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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1246054
審判番号 不服2010-25951  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-17 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2005-23360号「ドラム式洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年8月10日出願公開、特開2006-204717号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年1月31日の出願であって、平成22年8月11日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月17日)、これに対し、同年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年11月17日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年11月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、前記回転槽の回転中心軸線が水平または水平に対し傾くようにして配設し、前記槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、前記槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて前記排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設けたドラム式洗濯機において、前記本体箱の内部下方に、前記リント捕獲装置を、前記本体箱の側面であって前記回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設し、前記排水制御手段を、前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心側に離れた位置に配設し、前記フィルタ捕獲装置は、前記リントフィルタの取り出し部部分の下端が前記本体箱の下端から90mm以上の高さ位置となるように配設されていることを特徴とするドラム式洗濯機。」とあったものを「本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、前記回転槽の回転中心軸線が水平または水平に対し傾くようにして配設し、前記槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、前記槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて前記排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設けたドラム式洗濯機において、前記リント捕獲装置は、前記本体箱の内部下方に、当該本体箱の側面であって前記回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて、且つ前記リントフィルタの取り出し部部分の下端が前記本体箱の下端から90mm以上の高さ位置となるように配設し、前記排水制御手段は、前記本体箱の内部下方における前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設するとともに、当該排水制御手段と前記リント捕獲装置とを接続する管路をほぼL字形に屈曲させることで、当該管路の管路長を、前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線の真下付近まで水平に配設した場合よりも長くしたことを特徴とするドラム式洗濯機。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、排水制御手段について、「前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心側に離れた位置に配設」することとあったものを、「前記本体箱の内部下方における前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設するとともに、当該排水制御手段と前記リント捕獲装置とを接続する管路をほぼL字形に屈曲させることで、当該管路の管路長を、前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線の真下付近まで水平に配設した場合よりも長く」することと限定することを含むものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である実公昭39-27660号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「本案は排水コツクを備えた回転式洗濯機用フイルターに関するもので、排水コツクの開閉作用の阻害を防止して排水コツクの止水および排水作用を良好にする事をその目的とするものである。
排水コツクを備えた回転式洗濯機においては、洗濯液中の糸屑、布屑、ボタン等が回転するドラムと水槽の間に入つた場合、それらが排水コツクに至つて排水コツクの開閉作用に阻害を与えて止水および排水作用に支障を来す原因となるので、それらを除去する必要性が生じてくる。
ゆえに本案装置を回転式洗濯機に設置して前記除去作業を極めて簡便に行なわしめるごとくなした。
以下本案装置を図面について説明する。1は駆動用モーター、2は該モーターで回転するドラム3は水槽、4は水槽底部開孔部と排水コツク5を連通する排水管6の途中に設けた本案フイルターである。フイルター4はフイルター蓋7に固着した軸8にバネ9を介在して多数の丸孔を有するフイルター板10を係合せしめて、さらにバネ9のバネ圧を軸8の自由端部に植設したピン11で規制なし、該フイルター蓋7のネジ部を、入口12a、出口12bおよび出口12bの反対部にネジ部を形成したフイルター本体12の該ネジ部に螺合せしめて構成されており、なお、組付時にはフイルター板10は本体12の出口12b内方の肩部にバネ圧を受けて当接している。
以上のような構造のフイルター4を前述のごとく排水コツク5に至る排水管6の途中に設けておけば洗濯液中の糸屑、布屑、ボタン等はフイルター板10で阻止されて排水コツク5には至らないから排水コツク5の開閉作用に阻害を与える事はなく、止水および排水作用は良好となり、さらに前記雑物の除去作業はフイルター蓋7の螺合を外せばフイルター板10も共に外れるから極めて簡便に行え得る。」(第1ページ左欄第14行?同右欄第21行)
b)上記aの記載事項及び第1?2図の図示内容から、刊行物1には、回転式洗濯機の筐体の内部に水槽3とモーターで回転するドラム2とを有すること、ドラム2がほぼ水平方向の回転軸を有すること、フイルター4が、フイルター蓋7を外せるように筐体の内部下方の前面に寄せて設けられていること、フイルター蓋7の下端が筐体底壁面から所定の高さ位置に設けられていること、排水コツク5をフイルター4と筐体底壁面との中間に位置させていること、及び、排水管6のうち、フイルター4と排水コツク5とを連結する部分をU字形状の管としたことが示されている。

