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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1246048
審判番号 不服2010-21960  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-30 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2004-203047「無線デバイス、その製造方法、並びに無線装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月26日出願公開、特開2006- 24087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成16年7月9日に出願したものであって、平成22年3月11日付けで拒絶理由通知がなされたが意見書、補正書の提出はなく、同年7月1日付けで拒絶査定がなされたが、これに対し、同年9月30日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされた。
その後、平成23年4月22日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)に基づく審尋がなされ、回答書が提出されたものである。

第2 平成22年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年9月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正は、明細書及び特許請求の範囲について補正するものであるが、そのうち、特許請求の範囲の補正については、

本件補正前に、
「【請求項1】
絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成された信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有することを特徴とする無線デバイス。
【請求項2】
前記絶縁性基板がガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項3】
前記絶縁性基板がプラスチック基板であることを特徴とする請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項4】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成されたメモリを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項5】
前記メモリがROM、EEPROM、FeRAM、DRAM及びSRAMからなる群から選択された1のメモリであることを特徴とする請求項4に記載の無線デバイス。
【請求項6】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成された表示装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項7】
前記表示装置が液晶表示装置、有機EL表示装置及び無機EL表示装置からなる群から選択された1の表示装置であることを特徴とする請求項6に記載の無線デバイス。
【請求項8】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成された電源装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項9】
前記電源装置が太陽電池又はリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項8に記載の無線デバイス。
【請求項10】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成されたセンサーを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項11】
前記センサーが圧力センサー、加速度センサー、温度センサー、湿度センサー、においセンサー及び指紋センサーからなる群から選択された1のセンサーであることを特徴とする請求項10に記載の無線デバイス。
【請求項12】
前記絶縁性基板上に形成された機械式入出力装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項13】
前記機械式入出力装置がディップスイッチ、タッチパネル、マイクロホン及びスピーカーからなる群から選択された1の装置であることを特徴とする請求項12に記載の無線デバイス。
【請求項14】
前記絶縁性基板上に形成された他のアンテナを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項15】
前記他のアンテナが、前記アンテナが対応している通信周波数とは異なる通信周波数に対応していることを特徴とする請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項16】
前記他のアンテナが、ブースターアンテナであることを特徴とする請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項17】
前記絶縁性基板の厚さが200μm以下であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項18】
前記情報処理回路及び前記アンテナを覆うように設けられた保護フィルムを有することを特徴とする請求項17に記載の無線デバイス。
【請求項19】
前記アンテナがコイルアンテナであり、このアンテナの最外周を結んだ線で囲まれた領域の面積が1cm2以上であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項20】
前記アンテナがダイポールアンテナであり、このアンテナの長さが3cm以上であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項21】
前記絶縁性基板が表示装置の基板であることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項22】
相互に積層された複数の無線デバイスを有し、この無線デバイスが請求項1乃至21のいずれか1項に記載された無線デバイスであることを特徴とする無線装置。
【請求項23】
少なくとも2つの前記無線デバイス間の通信を無線通信によって行うことを特徴とする請求項22に記載の無線装置。
【請求項24】
少なくとも3つの前記無線デバイス間の通信を無線通信によって行い、一の対をなす前記無線デバイス間の無線通信は、他の対をなす前記無線デバイス間の無線通信とは異なる通信周波数で行うことを特徴とする請求項23に記載の無線装置。
【請求項25】
少なくとも3つの前記無線デバイス間の通信を無線通信によって行い、一の対をなす前記無線デバイス間の無線通信は、他の対をなす前記無線デバイス間の無線通信とは異なる変調方式で行うことを特徴とする請求項23に記載の無線装置。
【請求項26】
前記無線デバイス間又は最表層を構成する前記無線デバイスの外側に配置された補強部材を有することを特徴とする請求項22乃至25のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項27】
最表層を構成する前記無線デバイスが太陽電池を有することを特徴とする請求項22乃至26のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項28】
絶縁性基板上にTFT形成プロセスにより信号処理回路を形成する工程と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路に接続されるアンテナを形成する工程と、を有することを特徴とする無線デバイスの製造方法。
【請求項29】
前記アンテナを形成する工程は、前記信号処理回路を形成する工程の後、続けて実施されることを特徴とする請求項28に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項30】
前記絶縁性基板上にメモリを形成する工程を有することを特徴とする請求項28に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項31】
前記絶縁性基板上に表示装置を形成する工程を有することを特徴とする請求項28に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項32】
前記絶縁性基板上に電源装置を形成する工程を有することを特徴とする請求項28に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項33】
前記絶縁性基板上にセンサーを形成する工程を有することを特徴とする請求項28に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項34】
前記絶縁性基板上に機械式入出力装置を形成する工程を有することを特徴とする請求項28に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項35】
前記アンテナを形成する工程が、めっきプロセスにより配線を形成する工程を有することを特徴とする請求項28乃至34のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項36】
前記アンテナを形成する工程が、導電性ペーストを印刷することにより配線を形成する工程を有することを特徴とする請求項28乃至34のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項37】
前記絶縁性基板を前記信号処理回路及び前記アンテナが形成されていない側からエッチングして薄型化する工程を有することを特徴とする請求項28乃至36のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項38】
前記信号処理回路を形成する工程は、1枚の前記絶縁性基板上に複数の前記信号処理回路を形成する工程であり、前記アンテナを形成する工程は、前記1枚の絶縁性基板上に前記複数の信号処理回路に対応させて複数のアンテナを形成する工程であり、各1個の前記信号処理回路及び前記アンテナからなる組毎に前記絶縁性基板を切り分ける工程を有することを特徴とする請求項28乃至37のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項39】
前記アンテナを形成する工程と前記絶縁性基板を切り分ける工程との間に、前記無線デバイスの良否を検査する検査工程を有することを特徴とする請求項38に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項40】
前記検査工程が、導電材料からなり1個又は相互に離隔して形成された複数個の前記無線デバイスに相当する領域に夫々開口部が形成された導電板の位置を前記絶縁性基板に対して調整し、前記開口部を前記1個又は複数個の無線デバイスに整合する位置に位置させる工程と、前記1個又は複数個の無線デバイスに無線により検査用信号を入出力させて前記1個又は複数個の無線デバイスを検査する工程と、を有することを特徴とする請求項39に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項41】
前記1個又は複数個の無線デバイスの検査が終了した後に、前記導電板と前記絶縁性基板とを相互に相対的に移動させて前記開口部を他の1個又は複数個の前記無線デバイスに整合する位置に位置させる工程と、前記他の1個又は複数個の無線デバイスの検査を行う工程と、を有することを特徴とする請求項40に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項42】
前記導電板と前記絶縁性基板とを相互に相対的に移動させながら、複数の前記無線デバイスを順次検査することを特徴とする請求項40に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項43】
前記絶縁性基板がシート状の基板であり、前記絶縁性基板と前記導電板との間の相対的な移動は、前記絶縁性基板を一のロールから他のロールに送出することによって行うことを特徴とする請求項41又は42に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項44】
無線デバイスを作製する工程と、複数の前記無線デバイスを相互に積層して相互に固定する工程と、を有し、前記無線デバイスを作製する工程は、請求項28乃至43のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法により実施されることを特徴とする無線装置の製造方法。
【請求項45】
前記無線デバイスを固定する工程は、室温硬化型の接着剤により前記複数の無線デバイスを相互に接着する工程であることを特徴とする請求項44に記載の無線装置の製造方法。
【請求項46】
前記室温硬化型の接着剤が、紫外線により硬化するUV接着剤又は嫌気性の接着剤であることを特徴とする請求項45に記載の無線装置の製造方法。
【請求項47】
前記無線デバイスを固定する工程は、前記複数の無線デバイスを粘着材により相互に接合する工程であることを特徴とする請求項44に記載の無線装置の製造方法。
【請求項48】
前記無線デバイスを固定する工程は、前記複数の無線デバイスを着脱可能に固定する工程であることを特徴とする請求項44に記載の無線装置の製造方法。
【請求項49】
クリップにより前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項48に記載の無線装置の製造方法。
【請求項50】
ねじにより前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項48に記載の無線装置の製造方法。
【請求項51】
紫外線照射により粘着力を失う粘着材により前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項48に記載の無線装置の製造方法。
【請求項52】
加熱により粘着力を失う粘着材により前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項48に記載の無線装置の製造方法。
【請求項53】
前記無線デバイスを固定する工程において、各前記無線デバイスの反りを相殺するように各前記無線デバイスの表裏を調整して前記複数の無線デバイスを積層することを特徴とする請求項44乃至52のいずれか1項に記載の無線装置の製造方法。
【請求項54】
前記無線デバイスを作製する工程が、シート状の絶縁性基板上に前記情報処置回路及び前記アンテナを形成する工程と、前記シート状の絶縁性基板をロールに巻き取る工程と、を有し、前記無線デバイスを固定する工程が、前記シート状の絶縁性基板をロールから引き出し、この引き出した部分同士を重ね合わせて相互に固定する工程を有することを特徴とする請求項44乃至53のいずれか1項に記載の無線装置の製造方法。
【請求項55】
前記無線デバイスを固定する工程が、前記相互に固定されたシート状の絶縁性基板を他のロールに巻き取る工程を有することを特徴とする請求項54に記載の無線装置の製造方法。
【請求項56】
前記無線デバイスを作製する工程が、前記絶縁性基板上に前記信号処置回路及び前記アンテナからなる組を複数形成する工程を有し、前記無線デバイスを固定する工程が、前記相互に固定された絶縁性基板を前記組毎に切り分ける工程を有することを特徴とする請求項44乃至55のいずれか1項に記載の無線装置の製造方法。
【請求項57】
絶縁性基板上に信号処理回路及びアンテナを備えた無線デバイスが複数個形成された無線デバイスシートに対して、導電材料からなり1個又は相互に離隔して形成された複数個の前記無線デバイスに相当する領域に夫々開口部が形成された導電板の位置を調整し、前記開口部を前記1個又は複数個の無線デバイスに整合する位置に位置させる工程と、前記1個又は複数個の無線デバイスに無線により検査用信号を入出力させて前記1個又は複数個の無線デバイスを検査する工程と、を有することを特徴とする無線デバイスの検査方法。
【請求項58】
前記1個又は複数個の無線デバイスの検査が終了した後に、前記導電板と前記無線デバイスシートとを相互に相対的に移動させて前記開口部を他の1個又は複数個の前記無線デバイスに整合する位置に位置させる工程と、前記他の1個又は複数個の無線デバイスの検査を行う工程と、を有することを特徴とする請求項57に記載の無線デバイスの検査方法。
【請求項59】
前記導電板と前記無線デバイスシートとを相互に相対的に移動させて複数の前記無線デバイスを順次検査することを特徴とする請求項57に記載の無線デバイスの検査方法。
【請求項60】
前記無線デバイスシートと前記導電板との間の相対的な移動は、前記無線デバイスシートを一のロールから他のロールに送出することによって行うことを特徴とする請求項58又は59に記載の無線デバイスの検査方法。
【請求項61】
絶縁性基板上に信号処理回路及びアンテナを備えた無線デバイスが複数個形成された無線デバイスシートを構成する各前記無線デバイスを検査する検査装置において、導電材料からなり1個又は相互に離隔して形成された複数個の前記無線デバイスに相当する領域に夫々開口部が形成されており、この開口部が検査対象となる前記1個又は複数個の無線デバイスに整合する位置に位置される導電板と、前記無線デバイスに対して無線により検査用信号を入出力させるリーダ/ライタと、を有することを特徴とする無線デバイスの検査装置。」
とあったところを、

