との共重合体についても水性分散化の検討がなされており、乳化重合で製造できることが報告されている(例えば、特開昭57-34107号公報、特開昭61-231044号公報等を参照。)。さらに、親水性部位を有するマクロモノマに基づく重合単位を必須構成成分とする含フッ素共重合体が水に分散された水性分散液が提案されている(例えば、特開平2-225550号公報を参照。)。この水性分散液は、造膜性に優れ、かつ塗膜の機械的強度も良好であり、また乳化剤や親水性有機溶剤を用いなくても製造できることが開示されている。」
・摘示事項1-c:
「【0007】 しかしながら、フッ化ビニリデン系樹脂の水性分散液については、水性分散液の安定性は、必ずしも良好ではなく、また樹脂の結晶性のために塗膜の透明性が劣っていたり、これを改良するために結晶性を落とした場合には、塗膜のガラス転移温度が低すぎて耐汚染性が悪くなるという問題があった。アクリルモノマをシード重合することでこれらの問題点は改善されるが、充分ではない。また造膜性についても問題があった。更に当該フッ化ビニリデン系樹脂は、フルオロオレフィンのみで構成されるためコストが高くなってしまう。フルオロオレフィンとシクロヘキシルビニルエーテル及びその他各種の単量体との共重合体については、塗膜の透明性・造膜性は良好で充分実用性があるものの、単量体が比較的高価であるという点で更なる改良が望まれていた。」
・摘示事項1-d:
「【0008】 そこで本発明者らは、フルオロオレフィン/エチレン/プロピレン系共重合体と(メタ)アクリル酸エステル共重合体とが複合化された水性分散液により、上記の問題点を解決できることを見いだした(例えば、特開2000-128934号公報を参照。)。さらに本発明者らは、工場内で物品を塗装し、その塗装の加熱乾燥を行う場合、塗膜硬度が不足していると、乾燥後の塗装物品を積み重ねることにより、塗膜の光沢低下、キズ等が発生し、外観ムラの原因となることを見いだした。また、塗装物品を効率的に積み重ねるためには、塗装効率の向上、加熱乾燥後の冷却時間短縮、及び積み重ね枚数の増加が必要とされる。したがって塗装工場内での塗装物品の製品化効率を上げるためには、塗膜の耐ブロッキング性を高めて、積み重ね工程で問題が発生しないようにすることが必要とされる。」
・摘示事項1-e:
「【0105】 本発明の塗料用組成物は、これを塗料ベースとして使用して、塗料化したときに、被塗装基材である無機質基材、有機質基材への密着性、耐候性、耐薬品性、成膜性に加え、耐汚染性をさらに向上させる目的で、前記(1)?(5)のいずれかに記載の水性塗料用組成物に、無機ケイ素化合物及び/又は有機ケイ素化合物(以下、無機/有機ケイ素化合物と略記する。)を配合することができる。かかる無機ケイ素化合物としては、水ガラス等の水溶性ケイ酸塩、水分散性コロイダルシリカなどが例示される。」
・摘示事項1-f:
「【0107】 また、コロイダルシリカとしては、たとえば水ガラスの脱ナトリウム(イオン交換法、酸分解法、解膠法)によって製造され、一次粒子径としては、4?150nm、好ましくは5?50nmのもので、通常水性分散液として供給されており、本発明においては、これをそのまま使用できる。(例えば、商品名スノーテックス-O又はスノーテックス20:日産化学工業社製)」
・摘示事項1-g:
「【0109】 本発明の水性塗料用組成物中のフッ素系共重合体等の固形分と、配合される無機/有機ケイ素化合物との比率は、当該固形分100質量部に対して、無機/有機ケイ素化合物0.1?100質量部が好ましい。より好ましくは1?50質量部の範囲である。無機/有機ケイ素化合物の比率が0.1より小さいと得られる塗膜の表面の非汚染付着性が不充分になることがあり、100を超えると塗膜形成時あるいは時間の経過とともに可撓性の不足から塗膜にクラックなどの欠陥が生じやすくなる。」
・摘示事項1-h:
「【0110】 本発明の水性塗料用組成物は、塗料バインダとしてそのままでも水性塗料として使用できるが、必要に応じて着色剤、可塑剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、レベリング剤、消泡剤、顔料分散剤、増粘剤、ハジキ防止剤、皮バリ防止剤、硬化剤など通常水性塗料に添加される添加剤を適宜選択して混合してもよい。更に、アルミニウムペースト等のメタリック顔料を使用してもよい。」
