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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1246712
審判番号 不服2011-4271  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-25 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 特願2007-239168「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月20日出願公開、特開2007-325974〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月6日に出願した特願2000-104502号の一部を分割して、平成19年9月14日に新たな特許出願としたものであって、
平成22年5月10日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年7月20日付けで手続補正書が提出されたが、
平成22年12月2日付けで拒絶査定がされたため、
これを不服として平成23年2月25日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。
また、当審において、平成23年5月17日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年7月20日に回答書が提出されている。


2.平成23年2月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年2月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1) 本願補正発明
平成23年2月25日付け手続補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
複数の識別情報を可変表示する可変表示ゲームを行う可変表示装置を備え、
始動口への遊技球の入賞に基づき前記可変表示ゲームを行うとともに、所定の乱数が抽出されて大当り抽選を行い、該大当り抽選の結果が大当りとなった場合に大当り遊技を発生させる遊技機において、
遊技を統括的に制御するとともに、前記可変表示装置における表示制御に用いる表示指令信号を送信する遊技制御手段と、
前記遊技制御手段からの表示指令信号に基づいて前記可変表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、
前記遊技制御手段から表示制御手段への信号入力のみを許容し、前記表示制御手段から前記遊技制御手段への信号出力を禁止する信号伝達方向規制手段と、を含み、
前記遊技制御手段は、
前記表示指令信号として前記可変表示ゲームにおける識別情報の変動時間を指示する変動パターン指令信号と、前記可変表示ゲームの停止表示態様を示す停止表示態様指令信号と、前記可変表示ゲームにおける全ての識別情報の停止を指示する停止指令信号と、を前記表示制御手段へ送信し、
前記表示制御手段は、
前記遊技制御手段からの表示指令信号が正常か否かを判定する指令信号判定手段と、
前記指令信号判定手段により正常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報を記憶保持し、前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報の記憶保持を禁止する制御情報記憶保持手段と、
前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、前記可変表示装置の表示制御を行う代替表示制御手段と、を備え、
前記代替表示制御手段は、
前記指令信号判定手段により、前記変動パターン指令信号が異常と判定された場合は、前記可変表示ゲームの可変表示を行わず、かつ、前記停止表示態様指令信号が正常と判定され、前記可変表示ゲームの停止時に前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信すると、前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記代替表示制御手段は、
前記指令信号判定手段により、前記変動パターン指令信号が異常と判定された場合は前記可変表示ゲームの可変表示を行わず、さらに、前記指令信号判定手段により前記停止指令信号が異常と判定された場合は前記可変表示装置に表示されている表示内容を変化させないことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。」
に補正された。(以下、この補正を「本件補正」という。)


(2) 補正の目的
本件補正は、以下の点を補正した。

・補正前の請求項1において「表示指令信号として」「表示制御手段へ送信」するものに、「前記可変表示ゲームの停止表示態様を示す停止表示態様指令信号」が追加された。(以下「補正事項1」という。)

・補正前の請求項1において「さらに、前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信すると、」を、「かつ、前記停止表示態様指令信号が正常と判定され、前記可変表示ゲームの停止時に前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信すると、」に補正した。(以下「補正事項2」という。)

・補正前の請求項1における「前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている前回の可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示する」について、「前回の」を削除した。(以下「補正事項3」という。)

補正事項1について
表示指令信号の内容を技術事項として限定したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項2について
補正事項2のうち、「さらに」を「かつ」に補正した点は、表現の補正を行ったものであり、実際上の意味内容を変更するものではない。
補正事項2のうち、「前記停止表示態様指令信号が正常と判定され、」が追加された点は、「停止表示」を行う場合の条件を技術事項として限定したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
補正事項2のうち、「前記可変表示ゲームの停止時に」が追加された点は、「前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信する」タイミングを技術事項として限定したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

補正事項3について
補正前の「前回の可変表示ゲームの停止識別情報」は、「可変表示ゲームの停止識別情報」を「前回の」ものに限定している。
一方、補正後の「可変表示ゲームの停止識別情報」は、「前回の」ものには限らない任意のものであるから、例えば、複数回分記憶されている「可変表示ゲームの停止識別情報」のうち「前回」よりさらに前の回のもの、等を含む。
したがって、当該補正事項3は、特許請求の範囲を拡張するものであって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明の、いずれを目的とするものでもない。