「【請求項1】
ガラスからなる絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタを含む信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有し、
前記アンテナは、電解めっき法、又は、無電解めっき法により形成されていることを特徴とする無線デバイス。
【請求項2】
ガラスからなる絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、多結晶シリコン膜からなるトランジスタを含む信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有し、
前記アンテナは、前記アンテナのパターン形状に開口部が設けられたマスク上に導電性ペーストを配置し、前記導電性ペーストを前記マスクの開口部から押し出して前記絶縁性基板上に前記パターン形状に塗布する印刷法により形成されていることを特徴とする無線デバイス。
【請求項3】
前記絶縁性基板は、前記信号処理回路と前記アンテナとが形成されていない側の面に積層されたフレキシブルフィルムを有し、かつ、前記絶縁性基板の厚さが200μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線デバイス。
【請求項4】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成されたメモリを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項5】
前記メモリがROM、EEPROM、FeRAM、DRAM及びSRAMからなる群から選択された1のメモリであることを特徴とする請求項4に記載の無線デバイス。
【請求項6】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成された表示装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項7】
前記表示装置が液晶表示装置、有機EL表示装置及び無機EL表示装置からなる群から選択された1の表示装置であることを特徴とする請求項6に記載の無線デバイス。
【請求項8】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成された電源装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項9】
前記電源装置が太陽電池又はリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項8に記載の無線デバイス。
【請求項10】
前記絶縁性基板上に前記信号処理回路及び前記アンテナと一体的に形成されたセンサーを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項11】
前記センサーが圧力センサー、加速度センサー、温度センサー、湿度センサー、においセンサー及び指紋センサーからなる群から選択された1のセンサーであることを特徴とする請求項10に記載の無線デバイス。
【請求項12】
前記絶縁性基板上に形成された機械式入出力装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項13】
前記機械式入出力装置がディップスイッチ、タッチパネル、マイクロホン及びスピーカーからなる群から選択された1の装置であることを特徴とする請求項12に記載の無線デバイス。
【請求項14】
前記絶縁性基板上に形成された他のアンテナを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項15】
前記他のアンテナが、前記アンテナが対応している通信周波数とは異なる通信周波数に対応していることを特徴とする請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項16】
前記他のアンテナが、ブースターアンテナであることを特徴とする請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項17】
前記情報処理回路及び前記アンテナを覆うように設けられた保護フィルムを有することを特徴とする請求項3に記載の無線デバイス。
【請求項18】
前記アンテナがコイルアンテナであり、このアンテナの最外周を結んだ線で囲まれた領域の面積が1cm2以上であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項19】
前記アンテナがダイポールアンテナであり、このアンテナの長さが3cm以上であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項20】
前記絶縁性基板が表示装置の基板であることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の無線デバイス。
【請求項21】
相互に積層された複数の無線デバイスを有し、この無線デバイスが請求項1乃至20のいずれか1項に記載された無線デバイスであることを特徴とする無線装置。
【請求項22】
少なくとも2つの前記無線デバイス間の通信を無線通信によって行うことを特徴とする請求項21に記載の無線装置。
【請求項23】
少なくとも3つの前記無線デバイス間の通信を無線通信によって行い、一の対をなす前記無線デバイス間の無線通信は、他の対をなす前記無線デバイス間の無線通信とは異なる通信周波数で行うことを特徴とする請求項22に記載の無線装置。
【請求項24】
少なくとも3つの前記無線デバイス間の通信を無線通信によって行い、一の対をなす前記無線デバイス間の無線通信は、他の対をなす前記無線デバイス間の無線通信とは異なる変調方式で行うことを特徴とする請求項22に記載の無線装置。
【請求項25】
前記無線デバイス間又は最表層を構成する前記無線デバイスの外側に配置された補強部材を有することを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項26】
最表層を構成する前記無線デバイスが太陽電池を有することを特徴とする請求項21乃至25のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項27】
ガラスからなる絶縁性基板上に、CVD法又はスパッタリング法により非晶質シリコン膜を形成し、該非晶質シリコン膜をレーザーアニールすることにより多結晶シリコン膜を形成し、該多結晶シリコン膜から薄膜トランジスタを形成するTFT形成プロセスにより信号処理回路を形成する工程と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路に接続される無線通信用のアンテナを形成する工程と、を有し、
前記CVD法又はスパッタリング法は、前記ガラスからなる絶縁性基板の耐熱温度である400℃以下の温度で行うことを特徴とする無線デバイスの製造方法。
【請求項28】
前記アンテナを形成する工程は、前記信号処理回路を形成する工程の後、続けて実施されることを特徴とする請求項27に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項29】
前記絶縁性基板上にメモリを形成する工程を有することを特徴とする請求項27に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項30】
前記絶縁性基板上に表示装置を形成する工程を有することを特徴とする請求項27に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項31】