・摘示事項1-i:
「【0119】(合成例1)
(1)内容積2Lのステンレス製撹拌機付きオートクレーブにイオン交換水1100g、アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)4.75g、ノニオン性乳化剤(N-1110;日本乳化剤社製)24.7g及びt?ブタノール39.8gを仕込み、真空ポンプによる脱気、窒素ガスによる加圧を繰り返して空気を除去した。次に、(a)テトラフルオロエチレン70.4g、(b)プロピレン8.3g、(c)エチレン1.1g及び(e)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8.7gをオートクレーブ中に導入した。
【0120】 (2)オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点で圧力2.42MPaを示した。その後、過硫酸アンモニウムの30%水溶液7mLを添加し、反応を開始させた。圧力の低下に伴い加圧して圧力を維持しつつ、(a)テトラフルオロエチレン59.1モル%、(b)プロピレン20.4モル%、(c)エチレン20.5モル%の混合ガス630gを連続的に加え反応を続行させた。また(e)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン70gを圧入管から5回に分けて添加した。
【0121】 15時間後、混合ガスの供給を停止しオートクレーブを水冷して室温に達した後、未反応モノマをパージし、オートクレーブを開放して固形分濃度38.5%の水性分散液を得た。
【0122】 (3)得られた水性分散液を遠心分離器にかけて沈降させ、ポリマをガラスフィルタで濾過し、532Paの減圧下で5時間かけて水分を除去した後、衝撃式ハンマーミルで粉砕し、フッ素系共重合体の粉末を得た。この共重合体の^(13)C-NMRによる組成分析の結果は、(a)テトラフルオロエチレンに基づく重合単位55モル%、(b)プロピレンに基づく重合単位19モル%、(c)エチレンに基づく重合単位19モル%、(e)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに基づく重合単位7モル%であった。また融点は101.2℃であった。結果を表1に示す。」
・摘示事項1-j:
「【0126】 (合成例3?6)乳化重合に用いるモノマ組成を表1に示すように変更しそれ以外は合成例1及び2に記載の方法に準じてフッ素系共重合体の水性分散液を得た。」
・摘示事項1-k:
「【0127】 (合成例7)温度計、撹拌機、還流、冷却器を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに表1の合成例4で得られた水性分散液300gを仕込み(分散液中のフッ素系共重合体量は116gであった。)80℃になるまで加温した。80℃に達した時点で(i)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.9g、(h)メタクリル酸t-ブチル20.3g、(h)メタクリル酸メチル5.8g、ノニオン性乳化剤(N-1110;日本乳化剤社製)0.3g、アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)0.02g、水29.7gから成る水性分散液を1時間かけて滴下した。その直後、過硫酸アンモニウムの2%水溶液1mLを添加し反応を開始させた。反応時間3時間後にフラスコ内温度を90℃に上げ更に1時間反応させて重合を完結させ、フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体が80:20(質量比)で、固形分濃度39.2%の水性分散液を得た。結果を表2に示す。」
・摘示事項1-m:
「 【0129】
【表1】