上記aの記載事項、上記bの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「筐体の内部に水槽3とモーターで回転するドラム2とを有し、
ドラム2がほぼ水平方向の回転軸を有し、
水槽底部開孔部と排水コツク5を連通する排水管6の途中に、洗濯液中の糸屑、布屑、ボタン等を阻止するフイルター板10が係合されたフイルター蓋7とフイルター蓋7が螺合されるフイルター本体12とから構成されるフイルター4を設けた回転式洗濯機において、
フイルター4は、フイルター蓋7を外せるように筐体の内部下方の前面に寄せて設けられ、
フイルター蓋7の下端は、筐体底壁面から所定の高さ位置に設けられ、
排水コツク5をフイルター4と筐体底壁面との中間に位置させ、
排水管6のうち、フイルター4と排水コツク5とを連結する部分をU字形状の管とした回転式洗濯機。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-90087号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、ドラムを正逆回転させることによってドラム内にて洗濯から乾燥までを行うドラム式洗濯機であって、特に、ドラムを回転させる電動機をインバータ装置を用いて駆動するものに関するものである。」(段落【0001】)
b)「【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1、2はそれぞれドラム式洗濯機の概略構成を示す正面図、側面図であって、同図に基づいて各部の構造及び機能を大まかに説明しておく。水槽3は洗濯液や脱水液を蓄えかつ排出する機能を有しており、この水槽3の内側で水平軸を中心に回転自在にドラム4が配されており、水槽3とドラム4との2重構造となっている。
水槽3は外箱1の内側に支持ロット2で吊り下げられており、これによって、運転中の振動が吸収される。ドラム4は、洗濯時の給水、脱水時の排水、及び、乾燥時の温風導入を行うために、その周壁全体に多数の小孔41が設けられている。水槽3の上部には乾燥用ユニット5が設けられており、その内部では温風を循環させるための送風機及びヒーターが循環用ダクト6に接続されている。
本体の前面中央には洗濯物をドラム4に対して出し入れするための蓋7が設けられており、蓋7と水槽3との間はパッキン8により密閉される構造となっている。電動機9はドラム4を回転させる。排水ポンプ10は水槽3内の洗濯液などを機外へ排出する。水槽3と排水ポンプ10との間の配管経路には糸屑フィルタケース11が設けられており、機外に排出される液に含まれている糸屑などのゴミが取り除かれる。
蓋7の上部には操作部12が設けられており、この操作部12には、ユーザが、そこから様々な入力を行ったり、そこに表示される情報によって洗濯状況を確認することができるように、運転コースを選択するためのスイッチ、運転を開始させるスタートスイッチ、表示手段などが備えられている。
操作部12の裏側には制御部13が取り付けられており、この制御部13が操作部12からのユーザの入力に基づいて電動機9、排水ポンプ10などの被制御部品を制御し、洗濯から乾燥までの一連の行程を制御する。」(段落【0017】?【0021】)
c)上記bの記載事項、【図1】?【図2】の図示内容によると、糸屑フィルタケース11が外箱1の内側下方に、外箱1の側面であってドラム4の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設されたこと、また、排水ポンプ10が糸屑フィルタケース11より下流で且つ糸屑フィルタケース11からドラム4の回転中心軸線側へ離れるように配設されたことが示されているといえる。

