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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B08B
管理番号 1246690
審判番号 不服2010-20758  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-15 
確定日 2011-11-11 
事件の表示 特願2000-26547号「基板端面の洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月7日出願公開、特開2001-212533号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年2月3日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成23年8月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「基板(1)面と平行に移動する移動体(11)と、
前記移動体に固定される駆動モータ(13)と、
前記駆動モータにより回転される上面洗浄ローラ(16)および下面洗浄ローラ(17)と、
両洗浄ローラの回転軸(16a、17a)の端部に固定され前記回転軸より大径で外周に連通孔を形成し、外周の両端に大径部を形成した筒状の支持部材(27、28)と、
前記両洗浄ローラの前記回転軸内に回転ジョイント(33)を介して配置された洗浄液通路(32)と、
前記支持部材内部の前記洗浄液通路と連通し前記支持部材の径方向に延びる連通路(34)と、
前記支持部材の外周両端の大径部間に配設される円筒形の弾性多孔質体(29、30)と、
を備え、
前記弾性多孔質体に前記回転ジョイント、前記洗浄液通路、前記連通路及び前記支持部材の連通孔を介して洗浄液を供給するとともに、前記上面洗浄ローラと下面洗浄ローラの間に基板端面を挟着し両者を相対的に移動させて基板端面を洗浄することを特徴とする基板端面の洗浄装置。」

2.引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平6-45302号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図1?9とともに以下の事項が記載されている。
ア.「この発明の処理装置は、被処理体を回転させつつ処理する装置において、上記被処理体のエッジ部に処理液を供給しつつ洗浄処理するエッジ部洗浄処理手段を備えた・・・(中略)・・・好ましくは被処理体のエッジ部に向けて処理液を供給する機構と、上記エッジ部を擦る機構とで構成する方がよい。
・・・(中略)・・・被処理体のエッジ部がエッジ部洗浄処理手段により洗浄液が供給されつつ洗浄されるので、被処理体のエッジ部を確実に洗浄処理することができ、ウェット洗浄処理において被処理体の表面に跡形が残らない。」(段落【0005】?【0007】
イ.「図1に示すように上記半導体ウエハの洗浄処理装置1は、被処理体である半導体ウエハ水平状態に保持する回転保持手段であるスピンチャック2(以下ウエハという)を水平状態に保持する回転保持手段であるスピンチャック2と、このスピンチャック2にて保持されるウエハWのエッジ部3を洗浄処理する手段としてエッジ部3に向けて処理液すなわち洗浄液を供給する機構例えばノズル4と、エッジ部3に付着している粒子汚染物を擦って洗浄除去する機構例えば回転ブラシ5とで主要部が構成されている。・・・(中略)・・・
上記回転ブラシ5は、図1に示すようにスピンチャック2の側方に配設される操作アーム10の先端部の下面に設けられている。この回転ブラシ5は、図示しない駆動手段によって駆動する操作アーム10によってスピンチャック2の回転板8上に回転(θ)移動すると共に、垂直方向(Z)に移動するように構成されており、・・・(中略)・・・図示しない駆動手段によって自転するものであってもよい。
一方、ノズル4は、・・・(中略)・・・操作機構Mによって垂直方向(Z)及び水平方向(X)に移動可能なアーム14の先端部に装着され・・・(中略)・・・、回転ブラシ5の使用時にウエハWのエッジ部3近傍まで移動して図示しない洗浄液供給源から供給される洗浄液を回転ブラシ5の近傍のエッジ部3に供給し得るようになっている。
・・・(中略)・・・
このようにウエハWの周縁部を挟持した状態でスピンチャック2が回転してウエハWを回転させる。回転するウエハWのエッジ部3に対してノズル4および回転ブラシ5を接近移動させ、ノズル4からエッジ部3に洗浄液が供給されつつエッジ部3が回転ブラシ5で擦られて洗浄処理される。・・・(中略)・・・こうしてウエハWの上面(表面)のエッジ部3が確実に洗浄処理される」(段落【0011】?【0014】)
ウ.「また、図4に示すように吸引管15の入口にウエハWのエッジ部3を上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5,5を取付けたものであってもよい。この場合には、ウエハWのエッジ部3上下面を同時に洗浄できると共に洗浄排液を吸引して回収することができる。」(段落【0015】)
エ.「被処理体は必ずしも半導体ウエハに限られるものではなく、例えばLCD基板あるいはプリント基板、フォトマスク、セラミック基板、コンパクトディスクなどについて同様に洗浄等の処理を施すものについても適用できるものである。」(段落【0022】)
オ.図1には操作アーム10の回転(θ)移動が垂直軸によりを行われる様子が図示されている。
上記ア.?エ.の記載事項及びオ.の図示内容を、特に図4の実施例に着目して、総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「回転保持手段であるスピンチャック2に水平状態に保持される半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体の上に、先端部の回転ブラシ5を、垂直軸による回転(θ)移動をする操作アーム10と
駆動手段によって自転する、半導体ウエハWのエッジ部3を上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5,5と、
ノズル4を先端部に装着した、水平方向(X)に移動可能なアーム14と、
エッジ部3に向けて洗浄液を供給するノズル4と、
を備え、
スピンチャック2を回転させて半導体ウエハWを回転させ、ノズル4からエッジ部3に洗浄液が供給されつつエッジ部3が上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5で擦られて洗浄処理され、半導体ウエハWのエッジ部3上下面を同時に洗浄できると共に、吸引管15の入口に一対のローラ形回転ブラシ5,5を取付けて洗浄排液を吸引して回収することができる、
半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体のエッジ部を確実に洗浄処理する洗浄処理装置1。」

