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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1246027
審判番号 不服2010-4871  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-05 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 平成11年特許願第256697号「浴水浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 79559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月10日の特許出願であって、平成20年8月15日付けの拒絶理由通知に対し、平成20年10月7日付けで手続補正書が提出され、平成20年10月31日付けで上申書が提出されたが、平成22年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の発明は、平成20年10月7日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、次のとおりのものである。
「浴水を濾過する濾過装置と、
該濾過装置をバイパスするバイパス管路と、
浴水に薬剤を注入する薬剤注入装置と、
該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段と、
浴水の薬剤濃度を測定する装置と、
前記所定時間を計時するタイマと、を備え、
該測定した薬剤濃度に基づいて前記薬剤注入装置による薬剤注入量を制御し、前記タイマの計時に基づいて所定時間所定薬剤濃度を維持させ、
該所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる、
ことを特徴とする浴水浄化装置。」

3.刊行物及びその記載事項
本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-19655号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「・・・・本発明の目的は、浄化タンク内の有用微生物に害を与えることなく、浄化タンクの凝集・濾過の機能を十分生かしながら、浴槽、浄化タンク等からなる浴水循環浄化装置に塩素剤を注入し、浴水中の有害な菌を殺菌する浴水の殺菌方法を提供することにある。」(段落【0008】)
イ 「・・・・本発明の要旨は、
(1)少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、断続的に浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で該装置に塩素を注入し、塩素を循環させることを特徴とする該装置中の浴水の殺菌方法、
(2)・・・・
(3)8時間?10日に1回、1回につき0.5時間以上、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように該装置に塩素を注入し、塩素を循環させる上記(1)記載の浴水の殺菌方法、である。」(段落【0009】?【0011】)
ウ 「【発明の実施の形態】上記(1)において、好ましい実施方法は上記(2)のとおりであり、より一層好ましい実施方法は上記(3)のとおりである。ここで、8時間?10日に1回、1回につき0.5時間以上、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とするとの意味は、例えば1日に1回、2時間とすると、1日に1回、2時間浄化タンクへの浴水の流入、通過を防止して塩素を注入し、残りの22時間は浄化タンクへの浴水の流入、通過が可能な状態としまた塩素を注入しないことを意味する。
・・・・浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態における残留遊離塩素濃度は0.2ppm以上が好ましい。残留遊離塩素濃度が0.1ppm未満であると、・・・・浴水に対する殺菌効果が十分でない場合があり、また、耐性菌が生成する可能性がある。残留遊離塩素濃度が0.5ppmを超えると、残留遊離塩素濃度が高いため浄化タンクへの浴水の流入、通過を開始した時点で浄化タンク内の有用微生物に悪い効果を与える場合がある。なお、浴水循環浄化装置への塩素の注入は次亜塩素酸ナトリウム、・・・・などの塩素剤を通常の注入手段を用いて行う。
・・・・本発明が使用する浴水循環浄化装置としては、さらに浄化タンクの吸水側または吐出側に気液分離隔壁を備えた殺菌タンクを配設し、殺菌タンクの吸引側ラインにオゾナイザから供給されるオゾンを注入するエゼクタ、またはコンプレッサーを備えた浴水循環浄化装置を使用することができる。このような殺菌タンクを使用するオゾンによる殺菌を、本発明の塩素による殺菌と併用すると浴水循環浄化装置を極めて柔軟に運転でき、殺菌の効率も高めることができるが、本発明の方法においてはオゾンによる殺菌は必ずしも必要としない。」(段落【0013】?【0015】)
エ 「以下、添付の図面に基づき本発明を詳しく説明する。図1は本発明方法の一実施例を示すための浴水循環浄化装置のフローシートである。
図1において、2は循環ポンプであり循環ポンプ2の吸水側には浴水吸水管1が配設され、循環ポンプ2の吐出側には浄化タンク11への入水管が設けられている。この入水管は浄化タンク11の上部のAに流入する。殺菌装置を介して浴槽へ戻す浴水吐出管7は浄化タンク11の下部のBに接続している。浄化タンク11の内部には濾過材がしきつめられている。さらに、浄化タンク11への入水管と浴水吐出管7との間には浄化タンク11の逆洗浄が行えるように逆洗管が配設されるとともに電動三方弁9、10が設置されている。
