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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1246076
審判番号 不服2008-18041  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-14 
確定日 2011-11-02 
事件の表示 特願2005-213155「映像補正装置を具備した移動通信端末機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 9日出願公開、特開2006-311471〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯等
(1)経緯
本件出願は、平成17年7月22日(パリ条約による優先権主張2005年4月29日、大韓民国)の出願であって、平成20年4月10日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成20年7月14日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、当審において平成22年9月27日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成22年12月27日付けで手続補正がなされたものである。

(2)拒絶の理由
平成22年9月27日付けで通知した拒絶の理由は、次のものである。

理 由
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(36条4項)
本願請求項1,4に記載の「基準信号」及び本願請求項2,5に記載の「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」を用いた処理について、当業者が実施できる程度に、本願明細書及び図面で説明されていない。なお、請求項2を引用する請求項3及び請求項5を引用する請求項6についても同様である。
したがって、本願明細書及び図面は、本願特許請求の範囲に係る発明を、当業者が実施できる程度に、記載していない。
以下理由を述べる。
まず、「基準信号」については、図1Aを用いた説明である段落0018には、単に「基準信号」と記載されているだけである。
次に、「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」について、図1Bを用いた説明である段落0028には、単に「ホワイトバランシング基準信号」と記載されているだけであり、同じく段落0029には、単に「ガンマ補正基準信号」と記載されているだけであり、同じく段落0033には、単に「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」が記載されているだけである。
上記記載は、図1A及び図1Bを用いた本願発明の実施形態1の説明であるが、図2A及び図2Bを用いた本願発明の実施形態2についても同様である。
そこで、図1Bに示されている「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」について、段落0033には、「前記第1映像信号または前記第2映像信号がそれぞれ前記ホワイトバランシング基準信号及び前記ガンマ補正基準信号と差がない場合、前記第1偏差信号及び前記第2偏差信号は発生しない。」と記載されていることからみて、映像信号と基準信号との差を偏差信号としているが、逐次入力される映像信号と、どのような基準信号を用いて、それらの差を偏差信号として発生させるのか、本願明細書及び図面には、上記したように記載されていない。
また、仮に、偏差信号が発生するとしても、この偏差信号によって、映像信号をどのように補正するのか、すなわち、どのようにしてホワイトバランシングするのか、どのようなガンマ補正をするのか、本願明細書及び図面には、上記したように記載されていない。

(36条6項2号)
上記のように、特許請求の範囲記載の発明特定事項の技術的意味内容が不明であり、特許請求の範囲の記載はその技術的意味内容が明確でない。

2.本件出願明細書等
本件出願の明細書は、平成20年8月12日付けで補正された提出された明細書であり、本件出願の特許請求の範囲は、平成22年12月27日付けで補正された特許請求の範囲であると認める。本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2は次のとおりである。

【請求項1】
外部の映像を撮影するためのカメラ、カメラモードで前記カメラにより撮影された第1映像信号及び一般モードでディスプレーされる第2映像信号を保存するためのメモリー部及び前記第1映像信号または前記第2映像信号をディスプレーするための液晶表示装置を具備した移動通信端末機において、
前記カメラは、
映像補正を行うことなく、外部の映像を撮影し、
前記メモリー部は、
前記映像補正されていない前記第1映像信号、及び前記一般モードでディスプレーされる第2映像信号を保存し、
前記液晶表示装置は、
前記メモリー部から前記第1映像信号または前記第2映像信号の供給を受けて基準信号と比較して偏差信号を発生するための比較部、及び前記比較部から供給される前記偏差信号によって補正された第1映像信号または補正された第2映像信号を供給するための補正部を含むタイミング制御器と、
複数のスキャンライン及び複数のデータラインにより形成される複数の画素を具備して、前記カメラモード時には前記補正された第1映像信号をディスプレーして、前記一般モード時には前記補正された第2映像信号をディスプレーするための液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルに前記複数のスキャンラインを介してスキャン信号を供給するためのスキャンドライバー、及び
前記スキャン信号により選択された複数の画素に前記複数のデータラインを介して前記補正された第1映像信号または前記補正された第2映像信号を供給するためのデータドライバーを含む移動通信端末機。