(2)引用刊行物2
同じく引用され、本願出願前に頒布された特開平9-103748号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図1?5とともに以下の事項が記載されている。
ア.「本発明は、磁気ディスク,光ディスクその他の円環状部材を洗浄するためのディスク洗浄装置に関するものである。」(段落【0001】)
イ.「ブラシを回転させるようになし、・・・(中略)・・・ディスクを回転駆動する。ロールブラシは、回転軸にスポンジ等のブラシを嵌合・固着して設けたものであり、回転軸を駆動手段に連結する・・・(中略)・・・、ブラシはディスクの表裏両面に当接させて、回転軸を回転駆動すれば、ブラシを回転させれば、ブラシがディスクに対して摺動する・・・(中略)・・・。洗浄液は、ブラシの外部から供給できるし、またブラシの内部からも供給することができ、これによりディスクの表裏両面が同時に、隈なく洗浄される。」(段落【0003】)
ウ.「1は円環状部材としての磁気ディスクや、光ディスク等からなるディスクであって、このディスク1は、その外径部を、3つのチャック駒2a,2b,2cからなるチャック手段に回転自在に支承されている。・・・(中略)・・・ディスク1は、チャック駒2a?2cによりチャックさせた状態では、その姿勢は鉛直状態になる。
次に、10は一対からなるロールブラシであり、ロールブラシ10は、図2からも明らかなように、回転軸11に円筒状に形成したスポンジ等からなるブラシ12を嵌合・固定したものであり、・・・(中略)・・・ロールブラシ、回転軸及びブラシはそれぞれ一対から構成されて、ディスク1の表裏両面に当接するものであり、・・・(中略)・・・ディスク1の表面側及び裏面側に当接して、・・・(中略)・・・ディスク1は、図3に示したように、両ロールブラシ10a,10bにより挟み込まれる。
ロールブラシ10の回転軸11の基端側の部位は、軸受ユニット13に回転自在に挿通されておりこの軸受ユニット13は、回動軸14に連結され、モータ,カム等の駆動手段により所定角度往復回動する回動ブロック15に垂設したアーム16に連結されている。・・・(中略)・・・回動ブロック15には、モータ20が装着されており、・・・(中略)・・・モータ20を作動させると、表面側のローラブラシ10aが回転すると共に、裏面側のローラブラシ10bは、これとは反対方向に回転することになる。
回動ブロック15を図1の仮想線で示した状態にすることによって、ハンドリング手段からディスク1をチャック駒2a?2cへの移載が可能となり、また同図に実線で示した状態に変位させると、ディスク1の表裏両面には、その半径方向の幅の全長にわたってロールブラシ10a,10bのブラシ12a,12bが当接する。そして、モータ20を作動させて、ロールブラシ10a,10bの回転軸11a,11bを回転駆動すると、これらロールブラシ10a,10bは、図3に矢印で示したように、相互に反対方向に回転することになり、ディスク1の表裏両面に対して摺動することになる。」(段落【0012】?【0016】)
エ.「ディスク1の洗浄時には、洗浄液が供給される。・・・(中略)・・・また第2の供給経路は、ブラシ12の内部に洗浄液を供給するものである。・・・(中略)・・・また、ブラシ12の内部に洗浄液を供給するために、回転軸11の端部にはスイベルジョイント31が連結されており、このスイベルジョイント31によって、固定側の洗浄液配管32から洗浄時に回転する回転軸11に洗浄液を供給できるようになっている。
スイベルジョイント31により洗浄液配管32から供給された洗浄液は、図4から明らかなように、回転軸11に、その軸線方向に延在させた洗浄液通路33内に供給される。そして、洗浄液通路33には、多数の噴出路34の一端が開口しており、この噴出路34の他端は、回転軸11の周胴面に開口している。噴出路34は、回転軸11におけるブラシ12を嵌合させた部位のほぼ全長にわたり、また円周方向においては、90°毎,60°毎等というように、実質的に全周にわたって設けられる。」(段落【0017】及び【0018】)
上記ア.?エ.の記載事項及び図面を、総合すると、引用刊行物2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「磁気ディスク,光ディスクその他の円環状部材であるディスク1の両面を、洗浄液を供給しつつ、ローラ状の回転洗浄具で洗浄する具体的手段として、
鉛直状態に支承されているディスク1に垂直の回動軸14で回動する回動ブロック15と、
回動ブロック15に装着されたモータ20と、
ロールブラシ10の回転軸11の基端側の部位は軸受ユニット13に回転自在とされてモータ20により回転される一対のロールブラシ10a,10bと、
両ロールブラシ10a,10bの回転軸11内にスイベルジョイント31を介して配置された洗浄液通路33と、
洗浄液通路33に一端が開口し、他端が回転軸11の周胴面に開口している多数の噴出路34と、
回転軸11に嵌合・固定される円筒状に形成したスポンジ等からなるブラシ12と、
を備え、
スポンジ等からなるブラシ12にスイベルジョイント31、洗浄液通路33、噴出路34を介して洗浄液を供給するとともに、
両ロールブラシ10a,10bがディスク1の表裏両面を挟み込んで当接し、
ディスク1を回転駆動する洗浄装置。」