この逆洗管はバイパスラインを兼ねており、本発明方法における「浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する」際に、電動三方弁9、10の働きにより浴水は浄化タンク11へ流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスライン8を流れて殺菌入水管3を通過し浴槽へと循環する。・・・・
・・・・
この浴水循環浄化装置において、浴水はまず浴水吸水管1から循環ポンプ2に導入される。循環ポンプ2で加圧された浴水は、浄化タンク11に送入され、浴水は浄化タンク11内部に充填された濾材を上方から下方へ流れる間に、浴水の汚濁が濾過・浄化される。
・・・・
しかし、この装置では殺菌タンクと同時に塩素剤注入装置13が設置されている・・・・」(段落【0016】?【0024】)
オ 「【発明の効果】本発明の浴水の殺菌方法は、少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、断続的に浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で該装置に塩素を注入し塩素を循環させているので、浄化タンクの中にある有用微生物が塩素により悪い影響を受けることがなく、浄化タンクの濾過・浄化機能を損なうことがない。
・・・・さらに、殺菌タンクなどの特別の殺菌装置を必要とせず浴水循環浄化装置の機器の数を減らすことができるので本発明の方法を使用すれば該装置のコスト低減が可能であり、該装置の運転保守も容易となる。」(段落【0025】?【0026】)
カ 「【図1】本発明方法の一実施例を示すための浴水循環浄化装置のフローシートである。」(【図面の簡単な説明】)との説明とともに【図1】として以下の図面が記載されている。



4.本願発明2についての検討
[刊行物1に記載された発明の認定]
(あ)刊行物1には、記載イに、「・・・・本発明の要旨は、
(1)少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、断続的に浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で該装置に塩素を注入し、塩素を循環させることを特徴とする該装置中の浴水の殺菌方法、
(2)・・・・
(3)8時間?10日に1回、1回につき0.5時間以上、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように該装置に塩素を注入し、塩素を循環させる上記(1)記載の浴水の殺菌方法、である。」と記載されており、この記載によれば、刊行物1には、「少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、8時間?10日に1回、1回につき0.5時間以上、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように該装置に塩素を注入し、塩素を循環させる該装置中の浴水の殺菌方法」が記載されているといえる。
(い)この「該装置中の浴水の殺菌方法」に関し、これに用いる「装置」に着目してみれば、刊行物1には、「少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、8時間?10日に1回、1回につき0.5時間以上、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように該装置に塩素を注入し、塩素を循環させる浴水循環浄化装置」が記載されているといえる。
(う)そして、上記(い)で検討した「浴水循環浄化装置」は、記載ウの「ここで、8時間?10日に1回、1回につき0.5時間以上、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とするとの意味は、例えば1日に1回、2時間とすると、1日に1回、2時間浄化タンクへの浴水の流入、通過を防止して塩素を注入し、残りの22時間は浄化タンクへの浴水の流入、通過が可能な状態としまた塩素を注入しないことを意味する。」との記載によれば、「少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、1日に1回、2時間、浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように該装置に塩素を注入し、塩素を循環させ、残りの22時間は、浄化タンクへの浴水の流入、通過が可能な状態とし、塩素を注入しないこととする浴水循環浄化装置」であるといえる。
(え)さらに、上記(う)で検討した「浴水循環浄化装置」において、「該装置に塩素を注入」することに関し、記載ウに、「なお、浴水循環浄化装置への塩素の注入は次亜塩素酸ナトリウム、・・・・などの塩素剤を通常の注入手段を用いて行う。」と記載され、また、「一実施例」として記載エに、「この装置では殺菌タンクと同時に塩素剤注入装置13が設置されている」と記載されていることからみて、上記「浴水循環浄化装置」は、「塩素剤注入装置」が設置され、この「塩素剤注入装置」により「浴水循環浄化装置」に塩素を注入するものであるといえる。そして、この「浴水循環浄化装置」に塩素を注入することは、浴水に塩素を注入することに他ならない。
(お)また、上記(う)で検討した「浴水循環浄化装置」に関し、記載エに、「図1において、2は循環ポンプであり循環ポンプ2の吸水側には浴水吸水管1が配設され、循環ポンプ2の吐出側には浄化タンク11への入水管が設けられている。この入水管は浄化タンク11の上部のAに流入する。殺菌装置を介して浴槽へ戻す浴水吐出管7は浄化タンク11の下部のBに接続している。・・・・さらに、浄化タンク11への入水管と浴水吐出管7との間には浄化タンク11の逆洗浄が行えるように逆洗管が配設されるとともに電動三方弁9、10が設置されている。
