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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1246166
審判番号 不服2010-24996  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-08 
確定日 2011-11-02 
事件の表示 特願2009-166512「クリーニングブレード」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日出願公開、特開2009-237588〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は2009年 7月15日の分割出願(原出願:2005年 8月11日、特願2005-232763号、国内優先日:2004年11月 1日)であって、平成21年10月16日付けで通知された拒絶理由に対して、同年12月21日付けで手続補正書が提出され、再度通知された平成22年 3月19日付け拒絶理由に対して、同年 5月28日付けで手続補正書が提出されたが、同年 8月 6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成22年11月 8日付けで審判請求がなされ、その後、当審において平成23年 6月10日付け拒絶理由が通知され、これに対して同年 7月 6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

本願の請求項1?7に係る発明は、平成23年 7月 6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものと、一応認める。

「 【請求項1】
先端面の一部を斜めにカットしてカット面が設けられ、被クリーニング部材に押し当てる先端稜線部が鈍角に形成されており、
且つ、前記先端面において、鈍角に形成されている前記先端稜線部と別の先端稜線部が直角に形成されており、
主に、前記先端稜線部を被クリーニング部材にカウンタ方向に押し当てることで、被クリーニング部材上のトナーをクリーニングするために用いられるクリーニングブレード。」

2.引用刊行物の記載事項
2-1)引用刊行物1
当審の拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された実願昭63-134688号(実開平2-55270号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1a)「3 ブレードの画像担持体に接する部分のエッジに、ブレード上面に対して30?60度の角度をもち幅が0.05?0.5mmの傾斜面を形成したブレードを備えたことを特徴とする電子写真装置のクリーニング装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(1b)「〔従来の技術〕
従来、電子写真複写機やプリンタ等の画像担持体の表面をクリーニングする装置として、ブレードを用いたクーニング装置がある。
たとえば複写機においては、第12図に示すように、ポリウレタン等の高分子材料からなるブレード41で矢印方向に回転する感光体40の表面を摺擦し、感光体40表面に残留するトナーt等を掻き落としている。
このブレード41は、ポリウレタン樹脂を刃物で短冊状に切断して形成している。このため,ブレード41の切断面42は上面43に対して直角で、かつ、角部の丸み半径Rは1μm以下でかなり鋭い。」(明細書2頁5行?17行)

(1c)第12図は以下のとおり。



(1d)「第3図は本考案の第4の実施例におけるブレードのエッジ部を示す側面図である。
本実施例では、ブレード7の感光体と接するエッジを図示のように研磨により傾斜面8を形成する。この場合、ブレード7上面に対する傾斜面8の角度αを30?60度とし、幅βを0.05?0.5mmとする。この研磨により第1実施例の場合と同様に傾斜面8は表面粗さが3?7μmRzとなり、感光体表面上の外添剤は掻き残し、外添剤がブレードエッジに堆積することがなくなる。ここで、前記角度αが30度より小さいとクリーニング不良が発生し、60度より大きくなると傾斜面8が感光体に接触し難くなり、表面研磨による効果が得られなくなる。また、前記幅βが0.05mmより小さいと表面研磨による効果が得られなくなり、0.5mmより大きくなるとクリーニング不良が発生する。
本実施例のブレード7は、研磨により適度な表面粗さと傾斜を有する傾斜面8が感光体表面に接するので、感光体表面との間の摩擦抵抗も小さくなり、ブレードのめくれやチャタリングの発生が抑制され、かつ、外添剤がブレードエッジに堆積することもない。」(明細書10頁9行?11頁10行)

(1e)第3図は以下のとおり。



第3図から、ブレード7端面には、感光体7と接するエッジには傾斜面8が形成され、感光体7と接しないエッジには傾斜面が形成されていないことが理解出来る。

これらを踏まえると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「刃物で短冊状に切断して形成しているので、ブレード41の切断面42は上面43に対して直角となっている従来のブレードに対して、ブレード7の感光体と接するエッジを研磨により傾斜面8を形成し、且つ感光体と接しないエッジには傾斜面を形成せず、ブレード7上面に対する傾斜面8の角度αを30?60度とし、幅βを0.05?0.5mmとした、感光体40表面に残留するトナーtを掻き落として、画像担持体の表面をクリーニングするブレード。」

2-2)引用刊行物2
当審の拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された特開平6-332350号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項4】 像担持体表面の清掃用のクリーニングブレードであって、像担持体表面に当接するエッジ部に面取りを施したことを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項5】 遠心成形法で作製された弾性シートを刃物によってクリーニングブレードの形態に切断した後、そのエッジ部を、表面を粗らした平板に当接させた状態で、両者を互いに摺動させ、エッジ部に面取りを形成する請求項4に記載のクリーニングブレードの製造方法。」