(3)引用刊行物3
同じく引用され、本願出願前に頒布された実願平4-28139号(実開平5-81838号)のCD-ROM(以下「引用刊行物3」という。)には、図1?5とともに以下の事項が記載されている。
ア.「角型基板を水平姿勢に載置保持して回転する基板保持手段と、前記角型基板の端面を摺接洗浄する鉛直方向の軸芯周りで駆動自転可能な洗浄具とを備えた角型基板洗浄装置において、
前記洗浄具を駆動自転可能に支持し、かつ、角型基板の回転中心から前記洗浄具までの距離が、角型基板の回転中心から角型基板の長辺の中央位置までの距離と、角型基板の回転中心から角型基板の角部までの距離の範囲にわたって変位する支持部材と、前記洗浄具を前記角型基板の端面に押圧する付勢力を付与する付勢手段とを設け、かつ、前記洗浄具の自転方向と前記角型基板の回転方向とを同じ方向にしたことを特徴とする角型基板洗浄装置。」(請求項1)
イ.「本考案は、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板等の角型基板に対して、その端面に付着したフォトレジストとかポリイミド樹脂とかカラーフィルタ材などの塗布液を洗浄除去するために、角型基板を載置保持して回転する基板保持手段と、その角型基板の端面を摺接洗浄する鉛直方向の軸芯周りで駆動自転可能な洗浄具とを備えた角型基板洗浄装置に関する。」(段落【0001】)
ウ.「アーム部分4aの先端側に洗浄具5の駆動軸6が第3の軸芯(自転軸芯)P3周りで回転可能に設けられるとともにその駆動軸6に従動プーリー7が取り付けられ、一方、アーム部分4aの途中箇所に第2の電動モータ8が設けられるとともに、そのモータ軸9に主動プーリー10が取り付けられ、主動プーリー10と従動プーリー7とにわたって伝動ベルト11が巻回され、正逆転可能な第2の電動モータ8によって洗浄具5を駆動自転できるように構成されている。」(段落【0010】)
エ.「洗浄具5を高速で回転させることにより、洗浄後に洗浄具5に滲み込んだ余剰の洗浄液を振り切り、適量の洗浄液を滲み込ませた状態で、次の洗浄に移行するようになっている。
・・・(中略)・・・
洗浄具5としては、表面にフェルトを貼り付けて構成するものや、ナイロン、モヘア等を材質とする毛を植設して構成するものや、多孔質のスポンジや布を巻き付けて構成するものなどが採用できる。
以上の構成により、角型基板Wを比較的低速で回転させながら、その角型基板Wの端面に洗浄具5を駆動自転しながら摺接させ、角型基板Wを1回転することによって、角型基板Wの4辺すべての端面を連続的に洗浄できる。」(段落【0014】?【0017】)