この逆洗管はバイパスラインを兼ねており、本発明方法における「浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する」際に、電動三方弁9、10の働きにより浴水は浄化タンク11へ流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスライン8を流れて殺菌入水管3を通過し浴槽へと循環する。」と記載されており、この記載とともに記載カの【図1】の図面を併せみれば、上記(う)で検討した「浴水循環浄化装置」は、「逆洗管兼バイパスライン」が配設され、「浴水の浄化タンクへの流入もしくは浄化タンク内の通過を防止する」際に、電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環するものであるといえる。
(か)さらに、上記(う)で検討した「浴水循環浄化装置」の「浄化タンク」に関し、記載エに、「浴水は浄化タンク11内部に充填された濾材を上方から下方へ流れる間に、浴水の汚濁が濾過・浄化される。」と記載されていることからみて、上記「浄化タンク」は浴水を濾過するものであるといえる。
(き)上記(う)?(か)で検討したところを踏まえ、刊行物1の記載事項を整理すると、刊行物1には、
「少なくとも浴槽、循環ポンプ、浄化タンクおよび循環経路を有する浴水循環浄化装置において、浄化タンクは浴水を濾過するものであり、塩素剤注入装置と、逆洗管兼バイパスラインが設けられ、1日に1回、2時間、電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように、塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入し、残りの22時間は、浄化タンクへの浴水の流入、通過が可能な状態とし、塩素を注入しないようにする浴水循環浄化装置」
の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているといえる。

[対比]
ここで、本願発明2と刊行1発明とを対比する。
(さ)本願発明2の「濾過装置」は「浴水を濾過する」ものであるところ、刊行1発明の「浄化タンク」も、上記(き)によれば、「浴水を濾過する」ものである。よって、刊行1発明の「浄化タンク」は、本願発明2の「濾過装置」に相当するものであるといえる。
(し)本願発明2の「薬剤注入装置」は「浴水に薬剤を注入する」ものであるところ、刊行1発明の「塩素剤注入装置」は、上記(き)によれば、「浴水に塩素を注入」するものであり、この「塩素」は、刊行物1の記載イによれば「浴水の殺菌」を行うものであって、「薬剤」に他ならないから、刊行1発明の「塩素剤注入装置」は、「浴水に薬剤を注入する」ものであるといえる。よって、刊行1発明の「塩素剤注入装置」は、本願発明2の「薬剤注入装置」に相当するものであるといえる。
(す)本願発明2の「バイパス管路」は「濾過装置をバイパスする」ものである。そして、刊行1発明は、上記(き)によれば、「1日に1回、2時間、電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」するものであるから、刊行1発明の「逆洗管兼バイパスライン」は、「浄化タンク」をバイパスするものであるといえる。よって、上記(さ)で検討したところを踏まえれば、刊行1発明の「逆洗管兼バイパスライン」は、本願発明2の「バイパス管路」に相当するものであるといえる。
(せ)ところで、本願発明2の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」との発明特定事項によれば、本願発明2は、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入の後」に行うものといえ、これは、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入」の終了後に行うものであるかのようにもみえる。
(そ)その一方、本願発明2の「該測定した薬剤濃度に基づいて前記薬剤注入装置による薬剤注入量を制御し、前記タイマの計時に基づいて所定時間所定薬剤濃度を維持させ」との発明特定事項によれば、本願発明2は、「薬剤注入量を制御」し、「所定時間」の間「所定薬剤濃度を維持させ」るものであるといえ、このことを踏まえ、本願発明2の「該所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」との発明特定事項をみると、本願発明2は、「薬剤注入量を制御」し、「所定時間」の間「所定薬剤濃度を維持させ」るとともに「浴水を前記バイパス管路を通過させる」ものであるといえる。そうすると、本願発明2は、「所定時間」の間「薬剤注入量を制御」し、すなわち薬剤を注入し、「所定薬剤濃度を維持させ」るとともに「浴水を前記バイパス管路を通過させる」ものであると解される。
(た)しかしながら、上記(せ)で検討した解釈と上記(そ)で検討した解釈は、整合せず、この点は、本願発明2の発明特定事項をみる限り明確でない。