前記絶縁性基板上に電源装置を形成する工程を有することを特徴とする請求項27に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項32】
前記絶縁性基板上にセンサーを形成する工程を有することを特徴とする請求項27に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項33】
前記絶縁性基板上に機械式入出力装置を形成する工程を有することを特徴とする請求項27に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項34】
前記アンテナを形成する工程が、電解めっき法、又は、無電解めっき法によって、前記アンテナとなる配線を形成する工程を有することを特徴とする請求項27乃至33のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項35】
ガラスからなる絶縁性基板上に、CVD法又はスパッタリング法により非晶質シリコン膜を形成し、該非晶質シリコン膜をレーザーアニールすることにより多結晶シリコン膜を形成し、該多結晶シリコン膜から薄膜トランジスタを形成するTFT形成プロセスにより信号処理回路を形成する工程と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路に接続される無線通信用のアンテナを形成する工程と、を有し、
前記アンテナを形成する工程が、前記アンテナのパターン形状に開口部が設けられたマスク上に導電性ペーストを配置し、前記導電性ペーストを前記マスクの開口部から押し出して前記絶縁性基板上に前記パターン形状に塗布して印刷することによりアンテナとなる配線を形成する工程を有することを特徴とする無線デバイスの製造方法。
【請求項36】
前記絶縁性基板を前記信号処理回路及び前記アンテナが形成されていない側からエッチングして薄型化する工程を有することを特徴とする請求項27乃至35のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項37】
前記信号処理回路を形成する工程は、1枚の前記絶縁性基板上に複数の前記信号処理回路を形成する工程であり、前記アンテナを形成する工程は、前記1枚の絶縁性基板上に前記複数の信号処理回路に対応させて複数のアンテナを形成する工程であり、各1個の前記信号処理回路及び前記アンテナからなる組毎に前記絶縁性基板を切り分ける工程を有することを特徴とする請求項27乃至36のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項38】
前記アンテナを形成する工程と前記絶縁性基板を切り分ける工程との間に、前記無線デバイスの良否を検査する検査工程を有することを特徴とする請求項37に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項39】
前記検査工程が、導電材料からなり1個又は相互に離隔して形成された複数個の前記無線デバイスに相当する領域に夫々開口部が形成された導電板の位置を前記絶縁性基板に対して調整し、前記開口部を前記1個又は複数個の無線デバイスに整合する位置に位置させる工程と、前記1個又は複数個の無線デバイスに無線により検査用信号を入出力させて前記1個又は複数個の無線デバイスを検査する工程と、を有することを特徴とする請求項38に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項40】
前記1個又は複数個の無線デバイスの検査が終了した後に、前記導電板と前記絶縁性基板とを相互に相対的に移動させて前記開口部を他の1個又は複数個の前記無線デバイスに整合する位置に位置させる工程と、前記他の1個又は複数個の無線デバイスの検査を行う工程と、を有することを特徴とする請求項39に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項41】
前記導電板と前記絶縁性基板とを相互に相対的に移動させながら、複数の前記無線デバイスを順次検査することを特徴とする請求項39に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項42】
前記絶縁性基板がシート状の基板であり、前記絶縁性基板と前記導電板との間の相対的な移動は、前記絶縁性基板を一のロールから他のロールに送出することによって行うことを特徴とする請求項40又は41に記載の無線デバイスの製造方法。
【請求項43】
無線デバイスを作製する工程と、複数の前記無線デバイスを相互に積層して相互に固定する工程と、を有し、前記無線デバイスを作製する工程は、請求項27乃至42のいずれか1項に記載の無線デバイスの製造方法により実施されることを特徴とする無線装置の製造方法。
【請求項44】
前記無線デバイスを固定する工程は、室温硬化型の接着剤により前記複数の無線デバイスを相互に接着する工程であることを特徴とする請求項43に記載の無線装置の製造方法。
【請求項45】
前記室温硬化型の接着剤が、紫外線により硬化するUV接着剤又は嫌気性の接着剤であることを特徴とする請求項44に記載の無線装置の製造方法。
【請求項46】
前記無線デバイスを固定する工程は、前記複数の無線デバイスを粘着材により相互に接合する工程であることを特徴とする請求項43に記載の無線装置の製造方法。
【請求項47】
前記無線デバイスを固定する工程は、前記複数の無線デバイスを着脱可能に固定する工程であることを特徴とする請求項43に記載の無線装置の製造方法。
【請求項48】
クリップにより前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項47に記載の無線装置の製造方法。
【請求項49】
ねじにより前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項47に記載の無線装置の製造方法。
【請求項50】
紫外線照射により粘着力を失う粘着材により前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項47に記載の無線装置の製造方法。
【請求項51】
加熱により粘着力を失う粘着材により前記複数の無線デバイスを相互に固定することを特徴とする請求項47に記載の無線装置の製造方法。
【請求項52】
前記無線デバイスを固定する工程において、各前記無線デバイスの反りを相殺するように各前記無線デバイスの表裏を調整して前記複数の無線デバイスを積層することを特徴とする請求項43乃至51のいずれか1項に記載の無線装置の製造方法。
【請求項53】
前記無線デバイスを作製する工程が、シート状の絶縁性基板上に前記情報処置回路及び前記アンテナを形成する工程と、前記シート状の絶縁性基板をロールに巻き取る工程と、を有し、前記無線デバイスを固定する工程が、前記シート状の絶縁性基板をロールから引き出し、この引き出した部分同士を重ね合わせて相互に固定する工程を有することを特徴とする請求項43乃至52のいずれか1項に記載の無線装置の製造方法。
【請求項54】
前記無線デバイスを固定する工程が、前記相互に固定されたシート状の絶縁性基板を他のロールに巻き取る工程を有することを特徴とする請求項53に記載の無線装置の製造方法。
【請求項55】
前記無線デバイスを作製する工程が、前記絶縁性基板上に前記信号処置回路及び前記アンテナからなる組を複数形成する工程を有し、前記無線デバイスを固定する工程が、前記相互に固定された絶縁性基板を前記組毎に切り分ける工程を有することを特徴とする請求項43乃至54のいずれか1項に記載の無線装置の製造方法。」
とするものである。

そこで本件補正について検討するに、

ア 本件補正により補正された請求項1は、補正前の請求項1に、「絶縁性基板」、「信号処理回路」とあったところを、それぞれ、「ガラスからなる絶縁性基板」、「多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタを含む信号処理回路」と限定し、「無線通信用のアンテナ」について、「前記アンテナは、電解めっき法、又は、無電解めっき法により形成されている」と限定するものである。

イ 本件補正により補正された請求項2は、補正前の請求項2が引用する補正前の請求項1に記載された「信号処理回路」について、本件補正により補正された請求項1と同様の補正をするとともに(上記ア 参照)、補正前の請求項2に記載された「前記絶縁性基板がガラス基板であること」なる表現を、本件補正により補正された請求項1と同様の、「ガラスからなる絶縁性基板」とし、さらに、補正前の請求項2が引用する補正前の請求項1に記載された、「アンテナ」について、「前記アンテナは、前記アンテナのパターン形状に開口部が設けられたマスク上に導電性ペーストを配置し、前記導電性ペーストを前記マスクの開口部から押し出して前記絶縁性基板上に前記パターン形状に塗布する印刷法により形成されていることを特徴とする」と限定して、独立形式請求項とするものである。

ウ 本件補正により補正された請求項3は、本件補正により補正された請求項1又は2を引用し、絶縁性基板について、「前記絶縁性基板は、前記信号処理回路と前記アンテナとが形成されていない側の面に積層されたフレキシブルフィルムを有し、かつ、前記絶縁性基板の厚さが200μm以下であることを特徴とする」と限定するものである。

エ 本件補正により補正された請求項27は、補正前の請求項28に、「絶縁性基板上に」、「TFT形成プロセスにより」、「アンテナ」とあったところを、「ガラスからなる絶縁性基板上に」 、「CVD法又はスパッタリング法により非晶質シリコン膜を形成し、該非晶質シリコン膜をレーザーアニールすることにより多結晶シリコン膜を形成し、該多結晶シリコン膜から薄膜トランジスタを形成するTFT形成プロセスにより」、「無線通信用のアンテナ」と、それぞれ限定するとともに、さらに、「前記CVD法又はスパッタリング法は、前記ガラスからなる絶縁性基板の耐熱温度である400℃以下の温度で行う」と限定するものである。

オ 本件補正により補正された請求項34は、補正前の請求項35に「めっきプロセスにより配線を形成する工程」とあったところを、「電解めっき法、又は、無電解めっき法によって、前記アンテナとなる配線を形成する工程」と限定するものである。

カ 本件補正により補正された請求項35は、補正前の請求項36が引用する補正前の請求項28に記載された、「絶縁性基板上に」、「TFT形成プロセスにより」、「アンテナ」について、本件補正により補正された請求項27と同様の補正をするとともに(上記エ 参照)、補正前の請求項36に「アンテナを形成する工程が、導電性ペーストを印刷することにより配線を形成する工程を有する」とあったところを、「前記アンテナのパターン形状に開口部が設けられたマスク上に導電性ペーストを配置し、前記導電性ペーストを前記マスクの開口部から押し出して前記絶縁性基板上に前記パターン形状に塗布して印刷することによりアンテナとなる配線を形成する工程を有する」と限定するものである。

キ 本件補正は、補正前の請求項57ないし請求項61を削除するものである。

ク 本件補正の請求項17ないし55については、補正前の請求項17の発明特定事項を本件補正により補正された請求項3の発明特定事項の一部として補正前の請求項17を削除したため、補正前の請求項18ないし56に付した番号を1繰り上げる形式的な補正をするとともに、本件補正の請求項17ないし55のうち引用形式を用いて記載された請求項については、引用する請求項に付した番号を形式的に補正するものである。

よって、本件補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるか、または、請求項を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するか、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除に該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、次に記載するとおりのものである。

「ガラスからなる絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタを含む信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有し、
前記アンテナは、電解めっき法、又は、無電解めっき法により形成されていることを特徴とする無線デバイス。」

ところで、本願補正発明には、「前記アンテナは、電解めっき法、又は、無電解めっき法により形成されている」という選択的な記載があり、この選択的記載で表現されるアンテナの形成方法としては、
(1)「前記アンテナは、電解めっき法により形成されている」
(2)「前記アンテナは、無電解めっき法により形成されている」
のいずかを含むものであるから、本件補正発明を (1)「前記アンテナは、電解めっき法により形成されている」として、すなわち、
「ガラスからなる絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタを含む信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有し、
前記アンテナは、電解めっき法により形成されていることを特徴とする無線デバイス。」として以下検討する。

2 引用例及びその記載

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日の前に頒布された刊行物である特開2003-92475号公報(平成15年3月28日公開、以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、各種の通信機器、コンピュータ関連機器、更にはセンサー機器等の電子機器に使用されるプリント配線基板に関するものであり、特に、電磁干渉抑制機能を備え、平坦な表面を有するプラスチック積層プリント基板に関するものである。」

(b)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、上記した従来の技術が抱えている種々の問題点を克服し、低廉で小型、多機能化の要求に対応でき、柔軟で形状対応性が高くかつ数百MHz?GHzレベルの高周波化に伴う電磁波障害防止機能をも十分に兼ね備えたプラスチック積層プリント基板を提供することである。
【0009】又、本発明の更なる解決課題は、近い将来の電子機器分野で大幅な低廉化の可能性が期待され、今日注目を浴びてきている有機半導体プロセスに対しても十分適用可能で、表面に好適な平坦性を有する柔軟なプラスチック積層プリント基板を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、柔軟性を有するプラスチック基材をべース基板とし、積層導電回路パターン及びパッシブ、アクティブ機能素子、更には電磁干渉抑制層を有機体の印刷手法によって形成しようとするものである。」