【0130】
(合成例4として、共重合体中の重合単位が、(a)テトラフルオロエチレン53モル%、(b)プロピレン27モル%、(c)エチレン20モル%である、フッ素系共重合体の水性分散液が表示されている。
合成例4のフッ素系共重合体は、ガラス転移温度が、14.2℃であることが表示されている。)」
・摘示事項1-n:
「【0131】
【表2】


【0132】なお、各組成において、例えばテトラフルオロエチレンの組成が「72/55」とあるのは、分子の「72」は、供給原料モノマ中の組成が72モル%であることを表し、分母の「55」は、共重合体中のテトラフルオロエチレンに基づく重合単位が55%であることを示す。」
(合成例7の複合樹脂は、ガラス転移温度が、18.3℃であることが表示されている。)」
・摘示事項1-p:
「【0136】 (実施例4)
合成例7により得られたフッ素系共重合体の水性分散液70部、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート2g、コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)3.5g、造膜助剤5.4g、増粘剤0.3g、分散剤0.8g、消泡剤0.6g、イオン交換水10.3gを表4に示す量用いてクリアー塗料配合を行った。なお、造膜助剤は、ブチルカルビトールアセテート、増粘剤は、レオビスCR(ヘキスト合成社製)、分散剤は、ノスコスパース44-C(サンノプコ社製)、消泡剤は、FSアンチフォーム90(ダウコーニング社製)である。」
・摘示事項1-q:
「【0139】 (塗膜試験)
以上の実施例1?6、比較例1?4で得られた塗料をスレート板にアクリル系エマルション下塗り剤(ボンフロン水性用プライマーS:旭硝子コートアンドレジン社製)を塗装した試験体上に、乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレーで塗布し、90℃で40分間乾燥し試験片を得た。これらの試験片について耐ブロッキング試験、耐溶剤性試験、耐候性、耐水性、耐汚染性、密着性及び透明性の試験を行った。試験方法は、以下の通りとした。」
・摘示事項1-r:
「【0140】
耐ブロッキング試験:試験体片二枚の塗装面を重ねて、0.05MPaの荷重をかけ、50℃で1時間放置した後、試験片を引き離したときの塗膜の状態を観察した。○は塗膜面に変化なく、△は塗膜一部に損傷が認められたもの、×は塗膜の全面に損傷を認めたことを示す。」
・摘示事項1-s:
「【0147】
【表3】


【0148】
【表4】



・摘示事項1-t:
「【0149】
【発明の効果】 本発明のフッ素系共重合体の水性塗料用組成物は、耐ブロッキング性、耐溶剤性、耐候性、耐水性、耐汚染性、密着性、透明性、の優れた塗膜を与えるものであり、耐候性水性塗料として極めて有用である。
【0150】 また本発明のフッ素系共重合体の水性塗料用組成物は、基本的に有機溶剤を使用しない安定な水性分散液をベースとするものであるから、溶剤規制などの制限を受けることなく、幅広い用途に適用が可能である。例えば、ガラス、金属、セメントなど外装用無機建材の耐候性塗装などに特に有用である。」

ウ 刊行物2の記載事項
・摘示事項2-a:
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、水性クリアートップコート剤及びそれを塗装してなる塗膜に関し、特に、透明性、耐候性、耐汚染性、密着性、凍結融解密着性、耐水白化性、耐ブロッキングに優れたクリアー皮膜を形成することを特徴とする水性クリアートップコート剤及びそれを塗装してなる塗膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】 近年、環境保全、安全衛生の面より、コーティング剤の無公害化および安全衛生化が強く要望されており、溶剤型コーティング剤に代わり、水系コーティング剤の用途が拡大されつつある。また、近年では、時代の要請により、水系コーティング剤への切替えが進められるとともに、その用途においても拡大しており、それにともなう要求性能も、ますます高度なものになってきている。無機建材における外装コーティング剤においては、さらに、耐候性、耐汚染性、耐水性の良好なコーティング剤が重要視されており、さらに、ライン塗装用途においては、耐ブロッキング性も重要な性能の一つである。当然のことながら、これに対応すべく、水系でのアクリル/シリコーン樹脂のブレンド系、または、アクリルシリコーン系のグラフト共重合樹脂、さらには、フッ素系樹脂が開発されている。

【0004】 フッ素系樹脂や、特開平8-259773号公報、特開平9-188847号公報に代表されるアクリルとフッ素樹脂の複合体については、性能的には十分とされながらも、経済的な面においては、非常に不利となり汎用性に乏しい。また、ライン塗装用途における耐ブロッキング対策としては、Tg値の高い水性樹脂やコロイダルシリカとのブレンドが一般的である。この方法では、耐ブロッキング性については改善することができるものの、分散樹脂どうしの相溶性や、無機物との相溶性に問題があり、耐久性の面で不十分である。」
・摘示事項2-b:
「【0014】(II)原料及び重合開始剤
(1)原料
(a)コロイダルシリカ
上記(a)のコロイダルシリカとしては、SiO_(2)を基本単位とするシリカの水または水溶性溶媒の分散体であり、粒子径が10?120nm、好ましくは80?100nmのものである。粒子径が10nm未満では、重合時の安定性が悪くなり、120nmを超えると、耐水白化性が低下するため好ましくない。上記範囲の粒子径のコロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性側、塩基性側のいずれであっても用いることができ、対象とする水性クリアートップコート剤の安定領域に応じて、適宜選択することができる。水を分散媒体とする酸性側のコロイダルシリカとしては、例えば、スノーテックス-O、スノーテックス-OL(日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20Q(旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25など(以上、クラリアントジャパン株式会社製)が利用できる。」
・摘示事項2-c:
「【0015】一方、塩基性側のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、例えば、スノーテックス20、スノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスZL(以上、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-20Aなど(以上、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50など(以上、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックスHS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスSM-30など(以上、デュポン社製)などを挙げることができる。」
・摘示事項2-d:
「【0021】 (2)原料の使用量
上記コロイダルシリカ(a)、モノマー(b)、(c)、(d)、重合性官能基を有する界面活性剤(e)の使用量については、樹脂組成物((a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の合計をいう。)100質量%に対して、下記の範囲で使用される。
コロイダルシリカ(a):5?20質量%、好ましくは7?15質量%、

