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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1246056
審判番号 不服2010-27431  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-03 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2001-121556「回胴式遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月29日出願公開、特開2002-315863〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成13年4月19日の出願であって、拒絶理由に対して平成22年8月17日付けで手続補正がなされ、その後、同月31日付けでなされた拒絶査定に対し、同年12月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成23年2月10日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年4月11日に回答書が提出されている。

第二.本願発明
平成22年12月3日付けの手続補正は、発明を特定するために必要な事項である「表示装置」について、補正前の請求項3に記載されている構成と実質的に同一である「前記回動装置の正面視の面積よりも広い表示領域を有し」を付加するとともに、同じく「回胴装置」について、補正前の請求項2に記載されている「前記表示装置近傍の上部または下部に配置した」を付加する補正である。
そうすると、上記手続補正は、補正前の請求項1及び2を削除し、同請求項3を請求項1に繰り上げたものということができるので、請求項の削除を目的とする補正である。
そして、補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
また、補正により付加された部分に、2箇所「前記回動装置」と記載されているが、これらは「前記回胴装置」の誤記と認めて本願発明を認定した。

「 外周部に複数の図柄が表された複数の回転体を回転および停止させる回胴装置と、
前記複数の回転体のそれぞれが表示している図柄の組合せが当りライン上で特定組合せになると遊技者にとって有利な状態となるように遊技機の動作制御を行う制御手段と、
遊技機正面略中央部に配置され、前記回胴装置の正面視の面積よりも広い表示領域を有し、遊技に関する情報を表示演出する表示装置と、
前記回胴装置に前記複数の回転体の回転を開始させる信号を受信すると、前記遊技者にとって有利な状態を生起させるか否かの抽選を行う抽選手段と、
前記複数の回転体の停止を指示するボタンへの操作の検出を行う検出手段とを備え、
前記回胴装置は、前記抽選手段で行われた抽選の結果および前記検出手段で行われた検出の結果に基づき前記複数の回転体のそれぞれが当りライン上に表示する図柄を設定し、
前記表示装置は、前記抽選手段で行われた抽選の結果に係る予告を表示演出し、
前記回胴装置は、前記表示装置近傍の上部または下部に配置したことを特徴とする回胴式遊技機。」
(下線部は補正によって追加された箇所。)

第三.特許要件(特許法第29条第2項)の検討
1.引用された文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-39618号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
【0008】図において、1はスロット式ゲーム機を示し、機枠2とこの機枠2に対して一側で開閉可能に支持された前面パネル3を備える。この前面パネル3には、そのほぼ中央に大型の表示窓4を有し、この表示窓4には前面パネル3の裏面に取付けた画像表示装置5の表示部(ブラウン管)6が臨み、該表示窓4の表面にはガラス等の透明板7がはめ込まれている。
【0009】また、表示窓4の下方には操作パネル部8が設けられており、この操作パネル部8のほぼ中央に小型の可変表示器9を設けている。この可変表示器9は、外周面に各種のシンボルを有する3個の回転ドラム10を横方向に並べた構成のものであり、各回転ドラム10の周面の一部が操作パネル部8に穿った窓孔11から表面側に露出させてある。また、窓孔11の表面には曲面形状のガラス等の透明板12がはめ込まれている。
【0019】そして、遊技者がベット選択ボタン19を押して賭率を指定した後、スタートレバー17を押下げると、可変表示器9の各回転ドラム10が一斉に回転し同時に画像表示装置5のドラム外周面を表示する3個の縦長の方形図形29が上から下へ向って移動し、あたかもドラムが回転しているかのように表示される。
【0023】そして、遊技者がベット選択ボタン27a?27cを押して賭率を指定した後、スタートレバー17を押下げると先に説明したコインによるゲームの場合と同じように可変表示器9の各回転ドラム10が一斉に回転し、同時に画像表示装置5のドラム外周面を表示する図形29が上から下へ移動する。また、ストップボタン15を押して各回転ドラム10および画像表示装置5の画像を停止させる。
【0024】そして、ベット選択ボタン27a?27cで選択された賭けライン13上に並んだシンボルの組み合せにより賞態様の有無が検出され、成立しておれば賞態様に応じた数のパチンコ球が払出装置36から排出通路37を介して投入皿25に排出される。なお、クレジットを選択した場合には残高表示部20にパチンコ球5個単位で表示される。
【0026】【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、外周面に各種のシンボルが描かれた複数の回転ドラムを横方向に並設してなる小型の可変表示器と、該可変表示器の複数の回転ドラムと同じ画像が表示される大型の画像表示装置とを前面に備え、スタートレバーの操作により可変表示器の複数の回転ドラムを回転させると共に、画像表示装置の画像を移動させ、その停止時における可変表示器の各回転ドラムのシンボルと画像表示装置の画像とを常に一致させるようにしたものであるから、回転ドラムを使用したスロットゲーム機と画像表示装置を使用したTV感覚のスロットゲーム機の両方を楽しむことができる。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 外周面に各種のシンボルを有する3個の回転ドラム10を横方向に並設してなる小型の可変表示器9を有し、
賭けライン13上に並んだ前記シンボルの組み合せにより賞態様の有無が検出され、成立しておれば賞態様に応じた数のパチンコ球が排出されるスロット式ゲーム機1であって、
ほぼ中央に大型の表示窓4を有する前面パネル3の裏面に取付けられ、前記小型の可変表示器9の3個の回転ドラム10と同じ画像が表示される大型の画像表示装置5と、
遊技者がスタートレバー17を押下げると、前記小型の可変表示器9の各回転ドラム10が一斉に回転し同時に前記大型の画像表示装置5のドラム外周面を表示する3個の縦長の方形図形29が上から下へ向って移動する画像が表示され、
遊技者がストップボタン15を押すと前記各回転ドラム10および前記大型の画像表示装置5の画像が停止され、
前記小型の可変表示器9は、前記大型の表示窓4の下方に設けられた操作パネル部8のほぼ中央に設けられたスロット式ゲーム機。」

2.引用発明と本願発明との対比
そこで、引用発明と本願発明とを比較すると、引用発明の「外周面に各種のシンボルを有する」は、本願発明の「外周部に複数の図柄が表された」に相当し、以下同様に、
「3個の」は「複数の」に、
「回転ドラム10」は「回転体」に、
「小型の可変表示器9」は「回胴装置」に、
「賭けライン13」は「当りライン」に、
「前記シンボルの組み合せ」は「前記複数の回転体のそれぞれが表示している図柄の組合せ」に、
「大型の画像表示装置5」は「表示装置」に、
「ストップボタン15」は「前記複数の回転体の停止を指示するボタン」に、
「スロット式ゲーム機」は「回胴式遊技機」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明において、「回転ドラム10」が回転および停止させられるものであることは、いうまでもないから、引用発明の「外周面に各種のシンボルを有する3個の回転ドラム10を横方向に並設してなる小型の可変表示器9」は、本願発明の「外周部に複数の図柄が表された複数の回転体を回転および停止させる回胴装置」に相当するものといえる。

b.引用発明においては「賭けライン13上に並んだ前記シンボルの組み合せにより賞態様の有無が検出」されるのであるから、賞態様が有るということはその組み合わせが特定の組み合わせになっていることといえる。
そして、引用発明において「賞態様に応じた数のパチンコ球が排出される」ことは、遊技者によって有利な状態であることにほかならず、引用発明がそのような動作制御を行う制御手段を備えていることも明らかであるから、引用発明のスロット式ゲーム機1は、本願発明の「前記複数の回転体のそれぞれが表示している図柄の組合せが当りライン上で特定組合せになると遊技者にとって有利な状態となるように遊技機の動作制御を行う制御手段」に相当する手段を備えているものといえる。

c.引用発明の「前面パネル3」が、スロット式ゲーム機1の正面に設置されていることは図1から明らかであり、該「前面パネル3」は、ほぼ中央に大型の表示窓4を有するとともに、その裏面に大型の画像表示装置5が取付けられているのであるから、引用発明の「大型の画像表示装置5」は、本願発明の「遊技機正面略中央部」に相当する箇所に配置されているものといえる。
また、引用発明の「大型の画像表示装置5」に表示される「前記小型の可変表示器9の複数の回転ドラム10と同じ画像」は遊技に関する情報であるとともに、該画像を表示する領域の面積が「小型の可変表示器9」(本願発明の「回胴装置」に相当)の正面視の面積より広いことも、図1や図3から明らかである。
そうしてみると、引用発明の「大型の画像表示装置5」は、本願発明の「遊技機正面略中央部に配置され、前記回胴装置の正面視の面積よりも広い表示領域を有し、遊技に関する情報を表示演出する表示装置」相当するものといえる。

d.引用発明において「遊技者がスタートレバー17を押下げると、前記小型の可変表示器9の各回転ドラム10が一斉に回転し同時に前記大型の画像表示装置5のドラム外周面を表示する3個の縦長の方形図形29が上から下へ向って移動する画像が表示」されるのであるから、引用発明は、遊技者がスタートレバー17を押下げると、本願発明の「前記回胴装置に前記複数の回転体の回転を開始させる信号」に相当する信号を受信し、各回転ドラム10が一斉に回転し、また、大型の画像表示装置5の画像が表示されるものといえる。
よって、引用発明と本願発明は“前記回胴装置に前記複数の回転体の回転を開始させる信号を受信すると、所定の動作を行う手段”を備える点で共通している。

e.引用発明において「遊技者がストップボタン15を押すと前記各回転ドラム10および前記大型の画像表示装置5の画像が停止」されるのであるから、引用発明はストップボタン15が押されたことを検出していることが明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の「前記複数の回転体の停止を指示するボタンへの操作の検出を行う検出手段」に相当する手段を備えているといえる。

f.引用発明の「各回転ドラム10」は、遊技者がストップボタン15を押すと停止され、その停止によって各回転ドラム10が有する各種のシンボルのうちのいずれかが賭けライン13上に表示されることが明らかであるから、上記e.で述べたことを考え合わせると、引用発明の「小型の可変表示器9」と本願発明の「回胴装置」は、“前記検出手段で行われた検出の結果に基づき前記複数の回転体のそれぞれが当りライン上に表示する図柄を設定する”点で共通している。

g.図1や図3からみて、引用発明の「大型の表示窓4」の裏面側に「大型の画像表示装置5」を取付けられていることが明らかであるから、引用発明の「大型の表示窓4の下方に設けられた操作パネル部8のほぼ中央」は、大型の画像表示装置5近傍の下部と言い換えることができる。
よって、引用発明の「小型の可変表示器9」は、本願発明の「前記表示装置近傍の下部」に相当する箇所に配置したものといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 外周部に複数の図柄が表された複数の回転体を回転および停止させる回胴装置と、
前記複数の回転体のそれぞれが表示している図柄の組合せが当りライン上で特定組合せになると遊技者にとって有利な状態となるように遊技機の動作制御を行う制御手段と、
遊技機正面略中央部に配置され、前記回胴装置の正面視の面積よりも広い表示領域を有し、遊技に関する情報を表示演出する表示装置と、
前記回胴装置に前記複数の回転体の回転を開始させる信号を受信すると、所定の動作を行う手段と、
前記複数の回転体の停止を指示するボタンへの操作の検出を行う検出手段とを備え、
前記回胴装置は、少なくとも前記検出手段で行われた検出の結果に基づき前記複数の回転体のそれぞれが当りライン上に表示する図柄を設定し、
前記回胴装置は、前記表示装置近傍の上部または下部に配置した回胴式遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明は「前記回胴装置に前記複数の回転体の回転を開始させる信号を受信すると、前記遊技者にとって有利な状態を生起させるか否かの抽選を行う抽選手段」を備え、「前記回胴装置は、前記抽選手段で行われた抽選の結果および前記検出手段で行われた検出の結果に基づき前記複数の回転体のそれぞれが当りライン上に表示する図柄を設定」しているのに対し、引用発明は、本願発明の「抽選手段」に相当する手段を備えているか明らかでなく、そのため、賭けライン13上に表示されるシンボルがストップボタン15を押すことのみで設定されているのか否か明らかでない点。

[相違点2]本願発明の「表示装置」は、「前記抽選手段で行われた抽選の結果に係る予告を表示演出」するものであるのに対し、引用発明の「大型の画像表示装置5」はそのような表示演出を行っていない点。

3.相違点の検討及び判断
[相違点1及び2について]
相違点1及び2は、密接に関連しているので、合わせて検討する。
複数の回転体の回転を開始させる信号を受信すると、遊技者にとって有利な状態を生起させるか否かの抽選を行う抽選手段を備え、回胴装置は、前記抽選手段で行われた抽選の結果及び前記複数の回転体の停止を指示するボタンへの操作の検出結果に基づいて、前記複数の回転体のそれぞれが当りライン上に表示する図柄を設定する点、並びに前記抽選手段で行われた抽選の結果に係る予告を、前記回胴装置以外の画像表示装置によって表示演出する点は、例えば、特開平11-146939号公報(特に、段落【0051】及び図3)、特開2000-84142号公報(特に、段落【0071】、【0076】?【0079】、【0011】及び【0025】)及び特開2001-79140号公報(特に、段落【0058】、【0062】、【0063】、【0085】及び図10)に記載されるように、回胴式遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
そして、引用発明のスロット式ゲーム機において、スタートレバー17を押下げたときに遊技者にとって有利な状態を生起させるか否かの抽選を行う抽選手段を備えられないとする理由、遊技者がストップボタン15を押したときに、前記抽選手段で行われた抽選の結果及び前記ストップボタン15への操作の検出結果に基づいて、各回転ドラム10のどのシンボルが賭けライン13上に表示されるかを設定できないとする理由、及び前記抽選手段で行われた抽選の結果に係る予告を、小型の可変表示器9以外である大型の画像表示装置5によって表示演出できないとする理由を見出すことはできないから、引用発明に周知技術を適用して、上記相違点1及び2に係る本願発明のような構成とすることは、回胴式遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到できることである。
請求人は、審判請求書において、審査官提示の公報には「表示装置を予告の表示演出に用いることが記載されています。」と認めつつ、「しかしながら、その表示装置は、いずれも回胴装置の正面視の面積よりも表示領域が小さく、しかも遊技機の上部または下部の片隅に配置されており、従来の回胴式遊技機においては、あくまでも回胴装置が遊技機正面略中央部に鎮座し、その表示演出は、回胴装置近傍の片隅に配置された小さな表示装置を用いて行われるようになっています。」及び「遊技に関する情報を遊技者の通常の視線位置に表示演出でき、長時間の遊技機で遊技者に与える疲労感を低減できます。」等と主張している。
しかし、回胴式遊技機の分野において、遊技機本体の中央部で予告表示することも、例えば、上記特開2000-84142号公報(特に、段落【0015】)や特開2000-210410号公報(特に、段落【0043】)に記載されるように、当業者に従来良く知られている事項であるので、引用発明の大型の画像表示装置5を抽選の結果に係る予告の表示演出に利用することに格別の困難性はなく、そうすることによって得られる効果が当業者にとって予測できないものということもできない。

4.まとめ
以上のように上記相違点1及び2は、当業者が容易に想到し得るものであり、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第四.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2001-121556(P2001-121556)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 喜々津 徳胤▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 伊藤 陽
澤田 真治
発明の名称 回胴式遊技機  
代理人 森 哲也  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 小西 恵  

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