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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1246085 |
審判番号 | 不服2009-1066 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-13 |
確定日 | 2011-11-02 |
事件の表示 | 特願2005-118567「ズームレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-163338〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本願は、平成17年4月15日(パリ条約による優先権主張、2004年12月8日、台湾)の出願であって、平成20年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月13日に審判請求がなされるとともに同年2月12日付けで手続補正がなされたものである。その後、平成22年10月20日付けで当審による拒絶理由の通知がなされ、それに対して平成23年4月22日付けで意見書及び手続補正書が提出された。 【2】本願発明 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。 「ズームレンズであって、 前記ズームレンズは、 負の機能を有する第一のレンズ群、 正の機能を有すると共に0.4<|f2/fT|≦0.55の条件を充たす第二のレンズ群、及び、 正の機能を有する第三のレンズ群 を備えると共に、 f2は、前記第二のレンズ群の焦点距離であると共に、 fTは、望遠の条件における前記ズームレンズの焦点距離であると共に、 物体から像平面までの前記レンズ群の順序付けは、前記第一のレンズ群、前記第二のレンズ群、及び前記第三のレンズ群であると共に、 前記ズームレンズは、T/H<6.6の条件を満たすと共に、 Tは、前記ズームレンズの全長であると共に、 Hは、像の高さである、 ズームレンズ。」 【3】刊行物に記載された発明 当審の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-177315号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。 (1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主にデジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、或いは監視カメラ等のように固体撮像素子を用いたカメラに好適なズームレンズに関し、特に携帯電話や小型の情報端末機器等に付属するカメラに好適で、簡易な構成で、且つ小型のズームレンズに関する。」 (1b)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、構成枚数の少ない簡易な構成でありながら、広角端におけるレンズ全長(レンズの第1面から像面までの距離)が広角端での焦点距離の3?4倍程度と小型なズームレンズを提供することを目的とする。」 (1c)「【0007】[請求項1] 物体側より順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、広角端から望遠端への変倍に際して、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が減少し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が増大するように前記第1レンズ群と前記第2レンズ群とがそれぞれ移動し、且つ、前記第3レンズ群が変倍中に固定されたズームレンズにおいて、前記第1レンズ群が少なくとも1面の非球面を有する1枚の負レンズのみで構成され、前記第2レンズ群が物体側より順に1枚の正レンズと1枚の負レンズとから構成され、前記第3レンズ群が1枚の正レンズのみで構成されることを特徴とするズームレンズ。 【0008】[請求項2] 以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。 【0009】1.7<|f_(1)|/f_(w)<2.5・・・丸1(当審注:丸の中に数字の1) 0.95<f_(2)/f_(w)<1.6・・・丸2(当審注:丸の中に数字の2) 但し、 f_(1):第1レンズ群の焦点距離 f_(2):第2レンズ群の焦点距離 f_(w):全系の広角端における焦点距離・・・」 (1d)「【0027】[実施例1]以下に実施例1の諸元を示す。 【0028】 焦点距離:f=3.19mm?7.60mm Fナンバー:F2.90?4.97 画角:2ω=61.0°?24.8° 【0029】 【表1】 【0030】 【表2】 【0031】 【表3】 【0032】|f_(1)|/f_(w)=2.04 f_(2)/f_(w)=1.07 f_(21)/f_(2)=0.65 ・・・ 【0033】また、図1に実施例1のレンズ断面図を示し、図2に収差図を示す。