上記a?bの記載事項、上記cの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「外箱1の内側に水槽3が吊り下げられ、この水槽3の内側で水平軸を中心に回転自在にドラム4が配されることにより、水槽3とドラム4との2重構造を構成し、
水槽3内の洗濯液を機外へ排出する配管に、制御部13により制御される排水ポンプ10を設け、水槽3と排水ポンプ10との間の配管経路に糸屑フィルタケース11を設けたドラム式洗濯機において、
糸屑フィルタケース11が外箱1の内側下方に、外箱1の側面であってドラム4の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設され、
排水ポンプ10が糸屑フィルタケース11より下流で且つ糸屑フィルタケース11からドラム4の回転中心軸線側へ離れるように配設された
ドラム式洗濯機。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「筐体」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「本体箱」に相当し、以下同様に、
「水槽3とモーターで回転するドラム2とを有」したものは「水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体」に、
「ドラム2がほぼ水平方向の回転軸を有」することは「回転槽の回転中心軸線が水平」「にして配設」することに、
「回転式洗濯機」は「ドラム式洗濯機」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「水槽底部開孔部と排水コツク5を連通する排水管6の途中に、洗濯液中の糸屑、布屑、ボタン等を阻止するフイルター板10が係合されたフイルター蓋7とフイルター蓋7が螺合されるフイルター本体12とから構成されるフイルター4を設け」ることと、本件補正発明の「槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設けた」こととは、前者において、排水管6に、排水コツク5と、螺合によりフイルター板10を着脱可能なフイルター4とが設けられていることから、両者は、「槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、槽体内の水を機外へ排出する排水手段と、該排水手段より上流側に位置されて排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設けた」ことで共通し、以下同様に、
「フイルター4は、フイルター蓋7を外せるように筐体の内部下方の前面に寄せて設けられ」ることと、「リント捕獲装置は、本体箱の内部下方に、当該本体箱の側面であって回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて」「配設」することとは、「リント捕獲装置は、本体箱の内部下方に、当該本体箱の壁面に寄せて配設する」ことで、
「フイルター蓋7の下端は、筐体底壁面から所定の高さ位置に設けられ」ることと、「リント捕獲装置は」「リントフィルタの取り出し部部分の下端が本体箱の下端から90mm以上の高さ位置となるように配設」されることとは、「リント捕獲装置はリントフィルタの取り出し部部分の下端が本体箱の下端から所定の高さ位置となるように配設」されることで、
「排水コツク5をフイルター4と筐体底壁面との中間に位置させ」ることと、「排水制御手段は、本体箱の内部下方におけるリント捕獲装置よりも下方」「に配設する」こととは、「排水手段は、本体箱の内部下方におけるリント捕獲装置よりも下方に配設する」ことで、
それぞれ共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、前記回転槽の回転中心軸線が水平にして配設し、前記槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、前記槽体内の水を機外へ排出する排水手段と、該排水手段より上流側に位置されて前記排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設けたドラム式洗濯機において、前記リント捕獲装置は、前記本体箱の内部下方に、当該本体箱の壁面に寄せて、且つ前記リントフィルタの取り出し部部分の下端が前記本体箱の下端から所定の高さ位置となるように配設し、前記排水手段は、前記本体箱の内部下方における前記リント捕獲装置よりも下方に配設したドラム式洗濯機。」

[相違点1]
排水手段が、本件補正発明では、槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、排水コツク5である点。

[相違点2]
リント捕獲装置の本体箱の内部下方への配設が、本件補正発明では、本体箱の側面であって回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設するのに対して、刊行物1に記載された発明では、フイルター蓋7を外せるように、前面に寄せて設けられている点。

[相違点3]
リントフィルタの取り出し部部分の配設位置が、本件補正発明では、本体箱の下端から90mm以上の高さ位置であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、筐体底壁面から所定の高さ位置である点。

[相違点4]
本件補正発明では、排水制御手段は、本体箱の内部下方におけるリント捕獲装置よりも下方で且つリント捕獲装置から回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設するとともに、当該排水制御手段とリント捕獲装置とを接続する管路をほぼL字形に屈曲させることで、当該管路の管路長を、リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線の真下付近まで水平に配設した場合よりも長くしたのに対して、刊行物1に記載された発明では、排水管6のうち、フイルター4と排水コツク5とを連結する部分をU字形状の管とした点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1?2、4について
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「外箱1の内側に水槽3が吊り下げられ、この水槽3の内側で水平軸を中心に回転自在にドラム4が配されることにより、水槽3とドラム4の2重構造を構成」することは、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、回転槽の回転中心軸線が水平」「にして配設」することに相当し、同様に、
「糸屑フィルタケース11が外箱1の内側下方に、外箱1の側面であってドラム4の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設」されることは、「リント捕獲装置は、本体箱の内部下方に、当該本体箱の側面であって回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて」「配設」されることに相当する。
また、刊行物2に記載された発明の「水槽3内の洗濯液を機外へ排出する配管に、制御部13により制御される排水ポンプ10を設け、水槽3と排水ポンプ10との間の配管経路に糸屑フィルタケース11を設け」ることと、本件補正発明の「槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設け」ることとは、前者において、糸屑フィルタケース11が糸屑を捕獲するフィルタを有することは明らかであるから、両者は、「槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを有したリント捕獲装置とを設け」ることで共通し、同様に、
刊行物2に記載された発明の「排水ポンプ10が糸屑フィルタケース11より下流で且つ糸屑フィルタケース11からドラム4の回転中心軸線側へ離れるように配設」されることと、本件補正発明の「排水制御手段は、本体箱の内部下方におけるリント捕獲装置よりも下方で且つリント捕獲装置から回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設」されることとは、「排水制御手段は、本体箱の内部下方におけるリント捕獲装置よりも下流で且つリント捕獲装置から回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設」されることで共通する。

したがって、刊行物2に記載された発明は、
「本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、前記回転槽の回転中心軸線が水平にして配設し、前記槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、前記槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて前記排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを有したリント捕獲装置とを設けたドラム式洗濯機において、
前記リント捕獲装置は、前記本体箱の内部下方に、当該本体箱の側面であって前記回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設し、 前記排水制御手段は、前記本体箱の内部下方における前記リント捕獲装置よりも下流で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設するドラム式洗濯機。」と言い換えることができる。

