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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1246692
審判番号 不服2010-24185  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-27 
確定日 2011-11-11 
事件の表示 特願2005-290848「充電装置および電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日出願公開、特開2007-104801〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年10月4日の出願であって、平成22年7月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年10月27日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成22年10月27日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「本体に設けられ、二次電池に並列に接続されたキャパシタ部と、
商用交流電源から給電され、前記本体を着脱可能で、前記キャパシタ部に所定の電圧を印加する充電電源手段と、
前記本体に設けられ、前記キャパシタ部を複数に分圧した部分のいずれかを所定条件に基づき切り換えて、前記本体を取り付けた前記充電電源手段に電気的に接続する切換手段とを具備し、
前記キャパシタ部を複数に分圧した部分を、前記切換手段を介して電気的に接続された前記充電電源手段によりそれぞれ充電するとともに、この充電のときに前記キャパシタ部側から前記充電電源手段へと流れる電流を検出することにより前記キャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電を検出した際に、前記キャパシタ部から前記二次電池へと電圧を印加してこの二次電池を充電する
ことを特徴とした充電装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「充電電源手段」に関し「商用交流電源から給電され」るものと限定し、キャパシタ部に印加する「電圧」に関し「所定の電圧」と限定し、充電電源手段へと流れる電流を検出するのを「この充電のときに」と限定し、キャパシタ部を複数に分圧した部分の「満充電」の検出に関し、「それぞれの満充電」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-80942号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0006】本発明の充放電可能な電源装置において、前記昇圧部として、好ましくは、前記外部電源に対して並列に接続し得る第1の電気二重層コンデンサと第2の電気二重層コンデンサとを含み、前記外部電源から常にいずれか一方の電気二重層コンデンサに充電しているよう構成される。」

・「【0010】【発明の実施の形態】以下、図面に基づき、本発明による充放電可能な電源装置の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態におけるシステム構成例を示している。図において、本発明による充放電可能な電源装置1(図中の点線で囲んだ領域)は、外部電源2の電圧を昇圧可能となるように回路構成された昇圧部3(図中の一点鎖線で囲んだ領域)とを備え、この昇圧部3を介して外部電源2の入力電圧よりも高い電圧を充放電可能な蓄電池4(蓄電部)に対して蓄電できるようにしたものである。この蓄電池4には、負荷5が接続されている。
【0011】昇圧部3は、外部電源2に対して並列に接続し得る第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7とを含み、これらの電気二重層コンデンサ6及び7は、昇圧部の切替えスイッチ8,9によって外部電源2と切替え接続されるようになっている。
第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2につき、Vc1+Vc2は電圧検出器10によって検出され、また、電気二重層コンデンサ6の電圧は電圧検出器11によって検出される。検出された電圧は、それぞれ10A,11Aとして演算回路12に入力されて演算処理され、その出力12Aが、スイッチ回路13に出力される。さらにスイッチ回路13からの命令が、切替えスイッチ8,9が切替え制御されるように、信号13A,13Bにより駆動制御されるようになっている。
【0012】ここで、第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7は、蓄電池4に対して直列に配置されており、かつ蓄電池4の反対側はアース接続されている。
【0013】後述のように、第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2とを比較することにより、第1の電気二重層コンデンサ6および第2の電気二重層コンデンサ7の充電切替えが行なわれる。
【0014】次に、昇圧部の回路について説明する。
図1において、スイッチ8を接点8A側、スイッチ9を接点9Aにすると、外部電源2からの電流は電気二重層コンデンサ6を充電する。また、スイッチ8を接点8B側、スイッチ9を接点9B側にすると、外部電源2からの電流は電気二重層コンデンサ7を充電する。
ここで、第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7との切替えは、第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を比較することにより行われる。図1では、電圧検出器10によりVc1+Vc2の電圧を、また電圧検出器11によりVc2の電圧を検出することができる。よって、Vc1の電圧も知ることができる。
蓄電池4の電圧は、電圧検出器14によって検出され、その出力14Aを、演算回路12に加え、スイッチ回路13を制御できる。
