ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K |
---|---|
管理番号 | 1246094 |
審判番号 | 不服2009-10843 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-08 |
確定日 | 2011-11-02 |
事件の表示 | 特願2003-190342「機能素子内蔵配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 26458〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成15年7月2日の出願であって、平成20年6月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成20年12月26日付けで意見書及び明細書を補正する手続補正書が提出されたが、平成21年3月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年6月8日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成21年7月8日付けで明細書についての手続補正がなされるとともに、同日付けで審判請求書の請求の理由についての手続補正がなされ、その後、当審において平成22年10月27日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成23年3月28日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成21年7月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年7月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] [1]補正の内容 平成21年7月8日付けの明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年12月26日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし4を下記の(b)に示す請求項1ないし4と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 3層以上の配線層を絶縁層を介して積層し、層間接続手段として前記絶縁層により互いに層間絶縁された配線層の一方に形成され他方に頂部にて接するバンプを有するリジッドな第1の配線部と、 前記3層以上の配線層のうち1層または2層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなるフレキシブルな第2の配線部であって、前記1層または2層の配線層と絶縁層とが積層されている第2の配線部と を有し、 前記第1の配線部の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、前記第2の配線部の内部にフレキシブルな機能素子を内蔵させた ことを特徴とする機能素子内蔵配線板。 【請求項2】 前記第2の配線部に内蔵させた前記フレキシブルな機能素子は、表面に集積回路が形成された半導体ウエハの裏面を該ウエハ厚さが50μm以下となるように研磨し、その後個々の集積回路に切断してなるもの、又は、集積回路が形成された半導体ウエハを各集積回路が個々の集積回路に分離されるように切断した後に、集積回路の裏面をその厚さが50μm以下となるように研磨してなるものであり、 前記第2の配線部の配線層にフリツプチップ接続されている ことを特徴とする請求項1に記載の機能素子内蔵配線板。 【請求項3】 前記絶縁層が、ポリイミド、液晶ポリマーまたはBCBフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の機能素子内蔵配線板。 【請求項4】 前記バンプは、エッチング後に前記配線層となる第1の金属層とエッチング後に該バンプとなる第2の金属層とを、エッチングバリアとなる第3の金属層を介して積層した積層金属板の第2の金属層をエッチングして該配線層と一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機能素子内蔵配線板。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 3層以上の配線層を絶縁層を介して積層し、層間接続手段として前記絶縁層により互いに層間絶縁された配線層の一方に形成され他方に頂部にて接するバンプを有するリジッドな第1の配線部と、 前記第1の配線層における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなるフレキシブルな第2の配線部であって、前記1層または2層の配線層と絶縁層とが積層されている第2の配線部と を有し、 前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、前記第2の配線部の内部にフレキシブルな機能素子を内蔵させた ことを特徴とする機能素子内蔵配線板。 【請求項2】 前記第2の配線部に内蔵させた前記フレキシブルな機能素子は、表面に集積回路が形成された半導体ウエハの裏面を該ウエハ厚さが50μm以下となるように研磨し、その後個々の集積回路に切断してなるもの、又は、集積回路が形成された半導体ウエハを各集積回路が個々の集積回路に分離されるように切断した後に、集積回路の裏面をその厚さが50μm以下となるように研磨してなるものであり、 前記第2の配線部の配線層にフリツプチップ接続されている ことを特徴とする請求項1に記載の機能素子内蔵配線板。 【請求項3】 前記絶縁層が、ポリイミド、液晶ポリマーまたはBCBフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の機能素子内蔵配線板。 【請求項4】 前記バンプは、エッチング後に前記配線層となる第1の金属層とエッチング後に該バンプとなる第2の金属層とを、エッチングバリアとなる第3の金属層を介して積層した積層金属板の第2の金属層をエッチングして該配線層と一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機能素子内蔵配線板。」 (なお、下線は補正箇所を示すためのものである。) [2]本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記3層以上の配線層のうち1層または2層の配線層」の記載を、「前記第1の配線層における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層」とし、同じく、「前記第1の配線部の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」の記載を、「前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」とするものである。 ここで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の「前記第1の配線層における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層」の記載に関して検討すると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載において、「前記第1の配線層」なる記載より前に「第1の配線層」なる記載は存在していないものの、「第1の配線部」なる記載は存在しており、しかも、技術的意味を参酌した上で、その文脈からみて、本件補正後の請求項1の記載における「前記第1の配線層」は、「前記第1の配線部」と解することがごく自然であるので、本件補正後の請求項1の記載における「前記第1の配線層」は、「前記第1の配線部」の誤記と認める。 そうしてみると、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記3層以上の配線層のうち1層または2層の配線層」の記載を、「前記第1の配線部における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層」とし、同じく、「前記第1の配線部の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」の記載を、「前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」とするものである。 まず、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記3層以上の配線層のうち1層または2層の配線層」の記載を、「前記第1の配線部における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層」とすることは、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「(第1の配線部の)3層以上の配線層のうち1層または2層の配線層」を「第1の配線部における最外層以外の中間層」に限定するものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項に限定を付加したものといえる。 次に、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記第1の配線部の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」の記載を、「前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」とすることについては、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」「第1の配線部」の層を、「(第1の配線部における最外層以外の)中間層」に限定するものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項に限定を付加したものといえる。 よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 [3]独立特許要件の判断 上記[2]で述べたとおり、本件補正後の請求項1の記載における「前記第1の配線層」は、「前記第1の配線部」の誤記と認めるので、本件補正発明は、以下に記載した事項により特定されるとおりのものと認める。 「3層以上の配線層を絶縁層を介して積層し、層間接続手段として前記絶縁層により互いに層間絶縁された配線層の一方に形成され他方に頂部にて接するバンプを有するリジッドな第1の配線部と、 前記第1の配線部における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなるフレキシブルな第2の配線部であって、前記1層または2層の配線層と絶縁層とが積層されている第2の配線部と を有し、 前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、前記第2の配線部の内部にフレキシブルな機能素子を内蔵させた ことを特徴とする機能素子内蔵配線板。」 1.刊行物に記載された発明 (1)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願日前に頒布された刊行物である特開2001-53413号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a)「【請求項1】 少なくとも1つの電子部品が、前記少なくとも1つの電子部品の接合部が露出するように、樹脂によって被覆され、前記樹脂の前記少なくとも1つの電子部品の接合部が露出した面に、金属パターンが形成されたことを特徴とする電子部品内蔵基板。 【請求項2】・・・・・中略・・・・・ 【請求項4】 前記電子部品が、集積回路およびチップ部品を含んでいることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子部品内蔵基板。 【請求項5】・・・・・中略・・・・・ 【請求項9】 前記樹脂に、少なくとも1つのビアが形成されたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電子部品内蔵基板。 【請求項10】 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の前記電子部品内蔵基板が、2枚以上積層され、接着されたことを特徴とする多層電子部品内蔵基板。 【請求項11】・・・・・中略・・・・・ 【請求項12】 前記2枚以上の電子部品内蔵基板が、面積の異なる電子部品内蔵基板を含んだことを特徴とする請求項10または11に記載の多層電子部品内蔵基板。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項12】) b)「【0016】本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記2枚以上の電子部品内蔵基板が、面積の異なる電子部品内蔵基板を含んでいる。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、面積の異なる電子部品内蔵基板が積層されているので、厚さ方向の任意の位置に、所望のように、電子部品を配置することができ、設計の自由度を向上させつつ、実装密度を大幅に向上させることが可能となる。」(段落【0016】) c)「【0034】 【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。図1ないし図6は、本発明の好ましい実施態様にかかる電子部品内蔵基板および多層電子部品内蔵基板の製造プロセスを示す工程図である。 【0035】図1に示されるように、まず、ステンレスで作られ、表面が平坦化された転写基板1に、電子部品である集積回路2およびチップ部品3が位置決めされる。ここに、電子部品は、転写基板1に接合するわけではないので、はんだなどの接合材を使用する必要はなく、次工程以降に、集積回路2およびチップ部品3の位置ずれを防止するために、転写基板1上に、接着剤を塗布し、あるいは、両面テープなどを用いて、集積回路2およびチップ部品3を転写基板1上の所望の位置に固定すれば十分である。次いで、図2に示されるように、Quad Flat Package(QFP)の樹脂封止と同様に、集積回路2およびチップ部品3が、封止材4によって封止される。本実施態様においては、封止材4として、酸無水物系エポキシ樹脂が用いられ、酸無水物系エポキシ樹脂には、機械的性質、熱伝導性、熱膨張率、コストなどを考慮して、フィラーが添加されている。さらに、図3に示されるように、封止材4の表面が研磨され、これによって、平坦性が確保されるとともに、電子部品内蔵基板の薄型化が実現される。 【0036】次いで、図4に示されるように、集積回路2およびチップ部品3を封止している封止材4が、転写基板1から剥離される。必要に応じて、電子部品を内蔵した封止材4の剥離面は、薬液やグロー放電によって洗浄され、集積回路2およびチップ部品3の接合部が露出される。この際、電子部品を内蔵した封止材4の一部に、ビア5がドリル(図示せず)によって形成される。 【0037】さらに、図5に示されるように、電子部品を内蔵した封止材4の剥離面に、配線となる銅パターン6がめっきによって形成される。これによって、電子部品内蔵基板7が得られる。銅パターン6がめっきによって形成される際、集積回路2およびチップ部品3の接合部が活性化されるため、はんだなどの接合材を用いなくとも、集積回路2およびチップ部品3の接合部に直接、銅パターン6が形成することができる。次いで、図6に示されるように、実装密度を高めるため、こうして得られた電子部品内蔵基板7上に、同様のプロセスを用いて製造された電子部品内蔵基板7が積層されて、異方性導電ペーストを用いて、接着され、積層された電子部品内蔵基板7間が、公知の方法によって、電気的に導通されて、多層電子部品内蔵基板8が得られる。 【0038】本実施態様によれば、電子部品内蔵基板7は、集積回路2およびチップ部品3を内蔵した封止材4と、封止材4の転写基板1が剥離された剥離面に形成された胴パターンとによって構成されており、基板を有してはいないから、基板上に、銅パターンが形成され、銅パターン上に、電子部品が搭載されて、封止樹脂によって被覆された従来の電子部品内蔵基板に比して、大幅に薄型化することが可能になる。また、本実施態様によれば、多層電子部品内蔵基板8は、集積回路2およびチップ部品3を内蔵した封止材4と、封止材4の転写基板1が剥離された剥離面に形成された胴パターンとによって構成され、基板を有していない電子部品内蔵基板7を積層して、形成されているから、従来の多層電子部品内蔵基板に比して、大幅に薄型化することができ、同じ厚さの多層電子部品内蔵基板8にあっては、実装密度を大幅に向上させることが可能になる。」(段落【0034】ないし【0038】) d)「【0056】また、前記実施態様においては、電子部品内蔵基板7にビア5を形成しているが、多層電子部品内蔵基板8に埋め込みビアを形成せず、貫通ビアのみを形成するのであれば、電子部品内蔵基板7にビア5を形成することは必ずしも必要がなく、導電性のない材料によって、積層した電子部品内蔵基板7を接着することができる。さらに、前記実施態様においては、ドリルを使用して、ビア5を形成しているが、レーザによって、ビア5を形成することもできる。」(段落【0056】) e)「【0057】また、前記実施態様においては、本発明にしたがって製造された電子部品内蔵基板7のみを積層して、多層電子部品内蔵基板8を製造しているが、本発明にしたがって製造された電子部品内蔵基板7に、他の方法によって製造された電子部品内蔵基板を積層してもよく、通常、使用されるガラス・エポキシ基板やポリイミドからなるフレキシブル基板などの配線基板を積層することもできる。さらに、図1ないし図6に示された実施態様においては、2枚の電子部品内蔵基板7を積層し、図13に示された例においては、4枚の電子部品内蔵基板7を積層して、多層電子部品内蔵基板8が形成されているが、積層する電子部品内蔵基板7の数は任意に決定することができる。」(段落【0057】) (2)上記(1)a)ないしe)及び図面の記載より分かること イ)上記(1)a)及びc)並びに図6の記載によれば、多層電子部品内蔵基板8は、2層以上の銅パターン6を酸無水物系エポキシ樹脂からなる封止材4を介して積層し、各層の内部に集積回路2とチップ部品3を内蔵させ、層間接続手段としてビア5を有すること、及び、電子部品内蔵基板7は、銅パターン6と封止材4とが積層されたものであることが分かる。 ロ)上記(1)b)、c)及びe)の記載によれば、多層電子部品内蔵基板8を構成する複数層の電子部品内蔵基板のうち少なくとも1層の電子部品内蔵基板は、他の層の電子部品内蔵基板面積と面積の異なるものとすること、換言すれば、多層電子部品内蔵基板8を構成する複数層の電子部品内蔵基板のうち少なくとも1層の電子部品内蔵基板は、他の層の電子部品内蔵基板を越えて外側に延在していることが分かる。 ここで、電子部品内蔵基板が、配線部を備えていることは明らかであるので、以下、前記「外側に延在している」部分を「第2の配線部」といい、同様に、他の層の電子部品内蔵基板と層の上下方向において重なり合っている部分を「第1の配線部」という。 そして、上記(1)c)及びe)並びに図13の記載によれば、図13において、最下層の銅パターン6と封止材4とが積層された最下層の電子部品内蔵基板7の左側の延在部分にも、集積回路2とチップ部品3が内蔵されていることが看取できることから、「第1の配線部」に集積回路2やチップ部品3のような機能部品が内蔵されているだけではなく、「第2の配線部」にも、集積回路2やチップ部品3のような機能部品が内蔵されていることが分かる。 ハ)上記(1)b)、c)及びe)の記載によれば、多層電子部品内層基板8は、上記(1)c)の方法によって製造された電子部品内蔵基板7と他の方法によって製造された電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板とが混在して積層されていることが分かる。 ニ)また、上記(1)c)及び図5の記載によれば、電子部品内蔵基板7は、封止材4として、酸無水物系エポキシ樹脂を用いており、酸無水物系エポキシ樹脂がリジッドな絶縁性樹脂層として機能することが、ごく普通に知られていることであることから、上記(1)c)に記載された方法によって製造された電子部品内蔵基板7は、リジッドな配線部分となっており、この電子部品内蔵基板7が積層される部分は、リジッドな配線部分となることが分かる。 (3)刊行物に記載された発明 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物に記載された発明> 「2層以上の銅パターン6と封止材4とを有する電子部品内蔵基板7と、少なくとも1層の電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板とを混在して積層し、層間接続手段としてビア5を有する第1の配線部と、 前記第1の配線部における層のうち1層の電子部品内蔵基板が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなる第2の配線部と を有し、 前記第1の配線部における層の内部に集積回路2及びチップ部品3を内蔵させると共に、前記第2の配線部の内部に電子部品を内蔵させた 多層電子部品内蔵基板8。」 2.対比・判断 本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、その構造及び機能又は技術的意義からみて、刊行物に記載された発明における「集積回路2」、「チップ部品3」、「電子部品」、「ビア5」及び「多層電子部品内蔵基板8」は、それぞれ、本件補正発明における「能動機能素子」、「受動機能素子」、「機能素子」、「バンプ」及び「機能素子内蔵配線板」に相当する。 また、刊行物に記載された発明における「銅パターン6」は、上記1.(1)c)における「配線となる銅パターン6がめっきによって形成され」の記載からみて、配線として機能していることは明らかであるので、本件補正発明における「配線層」に相当する。 また、刊行物に記載された発明における「封止材4」は、上記1.(1)c)における「封止材4として、酸無水物系エポキシ樹脂が用いられ」の記載及び酸無水物系エポキシ樹脂が絶縁材料として用いられることがごく普通に知られていることからみて、絶縁層として機能していることは明らかであるので、本件補正発明における「絶縁層」に相当する。 そして、刊行物に記載された発明における「電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板」が配線層と絶縁層とを有していることは、技術常識に照らして明らかであり、前述のとおり、刊行物に記載された発明における「銅パターン6」及び「封止材4」は、それぞれ、本件補正発明における「配線層」及び「絶縁層」に相当するので、刊行物に記載された発明における「2層以上の銅パターン6と封止材4とを有する電子部品内蔵基板7と、少なくとも1層の電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板とを混在して積層し」は、本件補正発明における「3層以上の配線層を絶縁層を介して積層し」に相当する。 また、刊行物に記載された発明における「第1の配線部における層のうち1層の電子部品内蔵基板が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなる第2の配線部」は、電子部品内蔵基板のうち、「電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板」が、前述のとおり配線層を有していることが明らかであり、「電子部品内蔵基板7」も、本件補正発明における「配線層」に相当する「銅パターン6」を有していることが明らかであることから、「第1の配線部における層のうち1層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなる第2の配線部」という限りにおいて、本件補正発明における「第1の配線部における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなる」「第2の配線部」に相当する。 また、刊行物に記載された発明における「第1の配線部における層の内部に集積回路2及びチップ部品3を内蔵させると共に、第2の配線部の内部に機能素子を内蔵させた」は、前述のとおり、刊行物に記載された発明における「集積回路2」、「チップ部品3」及び「電子部品」が、それぞれ、本件補正発明における「能動機能素子」、「受動機能素子」及び「機能素子」に相当するので、「第1の配線部における層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、第2の配線部の内部に機能素子を内蔵させた」という限りにおいて、本件補正発明における「第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、前記第2の配線部の内部にフレキシブルな機能素子を内蔵させた」に相当する。 してみると、本件補正発明と刊行物に記載された発明とは、 「3層以上の配線層を絶縁層を介して積層し、層間接続手段としてバンプを有する第1の配線部と、 前記第1の配線部における層のうち1層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなる第2の配線部と を有し、 前記第1の配線部における層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、第2の配線部の内部に機能素子を内蔵させた 機能素子内蔵基板。」の点で一致し、次の2点で相違する。 <相違点1> 層間接続手段について、本件補正発明においては、「層間接続手段として前記絶縁層により互いに層間絶縁された配線層の一方に形成され他方に頂部にて接するバンプ」であるのに対し、刊行物に記載された発明においては、本件補正発明における層間接続手段に相当する「バンプ5」がそのように形成されたものであるか否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。 <相違点2> 「第1の配線部における層のうち1層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなる第2の配線部」を有し、「第1の配線部における層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、第2の配線部の内部に機能素子を内蔵させ」ており、「第1の配線部」と「第2の配線部」の物理的特性に関し、本件補正発明においては、「第1の配線層における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなるフレキシブルな第2の配線部であって、前記1層または2層の配線層と絶縁層とが積層されている第2の配線部」を有し、「前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させると共に、前記第2の配線部の内部にフレキシブルな機能素子を内蔵させ」ており、「第1の配線部」がリジッドであり、「第2の配線部」がフレキシブルであるのに対して、刊行物に記載された発明においては、多層電子部品内蔵基板8の電子部品内蔵基板の3層以上の層のうち、何れの層が第1の配線部を越えて外側に延在しているか不明であり、外側に延在している層の第1の配線部の内部に内蔵される素子が能動機能素子及び受動機能素子であるか否か及び外側に延在している層の第2の配線部の内部に内蔵される電子部品がフレキシブルな機能素子であるか否か不明であり、「第1の配線部」と「第2の配線部」の物理的特性が不明である点(以下、「相違点2」という。)。 まず、上記相違点1について検討する。 配線板において、層間接続手段として絶縁層により互いに層間絶縁された配線層の一方に形成され他方に頂部にて接するバンプを用いることは、本件出願日前周知の技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-168491号公報[特に、段落【0036】及び図11]及び特開2001-185854号公報[特に、段落【0062】ないし【0064】及び図5]等参照。以下、「周知技術1」という。)である。 してみると、刊行物に記載された発明における「ビア5」(本件補正発明における「バンプ」に相当する。)について、周知技術1を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 次に、上記相違点2について検討する。 配線板において、リジッドな第1の配線部における最外層以外の中間層のうち1層の配線層が前記第1の配線部を越えて外側に延在してなるフレキシブルな第2の配線部であって、前記1層の配線層と絶縁層とが積層されている第2の配線部を備える技術は、本件出願日前周知の技術(例えば、実願平2-107200号(実開平4-63681号)のマイクロフィルム[特に、明細書第2ページ末行ないし第4ページ第13行及び第2図]及び特開平2-121390号公報[特に、第1ページ右下欄第5行ないし第2ページ左上欄末行並びに第9及び10図]等参照。以下、「周知技術2」という。)である。 また、配線板において、フレキシブルな配線部の内部にフレキシブルな機能素子を内蔵させることも、本件出願日前周知の技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-59721号公報[特に、段落【0021】及び図2]等参照。以下、「周知技術3」という。) してみると、刊行物に記載された発明における「多層電子部品内蔵基板8」の電子部品内蔵基板の3層以上の層のうち、何れの層を電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板とし、何れの層を第1の配線部を越えて外側に延在させるかについて、周知技術2を適用し、最外層以外の中間層を電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板として、第1の配線部を越えて外側に延在させ、その際に周知技術3を考慮して、外側に延在させた部分の内部に内蔵する電子部品をフレキシブルな機能素子とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 そして、上記1.(2)ニ)を参酌すれば、刊行物に記載された発明における「多層電子部品内蔵基板8」の電子部品内蔵基板の3層以上の層のうち、最外層以外の中間層を電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板として、第1の配線部を越えて外側に延在させることにより、第1の配線部については、電子部品内蔵基板7が積層される部分となるので、リジッドな配線部分となり、第2の配線部については、フレキシブルな配線部となることは明らかである。 したがって、刊行物に記載された発明において、周知技術2を適用し、最外層以外の中間層を電子部品内蔵基板であるフレキシブル基板として、第1の配線部を越えて外側に延在させ、その際に周知技術3を考慮して、外側に延在させた部分の内部に内蔵する電子部品をフレキシブルな機能素子とすることにより、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 そして、本件補正発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1.本件発明 平成21年7月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成20年12月26日付けの手続補正により補正された明細書及出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願日前に頒布された刊行物である刊行物(特開2001-53413号公報)には、上記第2[理由][3]1.(1)ないし(3)のとおりのものが記載されている。 3.対比・判断 本件発明は、上記第2[理由][3]で検討した本件補正発明の発明特定事項の「前記第1の配線部における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層」を「前記3層以上の配線層のうち1層または2層の配線層」とし、同じく、本件補正発明の発明特定事項の「前記第1の配線部の前記中間層の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」を「前記第1の配線部の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」とするものである。 これらは、実質的に、上記本件補正発明における発明特定事項である「第1の配線部(の3層以上の配線層)における最外層以外の中間層のうち1層または2層の配線層」から「最外層以外の中間層」との限定を削除し、同じく、本件補正発明の発明特定事項の「前記第1の配線部の内部に能動機能素子及び受動機能素子を内蔵させる」から「前記中間層の」との限定を削除したものに相当する。 そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記第2[理由][3]に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本件発明を全体としてみても、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 4.むすび 以上のとおり、本件発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-07 |
結審通知日 | 2011-06-10 |
審決日 | 2011-06-22 |
出願番号 | 特願2003-190342(P2003-190342) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤田 和英、黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 岡崎 克彦 |
発明の名称 | 機能素子内蔵配線板 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 奥山 尚一 |