そこで、本願明細書の記載をみてみると、段落【0013】には、包括的に「薬剤の注入は、ユーザによる手動により行っても良いし、或いはタイマ8により前回の注入から所定時間経過後に自動的に行うようにしてもよい。薬剤注入装置5による薬剤の注入と同時或いはその直前、直後に制御装置1から切換弁20に制御信号が送られ、切換弁20は浴水をバイパス管路2に通すように切り替えられる。」と記載され、段落【0018】には、「薬剤の濃度を所定値以上に所定時間維持する実施例」すなわち本願発明2の実施例として、具体的に「タイマ8による時間計測あるいは手動などによる薬剤注入(消毒)開始運転指令があると(ステップS21)、タイマ8が所定時間(この例では2時間)の時間計測を開始し(ステップS22)、同時に制御装置1は切換弁20をバイパス管路2側に切り替え(ステップS23)、・・・・更に薬剤注入装置5に指令を送り薬剤(塩素)を所定量投入させる(ステップS25)。そして、薬剤濃度測定装置6により残留塩素濃度を検出し(ステップS26)、その値が基準値以上か否か判断し(ステップS27)、基準値以上となるように所定時間(2時間)維持する(ステップS28)。・・・・タイマ8の計時で所定時間経過すると(ステップS28)、制御装置1はバイパス管路2を切り替えて元に戻し、濾過装置3を通過させるようにし(ステップS29)・・・・」と記載されていることからみて、本願発明2の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」は、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入」の開始直後から行うものと解するのが順当である。
よって、本願発明2は、上記(せ)で検討した解釈のように、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入」の終了後に行うものではなく、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入」の開始直後から行うものであって、上記(そ)で検討した解釈のとおり、「所定時間」の間「薬剤注入量を制御」し、すなわち薬剤を注入し、「所定薬剤濃度を維持させ」るとともに「浴水を前記バイパス管路を通過させる」ものであると解される。
(ち)他方、刊行1発明は、上記(き)によれば、「1日に1回、2時間、電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態とし、この状態で浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように、塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入し、残りの22時間は、浄化タンクへの浴水の流入、通過が可能な状態とし、塩素を注入しないようにする」ものであり、これは、「1日に1回、2時間」という所定時間の間、「浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上」という所定薬剤濃度を維持させるように、「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」し、この所定時間の間、「電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」するものであるとみることができる。
(つ)また、刊行1発明の「電動三方弁」は、上記(き)によれば、「1日に1回、2時間」という所定時間の間、「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」するものであり、刊行1発明の「逆洗管兼バイパスライン」は、上記(す)で検討したように、本願発明2の「バイパス管路」に相当するものであることを踏まえれば、本願発明2の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」と、刊行1発明の「電動三方弁」とは、「所定時間の間浴水をバイパス管路を通過させる手段」である点で共通するものといえる。
そして、本願発明2の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」は、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入の後」に行うものであり、これは、上記(た)で検討したように、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入」の開始直後から行うものであると解されるのに対し、刊行1発明の「電動三方弁」が、かかるものといえるか否かについては、直ちに判断できるほど明らかではない。
(て)上記(さ)?(つ)で検討したところを踏まえると、本願発明2と刊行1発明とは、「浴水を濾過する濾過装置と、該濾過装置をバイパスするバイパス管路と、浴水に薬剤を注入する薬剤注入装置と、所定時間の間浴水をバイパス管路を通過させる手段と、を備え、前記薬剤注入装置により薬剤を注入し、所定時間所定薬剤濃度を維持させ、該所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる浴水浄化装置」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1):本願発明2では、「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」を用いるのに対し、刊行1発明では、「1日に1回、2時間、電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態とし」ている点。
(相違点2):本願発明2では、「浴水の薬剤濃度を測定する装置と、前記所定時間を計時するタイマと、を備え、該測定した薬剤濃度に基づいて前記薬剤注入装置による薬剤注入量を制御し、前記タイマの計時に基づいて」所定時間所定薬剤濃度を維持させるのに対し、刊行1発明では、かかる特定がなされていない点。

[判断]
(と)まず、上記(相違点1)について検討する。
上記(相違点1)に係る本願発明2の発明特定事項である「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」は、上記(た)で検討したように、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入」の開始直後から行うものと解するのが順当であり、これは、「浴水を前記バイパス管路を通過させる」「所定時間」の開始と同時に「該薬剤注入装置による薬剤注入」を開始するものに他ならない。
一方、刊行物1には、記載ウに、「残留遊離塩素濃度が0.5ppmを超えると、残留遊離塩素濃度が高いため浄化タンクへの浴水の流入、通過を開始した時点で浄化タンク内の有用微生物に悪い効果を与える場合がある。」と記載されていることからみて、刊行1発明において、残留遊離塩素濃度が過度に高くならないように塩素を注入すべきことは、当業者には明らかであり、また、刊行1発明において、「1日に1回、2時間」という所定時間、「浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように、塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入し」たとしても、「塩素を注入しないようにする」「残りの22時間」の間に、浴水中の残留遊離塩素は消費や希釈等により、0.2ppm以上となった濃度をそのまま維持することはできないと解するのが自然であるから、刊行1発明は、「1日に1回、2時間」という所定時間、「電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態」とするとともに「浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上となるように、塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」するために、上記「逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態」とする「1日に1回、2時間」という所定時間の開始と同時に塩素剤注入装置による塩素の注入を開始するものであるといえる。
よって、上記(相違点1)は、実質的なものではないといえる。仮にそういえないとしても、刊行1発明において、上記「逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態」とする「1日に1回、2時間」という所定時間の開始と同時に塩素剤注入装置による塩素の注入を開始することとし、上記(相違点1)に係る本願発明2の発明特定事項のとおりに表現することに何ら困難性を見いだせない。
(な)次に、上記(相違点2)について検討する。
被処理液に薬剤を注入するにあたり、被処理液中の薬剤濃度を測定する装置を設け、測定した薬剤濃度に基づいて薬剤注入装置による薬剤注入量を制御することは、例えば、平成22年1月13日付け拒絶査定において提示された特開平11-28471号公報(以下、「周知例1」という。【請求項3】、段落【0018】等参照。)のほか、特開平11-123383号公報(以下、「周知例2」という。【請求項8】、段落【0078】等参照。)や、特開平9-262593号公報(以下、「周知例3」という。【請求項6】、段落【0021】等参照。)に記載されているように周知の技術である。また、所定時間を計時するタイマを設け、タイマの計時に基づいて所定時間、所望の処理を行わせることも、例えば、上記周知例3(【請求項7】、段落【0078】等参照。)に記載されているように、周知の技術である。
そして、これらの周知の技術を、「1日に1回、2時間」という所定時間の間、「浴水中の残留遊離塩素濃度が0.2ppm以上」という所定薬剤濃度が維持されるように、「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」するものである刊行1発明に照らしてみれば、刊行1発明において、浴水中の薬剤濃度を測定する装置と、所定時間を計時するタイマを設け、測定した薬剤濃度に基づいて薬剤注入装置による薬剤注入量を制御し、タイマの計時に基づいて所定時間の間、所定薬剤濃度が維持されるようにすること、すなわち、上記(相違点2)に係る本願発明2の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることであると認められる。
(に)そして、上記(相違点1)及び上記(相違点2)に係る本願発明2の発明特定事項を採用することにより奏される本願明細書に記載の効果も、当業者の予測を越えるものとはいえない。

[本願発明2についての結論]
したがって、本願発明2すなわち本願の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、刊行1発明及び周知例1?3に例示される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
してみれば、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)については、必ずしも検討する必要はないが、念のためにさらに検討しておく。

5.本願発明1についての検討
(は)本願発明1は、平成20年10月7日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「浴水を濾過する濾過装置と、
該濾過装置をバイパスするバイパス管路と、
浴水に薬剤を注入する薬剤注入装置と、
該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段と、
浴水の薬剤濃度を測定する装置と、を備え、
該薬剤濃度に基づいて、前記バイパス管路への浴水の通過或いはその停止の少なくとも一方を行わせる、
ことを特徴とする浴水浄化装置。」

[刊行物1に記載された発明の認定]
(ひ)刊行1発明は、上記(き)に記載したとおりである。

[対比]
ここで、本願発明1と刊行1発明とを対比する。