【0015】外部電源2の必要電圧は、2つの電気二重層コンデンサ6,7を切り替えながら1つずつの電気二重層コンデンサを充電するため、電気二重層コンデンサ1つ分を充電できる電圧(Vc)があれば良い。2つの電気二重層コンデンサ6,7の容量と、電圧の定格が同じであれば、満充電すると、これらの電気二重層コンデンサを直列接続した電圧の2Vcを、蓄電池4に印加することができる。
本発明の充放電可能な電源装置は、上記のように構成され、外部電源2から充電できる電気二重層コンデンサ6,7を備え、この充電電圧を直列接続して、外部電源2の電圧よりも高い電圧を、充放電可能な蓄電池4に対して充電することができる。」

・図1には、第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7が蓄電池4に並列に接続された点及び外部電源2に電気的に接続するスイッチ8,9が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「電源装置1に設けられ、蓄電池4に並列に接続された第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7と、
いずれか一方の電気二重層コンデンサに充電している外部電源2と、
電源装置1に設けられ、第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を比較することにより第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7を切替えて、外部電源2に電気的に接続するスイッチ8,9とを具備し、
2つの電気二重層コンデンサ6,7を切り替えながら1つずつの電気二重層コンデンサを充電するとともに、電圧検出器10により第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1+第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を、また電圧検出器11によりVc2の電圧を検出することができ、よって、Vc1の電圧も知ることができ、2つの電気二重層コンデンサ6,7の容量と、電圧の定格が同じであれば、満充電すると、これらの電気二重層コンデンサを直列接続した電圧の2Vcを、蓄電池4に印加する
電源装置1及び外部電源2。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「電源装置1」が前者の「本体」に相当し、以下同様に、「蓄電池4」が「二次電池」に、「第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7」が「キャパシタ部」にそれぞれ相当する。
また、後者の「いずれか一方の電気二重層コンデンサに充電している」態様は、前者の「キャパシタ部に所定の電圧を印加する」態様に相当し、後者の「外部電源2」と前者の「充電電源手段」とは、「充電手段」との概念で共通するので、後者の「いずれか一方の電気二重層コンデンサに充電している外部電源2」と前者の「商用交流電源から給電され、本体を着脱可能で、キャパシタ部に所定の電圧を印加する充電電源手段」とは、「キャパシタ部に所定の電圧を印加する充電手段」との概念で共通する。
そして、上記のように後者の 「第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7」が前者の「キャパシタ部」に相当するので、後者の「第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7」は「複数に分圧した部分」を有することになり、また、後者の「第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を比較することにより」が前者の「所定条件に基づき」に相当するので、後者の「第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を比較することにより第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7を切替え(て)」る態様が、前者の「キャパシタ部を複数に分圧した部分のいずれかを所定条件に基づき切り換え(て)」る態様に相当する。また、後者の「スイッチ8,9」が前者の「切換手段」に相当する。よって、後者の「電源装置1に設けられ、第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1と第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を比較することにより第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7を切替えて、外部電源2に電気的に接続するスイッチ8,9とを具備(し)」する態様と、前者の「本体に設けられ、キャパシタ部を複数に分圧した部分のいずれかを所定条件に基づき切り換えて、前記本体を取り付けた充電電源手段に電気的に接続する切換手段とを具備(し)」する態様とは、「本体に設けられ、キャパシタ部を複数に分圧した部分のいずれかを所定条件に基づき切り換えて、前記本体を取り付けた充電手段に電気的に接続する切換手段とを具備(し)」との概念で共通する。
また、後者の「2つの電気二重層コンデンサ6,7」が前者の「キャパシタ部を複数に分圧した部分」に相当し、上記のように後者では外部電源2により第1の電気二重層コンデンサ6と第2の電気二重層コンデンサ7のいずれか一方の電気二重層コンデンサを充電するので、後者の「2つの電気二重層コンデンサ6,7を切り替えながら1つずつの電気二重層コンデンサを充電する」態様と前者の「キャパシタ部を複数に分圧した部分を、切換手段を介して電気的に接続された充電電源手段によりそれぞれ充電する」態様とは「キャパシタ部を複数に分圧した部分を、切換手段を介して電気的に接続された充電手段によりそれぞれ充電する」との概念で共通する。
