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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1246010 |
審判番号 | 不服2009-15268 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-21 |
確定日 | 2011-11-04 |
事件の表示 | 特願2003-419872「無線装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-184251〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成15年12月17日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年8月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 通話チャネル及び制御チャネルが混在したフレーム信号内の通話チャネル及び制御チャネルに係る信号を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力する変調手段と、上記変調手段により変調されたバースト信号を送信する送信手段と、上記送信手段から送信されるバースト信号の終了付近以外の信号レベルを検波する検波手段と、上記検波手段により検波された信号レベルが基準レベルと一致するように、上記変調手段により変調されたバースト信号の信号レベルを調整するレベル調整手段と、上記検波手段によるバースト信号の信号レベルの検波タイミングを設定するタイミング設定手段とを備えた無線装置。」 2.引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-4132号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、送信出力制御方法と送信装置に係わり、特に時分割多重通信に於いてバースト送信を行うのに適した送信出力制御方法と送信装置に関する。」 「【0004】本発明の目的は、時分割多重通信方式のようにバースト的に変化する送信波の出力制御を確実に、かつ高速に制御できる送信制御方法とその方法を具備した送信装置を提供するにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、バースト信号を送信する送信装置の送信出力を、利得可変アンプの制御端子に基準制御電圧を印加して所定出力レベルとなるように制御する送信出力制御方法であって、各バースト信号の予め定められた時間位置に於ける送信レベルから送信電力を検出し、該検出した送信電力と前記所定出力レベルとの誤差を算出し、該誤差の値ごとに予め定められた補正値を求めてその補正値を前記基準制御電圧に加算して前記利得可変アンプの利得を制御する、という制御サイクルを前記各バースト信号ごとに繰り返し実行することを特徴とする送信出力制御方法を開示する。 【0006】さらに、本発明は、バースト信号を増幅するための利得可変アンプと、該利得可変アンプの出力を電力増幅して送信するためのパワーアンプと、各バースト信号の予め決められた時間位置に於ける送信レベルから送信電力を検出するための送信電力検出手段と、該手段により検出された送信電力と予め定められた所定出力電力との誤差に応じた補正電圧を出力するための補正電圧出力手段と、該手段により出力された補正電圧と予め定められた基準制御電圧との和を求めて該求めた和の制御電圧によって前記利得可変アンプの利得を制御するための利得制御手段と、を備えたことを特徴とする送信装置を開示する。」 「【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明になる送信装置の構成例を示すブロック図で、変調波はその増幅率が可変制御可能なアンプ1、パワーアンプ2で増幅され、カプラ3を介して送信される。コントローラ5は、電力検出器4で検出された送信電力を示す電圧Vを入力として、送信電力を所定の値に保つようにアンプ1の増幅率を制御する。 【0008】図2は、コントローラ5による送信出力制御動作のフローチャートを示し、図3は、その動作を説明するためのタイムチャートである。ここでコントローラ5は、ディジタル式のマイクロプロセッサで構成されていて、電力検出器4の出力電圧V(アナログ)をディジタル化するためのA/D変換器と、アンプ1の制御電圧C(アナログ)を出力するためのD/A変換器を内蔵しているものとする。またメモり6は、入力電圧Vに対応した制御電圧Cを定めるためのデータを予め格納しておくために設けられている。 【0009】以下、動作を説明する。まず、動作開始時には、コントローラ5からの制御電圧Cを予め定められた基準値Cref としてアンプ1の利得を制御する(ステップ201)。この値は、定常状態で送信出力が所定値Prefとなるときのアンプ1の制御電圧である。次に、送信バーストに同期した検出タイミングで送信出力Pを表す電圧Vを検出する(ステップ202)。ここで上記の送信パワー検出のタイミングは、図3に示したように周期的に出力される送信バースト信号のほぼ中央の位置に設定されたタイミングであって、これは図示しない送信回路制御系から容易に得ることができる。電圧を検出すると、つづいてこの電圧Vと予め定められた基準電圧Vref とを比較してその誤差電圧a=V-Vref を算出し(ステップ203)、この誤差電圧aに対応する補正値bをメモリ6から読み出す(ステップ204)。そしてその補正値bを制御電圧の基準値Cref に加算して出力する(ステップ205)。 【0010】ここで上記の基準電圧Vref は、送信電力Pがその所定値Pref になったときの電力検出器4の出力電圧値である。また、補正値bとしては、誤差電圧aをそのまま用いると過渡応答が大きくオーバーシュートするようになるので、誤差電圧aの50?80%程度の範囲で定める。例えば 【数1】b=a/2,a>a0 b=0,a<a0 とする。ここでa0 はCref に対して十分小さい値として定めるもので、出力レベルが所定値Pref に収束してきたときに制御電圧Cに細かい変化を与えないようにするためである。そして(数1)のように定めた補正値bの値をaの値ごとに(適当なステップで)メモリ6に格納しておく。