(ふ)上記(さ)?(す)で検討したところと同様に検討すると、刊行1発明の「浄化タンク」は、本願発明1の「濾過装置」に相当し、刊行1発明の「塩素剤注入装置」は、本願発明1の「薬剤注入装置」に相当し、刊行1発明の「逆洗管兼バイパスライン」は、本願発明1の「バイパス管路」に相当するものであるといえる。
(へ)ところで、本願発明1の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」との発明特定事項によれば、本願発明1は、「浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入の後」「所定時間の間」行うものであると解されるところ、「所定」とは、一般に「定まっていること。定めてあること。」(株式会社岩波書店広辞苑第三版)を意味するから、本願発明1は、「浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入の後」「定められた時間の間」行うものであるかのように解される。
(ほ)その一方、本願発明1の「該薬剤濃度に基づいて、前記バイパス管路への浴水の通過或いはその停止の少なくとも一方を行わせる」との発明特定事項によれば、本願発明1は、「前記バイパス管路への浴水の通過」のみを「該薬剤濃度に基づいて」制御する場合のみならず、「前記バイパス管路への浴水の通過」の「停止」までも「該薬剤濃度に基づいて」制御する場合を含むものであるといえ、この場合、「前記バイパス管路への浴水の通過」を行う時間が薬剤濃度に左右されると解される。
(ま)上記(ほ)で検討した解釈によれば、「前記バイパス管路への浴水の通過」を行う時間が薬剤濃度に左右され、「前記バイパス管路への浴水の通過」が「定められた時間の間」なされるものとならないことは明らかであるから、上記(ほ)で検討した解釈と上記(へ)で検討した解釈は整合しないこととなる。そして、この点は、本願発明1の発明特定事項をみる限り明らかでない。
(み)そこで、本願明細書の記載をみてみると、段落【0013】には、「濾過装置3のバイパスを停止して、元の濾過モードに戻すには種々の方法が可能であり、例えばタイマ8による時間計測や薬剤濃度測定装置6による薬剤濃度の低下など基づいて行うことが可能である。」と記載され、段落【0017】には、「薬剤濃度測定装置6を使用する例」として「図3に示すようにタイマ8による時間計測あるいは手動などによる薬剤注入(消毒)開始運転指令があると(ステップS11)、制御装置1は薬剤注入装置5に指令を送り薬剤(塩素)を所定量投入させる(ステップS12)。そして、薬剤濃度測定装置6により薬剤の濃度が所定値以上か否かチェックし(ステップS13)、所定値以上になったら、制御装置1は切換弁20をバイパス管路2側に切り替え(ステップS14)、・・・・薬剤濃度測定装置6による薬剤濃度の検出値が所定値以下になったら(ステップS16)、制御装置1はバイパス管路2を切り替えて元に戻し、濾過装置3を通過させるようにし(ステップS17)・・・・」と記載され、これらの記載以外には、本願発明1の「該薬剤濃度に基づいて、前記バイパス管路への浴水の通過或いはその停止の少なくとも一方を行わせる」との発明特定事項に関する説明を見いだせない。
してみれば、当該発明特定事項を有する本願発明1は、これらの記載に基づいて解釈せざるを得ないところ、これらの記載中に具体的に開示されている当該発明特定事項の態様は、前記バイパス管路への浴水の通過とその停止の両方を薬剤濃度に基づいて制御する場合のみであるから、本願発明1は、上記(へ)で検討した解釈のように、「浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことが「定められた時間の間」なされるものではなく、上記(ほ)で検討した解釈のとおり、その時間が薬剤濃度に左右されるものと解される。つまり、本願発明1の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」における「所定時間」は、薬剤濃度に左右されるものであって、「定められた時間」という意味を持たないものであると解さざるを得ない。
(む)一方、刊行1発明の「電動三方弁」は、上記(き)によれば、「1日に1回、2時間」「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」するものであるといえるものの、刊行1発明は、「1日に1回、2時間」「電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」し、「この状態で」「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」するものであるから、刊行1発明の「電動三方弁」は、「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」することを、塩素剤注入装置による塩素注入の後に行うものではないといえる。
(め)刊行1発明の「電動三方弁」は、上記(む)で検討したとおり、「1日に1回、2時間」「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」するものであり、刊行1発明の「逆洗管兼バイパスライン」が、上記(ふ)で検討したように、本願発明1の「バイパス管路」に相当するものであることを踏まえると、本願発明1の「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」と、刊行1発明の「電動三方弁」とは、「所定時間の間浴水をバイパス管路を通過させる手段」である点で共通するものといえる。