(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、像担持体の清掃用のクリーニングブレード及びその製造方法並びに該クリーニングブレードを用いる画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置において、像担持体に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー像として可視像化するものでは、そのトナー像を転写紙などの転写材に転写したのち、転写に寄与しなかったトナーや紙粉やその他の異物が、像担持体表面に残留付着しているので、かかる付着物を所定のクリーニング装置によって除去している。
【0003】かかるクリーニング装置で、ゴムなどの弾性体より成るクリーニングブレードを用いるクリーニング装置が多用されている。
【0004】図5は、かようなクリーニング装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【0005】この図において、像担持体の一構成例であるドラム状の感光体1は、画像形成時に図示時計方向(矢印a方向)に回転駆動され、この回転時に、帯電チャージャ2により、その表面が一様に帯電される。次いで、露光部3において画像露光走査又は光書き込み走査が行われることにより、感光体表面に所定の静電潜像が形成される。
【0006】上記静電潜像は、現像装置4によってトナー像として可視像化され、そのトナー像は、転写チャージャ5の作用によって、転写紙7に転写される。このあと、分離チャージャ6の作用により、転写紙7が感光体1から分離され、その分離された転写紙7は定着装置8に向けて送られ、ここで転写紙7上のトナー像が定着される。
【0007】一方、転写工程後の感光体1の表面には、転写に寄与しなかったトナーや紙粉やその他の異物が残留付着しているので、かかる付着物が、感光体1に対置させたクリーニング装置9のクリーニングブレード11によって除去される。すなわち、感光体1の表面に当接させた、クリーニングブレード11のエッジ部11aによって上記付着物が除去され、その表面が清掃されるのである。
【0008】従来、この種のクリーニング装置に用いられるクリーニングブレードのエッジ部については、できるだけ鋭利である方がよいとされていた。このため、エッジ部の形成には、かみそりで切断する方法(特開昭58-122579号公報)が一般的である。切断前の弾性シートの形成法には、射出成型法、押出成型法、鋳造成型法等がある(特公平5-2148号公報)。通常、切断されたクリーニングブレードのエッジ部の先端については、その丸みの曲率半径(R)は1μm以下で、その稜線粗さは1S(最大粗さ法によるもの)以下に抑えられている。
【0009】ブレードクリーニング法は、図5に例示したように、クリーニングブレード11のエッジ部11aを感光体1のような像担持体に押し当てて、エッジ部11a及び側端部(通常、切断されたカット面)11bとで、前述の付着物の動きを阻止しながら、掻き落として、像担持体表面を清掃するものである。以後、図5の例に従って、側端部11bを「上流側側端部」と言い、符号11cで示す部位を「下流側側面部」と言う。
【0010】エッジ部11a及び感光体1の表面は、それぞれ完全なる直線及び平面とはなっていないので、クリーニングブレード11の全長にわたって均一な接触を得るためには、ブレード全体に所定の力を加えて感光体面側に押しつける必要がある。押しつける方法として、クリーニングブレードをたわませてその反発力を利用するもの、さらにスプリング力等を利用するものがある。」
【0011】クリーニングブレード11は、例えば、ゴム硬度が65°乃至75°程度の比較的柔らかいゴムなどによって構成されるので、エッジ部11aが感光体1への接触時に製造時のR≦1μmを保つことはできずに、つぶれて丸みをもった形態を呈する。すなわち、感光体1が静止している状態(図7)から、感光体1の表面が図8に示すように矢印a方向に移動するようになると、エッジ部11aが、図8に曲率半径Rで示すように、つぶれて丸みをもった形態となるのである。このときの接触長さは、例えば約5?30μm、丸みの曲率半径Rは、例えば2?5μm前後となっている。また、この場合の当接圧は、例えば5?30gf/cm(接触長さ1cmあたり)となっている。
【0012】クリーニングブレード11は、感光体に対し相対摺動するため、エッジ部が摩耗する。図6は、エッジ部を感光体に所定の圧力で当接させ、弾性変形させていたものを、感光体から離した状態での、エッジ部近傍を示し、摩耗面と、上流側側端部11cとの成す角度θは、例えば30°乃至60°程度となっている。なお、aは感光体1の表面の移動方向である。
【0013】摩耗面の摩耗幅が、例えば、おおよそ30μmを越えると、クリーニング能力が低下するため、クリーニングブレード11の交換が必要になる。交換までのコピー枚数は、画像形成装置の仕様によっても異なるが、例えば、おおよそ10万乃至20万枚程度(A4サイズの転写紙の横方向通紙の場合)となっている。」