(3) むすび
以上により、
前記補正事項3については、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1?4号の請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明の、いずれを目的とするものでもないので、
前記補正事項3を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1) 本願発明
平成23年2月25日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成22年7月20日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「複数の識別情報を可変表示する可変表示ゲームを行う可変表示装置を備え、
始動口への遊技球の入賞に基づき前記可変表示ゲームを行うとともに、所定の乱数が抽出されて大当り抽選を行い、該大当り抽選の結果が大当りとなった場合に大当り遊技を発生させる遊技機において、
遊技を統括的に制御するとともに、前記可変表示装置における表示制御に用いる表示指令信号を送信する遊技制御手段と、
前記遊技制御手段からの表示指令信号に基づいて前記可変表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、
前記遊技制御手段から表示制御手段への信号入力のみを許容し、前記表示制御手段から前記遊技制御手段への信号出力を禁止する信号伝達方向規制手段と、を含み、
前記遊技制御手段は、
前記表示指令信号として前記可変表示ゲームにおける識別情報の変動時間を指示する変動パターン指令信号と、前記可変表示ゲームにおける全ての識別情報の停止を指示する停止指令信号と、を前記表示制御手段へ送信し、
前記表示制御手段は、
前記遊技制御手段からの表示指令信号が正常か否かを判定する指令信号判定手段と、
前記指令信号判定手段により正常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報を記憶保持し、前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報の記憶保持を禁止する制御情報記憶保持手段と、
前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、前記可変表示装置の表示制御を行う代替表示制御手段と、を備え、
前記代替表示制御手段は、
前記指令信号判定手段により、前記変動パターン指令信号が異常と判定された場合は、前記可変表示ゲームの可変表示を行わず、さらに、前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信すると、前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている前回の可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示することを特徴とする遊技機。」

ところで、前記請求項1には、「表示指令信号に基づく表示制御情報」及び「前回の可変表示ゲームの停止識別情報」が「制御情報記憶保持手段」に記憶保持される旨記載されているが、当該「表示指令信号に基づく表示制御情報」及び「前回の可変表示ゲームの停止識別情報」がどのような情報であるのか、明確でない。
そこで、発明の詳細な説明【0043】?【0045】、【0052】の記載を参酌した上で、
前記「表示指令信号に基づく表示制御情報」が、前記「前回の可変表示ゲームの停止識別情報」を含み、
前記「前回の可変表示ゲームの停止識別情報」とは、前回の可変表示ゲームの可変表示を停止した際に表示させる識別情報を特定するための表示制御情報であり、
本願発明において「前回の可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示する」とは、「前回の可変表示ゲームの停止識別情報」に対応する「識別情報」を「停止表示する」ことである、
と解する。


(2) 先願発明
平成22年5月10日付け拒絶理由通知書において先願として引用された特願平11-355262号(特開2001-170333号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)
「【0023】そして、特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて乱数抽選が行われ、この抽選された乱数が大当り値である時には、各表示エリアにおいて少なくとも1つの識別情報の変動表示が開始されその後、所定パターン(例えば「7、7、7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる。
【0024】また、普通図柄作動ゲート102が遊技玉の通過を検出すると、乱数抽選が行われこの抽選された乱数が小当り値である時には、普通図柄表示装置108の表示部を所定パターン(例えば「7」や「3」)に表示させ、その後に、開閉部材120が開状態となって遊技玉が特別図柄始動口104に入賞した場合にも、同様に乱数抽選が行われこの抽選された乱数が大当り値である時には、各表示エリアにおける変動表示が開始されその後、所定表示パターン(例えば「7、7、7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ、大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り状態となる。一方、入賞されない打玉はアウト口114を介して排出される。また、この遊技機は、奇数図柄が出目で大当りとなった場合には、次回の大当り確率が向上する確率変動機能を有するように構成されている。
【0025】図2は、このような遊技の進行状況に応じた遊技機制御が行われる遊技機の主要部のみを示した制御ブロック図である。主制御部200は、CPUを内蔵したマイクロプロセッサを搭載していて、後に説明する、特別図柄表示装置100を制御するための各種のコマンドを少なくとも含む、多種多様な制御コマンドを格納するコマンドデータテーブル領域202、および、一連の遊技機制御手順を記述した制御プログラムや制御データ等を格納するROM201とワークエリアが形成されるRAM203とが設けられていて、一体型のワンチップマイコンとなっている。」