(4)引用刊行物4
同じく引用され、本願出願前に頒布された特開平5-277452号公報(以下「引用刊行物4」という。)には、図1?5とともに以下の事項が記載されている。
ア.「角型基板を水平姿勢に載置保持する基板保持手段と、前記角型基板の端面を摺接洗浄する鉛直方向の軸芯周りで駆動自転可能な洗浄具とを備えた角型基板洗浄装置において、
前記洗浄具を支持して前記洗浄具の駆動自転軸芯とは偏位した鉛直方向の軸芯周りで揺動可能な支持部材と、
前記角型基板の外周端面に沿う方向に前記支持部材を直線的に移動する移動手段と、
前記洗浄具を前記角型基板の端面に押圧するように付勢する付勢手段を備えるとともに前記洗浄具を前記支持部材の移動方向において前記支持部材の揺動軸芯よりも後方側で前記角型基板に摺接させるならい機構と、
を備えたことを特徴とする角型基板洗浄装置。」(請求項1)
イ.「本発明は、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板等の角型基板に対して、その端面に付着したフォトレジストとかポリイミド樹脂とかカラーフィルタ材などの塗布液を洗浄除去するために、角型基板を載置保持する基板保持手段と、その角型基板の端面を摺接洗浄する鉛直方向の軸芯周りで駆動自転可能な洗浄具とを備えた角型基板洗浄装置に関する。」(段落【0001】)
ウ.「洗浄具12は、図3に示すように、駆動軸13に一体回転可能に取り付けられた回転体24に、大径のツバ部25を一体回転可能に設け、そのツバ部25の上面に基板裏面用摺接部26を設けるとともに、ツバ部25の基板裏面用摺接部26に近い位置で、回転体24の外表面に基板端面用摺接部27を設けて構成されている。基板裏面用摺接部26および基板端面用摺接部27それぞれの表面にはフェルトが貼り付けられていて、そこに溶剤を滲み込ませて角型基板Wの端面および裏面に摺接することにより、付着物を除去するようになっている。」(段落【0012】)
エ.「34は、洗浄具12を洗浄して新たに溶剤を滲み込ませる洗浄容器を示している。」(段落【0014】)
オ.「また、洗浄具12としては、上述のようにフェルトを貼り付けて構成するものに限らず、ナイロン、モヘア等を材質とする毛を植設して構成するものでも良い。」(段落【0019】)