(2c)図5及び図6は以下のとおり。





なお図5及び図6から、エッジ部11aを挟む「上流側側端部11b」と「下流側側面部11c」とのなす角度は90度であり、上流側側端部11bには、感光体表面に接しないエッジも存在することが理解出来る。

(2d)【0060】図2は、今一つの発明の実施例のクリーニングブレード11のエッジ部11aの近傍部を示す拡大図であり、ゴムなどの弾性体より成るクリーニングブレード11のエッジ部11aには面取りが施されている。その大きさは、本例では次のようになっている。
C_(1)(下流側側面部11cがわのもの) 10μm
C_(2)(上流側側端部11bがわのもの) 5μm
【0061】図2に示したクリーニングブレード11も、そのエッジ部11aが所定の圧力で感光体表面に圧接され、この状態で残留トナーを除去する。
【0062】本発明者はクリーニングブレードのエッジ部11aに、上述の如き丸み又は面取りを形成して、そのクリーニング性の評価テストを行ったが、このときの丸み又は面取りは図4に示す装置を用いて形成した。
【0063】同図において、ベース16の上右側にはモータ17及びリンク18があって、このリンク18の一端には、平板の一構成例である摺動テーブル19が枢着されている。テーブル19は、ベース16に回転自在に支持された複数のコロ20上に載っている。モータ17が回転すると、テーブル19はリンク18を介して左右方向に往復直線運動を行う。
【0064】ベース16の手前側端部に一体形成された突出部16Aと、奥側の突出部とには、側板22が2本のネジ23によってそれぞれ固定される。このネジ23を緩めることによって、側板22はベース突起16Bの中心O_(1)の周りに回動することができ、任意の回動位置で、ネジ23を締め付けることにより側板22を固定することができる。
【0065】O_(1)の位置は、クリーニングブレード11のエッジ部の稜線と略一致するようになっている。クリーニングブレード11を保持するブレードホルダ24は、側板22から内側に一体的に突出した張り出し部25にネジ26によって固定されている。
【0066】摺動テーブル19の表面は、JIS粒度#2000以下、例えば#4000程度のヤスリと同じように粗された状態になっている。これに対し、摺動テーブル19の表面に酸化アルミナ等の研磨粒子(粒度#2000乃至#8000程度)を塗布して、その表面を粗すようにしても良い。
【0067】クリーニングブレード11のエッジ部を摺動テーブル19の表面に押し当てた状態で、同テーブル19を往復動させることにより、エッジ部は相対的にテーブル上を摺動し、この際、エッジ部が研磨される。
【0068】エッジ部に丸みを形成する場合は、上述のようにネジ23を回転操作することにより、側板22の回動位置を変えて固定しつつ、その各回動位置毎に、研磨を繰り返えせば良い。例えば、テーブル表面に対しブレード傾き角が15°乃至75°の範囲で、10°ずつ、側板22を振らすようにすれば、36角形の面取り部となる。この場合には、エッジ部11aは36の面から成る丸みが形成される。
【0069】このようにして得られた丸みを有するクリーニングブレード11のエッジ部11aが、図1に拡大して示されている。これに対し、側板22の傾き角を変えないでエッジ部を研磨すれば、図2に示すような、エッジ部11aに面取りをもつクリーニングブレード11が得られるのである。」

(2e)図2は以下のとおり。



(2f)図4は以下のとおり。

【図4】


(2g)「【0076】ここで、丸み若しくは面取りを施したクリーニングブレードの製造方法に関して述べる。
【0077】第1の製造方法は、図4に示した実験装置と同じ装置を用いる研磨法によるものである。
【0078】先ず、遠心成形法で、クリーニングブレードの材料となる弾性シート、例えば長尺・幅広なゴムシートを作製する。遠心成形法というのは、回転する円筒ドラム内に液状材料を入れ、遠心力によって、シート状の長尺・幅広の弾性シートを成形する方法のことである。これによって、例えば、厚みが2mm程度の長尺・幅広な弾性シートができ上がる。
【0079】このようにしてでき上がったシートを、所定の刃物によって所定の大きさに切断し、目的とする形態のクリーニングブレードを作製する。これを図4に示した装置にかけて、そのエッジ部を、表面を粗らした平板、この例では摺動テーブル19に当接させた状態で、前述のように両者を摺動させて、エッジ部に丸み又は面取りを形成するのである。
【0080】摺動テーブル19の如き平板上には、前述のように、例えば#2000以下の細かいヤスリ目が刻まれるか、若しくは酸化アルミナ等が塗布されている。このような平板を用いてエッジ部を研磨しても良いのであるが、この他の公知の研磨法によるものであっても構わない。
【0081】かかる製造方法によれば、長尺・幅広な弾性シート、例えばゴムシートを準備するのみで、金型などを必要とすることなしに、簡単にエッジ部に丸み若しくは面取りを施したクリーニングブレードを作製することができる。」