(c)「【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態につき詳述する。
【0022】図1は、本発明の柔軟なプラスチック積層プリント基板の基本的な製造プロセスを説明するための断面図である。図1(a)に、柔軟なプラスチックシート基材1(以下、基材と略称する)を示し、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)等からなるロール状又は原反状シートの形態をとるものである。
【0023】図1(b)に、基材1上に下層電磁干渉抑制体層2を5?10μmの厚さで全面塗布形成した状態を示す。ここで、形成手段としては、印刷手法の一種であるドクターブレード手法による塗布と200℃以下の不活性ガス雰囲気下での温風乾燥による固化を行い、電磁干渉抑制体材料には、扁平状のFe-Si-Al系合金粉末を所定のポリマー及び有機溶剤と共に混練してぺースト状にして使用した。尚、本プロセスは、電磁干渉抑制体材料を適宜有機溶剤で粘度を調整して凸版、凹版その他の直接印刷手段或いはインクジェット手段等によって実施しても良い。
【0024】図1(c)に、図1(b)で形成された下層電磁干渉抑制体層2の上に、絶縁体層3を全面塗布形成した状態を示す。ここで、形成手段は上記同様の一般的印刷手法のいずれかを用い、絶縁体層3の材料としては、PIやポリビニルフェノール(PVP)或いは平坦牲に優れたベンゾシクロブテン(BCB)等の一般的ソルダーレジスト類を用いることができる。
【0025】図1(d)に、図1(c)の絶縁体層3上に導電体層としてC(容量)素子の下部電極4、R(抵抗)素子5、L(インダクタンス)素子6、信号又はグランドライン配線7、電源ライン配線8、更には金属-絶縁体-半導体(MIS)構造のトランジスター素子のソース電極9及びドレイン電極10を所定形状で形成した状態を示す。
【0026】ここで、各導電体層の形成手段としては、上記同様の一般的印刷手法のいずれかを用い、導電体層の材料としては、銀や銅を主成分とする金属ぺーストやポリアニリン(PA)等の導電性高分子材料を用いることができる。
【0027】又ここで、C素子に関しては、次のプロセスで形成される絶縁体層(誘電体層)の比誘電率と厚みを考慮して、静電容量要求値が得られるように下部電極4の面積、形状が決定され、R素子5に関しては、導電体層の比抵抗と厚みを考慮して所望低抗値が得られるように形状(幅、長さ)が決定され、L素子6に関しては、導電体層の比抵抗、断面積を考慮して所望インダクタンス値が得られるようにコイルの渦巻き条件等の形状が決定されることは当然のことである。
【0028】図1(e)に、図1(d)の各導電体層の上に、それぞれの素子或いは配線の構造形成のために開口が必要な部分のみを除いて、層間絶縁体層11を形成した状態を示す。手段及び材料は図1(c)で示した絶縁体層3と同様である。
【0029】図1(f)に、MISトランジスターの半導体層12とゲート絶縁膜層13を印刷手法により形成した状態を示す。半導体層12の材料としては、有機半導体材料であるCuフタロシアニン(CuPC)等を用い、ゲート絶縁膜層13にはPI、BCB等を用いることができる。
【0030】図1(g)に、図1(d)で示したと同様の手段及び材料を用いて、各導電体層即ちC素子の上部電極14、R素子5の引出し配線15、L素子6の引出し配線16、信号又はグランドライン配線7の引出し配線17、更にはMISトランジスターのゲート電極18を同時に形成した状態を示す。
【0031】図1(h)に、図1(g)のプロセス終了後、図1(c)で示したと同様の手段及び材料を用いて、絶縁体層19を形成した状態を示す。
【0032】図1(i)に、更に絶縁体層19の上に、図1(b)で示したと同様の手段及び材料を用いて、上層電磁干渉抑制体層20を形成した状態を示す。
【0033】図1(j)に、図1(i)のプロセスを終了した後、最上層に表面保護絶縁体層21を上記と同様の印刷手法で形成し、本発明の柔軟なプラスチック積層プリント基板を完成した状態を示す。ここでは、表面保護絶縁体層21にBCB樹脂を用いることが極めて重要なポイントである。その理由は、凹凸形状面にBCBモノマー誘導体樹脂を塗布、乾燥してBCB樹脂膜となした場合、抜群の平坦性を呈するという特長を有するからである。例えば、深さ10μmの凹溝にBCBを適用した場合、凹凸段差は1μm以下に抑えることができる。
【0034】以上説明したように、図1(j)に示した本発明の柔軟なプラスチック積層プリント基板は、パッシブ及びアクティブ構成要素を含んだ機能レベルの高い形態の積層配線回路領域を上下から電磁干渉抑制体層で挟み込むようにして電磁干渉抑制機能を保持すると同時に、優れた平坦性を有する主表面を具備するものである。

(d)「【0054】図8に、本発明の更に他の実施の形態として、シート或いはラベル状情報記録媒体であるフレキシブルICタグヘの適用例について述べる。
【0055】図8(a)は、フレキシブルICタグの平面図であり、信号送受信用アンテナコイル203と信号処理機能部201及びパッシブ素子を含んだ回路配線部202がフレキシブルな基体内に形成された基本構成である。
【0056】図8(b)は、図8(a)のA-A断面図であり、製造プロセスは有機材料の印刷積層手法を中心とした、上記の図1で示した本発明の柔軟なプラスチック積層プリント基板の基本製造プロセスを用い、具体的にはPU樹脂やPI樹脂等からなるフレキシブルな絶縁体からなるべースとなる基材1の表面に、下層電磁干渉抑制体層2a、絶縁体層3、その上に導電体層としてアンテナコイル203、信号処理機能部201及び回路配線部202の導電体パターンを形成、更に絶縁体、導電体、半導体の印刷積層を繰り返して機能部の構造を完成した後、絶縁体層19、上層電磁干渉抑制体層20a、パッシベーションを兼ねた表面保護絶縁体層21を形成してICタグの基本構造を完成できる。
【0057】尚、ここで電磁干渉抑制体層2a及び20aの材料としては、株式会社トーキン製商品名「バスタレイド」を使用した。
【0058】本発明は、上記のICタグの例に限らず、例えば、ICカードや光、磁気、誘電体及びこれらの複合型のカード状、シート状、ラベル状等のあらゆる情報記録媒体に対しても適用可能である。」