加えて、後者の「これらの電気二重層コンデンサを直列接続した電圧の2Vc」が前者の二次電池へ印加される「電圧」に相当するので、後者の「電圧検出器10により第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1+第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を、また電圧検出器11によりVc2の電圧を検出することができ、よって、Vc1の電圧も知ることができ、2つの電気二重層コンデンサ6,7の容量と、電圧の定格が同じであれば、満充電すると、これらの電気二重層コンデンサを直列接続した電圧の2Vcを、蓄電池4に印加する」態様と前者の「この充電のときにキャパシタ部側から充電電源手段へと流れる電流を検出することにより前記キャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電を検出した際に、前記キャパシタ部から二次電池へと電圧を印加してこの二次電池を充電する」態様とは、「キャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電を検出した際に、前記キャパシタ部から二次電池へと電圧を印加してこの二次電池を充電する」との概念で共通する。
さらに、後者の「電源装置1及び外部電源2」が前者の「充電装置」に相当する。

したがって、両者は、
「本体に設けられ、二次電池に並列に接続されたキャパシタ部と、
前記キャパシタ部に所定の電圧を印加する充電手段と、
前記本体に設けられ、前記キャパシタ部を複数に分圧した部分のいずれかを所定条件に基づき切り換えて、前記本体を取り付けた前記充電手段に電気的に接続する切換手段とを具備し、
前記キャパシタ部を複数に分圧した部分を、前記切換手段を介して電気的に接続された前記充電手段によりそれぞれ充電するとともに、この充電のときに前記キャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電を検出した際に、前記キャパシタ部から前記二次電池へと電圧を印加してこの二次電池を充電する
充電装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「充電手段」に関し、前者は「商用交流電源から給電され、本体を着脱可能」な「充電電源手段」であるのに対して、後者においては「外部電源」そのものである点。
[相違点2]
「切換手段」に関し、前者においては「本体を取り付けた充電電源手段」に電気的に接続しているのに対し、後者においては、「外部電源」に電気的に接続している点。
[相違点3]
キャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電を検出する手法に関し、前者においては「この充電のときにキャパシタ部側から充電電源手段へと流れる電流を検出」しているのに対し、後者においては、「電圧検出器10により第1の電気二重層コンデンサ6の電圧Vc1+第2の電気二重層コンデンサ7の電圧Vc2の電圧を、また電圧検出器11によりVc2の電圧を検出することができ、よって、Vc1の電圧も知ること」により満充電を検出している点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
・相違点1、2について
例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-135341号公報にも開示されているように、充電手段として、充電電源手段(「充電器102」が相当)を「商用交流電源(段落【0001】の「【発明の属する技術分野】本発明は、家庭用、事務所や店舗や工場など業務用に使用される、電気掃除機に関するものである。」なる記載及び段落【0020】の「一方充電器102は、充電時に掃除機本体101に電気パワーを出力するための接点118、電源回路119、電源コード120、電源プラグ121が設けられていて、コンセントまできている100V50Hzまたは60Hzの交流電源を電源プラグ121から受けて、電源回路119まで電源コードによって引き込んだものを電源回路119で直流の24Vに変換して接点118に出力する構成となっている。」なる記載、段落【0070】の「また、電池103によるコードレスの使用だけでなく、必要な場合には100Vの交流電源から電気パワーを得て掃除を行うという構成をとる場合にも、商用電源を整流して得られる直流電圧にインバータ回路の入力電圧を設計して、AC/DC両用という仕様とすることも容易となる。」なる記載から、「商用交流電源」を用いているものである。)から給電され、本体(「掃除機本体101」が相当)を着脱可能(図1を参照)」とする点は、充電装置の分野における周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
そうすると、引用発明の充電手段として外部電源に代えて、周知技術1の充電電源手段を採用し、その際に、引用発明の切換手段を外部電源に代えて本体を取り付けた充電電源手段に電気的に接続し、相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点3について
例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-94893号公報にも開示されているように、キャパシタ部(「電気二重層コンデンサ12」が相当)の満充電を検出する手法として、充電のときに充電手段(「充電回路4」が相当)からキャパシタ部側へと流れる電流(「充電電流ic」が相当)を検出する点は充電装置の分野における周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。
ここで、引用例の段落【0019】に「実際の充電完了のための検出は、従来より用いられている方法をいくつか併用することが好ましい。」と記載されていることから、引用発明のキャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電の検出においても従来より用いられている方法を用いることが可能であることが示唆されているといえる。