【0022】 コロイダルシリカ(a)の使用量が5質量%未満では、耐ブロッキング性が低下する傾向にあり、20質量%を超えると、耐久性が低下する傾向にある。…」
・摘示事項2-e:
「【0051】

(7)耐ブロッキング性試験
上記テストピースを作成する際に、塗装・乾燥後、皮膜表面温度が50℃になるまで室温で冷却し、皮膜表面温度が50℃になったところで、皮膜の上に、綿100%の布を置き、6kg/cm^(2)の荷重で、50℃、24時間維持する。その後、恒温恒湿槽内で、20℃、相対湿度65%で24時間放置した後、テストピースと布の剥離強度を測定した。」

(2) 刊行物1に記載された発明
刊行物1は「水性塗料用組成物に関する」(摘示事項1-a)ものであり、従来、工場内で物品を塗装した「乾燥後の塗装物品を積み重ねることにより、塗膜の光沢低下、キズ等が発生し、外観ムラの原因となること」などの問題点があったこと、また、「塗装物品を効率的に積み重ねるためには、塗装効率の向上、加熱乾燥後の冷却時間短縮、及び積み重ね枚数の増加が必要とされる。したがって塗装工場内での塗装物品の製品化効率を上げるためには、塗膜の耐ブロッキング性を高めて、積み重ね工程で問題が発生しないようにすることが必要とされる」ことが、記載されている(摘示事項1-d)。
そして、実施例及び比較例に具体的な水性塗料用組成物が記載され、これらの水性塗料用組成物を「スレート板にアクリル系エマルション下塗り剤(…)を塗装した試験体上に、乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレーで塗布し、90℃で40分間乾燥し試験片を得」、「これらの試験片について耐ブロッキング試験、耐溶剤性試験、耐候性、耐水性、耐汚染性、密着性及び透明性の試験を行った」ことが記載されている(摘示事項1-q)。
それら具体例の塗膜の「耐ブロッキング性」は、表3、4(摘示事項1-s)によれば「コロイダルシリカ」を含まない実施例1ないし3、比較例1の塗料はいずれも「△」、「コロイダルシリカ」を含む実施例4ないし6,比較例2ないし4の塗料はいずれも「○」であることが認められる。
後者の耐ブロッキング性が良好な「コロイダルシリカ」を含む水性塗料用組成物である実施例4の塗料用組成物は、摘示事項1-pによれば、「合成例7により得られたフッ素系共重合体の水性分散液70部」と「硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート2g、コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)3.5g、造膜助剤5.4g、増粘剤0.3g、分散剤0.8g、消泡剤0.6g、イオン交換水10.3g」を「表4に示す量用いてクリアー塗料配合を行った」ものである。
その「合成例7により得られたフッ素系共重合体の水性分散液」とは、「合成例4で得られた水性分散液…(分散液中のフッ素系共重合体量は116g…)」に「(i)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.9g、(h)メタクリル酸t-ブチル20.3g、(h)メタクリル酸メチル5.8g、ノニオン性乳化剤(N-1110;日本乳化剤社製)0.3g、アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)0.02g、水29.7gから成る水性分散液」を滴下して、「重合を完結させ」て得られた水性分散液であって、「フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体が80:20(質量比)で、固形分濃度39.2%の水性分散液」である(摘示事項1-k)。
そして、その「合成例4で得られた水性分散液」とは、摘示事項1-jによれば「乳化重合に用いるモノマ組成を表1に示すように変更しそれ以外は合成例1及び2に記載の方法に準じて」得たものであり、表1(摘示事項1-m)及び摘示事項1-nによれば、その供給原料モノマ中の組成が、(a)テトラフルオロエチレン53モル%、(b)プロピレン27モル%、(c)エチレン20モル%である、フッ素系共重合体の水性分散液であると認められる。
そうすると、実施例4の塗料用組成物は、
「a)テトラフルオロエチレン53モル%、(b)プロピレン27モル%、(c)エチレン20モル%である、フッ素系共重合体の水性分散液300g(フッ素系共重合体量は116g)に、
(i)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.9g、(h)メタクリル酸t-ブチル20.3g、 (h)メタクリル酸メチル5.8g、ノニオン性乳化剤(N-1110;日本乳化剤社製)0.3g、 アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)0.02g、水29.7gから成る水性分散液を、滴下し、重合を完結させて得られた水性分散液であって、
フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体が80:20(質量比)で、固形分濃度39.2%である水性分散液70g、
硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート2g、
コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)3.5g、
造膜助剤5.4g、増粘剤0.3g、分散剤0.8g、消泡剤0.6g、イオン交換水10.3g
からなる塗料」(以下、『実施例4の塗料』と略称する。)といえる。
そして、刊行物1の水性塗料用組成物は、「幅広い用途に適用が可能である。例えば、ガラス、金属、セメントなど外装用無機建材の耐候性塗装などに特に有用」なものであることが記載されている(摘示事項1-t)。