【請求項2】
前記比較部は、
前記第1映像信号または前記第2映像信号の供給を受けてホワイトバランシング基準信号と比較して第1偏差信号を供給するための第1比較部、及び
前記第1映像信号または前記第2映像信号の供給を受けてガンマ補正基準信号と比較して第2偏差信号を供給するための第2比較部を具備することを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末機。

3.請求人の主張
請求人は、当審において通知した上記拒絶理由に対して、請求項1及び請求項4に、
「前記カメラは、
映像補正を行うことなく、外部の映像を撮影し、
前記メモリー部は、
前記映像補正されていない前記第1映像信号、及び前記一般モードでディスプレーされる第2映像信号を保存し、」
を付加する補正を行い、次のように主張する。

「(3)本願発明について
本願の請求項1、4に記載の「基準信号」及び本願請求項2,5に記載の「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」を用いた処理について説明します。
上記「基準信号」及び「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」を用いた処理については、基本的に、出願時の周知・慣用技術であって、当業者に自明な事項であると思料いたします。
i)基準信号(基準信号、ホワイトバランシング基準信号、ガンマ補正基準信号)は、基準イメージであって、ディスプレーの特性を代弁できる代表的なイメージを使用することができます。例えば、フルホワイト、レッド、グリーン、ブルーおよび画質評価に慣習的に使用されるイメージが使用可能であります。
ii)偏差信号は、基準信号と映像信号との差であり、二つの信号、または値の差を示す信号を称します。例えば、二つの信号(image)を表現するための空間(byte、あるいはspace)が同一であるため、各elementの減法(subtraction)を用いれば、差を簡単に求めることができます。使用しようとする目的により、差の絶対値を取ったり多様な方法が使用可能であります。
iii)偏差信号を用いた補正方法は、偏差信号を生成する方法によって異なります。上記の例のように、減法(subtraction)を用いて偏差値を求めたとすれば、補正は、加法(addition)を用いて補正します。使用しようとする目的により、多様に変化された補正方法を用いることが可能であります。
このように、上述しました、本願の基準信号、偏差信号及び偏差信号を用いた補正方法は、出願時の周知・慣用技術であって、当業者に自明な事項であり、明細書の記載は不備でないものと思料いたします。ゆえに、特許請求の範囲記載の発明特定事項の技術的意味内容も明確であると思料いたします。」

4.判断
請求人が当審拒絶理由に対して行った上記補正は、基準信号と比較される映像信号を特定する補正であり、「基準信号」及び「ホワイトバランシング基準信号」、「ガンマ補正基準信号」自体を特定する補正ではない。そして、上記のように映像信号を特定しても、「基準信号」及び「ホワイトバランシング基準信号」、「ガンマ補正基準信号」自体が明らかになるわけではなく、また、上記特定された映像信号と「基準信号」及び「ホワイトバランシング基準信号」、「ガンマ補正基準信号」とを比較して行うホワイトバランシング、ガンマ補正がどのように行われるのか明らかになってもいない。
そうであるから、当審拒絶理由で通知したとおり、依然として、
「「基準信号」については、図1Aを用いた説明である段落0018には、単に「基準信号」と記載されているだけである。
次に、「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」について、図1Bを用いた説明である段落0028には、単に「ホワイトバランシング基準信号」と記載されているだけであり、同じく段落0029には、単に「ガンマ補正基準信号」と記載されているだけであり、同じく段落0033には、単に「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」が記載されているだけである。
上記記載は、図1A及び図1Bを用いた本願発明の実施形態1の説明であるが、図2A及び図2Bを用いた本願発明の実施形態2についても同様である。
そこで、図1Bに示されている「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」について、段落0033には、「前記第1映像信号または前記第2映像信号がそれぞれ前記ホワイトバランシング基準信号及び前記ガンマ補正基準信号と差がない場合、前記第1偏差信号及び前記第2偏差信号は発生しない。」と記載されていることからみて、映像信号と基準信号との差を偏差信号としているが、逐次入力される映像信号と、どのような基準信号を用いて、それらの差を偏差信号として発生させるのか、本願明細書及び図面には、上記したように記載されていない。
また、仮に、偏差信号が発生するとしても、この偏差信号によって、映像信号をどのように補正するのか、すなわち、どのようにしてホワイトバランシングするのか、どのようなガンマ補正をするのか、本願明細書及び図面には、上記したように記載されていない。
したがって、本願請求項1,4に記載の「基準信号」及び本願請求項2,5に記載の「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」を用いた処理について、当業者が実施できる程度に、本願明細書及び図面で説明されていない。なお、請求項2を引用する請求項3及び請求項5を引用する請求項6についても同様である。
したがって、本願明細書及び図面は、本願特許請求の範囲に係る発明を、当業者が実施できる程度に、記載していない。」
というべきであり、また、
「特許請求の範囲記載の発明特定事項の技術的意味内容が不明であり、特許請求の範囲の記載はその技術的意味内容が明確でない。」
というべきである。