(5)引用刊行物5
同じく引用され、本願出願前に頒布された特開平11-104576号公報(以下「引用刊行物5」という。)には、図1?3とともに以下の事項が記載されている。
ア.「本発明は、パネルの縁部に形成された電極を自動的にクリーニングできるパネル電極のクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】本発明のパネルの電極のクリーニング装置は、パネルの上面に対向する第1のローラと、パネルの下面に対向する第2のローラと、第1のローラの下面に沿って送行される第1のクリーニングテープと、第2のローラの上面に沿って送行される第2のクリーニングテープと、第1のローラと第2のローラを上下動させる上下動手段と、第1のローラと第2のローラをパネルの縁部に沿って相対的に水平移動させる水平移動手段とから成る。
・・・(中略)・・・
また前記第1のクリーニングテープと前記第2のクリーニングテープが湿式クリーニングテープであって、前記第1のクリーニングテープと前記第2のクリーニングテープにクリーニング液を供給するクリーニング液供給手段を設けた。
上記構成の発明によれば、パネルの縁部の上面と下面に形成された電極に第1のローラと第2のローラによりクリーニングテープを押し当て、パネルに対して相対的に水平移動させることにより、パネルの電極をきれいにクリーニングすることができる。」(段落【0004】?【0008】)

3.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると、後者の「半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体」は、その機能・構成からみて、前者の「基板(1)」に相当し、以下同様に、後者の「操作アーム10」は前者の「移動体(11)」に、後者の「半導体ウエハWのエッジ部3を上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5,5」は前者の「上面洗浄ローラ(16)および下面洗浄ローラ(17)」に、後者の「半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体のエッジ部を確実に洗浄処理する洗浄処理装置1」は前者の「基板端面を洗浄する」「基板端面の洗浄装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「ノズル4からエッジ部3に洗浄液が供給されつつスピンチャック2を回転させて半導体ウエハWを回転させ、ノズル4からエッジ部3に洗浄液が供給されつつエッジ部3が上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5で擦られて洗浄処理」することは前者の「洗浄液を供給するとともに、上面洗浄ローラと下面洗浄ローラの間に基板端面を挟着し両者を相対的に移動させて基板端面を洗浄する」ことに相当する。
さらに、後者の操作アーム10は「回転保持手段であるスピンチャック2に水平状態に保持するされる半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体の上に、先端部の回転ブラシ5を、垂直軸による回転(θ)移動をする」ものであるから、水平移動するものといえ、水平状態に保持される半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体の面と平行に移動するので、前者の移動体と同様に「基板(1)面と平行に移動する」ものである。
そして、後者の「駆動手段によって自転する、半導体ウエハWのエッジ部3を上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5,5」は前者の「駆動モータにより回転される上面洗浄ローラ(16)および下面洗浄ローラ(17)」とは、駆動手段により回転される上面洗浄ローラおよび下面洗浄ローラである点で共通する。
そうすると、両者は、
「基板(1)面と平行に移動する移動体(11)と、
駆動手段により回転される上面洗浄ローラ(16)および下面洗浄ローラ(17)と、
を備え、
洗浄液を供給するとともに、前記上面洗浄ローラと下面洗浄ローラの間に基板端面を挟着し両者を相対的に移動させて基板端面を洗浄する基板端面の洗浄装置。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

相違点A:駆動手段に関して、本願発明が「移動体に固定される駆動モータ(13)」であるのに対して、引用発明1はそのようなものではない点。
相違点B:洗浄液を供給するとともに、基板端面を洗浄する上面洗浄ローラ(16)および下面洗浄ローラ(17)に関して、本願発明が「両洗浄ローラの回転軸(16a、17a)の端部に固定され前記回転軸より大径で外周に連通孔を形成し、外周の両端に大径部を形成した筒状の支持部材(27、28)と、前記両洗浄ローラの前記回転軸内に回転ジョイント(33)を介して配置された洗浄液通路(32)と、前記支持部材内部の前記洗浄液通路と連通し前記支持部材の径方向に延びる連通路(34)と、前記支持部材の外周両端の大径部間に配設される円筒形の弾性多孔質体(29、30)と、を備え、前記弾性多孔質体に前記回転ジョイント、前記洗浄液通路、前記連通路及び前記支持部材の連通孔を介して洗浄液を供給する」のに対して、引用発明1は「一対のローラ形回転ブラシ5,5」であって、「ノズル4を先端部に装着した、水平方向(X)に移動可能なアーム14と、エッジ部3に向けて洗浄液を供給するノズル4と、を備え、」「ノズル4からエッジ部3に洗浄液が供給」するものである点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
移動体に設けられた回転洗浄具を駆動する駆動手段を、移動体上に設けたモータとすることは、例えば、引用発明2もそうであるとともに引用刊行物3にも示されており、当業者が何ら格別の困難性を要することなくなし得た設計的事項である。そして、そのことによる格別の効果もない。