以上によれば、刊行物1には、下記の発明(以下、引用発明という)が記載されているといえる。
「スレート板にアクリル系エマルション下塗り剤を塗装した物の上面に、『実施例4の塗料』を乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレーで塗布し、90℃で40分間乾燥してなる、塗膜の耐ブロッキング性を高めた、塗装工場内での塗装物品の製品化において積み重ね工程で問題が発生しない、耐候性塗装された外装用無機建材の製造方法。」

(3) 対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「スレート板」は、本件補正発明の「無機質基材」に相当し、引用発明の「アクリル系エマルション下塗り剤を塗装した物の上面」は、本件補正発明の「下層塗膜層を形成し、該下層塗膜層の表面」に相当する。
そして、引用発明の『実施例4の塗料』の「フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体」は、本件補正発明の「α、β不飽和単量体の共重合体であって、そのイオン性がアニオン系、アニオン-ノニオン系又はノニオン系のもの」に包含され、引用発明の『実施例4の塗料』の「コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)」は、本件補正発明の「コロイダルシリカ」に包含され、「フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体が80:20(質量比)」で、「固形分濃度39.2%の水性分散液」は、本件補正発明の「バインダー成分として水希釈性の合成樹脂エマルション」に相当する。さらに、本件補正発明の「エマルション塗料」は「これらのバインダー成分以外の顔料やその他の各種添加剤等を含有することができる」(本件補正明細書段落【0018】)から、引用発明の『実施例4の塗料』は、本件補正発明の「バインダー成分として水希釈性の合成樹脂エマルションを…含有し且つコロイダルシリカを…含有し、該合成樹脂エマルションの合成樹脂成分がα、β不飽和単量体の共重合体であって、そのイオン性がアニオン系、アニオン-ノニオン系又はノニオン系のもの…であるエマルション塗料」に相当する。
また、引用発明の「『実施例4の塗料』を乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレーで塗布し、90℃で40分間乾燥」することは、本件補正発明の「エマルション塗料を用いて表面塗膜層を形成すること」に相当し、引用発明の「塗膜の耐ブロッキング性を高めた、塗装工場内での塗装物品の製品化において積み重ね工程で問題が発生しない、耐候性塗装された外装用無機建材」は、本件補正発明の「製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板」に相当する。

そうすると両者は、
「無機質基材の表面に下層塗膜層を形成し、該下層塗膜層の表面に、バインダー成分として水希釈性の合成樹脂エマルションを含有し、且つ、コロイダルシリカを含有し、該合成樹脂エマルションの合成樹脂成分がα、β不飽和単量体の共重合体であって、そのイオン性がアニオン系、アニオン-ノニオン系又はノニオン系のものであるエマルション塗料を用いて表面塗膜層を形成する、製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板の製造方法。」
において一致するが、次の点において一応相違する(以下、「相違点1」、「相違点2」という。)。