そして、刊行物1に記載された発明では、フイルター4と排水コツク5とを連結する部分をU字形状の管としたことから、フイルター4の下流で、排水コツク5に至るまでの管部分に排水を貯留できることは明らかである。
また、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、ドラム式洗濯機という同一の技術分野に属する発明であり、しかも、本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、回転槽の回転中心軸線が水平にして配設し、槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、槽体内の水を機外へ排出する排水手段と、該排水手段より上流側に位置されて排水管路を流れる水中からリントを捕獲することを目的とした、リントフィルタを有したリント捕獲装置とを設けるという共通の機能を有するものである。
さらに、刊行物1に記載された発明では、フイルター4とフイルター4の垂直方向下方に位置する排水コツク5とをU字形状の管で接続するが、フイルター4に対して排水コツク5が垂直方向下方でなく、水平方向に距離を置いた斜め下方に位置する場合、フイルター4と排水コツク5とをU字形状の管を用いて接続することに換えて、L字形状の管を用いて接続することは、当業者が適宜なし得たものである。
そのうえ、ドラム式洗濯機の技術分野において、排水管について、排水制御手段とリント捕獲装置とを接続する本件補正発明とは、接続箇所が異なるが、水槽の底部とリント捕獲装置とをL字形状の排水管部分により接続することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、刊行物2の【図2】や、特開平11-47487号公報の【図1】、【図4】?【図5】や、特開平11-290581号公報の【図1】?【図2】や、特開平9-276583号公報の【図1】?【図2】を参照。)。

してみると、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明の排水管回りの構成を適用することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、その際に、刊行物1に記載された発明は、フイルター4の下流で排水コツク5に至るまでの部分に、排水を貯留できるU字形状の管に換えて、上記周知のL字形状の管により接続させることは、当業者が適宜なし得たものである。

(2)上記相違点3について
本件補正発明において、リントフィルタの取り出し部部分の下端が本体箱の下端から90mm以上の高さ位置となるように配設されたのは、本願明細書の記載によると「通常の防水パンでは、その周囲の防水壁の高さが90mmを越えるものはないので、防水パンの防水壁によってリンタ(「ト」の誤記と認められる)フィルタ38の着脱が妨げられる恐れはない。」(段落【0038】)ためであり、種々の高さのある防水パンの高さに応じて、リントフィルタの取り出し部部分の下端の高さ位置を決定したことに臨界的意義は認められない。

そして、刊行物1に記載された発明は、フイルター蓋7の下端を筐体底壁面から所定の高さ位置に設けたものであるが、フイルター蓋7の下端の高さをどのような高さとするのかは、フイルター4の構成や、水槽3と筐体底壁面との間の空間形状、配置すべき部材の形状や種類(例えば、U字形状の管)等といった回転式洗濯機、及び、回転式洗濯機が設置される防水パン等の形状を考慮して当業者が決定すべきものであり、その高さを90mm以上の高さ位置となるようにすることは、当業者が適宜なし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
よって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
よって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年2月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「本体箱の内部に、水槽と該水槽内に配設された回転槽とを有した槽体を、前記回転槽の回転中心軸線が水平または水平に対し傾くようにして配設し、前記槽体内の水を機外に排出する排水管路中に、前記槽体内の水の機外への排出を制御する排水制御手段と、該排水制御手段より上流側に位置されて前記排水管路を流れる水中からリントを捕獲するリントフィルタを着脱可能に有したリント捕獲装置とを設けたドラム式洗濯機において、前記本体箱の内部下方に、前記リント捕獲装置を、前記本体箱の側面であって前記回転槽の径方向に対向する両側面のうちの一方側に寄せて配設し、前記排水制御手段を、前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心側に離れた位置に配設し、前記フィルタ捕獲装置は、前記リントフィルタの取り出し部部分の下端が前記本体箱の下端から90mm以上の高さ位置となるように配設されていることを特徴とするドラム式洗濯機。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、排水制御手段について、「前記本体箱の内部下方における前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線側へ離れるように配設するとともに、当該排水制御手段と前記リント捕獲装置とを接続する管路をほぼL字形に屈曲させることで、当該管路の管路長を、前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心軸線の真下付近まで水平に配設した場合よりも長く」することとあったものを「前記リント捕獲装置よりも下方で且つ前記リント捕獲装置から前記回転槽の回転中心側に離れた位置に配設」することとその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-24 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-15 
出願番号 特願2005-23360(P2005-23360)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (D06F)
P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
稲垣 浩司
発明の名称 ドラム式洗濯機  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  

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