(e)「【0061】尚、上記の実施の形態においては、有機体を用いた印刷一貫プロセスに関してのみ記述したが、これに限らず一部無機プロセスに置き換えたプロセスであっても、又基材が柔軟性を持ったものに限らず、ガラスエポキシやべークライト等からなる硬い材料であっても本発明の内容を適用することが可能であり、要求課題に対し従来よりもはるかに改善されるものである。特に、磁性体金属とセラミックのスパッタリングを施して、電磁干渉抑制機能を与えたプラスチックシートを基材として印刷、積層としても良く、この方法では、電磁干渉抑制体を、より薄くでき、フレキシブル性も良好となる。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、柔軟で形状対応性が良く、複雑な空間にも適用が可能で、電磁波抑制能力を有し、誤動作や他の機器への電磁妨害も起こさず、表面の平坦性が良好であるため、ほとんどの機能素子との融合が可能であり、よって、あらゆる電子機器への適用も可能となり、更に製造プロセスが単純で大面積の加工が容易な上、極めて廉価な柔軟なプラスチック積層プリント基板を提供することができる。
【0063】又、プロセス温度の上限がせいぜい200?250℃程度と、従来の単結晶シリコン或いはアモルファス材料を使用した、いわゆる無機プロセスに比べ、著しく低いことや完成後に特性のコントロールが可能である等、メリットは計り知れない。」

(f)引用例の図面第8図(a)には、基材をICタグに適用した例として(上記(c)段落【0055】参照)、信号送受信用アンテナコイル203が、信号処理機能部201とパッシブ素子を含んだ回路配線部202を含む回路ブロックに接続されていることが示されている。

上記引用例に記載された事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「ガラスエポキシやべークライト等の基材と、この基材上に下層電磁干渉抑制体層、絶縁体層を設け、さらにこの絶縁体層上に導電体層として、C(容量)素子の下部電極、R(抵抗)素子、L(インダクタンス)素子、信号又はグランドライン配線、電源ライン配線、更には金属-絶縁体-半導体(MIS)構造のトランジスター素子のソース電極及びドレイン電極を所定形状で形成し、各導電体層の上にそれぞれの素子或いは配線の構造形成のために開口が必要な部分のみを除いて、層間絶縁体層を形成し、次に、MISトランジスターの半導体層とゲート絶縁膜層を印刷手法により形成し、各導電体層即ちC素子の上部電極、R素子の引出し配線、L素子の引出し配線、信号又はグランドライン配線の引出し配線、更にはMISトランジスターのゲート電極を同時に形成し、次に絶縁体層を形成するものであって、
この基材をICカードに適用して、基材の表面に、下層電磁干渉抑制体層、絶縁体層、その上に導電体層として信号送受信用アンテナコイル、信号処理機能部及びパッシブ素子を含んだ回路配線部の導電体パターンを形成し、更に絶縁体、導電体、半導体の印刷積層を繰り返して機能部の構造を完成させ、信号処理機能部とパッシブ素子を含んだ回路配線部を含む回路ブロックに接続された信号送受信用アンテナコイルを有する、ICカード。」

3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)非接触型のICカードは、一般に、内蔵されたアンテナを用いて、無線により信号の送受を行うものであり、引用発明の「信号送受信用アンテナコイルを有する、ICカード」は非接触型ICカードに属するものであるから、本願発明の「無線デバイス」に相当する。

(2)引用発明の「ガラスエポキシやべークライト等の基材」は、絶縁性を有することが明らかであるから、引用発明の「ガラスエポキシやべークライト等の基材」は、本願発明の「絶縁性基板」に相当する。

(3)引用発明は、基体表面に下層電磁干渉抑制体層が形成されており、一方、本願発明も、本願明細書の発明の実施の形態の段落【0089】、図6によれば、絶縁性基板表面にバリア膜が設けられているので、本願発明の「絶縁性基板上に形成される」「トランジスタ」は、絶縁性基板の上方に形成されるものを意味すると解されるから、引用発明の「基体上に」に形成される「トランジスター」は、本願発明の「絶縁性基板上に形成される」「トランジスタ」に相当する。

(4)引用発明は、トランジスターが形成された基材を、信号処理機能部を備えるICカードに適用するものであり、一方、信号処理をトランジスターを用いて行うことは常套手段であるから、引用発明の「信号処理機能部」は本願発明の「トランジスタを含む信号処理回路」と同等のものである。

(5)引用発明においても、アンテナコイルにより信号を送受信することから、信号送受信用アンテナコイルが、信号処理機能部に接続されているか、または、パッシブ回路を含んだ回路配線部を介して信号処理機能部と接続されていると解され、いずれの接続であっても引用発明の「信号処理機能部」はアンテナコイルに接続されるものといえるから、引用発明の「信号処理機能部とパッシブ素子を含んだ回路配線部を含む回路ブロックに接続された信号送受信用アンテナコイル」は、本願発明の「前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナ」に相当する。