相違点1
バインダー成分とコロイダルシリカの含有量が、本件補正発明においては、固形分基準で、それぞれ、90?55質量%、10?45質量%であるのに対して、引用発明においては、塗料中に、フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体の固形分濃度39.2%の水性分散液70gと、コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)3.5gである点

相違点2
コロイダルシリカのpHが、本件補正発明においては、8.4?11.5であるのに対して、引用発明においては、明らかではない点

イ なお、審判請求人は、水性塗料の技術分野においては、引用文献4(刊行物1)記載のような「フッ素系共重合体」と本件補正発明で用いる「水希釈性の合成樹脂エマルジョンとは別種のものであることは当業者には自明です」、との主張をしている(平成20年10月31日付けの審判請求書についての手続補正書「(3)」の「(c)」)。
しかしながら、前述したように、引用発明の「フッ素樹脂とメタクリル酸エステル重合体」は、本件補正発明の「α、β不飽和単量体の共重合体であって、そのイオン性がアニオン系、アニオン-ノニオン系又はノニオン系のもの」に包含されるものであることは、明らかである。このことは、審判請求人(出願人)自ら本件補正明細書に、「α、β不飽和単量体の共重合体」の代表的なものの一例として、「アクリル-含フッ素ビニル系」、「含フッ素ビニル系」などを例示している(【0014】)ことからも裏付けられる。
そうすると、審判請求人の上記主張は妥当ではなく、この点を両者の相違点ということはできない。

(4) 相違点についての検討
ア 相違点1について
引用発明の『実施例4の塗料』のバインダー成分は「フッ素系共重合体の水性分散液70部」における「フッ素系共重合体」であるから、バインダー成分の含有量27.4g(=70g×0.392。審決注:「部」は、「質量部」(摘示事項1-g等)で、実質的に「70部」は「70g」といえる。)と計算される。また、「コロイダルシリカ」の含有量は「コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)3.5g」と記載され、「分散液」としてとの記載もないことから、コロイダルシリカ固形分の重量が「3.5g」であると認められる。
そうすると、引用発明のバインダー成分とコロイダルシリカと固形分基準の含有割合は、バインダー成分が88.7質量%(=27.4*100/(27.4+3.5))で、コロイダルシリカ11.3質量%と計算されるから、本件補正発明で規定する範囲内に含まれる。
したがって、相違点1は、本件補正発明と引用発明との相違点ではない。

なお、「コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業社製)3.5g」が、仮に、審判請求人がいうように、コロイダルシリカの水性分散液、すなわち、スノーテックスC(日産化学工業社製)の質量をいい、その分散液におけるコロイダルシリカ固形分が20質量%(0.7g)である(平成20年10月31日付けの審判請求書についての手続補正書「(3)」の「(c)」)とすると、引用発明のバインダー成分とコロイダルシリカと固形分基準の含有割合は、バインダー成分が97.5質量%で、コロイダルシリカ固形分2.5質量%と計算されるから、本件補正発明で規定する範囲外である。
しかしながら、刊行物1には、水性塗料用組成物中のフッ素系共重合体等の固形分と、配合されるコロイドシリカなどの無機/有機ケイ素化合物との比率について、「当該固形分100質量部に対して、コロイドシリカ(無機/有機ケイ素化合物)0.1?100質量部が好ましい。より好ましくは1?50質量部の範囲である」こと(摘示事項1-g)が記載されている。この好ましい範囲は、バインダー成分とコロイダルシリカと固形分基準の含有割合にすれば、バインダー成分が99.9?50.0質量%で、コロイダルシリカ0.1?50.0質量%と計算される。
さらに、刊行物2には、その【従来の技術】の欄に「ライン塗装用途における耐ブロッキング対策としては、…コロイダルシリカとのブレンドが一般的」(摘示事項2-a)な技術であることが記載されており、そのコロイダルシリカの使用量について、樹脂組成物100質量%に対して「5?20質量%」(摘示事項2-d)の範囲、すなわち、バインダー成分とコロイダルシリカと固形分基準の含有割合にすれば、バインダー成分が95.2?83.3質量%で、コロイダルシリカ4.8?16.7質量%と計算される。
そうすると、仮に審判請求人の主張のとおりとしても、引用発明において、バインダー成分とコロイダルシリカの固形分基準の含有割合を、刊行物1に示され、従来技術で使用される範囲程度である、本件補正発明に規定する範囲(バインダー成分90?55質量%、コロイダルシリカ10?45質量%)とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことに過ぎないし、本件補正発明において、特にこの範囲に限定したことによる格別の効果も認められないことである。