また、充電手段からキャパシタ部側へと流れる電流を検出することと、キャパシタ部側から充電手段へと流れる電流を検出することとは、キャパシタ部よりも上流あるいは下流のどちらの電流を検出するかの単なる設計事項に過ぎない。
そうすると、引用発明のキャパシタ部を複数に分圧した部分のそれぞれの満充電を検出する手法として、上記周知技術2の充電のときに充電手段からキャパシタ部側へと流れる電流を検出するのをキャパシタ部側から充電手段へと流れる電流を検出するように設計変更したものを引用発明の充電手段として上記周知技術1の充電電源手段を適用する際に採用して、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

なお、請求人は、回答書において、「ここで、前置報告書には、『キャパシタの満充電を……充電電流により検出……することも、本願出願時には……周知の技術であり、引用文献1に記載の発明において、キャパシタの満充電を充電電流の変化に基づいて検出するような構成とすることは、当業者であれば適宜成し得る』と記載されている。
この点について検討すると、本願の請求項1に係る発明および引用文献1記載の構成の場合、それぞれキャパシタ部を分圧した部分は互いに直列接続されて二次電池を充電するものである。したがって、キャパシタ部を分圧した各部分の充電の度合いにばらつきがあると、キャパシタ部を分圧した部分同士での例えば過充電などの電気的な不具合が生じるおそれがあるため、キャパシタ部を分圧した各部分の満充電を精度よく検出する必要がある。
しかしながら、引用文献1記載の構成の場合、キャパシタ部を外部電源に対して接続した状態では、この外部電源の電圧変動の影響を受けてキャパシタ部の正確な電圧を計測することができず、各部分の満充電を確実に検出することができない。したがって、引用文献1記載の構成の場合、キャパシタ部を分圧した各部分の満充電を検出するためには、キャパシタ部を複数に分圧した部分と外部電源との接続を遮断した状態での各部分の放電電圧を検出することが必要になる。
したがって、周知文献に、商用交流電源に接続されたキャパシタ部全体の満充電を充電電流により検出する構成が記載されているとしても、上記の通り、引用文献1記載の構成は、キャパシタ部を複数に分圧した部分の電圧を正確に検出するためには、外部電源との接続を遮断しなければならないものであるから、引用文献1記載の構成と、上記周知技術のように充電電流により満充電を検出する構成とは技術的思想が相反しており、これら技術的思想の単なる組み合わせには阻害要因があり、この組み合わせが当業者により適宜成し得るということはできない。」との主張をしているが、キャパシタの満充電をキャパシタ電圧により検出(引用例参照)すること、充電電流により検出(上記特開2005-94893号公報参照)することは両者ともに周知技術であること、そして、上記のように引用例には引用発明のキャパシタ部の満充電の検出においても従来より用いられている方法の何れかを用いることが可能であることが示唆されているといえることから、例え、請求人の主張するように、引用発明において電圧を正確に検出するためには「外部電源との接続を遮断」が必要であったとしても、引用発明における「電圧」の検出に代えて「外部電源との接続を遮断」する必要がない「電流」の検出を行う上記周知技術2を上記「・相違点3について」に記載のように引用発明に採用することに格別の阻害要因があるとは認められない。(当然のことながら、周知技術2を採用する場合、「外部電源との接続を遮断」する必要はなくなる。)。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

そして、上記相違点を併せ備えた本願補正発明の作用効果について検討してみても、引用発明及び上記周知技術1、2から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとは言えない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成21年12月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「本体に設けられ、二次電池に並列に接続されたキャパシタ部と、
前記本体を着脱可能で、前記キャパシタ部に電圧を印加する充電電源手段と、
前記本体に設けられ、前記キャパシタ部を複数に分圧した部分のいずれかを所定条件に基づき切り換えて、前記本体を取り付けた前記充電電源手段に電気的に接続する切換手段とを具備し、
前記キャパシタ部を複数に分圧した部分を、前記切換手段を介して電気的に接続された前記充電電源手段によりそれぞれ充電するとともに、前記キャパシタ部側から前記充電電源手段へと流れる電流を検出することにより前記キャパシタ部を複数に分圧した部分の満充電を検出した際に、前記キャパシタ部から前記二次電池へと電圧を印加してこの二次電池を充電する
ことを特徴とした充電装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「充電電源手段」に関し「商用交流電源から給電され」るものとした限定、キャパシタ部に印加する「電圧」に関し「所定の電圧」とした限定、充電電源手段へと流れる電流を検出するのを「この充電のときに」とした限定、キャパシタ部を複数に分圧した部分の「満充電」の検出に関し、「それぞれの満充電」とした限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-24 
結審通知日 2011-08-31 
審決日 2011-09-28 
出願番号 特願2005-290848(P2005-290848)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 槙原 進
神山 茂樹
発明の名称 充電装置および電気掃除機  
代理人 樺澤 襄  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 聡  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 山田 哲也  

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