(2)相違点Bについて
ア.引用発明1の「洗浄液が供給されつつエッジ部3が上下から挟持する一対のローラ形回転ブラシ5で擦られて洗浄処理」する具体的手段として、同じく基板の両面を洗浄液供給しつつローラ状の回転具で洗浄する、引用発明2の洗浄装置の構成を採用することは、当業者が、格別の困難性を要することなくなし得たことである。
引用刊行物3?5にも多孔質のスポンジや布、フェルト等を洗浄液を滲み込ませた状態で、基板の端部を摺接洗浄することが示されていることからも、引用発明1に引用発明2のスポンジ等からなるブラシ12による洗浄装置の構成を採用することが困難とはいえない。
そして引用発明1も「吸引管15の入口に一対のローラ形回転ブラシ5,5を取付けて洗浄排液を吸引して回収する」であって、本願発明と同様に、エッジ部以外には洗浄排液や汚れが行かないようにするものである。
なお、移動体を基板と平行に移動させることによりブラシを洗浄位置に位置させるだけでなく、半導体ウエハWやLCD基板等の被処理体のエッジ部を移動させることも、引用刊行物3?5に示されており、仮にそのような移動体であるとしても、そのようになすことは当業者にとって容易である。

イ.引用発明2のローラブラシは、「ロールブラシ10の回転軸11の基端側の部位は軸受ユニット13に回転自在とされて」おり、「回転軸11に嵌合・固定される円筒状に形成したスポンジ等からなるブラシ12」は先端側部分に設けられるものである。
そして、引用発明1はエッジ部を洗浄するものであるから、ブラシ12が設けられる部分は、先端部分といえる。
一方、ローラブラシのスポンジ等を取り付ける部分を回転軸より大径とすることは、例えば特開平10-174941号公報、特開平7-316854号公報や実願平5-11576号(実開平6-70907号)のCD-ROM等に示されるように従来より周知であり、さらに、一般的に、支持するにあたりボビン等の支持部材を設けることもよく行われることであって、例えば実願昭61-134597号(実開昭63-38760号)のマイクロフイルムに回転軸の外側にスポンジを嵌合する大径の支持筒部を設けることが示されているように、回転軸に大径の支持部材を設けることは、当業者が適宜なし得た設計上の事項といえる。
そしてそのような支持部材を用いるとき、回転軸11の噴出路34からの洗浄液が外側の大径の支持筒部外面のスポンジ等からなるブラシ12に供給できるように、支持筒部に孔を設けて、回転軸11から半径方向に延びる連通路により連通させることも、当業者にとって当業者が適宜なし得た事項である。
なお、大径とする効果について、明細書に記載されておらず、かつ格別であるとはいえない。

ウ.円筒状の部分に嵌合・係止するに際し、両端に大径のフランジを設けて確実に係止することは、ボビン等で知られるように、通常なされることといえ、スポンジやフェルト等の部材においても、例えば、特開昭60-255188号公報、実願昭63-115331号(実開平2-38113号)のマイクロフイルム、実公昭63-2163号公報や特開平6-315711号公報等に示されるように、従来よりローラブラシにおいて周知である。
したがって、上記イ.で述べた、スポンジ等からなるブラシ12を嵌合する支持筒部を用いるとき、その外側に大径のフランジを設けることも、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
そして大径部を設けることの効果についても、明細書に記載されておらず、かつ格別であるとはいえない。

そうすると、相違点Bに係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことといえ、そのことによる格別の効果もない。

そして、相違点A及びBを合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用刊行物3?5に記載された事項及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用刊行物3?5に記載された事項及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-07 
結審通知日 2011-09-14 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2000-26547(P2000-26547)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 佐野 遵
長崎 洋一
発明の名称 基板端面の洗浄装置  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 韮澤 弘  
代理人 菅井 英雄  
代理人 片寄 武彦  
代理人 内田 亘彦  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  

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