なお、図2において、図2(A)は焦点距離が3.19mm、図2(B)は焦点距離が4.93mm、図2(C)は焦点距離が7.60mmのときの収差図である。」 (1e)「【図1】 」 (1f)「【図2】 」 (1g)上記記載事項(1c)及び(1d)を参酌すると、実施例1における全系の広角端における焦点距離f_(w)は3.19mm(【0028】参照)であることがわかるから、f_(2)/f_(w)=1.07(【0032】参照)より、f_(2)=3.41であることがわかる。そうすると実施例1における全系の望遠端における焦点距離f_(T) は7.60mm(【0028】参照)であるから、f_(2)/f_(T)=0.45であることがわかる。 (1h)上記記載事項(1d)の各表の値及び(1f)の図2の収差図等を参酌して実施例1における広角端、中間点及び望遠端のズームレンズ全長(それぞれT_(W)、T_(M)及びT_(T)とする。)を計算すると、広角端、中間点及び望遠端における焦点距離f及び画角ωが、それぞれ、(f=3.19,ω=30.5)、(f=4.93,ω=19.3)及び(f=7.60,ω=12.4)であることから、T_(W)=10.7、T_(M)=9.9及びT_(T)=10.3であることがわかる。同様に、各点の歪曲収差は、それぞれ、-6.5%、+1.5%及び+5.5%と読み取れる(図2参照)から、それぞれの点での像の高さをH_(W)、H_(M)及びH_(T)とすると、H_(W)=1.55、H_(M)=1.56及びH_(T)=1.58となることがわかる。してみると、それぞれの点でのズームレンズ全長と像の高さの比T/Hは6.90、6.35及び6.51となっていることがわかる。 上記記載事項及び当業者の技術常識等を総合的に勘案すると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「物体側より順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、 第2レンズ群の焦点距離をf_(2)、 全系の望遠端における焦点距離をf_(T) 、 としたとき、f_(2)/f_(T)=0.45であり、 広角端、中間点及び望遠端における、ズームレンズ全長をそれぞれT_(W)、T_(M)及びT_(T)とし、像の高さをそれぞれH_(W)、H_(M)及びH_(T)とすると、それぞれの点でのズームレンズ全長と像の高さの比T/Hは6.90、6.35及び6.51となっているズームレンズ。」(以下「刊行物1記載の発明」という。) 【3】対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「負の屈折力を有する第1レンズ群」、「正の屈折力を有する第2レンズ群」及び「正の屈折力を有する第3レンズ群」は、それそれ、本願発明の「負の機能を有する第一のレンズ群」、「正の機能を有する・・・第二のレンズ群」及び「正の機能を有する第三のレンズ群」に相当する。 刊行物1記載の発明の「f_(2)/f_(T)」は本願発明の「f2/fT」に相当し、|f_(2)/f_(T)|=0.45であるから、刊行物1記載の発明は本願発明の「0.4<|f2/fT|≦0.55」の条件を満たす。 刊行物1記載の発明において、中間点及び望遠端におけるT/Hはそれぞれ、6.35及び6.51であるから、刊行物1記載の発明に「T/H<6.6の条件を満たす」領域が存在することは明らかであり、その点で、刊行物1記載の発明は本願発明と一致する。 したがって、両者は、 「ズームレンズであって、 前記ズームレンズは、 負の機能を有する第一のレンズ群、 正の機能を有すると共に0.4<|f2/fT|≦0.55の条件を充たす第二のレンズ群、及び、 正の機能を有する第三のレンズ群 を備えると共に、 f2は、前記第二のレンズ群の焦点距離であると共に、 fTは、望遠の条件における前記ズームレンズの焦点距離であると共に、 物体から像平面までの前記レンズ群の順序付けは、前記第一のレンズ群、前記第二のレンズ群、及び前記第三のレンズ群であると共に、 前記ズームレンズは、T/H<6.6の条件を満たすと共に、 Tは、前記ズームレンズの全長であると共に、 Hは、像の高さである、 ズームレンズ。」 である点で一致しており、相違点はない。 【4】判断 本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明であるから、特許を受けることができない。 【5】むすび 以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-01 |
結審通知日 | 2011-06-07 |
審決日 | 2011-06-20 |
出願番号 | 特願2005-118567(P2005-118567) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原田 英信 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
村田 尚英 吉川 陽吾 |
発明の名称 | ズームレンズ |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |