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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1246159
審判番号 不服2011-1150  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-18 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 特願2004-369373「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日出願公開、特開2006-174927〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年12月21日の出願であって、平成22年10月20日付け(発送:10月26日)で拒絶査定がされ、これに対し平成23年1月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、当審において、平成23年5月17日付けで審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、同年7月12日付けで回答書が提出された。

2.平成23年1月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1?3に記載された
「【請求項1】
始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で特別図柄抽選が実行され、当該特別図柄抽選の結果を図柄変動パターン演出によって報知すると共に、当該特別図柄抽選の結果が当たりの場合に、所定の入賞口を開放して、短期間で多くの賞球を可能とする大役処理を実行する大役処理実行制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記大役処理実行制御手段が、
少なくとも開放時間及び開閉動作回数が異なり、一方が前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態、他方が前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態で構成された開閉動作の種類と、前記所定の入賞口の開閉動作の実行後に、以後の通常遊技状態の下での前記特別図柄抽選の当選確率を通常の当選確率よりも高くする確変特典の有無と、を組み合わせて、1回の前記大役処理の遊技仕様を設定することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記大役処理後の特別図柄抽選結果の報知時間を通常の報知時間よりも短縮する時短手段の機能を選択的に付与することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記時短手段が、前記始動口への遊技球の入賞を緩和する始動口入賞緩和手段を含むことを特徴とする請求項2記載の遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】
始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で特別図柄抽選が実行され、当該特別図柄抽選の結果を図柄変動パターン演出によって報知すると共に、当該特別図柄抽選の結果が当たりの場合に、所定の入賞口を開放して、短期間で多くの賞球を可能とする大役処理を実行する大役処理実行制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記大役処理実行制御手段が、
少なくとも開放時間及び開閉動作回数が異なり、一方が前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態、他方が前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態で構成された開閉動作の種類と、前記所定の入賞口の開閉動作の実行後に、以後の通常遊技状態の下での前記特別図柄抽選の当選確率を通常の当選確率よりも高くする確変特典の有無と、を組み合わせて前記当たりとなったときの1回毎の前記大役処理の遊技仕様を設定すると共に、前記組み合わせは、前記開閉動作の種類として、前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態と前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態とが複合された大役遊技処理を含むことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記大役処理後の特別図柄抽選結果の報知時間を通常の報知時間よりも短縮する時短手段の機能を選択的に付与することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記時短手段が、前記始動口への遊技球の入賞を緩和する始動口入賞緩和手段を含むことを特徴とする請求項2記載の遊技機。」
という発明に変更することを含むものである(下線部は補正箇所である。)。

(2)補正の適否
本件補正により、請求項1に、実質的な変更とならない特定事項と「前記組み合わせは、前記開閉動作の種類として、前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態と前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態とが複合された大役遊技処理を含む」という特定事項が追加され、「所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態」と「所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態」とを複合した上で、どのように複合するのかについては特定しないものを包含し得る記載となった。
ここで、当該特定事項について検討すると、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0075】?【0081】、段落【0113】?【0115】、段落【0118】?【0120】には、大役遊技仕様について記載されているものの、いずれの例においても、複合大役遊技の1?2回目が最小限大役遊技の1回の開放時間と同じ0.5秒と、複合大役遊技の初期は最小限大役遊技と同等の開閉動作をするように設定され、大役処理が開始された直後は、最小限大役遊技仕様をわかりにくくする構成としており、段落【0010】の【発明が解決しようとする課題】の「しかしながら、上記特許文献1のような疑似的な大役処理では、突然特典が付与されるという有利性はあるが、これとは反対に、当選したのに、当該当選による賞球がないため、疑似大役の動作(大入賞口の短い時間の開閉動作)が開始された時点で、遊技意欲を減退させることになる。」及び段落【0011】の「本発明は上記事実を考慮し、見掛け上、通常遊技状態から突然特典を付与する場合に必要な極めて短い時間かつ極めて少ない回数の所定の入賞口の開閉によって、遊技意欲が減退することなく、期待感を持続させることができる遊技機を得ることが目的である。」との記載からも、当初明細書等には、最小限大役遊技と複合大役遊技の初期の開閉動作が異なるものについては記載されておらず、さらにその示唆もなく、また、当初明細書等に記載された事項から自明な事項でもない。
そうすると、上述のとおり「所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態」と「所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態」とが複合されたことが特定されているのみであって、それをどのように複合するのかについては特定されていない本件補正は、初期に所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態を行い、その後、所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態を行うものや、それらを交互に行うもの等、当初明細書等に記載されていない事項を包含するものとなるから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

しかしながら、この補正が、特許法第17条の2第3項に規定された事項に違反しないものと仮定して、さらに、特許法第17条の2第4項に規定された事項を目的とするものに該当すると仮定して本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについても、以下検討を続けることとする。

(3)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由(平成22年6月16日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2004-344646号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0155】
関連発明12の遊技機は、関連発明1?4のうちの何れかの遊技機において、
前記作動手段は、
前記可変表示手段に前記特定図柄が停止表示される場合に、所定の停止条件が成立するまでの間、第1の状態にある可変入賞手段を第2の状態に変化させる単位作動を、所定の回数を上限回数として実行する作動実行手段を備えると共に、
前記可変表示手段に前記第1の特定図柄が表示される場合と、前記第2の特定図柄が表示される場合とで、前記上限回数が異なることを特徴とする。
【0156】
関連発明12の遊技機では、特定図柄の種類によって、可変入賞手段の作動回数を区別する(振り分ける)ため、遊技上の興趣が更に向上する。尚、停止条件としては、「所定の時間が経過すること」、及び、「所定数の遊技球が入賞すること」のうちの一方が成立することを例示できる。
【0157】
関連発明12においては、「第1の特別遊技」の際の「単位作動の実行回数」と、「第2の特別遊技」の際の「単位作動の実行回数」との間に差異を設けることができる。例えば、「第1の特別遊技」の際の「単位作動の実行回数(例えば、14回?16回)」よりも、「第2の特別遊技」の際の「単位作動の実行回数(例えば、1?3回)」を少なくすることができる。
【0158】
この差異を設ける態様によると、「第1の特別遊技」及び「第2の特別遊技」に、減り張りを付けることができる。つまり、両「特別遊技」の実行時において、「単位作動の実行回数」の共通化を図ると、遊技の減り張りを欠く可能性がある。蓋し、賞球を殆ど若しくは全く期待できない「第2の特別遊技」が、「第1の特別遊技」と同様に、長期間(第1の特別遊技における単位作動の実行回数分)実行されると、遊技者に冗長な印象を与える可能性がある。
【0159】
これに対し、差異を設ける態様によると、多数の賞球を期待できる「第1の特別遊技」を長期間(単位作動の実行回数分)の実行することを保証する。一方、賞球を殆ど若しくは全く期待できない「第2の特別遊技」を短期間(単位作動の実行回数分)で切り上げ、遊技者に対して「特別遊技状態の発生とは別の特典」を早期に付与することができる。つまり、この差異を設ける態様によると、遊技機によって実行可能な両「特別遊技状態」の態様に明確な差異を生ずるため、遊技上の興趣が更により一層向上する。
【0160】
関連発明13の遊技機は、関連発明5?8のうちの何れかの遊技機において、
前記作動手段は、
前記可変表示手段に前記特定図柄が停止表示される場合に、所定の停止条件が成立するまでの間、第1の状態にある可変入賞手段を第2の状態に変化させる単位作動を、所定の回数を上限回数として実行する作動実行手段と、
個々の単位作動の実行中において所定の継続条件が成立しない場合に、当該単位作動に
後続する他の単位作動の実行を禁止して可変入賞手段の作動を終了させる作動終了手段と、
を備えると共に、
前記可変表示手段に前記第1の関連図柄が表示される場合と、前記第2の関連図柄が表示される場合とで、前記上限回数が異なることを特徴とする。
【0161】
関連発明13の遊技機では、関連図柄の種類によって、可変入賞手段の作動回数を区別する(振り分ける)ため、遊技上の興趣が更に向上する。尚、停止条件としては、「所定の時間が経過すること」、及び、「所定数の遊技球が入賞すること」のうちの一方が成立することを例示できる。
【0162】
関連発明14の遊技機は、関連発明5?8のうちの何れかの遊技機において、
前記作動手段は、
前記可変表示手段に前記特定図柄が停止表示される場合に、所定の停止条件が成立するまでの間、第1の状態にある可変入賞手段を第2の状態に変化させる単位作動を、所定の回数を上限回数として実行する作動実行手段を備えると共に、
前記可変表示手段に前記第1の関連図柄が表示される場合と、前記第2の関連図柄が表示される場合とで、前記上限回数が異なることを特徴とする。
【0163】
関連発明14の遊技機においても、関連図柄の種類によって、可変入賞手段の作動回数を区別する(振り分ける)ため、遊技上の興趣が更に向上する。尚、停止条件としては、「所定の時間が経過すること」、及び、「所定数の遊技球が入賞すること」のうちの一方が成立することを例示できる。
【0164】
関連発明14の遊技機においても、関連発明12と同様に、「第1の特別遊技」の際の「単位作動の実行回数」と、「第2の特別遊技」の際の「単位作動の実行回数」との間に差異を設けることができる。そして、この差異を設ける態様によると、遊技機によって実行可能な両「特別遊技状態」の態様に明確な差異を生ずるため、遊技上の興趣が更により一層向上する。
【0165】
関連発明15の遊技機は、関連発明9?14のうちの何れかの遊技機において、
前記第1の作動態様においては、前記単位作動によって前記可変入賞手段を遊技球を受け入れ可能な第1の開放量だけ開放させ、
前記第2の作動態様においては、前記単位作動によって前記可変入賞手段を前記第1の開放量よりも少ない第2の開放量だけ開放させることを特徴とする。
【0166】
関連発明15は、可変入賞手段の開放量に差異を設けることで、第1の作動態様によって可変入賞手段を作動させる場合と、第2の作動態様によって可変入賞手段を作動させる場合とで、入賞率に変化を与えている。ここで、「第2の開放量」は、可変入賞手段による遊技球を受け入れ可能とする開放量であっても、受け入れを不可能とする開放量(遊技球の直径よりも小さな開放量の場合や、開放量が「0」である場合等)であってもよい。尚、「第2の開放量」を、「可変入賞手段による遊技球を受け入れ不可能とする開放量」とする場合には、第2の作動態様によって可変入賞手段を作動させる場合(第2の特別遊技)において、可変入賞手段への入賞を一切行うことなく、遊技機を高確率状態に移行させることができる。
【0167】
関連発明16の遊技機は、関連発明9?14のうちの何れかの遊技機において、
前記第1の作動態様においては、前記単位作動によって前記可変入賞手段を、遊技球を受け入れ可能な開放量だけ開放すると共に該開放を第1の開放時間の間維持し、
前記第2の作動態様においては、前記単位作動によって前記可変入賞手段を、所定の開放量だけ開放すると共に該開放を前記第1の開放時間よりも短い第2の開放時間の間維持することを特徴とする。
【0168】
関連発明16は、可変入賞手段の開放時間に差異を設け、第1の作動態様によって可変入賞手段を作動させる場合と、第2の作動態様によって可変入賞手段を作動させる場合とで、入賞率に変化を与えている。例えば、第2の作動態様によって行われる単位作動においては、一瞬のうちに(例えば、0.1秒程度で)可変入賞手段の開閉を行い、可変入賞手段への遊技球の入賞を困難にしたり、実質的に不可能とする場合を例示できる。」

(イ)「【0192】
次に、本実施例の遊技盤10の表面構造について図3を参照して説明する。遊技盤10は、略長方形の木製の板状体であって中枠3(図1及び図2参照)に保持されるとともに、後述する裏機構盤102(図4参照)によりその背面側が覆われている。この遊技盤10には、遊技盤10の表面に設けられた外レール14と内レール15とにより略円形状の遊技領域11が形成され、遊技領域11内には、中央装置16と、第一種始動口(普通電動役物)17と、変動入賞装置18と、左入賞口19、右入賞口20、左下入賞口21、右下入賞口22と、多数の障害釘23と、一対のランプ風車24、25等が配設されている。尚、「第一種始動口(普通電動役物)17」は「始動口」の一具体例を示す。」

(ウ)「【0200】
尚、本遊技機においては、始動入賞口(第一種始動口17)への入賞があった場合、後述するように、主制御部140(後述する。)において当否判定を行い、可変表示手段(特別図柄表示装置27)に、所定の図柄(特別図柄等)を変動表示した後に、その当否判定の結果に応じた「図柄(大当り図柄、外れ図柄)」を停止表示する。この当否判定では、例えば、所定の乱数を用いて遊技機が大当り状態となるか否かを決定する。ところで、始動入賞口(第一種始動口17)への入賞があった場合に、当否判定のための乱数を取得するのが一般的であるが、この始動入賞口(第一種始動口17)への入賞を連続的に生じた場合には、「前の始動入賞口(第一種始動口17)への入賞」に伴う図柄変動を終了しないうちに、他の乱数が取得される場合がある。このため、取得された乱数は、主制御部140で記憶され、順番待ち状態とされるが、この順番待ち状態とされる乱数が、一般に「始動記憶」とされる。そして、この「始動記憶」の数が、特別図柄保留表示装置16aによって表示される。」

(エ)「【0210】
図24(a)に示すように、3つの主表示部271、272、273によって、同一の奇数数字による3桁の「ぞろ目図柄(例えば、「7、7、7」等)」、即ち、「真正確変大当り図柄」が停止表示されると、遊技機1は「真正確変大当り状態」となる。このように、遊技機1が「真正確変大当り状態」となると、当該遊技機1は大入賞装置31の開閉を行いつつ、遊技球を受け入れ可能な特別遊技状態(第1の特別遊技状態)となる。そして、当該「第1の特別遊技状態」を終了した後、次の大当り(本実施例では、次の真正大当り)を生ずるまでの間、当該遊技機1を高確率状態とする。
【0211】
また、図24(b)に示すように、3つの主表示部271、272、273によって、同一の偶数数字による3桁の「ぞろ目図柄(例えば、「8、8、8」等)」、即ち、「真正通常大当り図柄(非確変大当り図柄)」が停止表示されると、遊技機1は「真正通常大当り状態(真正非確変大当り状態)」となる。このように、遊技機1が「真正通常大当り状態」なると、当該遊技機1は大入賞装置31の開閉を行いつつ、遊技球を受け入れ可能な特別遊技状態(第1の特別遊技状態)となる。このとき、当該遊技機1が通常の確率状態(低確率状態)にあるときには、この通常の確率状態(低確率状態)を維持し、当該遊技機1が高確率状態にあるときには、「第1の特別遊技状態」を終了した後に通常の確率状態(低確率状態)とする。
【0212】
更に、図24(c)に示すように、3つの主表示部271、272、273によって、予め定められた「奇数数字の組み合わせ」で構成される「疑似確変大当り図柄」が停止表示されると、遊技機1は「疑似確変大当り状態」となる。本実施例では、この「疑似確変大当り図柄」として、「1、3、5」、「3、5、7」、「5、7、9」、「7、9、1」及び「9、1、3」の計5組を設定する。このように、遊技機1が「疑似確変大当り状態」なると、当該遊技機1は、変動入賞装置18に配設された大入賞装置31の開閉板312を振動させるだけ、大入賞口311の閉鎖状態を維持し、遊技球を受け入れ不可能な状態のままとする「特別遊技状態(第2の特別遊技状態)」となる。そして、当該「第2の特別遊技状態」を終了した後、次の「大当り」(本実施例では、真正大当り及び疑似大当りの何れでもよい。)が生ずるまでの間、当該遊技機1を高確率状態にする。
【0213】
また、図24(d)に示すように、3つの主表示部271、272、273によって、予め定められた「偶数数字の組み合わせ」で構成される「疑似通常大当り図柄が停止表示されると、遊技機1は「疑似通常大当り状態」となる。本実施例では、この「疑似通常大当り図柄」として、「2、4、6」、「4、6、8」、「6、8、2」、「8、2、4」及び「8、6、4」の計5組を設定する。このように、遊技機1が「疑似通常大当り状態」なると、当該遊技機1は、変動入賞装置18に配設された大入賞装置31の開閉板312を振動させるだけ、大入賞口311の閉鎖状態を維持し、遊技球を受け入れ不可能な状態のままする「特別遊技状態(第2の特別遊技状態)」となる。本実施例では、この「疑似通常大当り」は、遊技機が「疑似確変大当り状態」に起因する高確率状態にあるときに限定して生ずる。そして、この「疑似通常大当り」を生ずると、高確率状態にある遊技機1が「第2の特別遊技状態」を終了した後に通常の確率状態(低確率状態)となる。
【0214】
図24(e)に示すように、3つの主表示部271、272、273によってその他の図柄(即ち、「真正確変大当り図柄」、「真正通常大当り図柄」、「疑似確変大当り図柄」及び「疑似通常大当り図柄」以外の図柄)、即ち、「外れ図柄」が停止表示されると、遊技機1は、「外れ状態」となる。このとき、大入賞装置31には、「状態の変化」を生ずることはない。」

(オ)「【0223】
尚、大入賞口ソレノイド313は、後述する主制御部140及び主制御部140に格納されたプログラム等と共に、「作動実行手段」及び「作動終了手段」(即ち、「作動手段」)の一具体例を構成している。また、開閉板312は大入賞装置31の可動部分を構成すると共に、大入賞口311を開閉するための「開閉手段」の一具体例を示している。」

(カ)「【0270】
なお、上述した特別図柄制御部160、音声・ランプ制御部170aは、主制御部140や払出制御部150と同様の回路部から構成されるものとすることもできる。すなわち、主回路部と入出力回路部とから構成されるものとし、内部にROM、RAMが内蔵されたCPUを用いることもできる。また、主制御部140や格納されたプログラムによって、「当否判定手段」と、「確率変動手段」等をを構成する。」

(キ)「【0530】
次に、実施例4の遊技機1において、特別図柄表示装置1270(図44参照)に、特定図柄(スタンダード大当り図柄、チャンス大当り図柄)が確定表示されたときに開始される処理(以下、「大当り関連処理」という。)について、図71?73を用いて説明する。尚、実施例4の「大当り関連処理」においても、「大当り図柄」の種類によって、その態様が以下のように異なる。また、前述の実施例1?3の「特別遊技関連処理」は、当該遊技機1が特別遊技状態に移行した後の処理を示していたが、実施例4の「大当り関連処理」は、「大当り図柄」が表示された後の処理を示す。
【0531】
この大当り関連処理は、特別図柄表示装置1270に特定図柄が表示されると(大当り図柄が表示されると)開始され(S6510)、先ず、条件装置(特別遊技手段)の作動が開始される(S6520)。そして、連続カウンタを初期化(例えば、「1」に設定)した(S6530)後、大当りの種類を判断し(S6550)、スタンダード大当の場合(S6550;NO)、役物連続作動装置を作動させ(S6570)、特別電動役物を作動し(S6575)、大入賞口311を開放状態とする(S6600)。尚、「連続カウンタ」の値は、特別遊技状態における「ラウンド回数」に相当する
【0532】
ここで、特別電動役物は、開閉板312と、この開閉板312の開閉動作(開閉作動)を行うための大入賞口ソレノイド313(図5参照)と、を備える。ここで、大入賞口ソレノイド313は、「作動装置部」の一具体例を構成し、開閉板312を開閉作動する。つまり、大入賞口ソレノイド313が開閉板312の開閉作動を通じて変動入賞装置18(可変入賞手段)を開閉駆動し、大入賞口311の開放・閉鎖が行われる。また、役物連続作動装置(作動制御部)は、主制御部140及び主制御部140に格納されたプログラム等によって構成され、大入賞口ソレノイド313の駆動を制御する。」

以上、上記(ア)乃至(キ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「第一種始動口17への入賞があった場合、主制御部140において当否判定を行い、特別図柄表示装置27に、特別図柄等を変動表示した後に、その当否判定の結果に応じた図柄(大当り図柄、外れ図柄)を停止表示し、
同一の奇数数字による3桁のぞろ目図柄(例えば、「7、7、7」等)、即ち、「真正確変大当り図柄」が停止表示されると、遊技機1は真正確変大当り状態となり、当該遊技機1は大入賞装置31の開閉を行いつつ、遊技球を受け入れ可能な第1の特別遊技状態となって、当該第1の特別遊技状態を終了した後、次の大当りを生ずるまでの間、当該遊技機1を高確率状態とし、
同一の偶数数字による3桁のぞろ目図柄(例えば、「8、8、8」等)、即ち、「真正通常大当り図柄(非確変大当り図柄)」が停止表示されると、遊技機1は真正通常大当り状態(真正非確変大当り状態)となり、当該遊技機1は前記第1の特別遊技状態となって、当該遊技機1が通常の確率状態(低確率状態)にあるときには、この通常の確率状態(低確率状態)を維持し、当該遊技機1が高確率状態にあるときには、「第1の特別遊技状態」を終了した後に通常の確率状態(低確率状態)とし、
予め定められた奇数数字の組み合わせで構成される「疑似確変大当り図柄」が停止表示されると、遊技機1は疑似確変大当り状態となり、当該遊技機1は、前記大入賞装置31の開閉板312を振動させるだけで、大入賞口311の閉鎖状態を維持し、遊技球を受け入れ不可能な状態のままとする第2の特別遊技状態となって、次の大当りが生ずるまでの間、当該遊技機1を高確率状態とし、
予め定められた偶数数字の組み合わせで構成される「疑似通常大当り図柄」が停止表示されると、遊技機1は疑似通常大当り状態となり、当該遊技機1は、前記第2の特別遊技状態となって、高確率状態にある遊技機1が第2の特別遊技状態を終了した後に通常の確率状態(低確率状態)となり、
前記第1の特別遊技状態は、単位作動の実行回数を14?16回とし、単位作動によって、前記大入賞装置31を、遊技球を受け入れ可能な開放量だけ開放すると共に該開放を第1の開放時間の間維持し、
前記第2の特別遊技状態は、単位作動の実行回数を1?3回とし、単位作動によって、前記大入賞装置31を、遊技球の入賞を実質的に不可能とする所定の開放量だけ開放すると共に該開放を前記第1の開放時間よりも短い第2の開放時間の間維持する遊技機1。」
の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明1」という。)。

(4)対比
引用発明1の「第一種始動口17」は、本願補正発明の「始動口」に相当する。以下同様に、
「入賞があった場合」は「遊技球の入賞を契機に」に、
「当否判定を行い」は「所定の確率で特別図柄抽選が実行され」に、
「遊技機1」は「遊技機」に、それぞれ相当する。

引用発明1は、特別図柄表示装置27に、特別図柄等を変動表示した後に、その当否判定の結果に応じた図柄(大当り図柄、外れ図柄)を停止表示することにより当否判定の結果を遊技者に報知しているのであるから、引用発明1は本願補正発明の「当該特別図柄抽選の結果を図柄変動パターン演出によって報知する」に相当する機能を備えているといえる。

また、引用発明1は、同一の奇数数字による3桁のぞろ目図柄(例えば、「7、7、7」等)、即ち、「真正確変大当り図柄」が停止表示、又は、同一の偶数数字による3桁のぞろ目図柄(例えば、「8、8、8」等)、即ち、「真正通常大当り図柄(非確変大当り図柄)」が停止表示されると、遊技球を受け入れ可能な第1の特別遊技状態となり、該第1の特別遊技状態は、単位作動の実行回数を14?16回とし、単位作動によって、大入賞装置31を、遊技球を受け入れ可能な開放量だけ開放すると共に該開放を第1の開放時間の間維持するのであるから、引用発明1は「当該特別図柄抽選の結果が当たりの場合に、所定の入賞口を開放して、短期間で多くの賞球を可能とする大役処理を実行する大役処理実行制御手段」を備えているといえる。

また、引用発明1は、第1の特別遊技状態及び第2の特別遊技状態を備え、第1の特別遊技状態は、単位作動の実行回数を14?16回とし、単位作動によって、大入賞装置31を、遊技球を受け入れ可能な開放量だけ開放すると共に該開放を第1の開放時間の間維持し、第2の特別遊技状態は、単位作動の実行回数を1?3回とし、単位作動によって、大入賞装置31を、遊技球の入賞を実質的に不可能とする所定の開放量だけ開放すると共に該開放を第1の開放時間よりも短い第2の開放時間の間維持するのであるから、第1の特別遊技状態と第2の特別遊技状態は、「少なくとも開放時間及び開閉動作回数が異な」っており、第1の特別遊技状態は、「前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態で構成」されており、第2の特別遊技状態は「前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態」で構成されている。さらに、引用発明1は、第1の特別遊技状態及び第2の特別遊技状態終了後には、遊技機1をそれぞれ高確率状態又は低確率状態とするのであるから、引用発明1は「少なくとも開放時間及び開閉動作回数が異なり、一方が前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態、他方が前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態で構成された開閉動作の種類と、前記所定の入賞口の開閉動作の実行後に、以後の通常遊技状態の下での前記特別図柄抽選の当選確率を通常の当選確率よりも高くする確変特典の有無と、を組み合わせて前記当たりとなったときの1回毎の前記大役処理の遊技仕様を設定」しているといえる。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で特別図柄抽選が実行され、当該特別図柄抽選の結果を図柄変動パターン演出によって報知すると共に、当該特別図柄抽選の結果が当たりの場合に、所定の入賞口を開放して、短期間で多くの賞球を可能とする大役処理を実行する大役処理実行制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記大役処理実行制御手段が、
少なくとも開放時間及び開閉動作回数が異なり、一方が前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態、他方が前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態で構成された開閉動作の種類と、前記所定の入賞口の開閉動作の実行後に、以後の通常遊技状態の下での前記特別図柄抽選の当選確率を通常の当選確率よりも高くする確変特典の有無と、を組み合わせて前記当たりとなったときの1回毎の前記大役処理の遊技仕様を設定する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明では、前記開閉動作の種類として、前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態と前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態とが複合された大役遊技処理を含んでいるのに対して、引用発明1では、そのような構成を有していない点。

(5)判断
<相違点>について
遊技機の分野において、大当り時の大入賞口の開閉パターンとして、開放時間が異なるラウンドを組み合わせて構成された開閉パターンを備えることは、例えば、特開2003-245420号公報(特に、段落【0066】、【0067】、【0070】、【0071】、【0075】、【0076】、【0087】、【0123】、【0124】を参照)、特開平11-319217号公報(特に、【0088】、【0128】、【0143】、【0161】、【0162】を参照)にみられるように周知技術である。
そして、上記周知技術は遊技機の大当り時の大入賞口パターンに関するものであるので、引用発明1の大当り時の大入賞口311の開閉パターンに上記周知技術を採用して、入賞が期待できる開閉動作形態のみからなる第1の特別遊技状態の遊技仕様に、入賞が期待できない開閉動作形態である第2の特別遊技状態の開閉動作形態を組み合わせて開放時間が異なるラウンドとし、本願補正発明の相違点に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
なお、請求人は審判請求書の5頁25行?28行において「また、本願発明によれば、大役が開始された時点においては、遊技者は何れの大役遊技が開始されたかを判断することができない仕様(例えば、本願発明の段落番号0081等参照)を確立することができ、引用文献1からは想到し得ない効果を奏することができます。」と主張しているものの、本願補正発明では、最小限大役遊技と複合大役遊技の初期が同等の開閉動作であると特定されていないため、当該効果は本願補正発明の特定事項に基づかないものであり請求人の主張を採用することはできない。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本願補正発明についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定された事項に違反しないものと仮定して、さらに、特許法第17条の2第4項に規定された事項を目的とするものに該当すると仮定した場合にも、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年1月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1?3に係る発明は、平成22年8月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものである。
「【請求項1】
始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で特別図柄抽選が実行され、当該特別図柄抽選の結果を図柄変動パターン演出によって報知すると共に、当該特別図柄抽選の結果が当たりの場合に、所定の入賞口を開放して、短期間で多くの賞球を可能とする大役処理を実行する大役処理実行制御手段と、を備えた遊技機であって、
前記大役処理実行制御手段が、
少なくとも開放時間及び開閉動作回数が異なり、一方が前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態、他方が前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態で構成された開閉動作の種類と、前記所定の入賞口の開閉動作の実行後に、以後の通常遊技状態の下での前記特別図柄抽選の当選確率を通常の当選確率よりも高くする確変特典の有無と、を組み合わせて、1回の前記大役処理の遊技仕様を設定することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記大役処理後の特別図柄抽選結果の報知時間を通常の報知時間よりも短縮する時短手段の機能を選択的に付与することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記時短手段が、前記始動口への遊技球の入賞を緩和する始動口入賞緩和手段を含むことを特徴とする請求項2記載の遊技機。」

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-344646号公報(引用例1)に記載された発明は、前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
平成22年8月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下、「本願発明」という。)は、前記2.(2)で検討したとおり本願補正発明から、実質的な変更とならない特定事項を除き、「前記組み合わせは、前記開閉動作の種類として、前記所定の入賞口への入賞が期待できない開閉動作形態と前記所定の入賞口への入賞が期待できる開閉動作形態とが複合された大役遊技処理を含む」という追加された事項を除いたものである。
そうすると、前記2.(4)に記載した相違点となる特定事項が本願補正発明から除かれたこととなり、本願発明と引用発明1とは一致することとなるから、両者は同一である。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1と同一であり、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができない。
そして、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2004-369373(P2004-369373)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也西田 光宏  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 瀬津 太朗
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  

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