請求人は、周知・慣用をいうが、なんらそれを証するものを提出していない。
また、「基準イメージであって、ディスプレーの特性を代弁できる代表的なイメージを使用すること」「例えば、フルホワイト、レッド、グリーン、ブルーおよび画質評価に慣習的に使用されるイメージ」及び「偏差信号は、基準信号と映像信号との差」といい、「例えば、二つの信号(image)を表現するための空間(byte、あるいはspace)が同一であるため、各elementの減法(subtraction)を用いれば、差を簡単に求めることができます。使用しようとする目的により、差の絶対値を取ったり多様な方法が使用可能であります。」、「上記の例のように、減法(subtraction)を用いて偏差値を求めたとすれば、補正は、加法(addition)を用いて補正します。使用しようとする目的により、多様に変化された補正方法を用いることが可能であります。」というが、
単に、入力と基準との差を取り、何らかの補正をすることが、一般的であることが理解でき、「使用する目的により」「(差を求める)多様な方法」「多様に変化された補正方法」となることが当然としても、「ホワイトバランシング」、「ガンマ補正」を目的として、画像信号と比較する信号を「例えば、フルホワイト、レッド、グリーン、ブルーおよび画質評価に慣習的に使用されるイメージ」としても、「(画像信号と差を求める)多様な方法」「多様に変化された補正方法」をどのような方法とすれば「ホワイトバランシング」、「ガンマ補正」がなされるのか、不明である。
「減法(subtraction)を用いて偏差値を求めたとすれば、補正は、加法(addition)を用いて補正します」ことも、どのように行えば「ホワイトバランシング」、「ガンマ補正」がなされるのか、理解できない。

結局、意見書の主張を加味しても、本件出願書類によって、「ホワイトバランシング」、「ガンマ補正」のために、映像信号と比較する「基準信号」及び「ホワイトバランシング基準信号」と「ガンマ補正基準信号」、偏差の取り方、補正の仕方は、当業者に理解されないというべきである。
そして、本願明細書【0003】でいう「前記カメラモード時ディスプレーされる前記映像補正された第1映像信号の輝度及びホワイトバランスは前記一般モード時ディスプレーされる前記第2映像信号の輝度及びホワイトバランスより落ちるという問題点」、「前記カメラによる映像補正機能は前記タイミング制御器の映像補正機能と重複して前記カメラと前記液晶表示装置をチューニングするのに多くの時間と努力が必要となるという問題点」の具体的解決手段は、当業者に理解されないというべきである。

以上のとおりであるから、本件出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る発明の実施をできる程度に記載したものといえないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。
また、本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は、技術的意味内容が不明確であり、請求項1及び請求項2に係る発明が明確であるといえず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

請求項2ないし6もに関しても、請求項1及び2と同様に判断され、請求項2ないし6に関しても、本件出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていないといえるとともに、請求項2ないし6の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本件出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしておらず、本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第第2号の要件を満たしていないから、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-02 
結審通知日 2011-06-07 
審決日 2011-06-20 
出願番号 特願2005-213155(P2005-213155)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04N)
P 1 8・ 537- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田 浩  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 梅本 達雄
藤内 光武
発明の名称 映像補正装置を具備した移動通信端末機  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 佐伯 義文  

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