イ 相違点2について
引用発明のコロイダルシリカ源として使用された「スノーテックスC(日産化学)」のpHは、8.5?9.0である(必要であれば、本山時彦編 「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品」、225ページ『コロイダル・シリカ』の項、昭和49年10月15日ラバーダイジェスト社発行、参照)。
そうすると、コロイダルシリカのpHは、本件補正発明で規定する「8.4?11.5」に含まれる。
したがって、相違点2は、本件補正発明と引用発明との相違点ではない。

(5) 独立特許要件のまとめ
以上検討したところによれば、本件補正発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明であるか、あるいは、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、あるいは、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえないから、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。

4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、上記補正を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成20年10月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願に係る発明は、平成18年6月27日付けで手続補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、製造方法の発明である請求項4に係る発明(以下、「本願発明4」という。)は、下記のとおりのものである。
「無機質基材の表面に下層塗膜層を形成し、該下層塗膜層の表面に、バインダー成分として水希釈性の合成樹脂エマルションを固形分基準で95?45質量%含有し且つコロイダルシリカを固形分基準で5?55質量%含有し、該合成樹脂エマルションの合成樹脂成分がα、β不飽和単量体の共重合体であって、そのイオン性がアニオン系、アニオン-ノニオン系又はノニオン系のものであり、且つ該コロイダルシリカのpHが8.4?11.5であることを特徴とするエマルション塗料を用いて該表面塗膜層を形成することを特徴とする無機質化粧板の製造方法。」

第4 原査定の理由
原査定は「この出願については、平成18年4月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その拒絶の理由は、「この出願の発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、下記の引用文献に記載された発明であるか、あるいは、下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項の規定により、あるいは、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」であり、「下記の引用文献」は、次の引用文献1ないし8であり、その引用文献4、引用文献2は、前記「第2 3」における、「刊行物1」及び、「刊行物2」である。
引用文献1.特開2003-313497号公報
引用文献2.特開2001-146560号公報
引用文献3.特開平11-116885号公報
引用文献4.特開2002-256203号公報
引用文献5.特開平11-293196号公報
引用文献6.特開昭54-139938号公報
引用文献7.国際公開第03/66747号パンフレット
引用文献8.特開2001-200245号公報

第5 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明4は、刊行物1(引用文献4)に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と判断する。

1 刊行物の記載事項、刊行物1に記載された発明
刊行物1及び2の記載事項は、前記「第2 3(1)」の「イ」及び「ウ」とおりである。
そして、刊行物1には「第2 3(2)」に記載したとおりの発明(以下同様に「引用発明」という。)が記載されている。

2 対比・検討
本願発明4は、前記「第2の3(1)」に記載した本件補正発明における、「水希釈性の合成樹脂エマルション」について「固形分基準で90?55質量%」が、「固形分基準で95?45質量%」、「コロイダルシリカ」について「固形分基準で10?45質量%」が、「固形分基準で5?55質量%」となったものであり、そして、「製造直後の耐ブロッキング性に優れた無機質化粧板」が、「無機質化粧板」となったものである。
そうすると、本願発明4の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2の3」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明であるか、あるいは、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明4も、同様の理由により、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明であるか、あるいは、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、あるいは、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明4は特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、あるいは、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余を検討するまでもなく、本件出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-06 
結審通知日 2011-09-07 
審決日 2011-09-21 
出願番号 特願2003-401751(P2003-401751)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09D)
P 1 8・ 113- Z (C09D)
P 1 8・ 121- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 滝口 尚良天野 宏樹  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 細井 龍史
橋本 栄和
発明の名称 無機質化粧板の製造方法  
代理人 村中 克年  
代理人 栗原 浩之  

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