これらを踏まえると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「エッジ部11aには面取りが施されており、感光体表面に圧接されるエッジ部11aを挟む上流側側端部11bと下流側側面部11cのなす角度は90度であり、且つ、上流側側端部11bには感光体表面に接しないエッジも存在し、エッジ部11aが所定の圧力で感光体表面に圧接され、この状態で残留トナーを除去するクリーニングブレード11。」

3.対比
3-1)本願発明1と刊行物1発明について
まず本願発明1と刊行物1発明を対比する。
刊行物1発明の「切断面42」,「傾斜面8」は、本願発明1の「先端面」,「カット面」に相当している。
この「傾斜面8」は、「ブレード41の切断面42は上面43に対して直角となっているので」、「ブレード7の感光体と接するエッジを研磨により形成し」たものであり、しかも「ブレード7上面に対する傾斜面8の角度αを30?60度とし」ていることから、刊行物1発明の「傾斜面8」は、本願発明1の「カット面」の様に、「先端面の一部を斜めにカットし設けられた」ものである。

しかも上記角度αから、カット面の切断面42側の角、および上面43側の角は鈍角となっている。
刊行物1発明において、カット面の切断面42側の角と上面側43の角のうち、少なくともどちらか一方が感光体に接する訳であるから、この感光体に接した角は、本願発明1の「鈍角に形成された先端稜線部」に相当している。

また、刊行物1発明の「感光体と接しないエッジ」には傾斜面を形成していないことから、このエッジは直角であり、よって「この感光体と接しないエッジ」が「鈍角に形成されている前記先端稜線部と別の先端稜線部が直角に形成されたこと」に相当している。

そして刊行物1発明の「感光体40表面に残留するトナーtを掻き落として、画像担持体の表面をクリーニングするブレード」は、本願発明1の被クリーニング部材上のトナーをクリーニングするために用いられるクリーニングブレード」に相当している。

したがって本願発明1と刊行物1発明とは、下記の一致点および一応の相違点を有している。

(一致点)
「先端面の一部を斜めにカットしてカット面が設けられ、被クリーニング部材に接する先端稜線部が鈍角に形成されており、
且つ、前記先端面において、鈍角に形成されている前記先端稜線部と別の先端稜線部が直角に形成されている、
被クリーニング部材上のトナーをクリーニングするために用いられるクリーニングブレード。」

(相違点)
刊行物1発明は、本願発明1の様に、主に先端稜線部を被クリーニング部材にカウンタ方向に押し当てるものでは無い点。

3-2)本願発明1と刊行物2発明について
次に、本願発明1と刊行物2発明とを対比する。
刊行物2発明の「上流側側端部11b」,「面取り」は、本願発明1の「先端面」,「カット面」に相当するので、刊行物2発明において、「上流側側端部11b」にある「エッジ部11aには面取り」が施されていることは、本願発明1の「先端面の一部を斜めにカットしてカット面が設けられ」たことに相当する。

刊行物2発明において、「エッジ部11a」を挟む「上流側側端部11b」と「下流側側面部11c」とのなす角度が90度であるので、「エッジ部11a」を面取りすれば、「面取り」された「エッジ部11a」の「上流側側端部11b」側の角と、「下流側側面部11c」側の角は、鈍角となる。 この「面取り」された「エッジ部11a」が感光体表面に圧接すれば、上記二つの角のうち少なくともどちらか一方は、感光体表面に圧接することになるので、この感光体表面に圧接した角が鈍角であることが、本願発明1の「被クリーニング部材に押し当てられる先端稜線部が鈍角に形成されたこと」に相当する。

また、刊行物2発明の「感光体表面に接しないエッジ」には傾斜面が設けられていないので、この「感光体に接しないエッジ」が、本願発明1の「鈍角に形成されている前記先端稜線部とは別の先端稜線部が直角に形成されている」ことに相当する。

そして刊行物2発明の「エッジ部11bが所定の圧力で感光体表面に圧接され、この状態で残留トナーを除去するクリーニングブレード11」は、本願発明1の「被クリーニング部材上のトナーをクリーニングするために用いられるクリーニングブレード」に相当している。