(も)上記(は)?(め)で検討したところを踏まえると、本願発明1と刊行1発明とは、「浴水を濾過する濾過装置と、該濾過装置をバイパスするバイパス管路と、浴水に薬剤を注入する薬剤注入装置と、所定時間の間浴水をバイパス管路を通過させる手段と、を備える浴水浄化装置」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点i):本願発明1では、「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」を用いるのに対し、刊行1発明では、「1日に1回、2時間、電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態とし」ている点。
(相違点ii):本願発明1では、「浴水の薬剤濃度を測定する装置」を備え、「該薬剤濃度に基づいて、前記バイパス管路への浴水の通過或いはその停止の少なくとも一方を行わせる」のに対し、刊行1発明では、かかる特定がなされていない点。

[判断]
(や)上記(相違点i)と(相違点ii)を併せて検討する。
上記(相違点i)に係る本願発明1の発明特定事項である「該薬剤注入装置による薬剤注入の後所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる手段」は、「所定時間の間浴水を前記バイパス管路を通過させる」ことを「該薬剤注入装置による薬剤注入の後」に行うものといえる。
一方、刊行1発明の「電動三方弁」は、上記(む)で検討したように、「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」することを、塩素剤注入装置による塩素注入の後に行うものではない。
そして、刊行1発明は、「1日に1回、2時間」「電動三方弁の働きにより浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」し、「この状態で」「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」するものであるが、これは、刊行物1の記載アからみて、「浄化タンク内の有用微生物に害を与えることなく、」「浴水中の有害な菌を殺菌する」という目的のためのものであって、その目的のために、「1日に1回、2時間」という所定時間の間に、「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」することと、「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」することを、同時に行わせ、高濃度の塩素を含む浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環するようにしていることは明らかである。
(ゆ)ところで、バイパス管路を設けた水処理装置のバイパス制御において、被処理液中の薬剤濃度を測定する装置を設け、その薬剤濃度に基づいてバイパス管路への被処理水の通過或いはその停止の少なくとも一方を行わせることは、例えば、特開平11-178733号公報(以下、「周知例4」という。段落【0019】?【0023】等参照。)や、特開平7-328643号公報(以下、「周知例5」という。段落【0016】等参照。)に記載されているように周知の技術である。
そして、かかる周知の技術を、刊行1発明に照らしてみれば、かかる周知の技術の採用により、高濃度の塩素を含む浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環するようにすることが可能であって、「浄化タンク内の有用微生物に害を与えることなく、」「浴水中の有害な菌を殺菌する」という刊行1発明の上記目的を達成し得ることは、当業者には明らかであり、また、かかる周知の技術を採用すれば、刊行1発明において、「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」することと、「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」することを、同時に行わせることは、必ずしも必要とならないことも当業者には明らかであるから、刊行1発明において、かかる周知の技術を採用し、被処理液中の薬剤濃度を測定する装置を設け、その薬剤濃度に基づいてバイパス管路への被処理水の通過或いはその停止の少なくとも一方を行わせるとともに、「浴水が浄化タンクに流入、通過することなく、逆洗管兼バイパスラインを流れて浴槽へと循環する状態と」することを、「塩素剤注入装置により浴水に塩素を注入」することの後に行うこととし、上記(相違点i)及び(相違点ii)に係る本願発明1の発明特定事項を導出することは、当業者であれば容易に想到し得ることであると認められる。
(よ)そして、上記(相違点i)及び上記(相違点ii)に係る本願発明1の発明特定事項を採用することにより奏される本願明細書に記載の効果も、当業者の予測を越えるものとはいえない。

[本願発明1についての結論]
したがって、本願発明1すなわち本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、刊行1発明及び周知例4?5に例示される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上より、本願の特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-09 
結審通知日 2011-08-10 
審決日 2011-09-21 
出願番号 特願平11-256697
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三崎 仁赤樫 祐樹  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 斉藤 信人
目代 博茂
発明の名称 浴水浄化装置  
代理人 高橋 清  

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