(6)引用例の図面第8図(b)を参照すると、絶縁体層3の上に形成された、アンテナコイル203、信号処理機能部201及び回路配線部202の導電体パターン、及びさらに形成される絶縁体、導電体、半導体の印刷積層は、印刷積層手法を中心とした製造プロセスを用いて形成されることから(上記2(d)段落【0056】参照)、引用発明も、基材に形成された絶縁体層の上に、アンテナコイル、信号処理機能部が一連の製造プロセスにより形成されることは明らかである。したがって、引用発明において「基材の表面に、下層電磁干渉抑制体層、絶縁体層、その上に導電体層として信号送受信用アンテナコイル、信号処理機能部及びパッシブ素子を含んだ回路配線部の導電体パターンを形成」したものは、本願発明の「前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され」た「無線通信用のアンテナ」を備えるものである。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、トランジスタを含む信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有する無線デバイス。」


<相違点>

(ア)本願補正発明は、絶縁性基板について、「ガラスからなる」絶縁性基板と特定しているのに対し、引用発明は「ガラスからなる」ことについて特定がない点。

(イ) 本願補正発明は、信号処理回路に含まれるトランジスタについて、「多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタ」と特定しているのに対し、引用発明のトランジスターは、「多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタ」ではない点。

(ウ) 本願補正発明は、アンテナについて、「電解めっき法により形成されている」と特定しているのに対し、引用発明は、アンテナの形成について特定がない点。

4 判断

<相違点>(ア)について
一般に、トランジスタ等が形成される絶縁性基板として、「ガラスからなる」絶縁性基板を用いることは周知技術であり(例えば、本件の前置報告書において提示された、特開2003-188181号公報(段落【0027】(低融点ガラスからなる絶縁基板を用いる点)、図面第1図参照)、また、引用例の段落【0061】(上記2(e)参照)には、基材が柔軟性を持ったものに限らず、ガラスエポキシやべークライト等からなる硬い材料であっても本発明の内容を適用することが可能であることが記載されているから、本願発明の絶縁性基板に相当する引用発明の基材に、硬い材料として周知な「ガラス」を用いることは当業者が適宜なし得る事項である。

<相違点>(イ)について
信号処理回路に含まれるトランジスタについて、「多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタ」を用いることは周知技術である(例えば、上記特開2003-188181号公報(段落【0033】ないし段落【0039】(低融点ガラスからなる絶縁基板に、多結晶シリコンからなる半導体薄膜3、ゲート酸化膜4、ゲート電極5を作成し、半導体薄膜3にイオンを注入して薄膜トランジスタを形成する点)参照)。
そして、引用例の段落【0029】(上記2 (c)参照)には、トランジスターの半導体層の材料として有機半導体材料を用いることが記載されているものの、同段落【0061】(上記2 (e)参照)には、製造プロセスにおいて、一部を無機プロセスに置き換えたプロセスであってもよいことが記載されているから、引用発明において、トランジスタとして周知な「多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタ」を含む信号処理回路とすることに格別の困難性を有しない。

<相違点>(ウ)について
一般に、絶縁層の表面に、電解メッキ法でアンテナを形成することは周知技術であるから(例えば、本件の前置報告書において提示された、特開2001-28036号(段落【0034】(電解めっきによりアンテナパターンを形成する点)参照)、引用発明に形成される信号送受信用アンテナコイルを電解メッキ法で形成することは当業者が適宜なし得る事項である。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用例及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

付言
参考までに、回答書において補正案として示された請求項1について以下に検討する。
回答書において補正案に示された請求項1は、アンテナの形成について、本願補正発明の発明特定事項である「前記アンテナは、電解めっき法、又は、無電解めっき法により形成されていること」に代えて、「前記アンテナは、前記アンテナのパターン形状に開口部が設けられたマスク上に導電性ペーストを配置し、前記導電性ペーストを前記マスクの開口部から押し出して前記絶縁性基板上に前記パターン形状に塗布する印刷法により形成されていること」とするものでありその余の発明特定事項について本願補正発明と同一のものである。
そこで、アンテナの形成方法について検討するに、このようなアンテナの形成方法は、本願明細書段落【0098】段落【0099】及び図面第9図を参照すると、スクリーン印刷によるものと解されるが、スクリーン印刷を用いてアンテナを形成することは、例えば、特開2000-113147号公報(段落【0003】(アンテナ回路導体が、銀ペースト等の導電性ペーストを用いてスクリーン印刷法によって形成される点)参照)に記載されているように周知技術である。
したがって、上記補正案により補正された請求項1についても、引用例1に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、補正案により補正された請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

5.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成22年9月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし61に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし61に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 」の本件補正前の「請求項1」として記載した次のとおりのものである。

「絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成された信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有することを特徴とする無線デバイス。」

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由] 2 」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「ガラスからなる」との限定、「多結晶シリコン膜からなる薄膜トランジスタを含む」との限定をそれぞれ削除し、さらに、「アンテナ」について、「前記アンテナは、電解めっき法、又は、無電解めっき法により形成されている」との限定を削除したものであって、本願発明は、本願補正発明を上位概念化したものである。

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、

本願発明は、本願補正発明を上位概念化したものであるから、本願発明と引用発明との一致点は次のとおりである。

<本願発明と引用発明との一致点>
「絶縁性基板と、この絶縁性基板上に形成され、信号処理回路と、前記絶縁性基板上に前記信号処理回路と一体的に形成され前記信号処理回路に接続された無線通信用のアンテナと、を有する無線デバイス。」

ここで、上記<本願発明と引用発明との一致点>は、本願発明の発明特定事項と同一であることから、本願発明と引用発明とは相違点を有しないものである。

したがって、本願発明は引用発明と同一である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-25 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-15 
出願番号 特願2004-203047(P2004-203047)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北嶋 賢二  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清木 泰
吉岡 浩
発明の名称 無線デバイス、その製造方法、並びに無線装置及びその製造方法  
代理人 木村 満  

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