なお、(数1)のような演算をメモり6を用いずに直接コントローラ5内のプロセッサにより算出するようにしてもよい。但しメモリを用いた方が補正値の変更を行うときにはプログラムを変えなくてもよいという利点がある。 【0011】以上のようにして図2のステップ205までの制御サイクルが一通り実行されると、次の送信パワー検出タイミングから再びステップ202?205による電力検出と補正値算出、制御電圧の更新の処理が繰り返される。そして各制御サイクルでは、ステップ203?205の処理は図3に示した補正処理区間で実行される。こうして図3に示したように、送信出力P1、P2・・・はその所定値Pref との誤差a1、a2・・・が徐々に小さくなっていくように制御されるが、送信出力の検出をバースト出力に同期して行うことで、各制御サイクルごとに安定した制御電圧を得ることができ、確実でかつ高速な送信出力の制御を行うことができる。」 上記各記載事項を技術常識に照らせば、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載発明」という。)が記載されているといえる。 「信号を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力する変調手段と、上記変調手段により変調されたバースト信号を送信する送信手段と、上記送信手段から送信されるバースト信号のほぼ中央の位置に設定されたタイミングの信号レベルを検波する検波手段と、上記検波手段により検波された信号レベルが基準レベルと一致するように、上記変調手段により変調されたバースト信号の信号レベルを調整するレベル調整手段とを備えた無線装置。」 3.対比 本願発明と引用例記載発明を対比すると、引用例記載発明の「バースト信号のほぼ中央の位置に設定されたタイミングの信号レベルを検波する」は、本願発明の「バースト信号の終了付近以外の信号レベルを検波する」に含まれるので、両者の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「信号を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力する変調手段と、上記変調手段により変調されたバースト信号を送信する送信手段と、上記送信手段から送信されるバースト信号の終了付近以外の信号レベルを検波する検波手段と、上記検波手段により検波された信号レベルが基準レベルと一致するように、上記変調手段により変調されたバースト信号の信号レベルを調整するレベル調整手段とを備えた無線装置。」である点。 (相違点1) 本願発明の「変調手段」は、「通話チャネル及び制御チャネルが混在したフレーム信号内の通話チャネル及び制御チャネルに係る信号」を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力するものであるのに対し、引用例記載発明の「変調手段」は、「通話チャネル及び制御チャネルが混在したフレーム信号内の通話チャネル及び制御チャネルに係る信号」を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力するものではない点。 (相違点2) 本願発明は、「上記検波手段によるバースト信号の信号レベルの検波タイミングを設定するタイミング設定手段」を有しているのに対し、引用例記載発明は、「上記検波手段によるバースト信号の信号レベルの検波タイミングを設定するタイミング設定手段」に相当する手段を有していない点。 4.当審の判断 (1)(相違点1)について 「通話チャネル及び制御チャネルが混在したフレーム信号内の通話チャネル及び制御チャネルに係る信号」を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力する変調器を有する無線装置自体は、審査官が拒絶査定で言及した「デジタル方式MCAシステム(マルチチャネルアクセス方式)」にも見られるように周知であること、引用例記載発明を該周知の「デジタル方式MCAシステム(マルチチャネルアクセス方式)」の無線装置に適用できない理由はないこと、等の事情に鑑みれば、引用例記載発明の「変調手段」を、「通話チャネル及び制御チャネルが混在したフレーム信号内の通話チャネル及び制御チャネルに係る信号」を変調し、その変調信号であるバースト信号をバースト的に出力するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (2)(相違点2)について 以下の事情を勘案すると、引用例記載発明に「上記検波手段によるバースト信号の信号レベルの検波タイミングを設定するタイミング設定手段」に相当する手段を設けることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 ア.装置完成後の各種調整を可能とすべく、「設定手段」と呼び得る手段を装置に設けておくことは、広範な分野でごく普通に行われていることである。 イ.引用例記載発明の「バースト信号の信号レベルの検波タイミング」についても、装置完成後に調整可能であることが有用な場合があることは、当業者に自明である。 ウ.引用例記載発明の「バースト信号の信号レベルの検波タイミング」を装置完成後に調整可能な「設定手段」を設けることに対する阻害要因はない。 (3)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例の記載事項および周知の事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (4)まとめ 以上によれば、本願発明は、引用例記載発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-05 |
結審通知日 | 2011-09-06 |
審決日 | 2011-09-20 |
出願番号 | 特願2003-419872(P2003-419872) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 敬介 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
久保 正典 飯田 清司 |
発明の名称 | 無線装置 |
代理人 | 濱田 初音 |
代理人 | 田澤 英昭 |