したがって本願発明1と刊行物2発明とは、上記3-1)で述べたのと同様の(一致点)及び(相違点)を有している。

4.判断
上記(相違点)について検討する。
当該(相違点)である「先端稜線部を被クリーニング部材にカウンタ方向に押し当てる」ことは、クリーニングブレードの使用方法を限定したものに過ぎず、これによりクリーニングブレード自体の構成を特定するものではないから、本願発明1の実質的な発明特定事項と認めることは出来ない。よって、当該(相違点)が実質的な発明特定事項でないことから、当該(相違点)は実質的に相違点に当たらない。

なお、この(相違点)について、平成23年 7月 6日付け意見書の「C.〔理由2,3〕について」の主張を検討する。

出願人は、まず「特許・実用新案審査基準 第2(当審注:ローマ数字)部 第2章」の「1.5.2(2)1(当審注:丸数字) 用途限定がある場合の一般的考え方」の記載、及び「1.5.2(2)2(当審注:ローマ数字) 用途限定がなされた物の発明を用途発明と解すべき場合の考え方」の記載を引用して、「つまり、本願発明にあっては、「先端面の一部を斜めにカットしてカット面が設けられ、被クリーニング部材に押し当てる先端稜線部が鈍角に形成されており、且つ、前記先端面において、鈍角に形成されている前記先端稜線部と別の先端稜線部が直角に形成されたクリーニングブレード」自体は、新規性がないとしても、「主に前記先端稜線部を被クリーニング部材にカウンタ方向に押し当てる」という新たな用途を提供し」、本願発明の特別な効果を主張している。

しかしながら、「1.5.2(2)1(当審注:丸数字) 用途限定がある場合の一般的考え方」における『用途限定が、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識をも考慮して、その用途に特に適した形状、構造、組成等(以下、単に「構造等」という。)を意味すると解することができる場合のように、用途限定が付された物が、その用途に特に適した物を意味すると解される場合は、そのものは用途限定が意味する構造等を有するものであると解する。』ことや、『したがって、請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明特定事項とが、用途限定以外の点で相違しない場合であっても、用途限定が意味する構造等が相違すると解されるときは、両者は別異の発明である。』こととあるのは、用途限定によって、その用途に特に適した何らかの構造等を意味すべきところ、本願発明1における「主に前記先端稜線部を被クリーニング部材にカウンタ方向に押し当てる」ことは、単に使用方法の限定であって、仮に当該「用途限定がある場合の一般的考え方」の新たな用途を提供していたとしても、当該用途限定を付されることによって、その用途に特に適した何らかの構造等を意味してはいない。よって、本願発明1に当該用途限定を付したとしても、本願発明1と刊行物1発明とは、この「用途限定がある場合の一般的考え方」の様な「用途限定が意味する構造等が相違すると解される」ものでもなく、「両者は別異の発明である」ということも出来ない。

同じく「1.5.2(2)2(当審注:丸数字) 用途限定がなされた物の発明を用途発明と解すべき場合の考え方」には、『一般に、用途発明は、ある物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明と解される。』ことや、『そして、請求項中に用途限定がある場合であって、請求項に係る発明が、ある物の未知の属性を発見し、その属性により、その物が新たな用途に適することを見いだしたことに基づく発明といえる場合には、当該用途限定が請求項に係る発明を特定するための事項という意味を有するものとして、請求項に係る発明を、用途限定の観点も含めて解することが適切である。したがって、この場合は、たとえその物自体が既知であったとしても、請求項に係る発明は、用途発明として新規性を有し得る。』こととある。
本願発明1が新たな用途を提供している、と出願人が主張するように、「主に前記先端稜線部を被クリーニング部材にカウンタ方向に押し当てる」ことは、あくまで使用方法であり、新たな用途であったとしても、「用途限定がなされた物の発明を用途発明と解すべき場合の考え方」における「ある物の未知の属性を発見」したことにはならない。
そもそも、「1.5.2(2)2(当審注:丸数字) 用途限定がなされた物の発明を用途発明と解すべき場合の考え方」の(注1)で説明されているように、「この用途発明の考え方は、一般に、物の構造や名称からその物をどのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野(例:化学物質を含む組成物の用途の技術分野)において適用される。他方、機械、器具、物品、装置等については、通常、その物と用途とが一体であるため用途発明の考え方が適用されることはない。」とあるように、機械、器具、物品、装置等に該当するクリーニングブレードには適用されないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1または刊行物2に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-05 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2009-166512(P2009-166512)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 孝平  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 クリーニングブレード  
代理人 中尾 俊介  

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