(イ)
「【0027】また、主制御部200には、出力ポート215を介して、周辺装置が多数接続されている。即ち、主制御部200には、出力ポート215を介して、特別図柄やキャラクタを表示する表示部を3つ有して夫々を独立して可変表示可能でLCD等で実現される特別図柄表示装置100、ランプを点灯制御するランプ表示装置110、112、効果音を発生する効果音発生装置116、例えば7セグメント表示デバイスで実現される普通図柄表示装置108、始動口の開閉部材120を開閉制御するための始動口作動ソレノイド300、および、大入賞口106の幅広な開閉部材を開閉制御するための大入賞口作動ソレノイド302が接続されている。そして、主制御部200は各周辺装置を制御するための制御コマンドを送信可能となっている。主制御部200は、特に特別図柄表示装置100、ランプ表示装置110(112)、効果音発生装置116、普通図柄表示装置108に対しては所定数個の制御用のコマンドを所定のタイミングで送信可能となっていて、これら周辺装置は受け取ったコマンドに基いて、主制御部200に頼らずに自身内のCPUが細かな制御を行うようになっている。そして、周辺装置には、図示しない出力端子が設けられていて、その動作状態を示す1以上の信号を図示しない遊技機外部の試験器に出力可能になっている。一方、遊技機外部に設けられた試験器は、周辺装置からの信号を収集可能に構成されていて、収集されたデータを解析可能となっている。」

(ウ)
「【0029】さて、図12に示すように、主制御部200から周辺装置に送られる制御コマンドは、コマンドの分類を識別するための識別子で1バイト長のデジタル情報であるモード(MODE)と、実行されるコマンドの内容(機能)を示す1バイト長のデジタル情報であるイベント(EVENT)とでなっている。図6乃至図9には、ROM201に格納されたコマンドデータテーブル領域202上の制御用コマンドデータの一部、特に周辺装置として特別図柄表示装置100を想定した場合のコマンドを示している。
【0030】図6乃至図9に示すように、表示制御用コマンドには、「特別図柄を変動させ、変動開始後、どれだけ時間経過してから特別図柄(識別情報)を停止させるかを指示するための変動パターン指定コマンド」、「特別図柄左の停止図柄を指定する左図柄指定コマンド」、「特別図柄中の停止図柄を指定する中図柄指定コマンド」、「特別図柄右の停止図柄を指定する右図柄指定コマンド」、「特別図柄を停止させるための図柄停止コマンド」がある。これらのコマンドは、遊技状況に応じて変動表示の変動態様がどのように変化しても必ず必要なものであり、主制御部200は、図柄変動表示を開始させるような遊技状況となったときこれらの5つのコマンドを1回の変動表示制御において所定のタイミングで特別図柄表示装置100に送信する。また、図柄停止コマンドを左・中・右図柄指定コマンドに対応させて用意するようにしても良い。
【0031】図3は、周辺装置の一つである特別図柄表示装置100のブロック構成図である。特別図柄表示装置100は、主制御部200からのストローブ信号やコマンドを受信するためのデータ受信回路1140(データレベルを変換する電圧変換回路を含む)と、この電圧変換回路等に電源供給を行う電源回路1160と、受信したコマンドに基づいて表示制御を行うために必要な制御データを生成して画像処理用LSI(VDP)1060に出力するCPU1020(表示制御手段)と、CPU1020の動作手順を記述したプログラムを内蔵するプログラムROM1040と、ワークエリアやバッファメモリとして機能するRAM1090と、画像展開処理を行う画像処理用LSI(VDP)1060と、画像処理用LSI(VDP)1060が展開した画像データを一時的に記憶するビデオRAM1080と、画像処理用LSI(VDP)1060が画像展開するために必要なデータを格納したキャラクタROM1180と、ビデオRAM1080に一時的に記憶された画像データを受け取って送出するLCDパネル用インターフェイス回路1100と、このLCDパネル用インターフェイス回路1100から送出された画像データを用いて表示画像を出力するLCDパネル1120とを有している。そして、CPU1020には、この特別図柄表示装置100の動作状態を示す9種類の信号(後に説明する、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号、図柄変動中信号、図柄確定信号、図柄表示装置エラー信号、左図柄データ、中図柄データ、右図柄データ)を遊技機外部の試験器(図示せず)に出力可能とするための出力端子1200が設けられており、外部試験器はこの出力端子1200と電気的に接続されることによって、この動作状態を示す9種類の信号を収集することが可能である。」

(エ)
「【0035】次に、まず、主制御部200や特別図柄表示装置100のCPU1020が行う通常の制御動作を図10(遊技制御のゼネラルフローチャート)や図11を参照して説明し、その後、タイミングチャートや模式的説明図を参照して本発明の特徴的な動作制御について説明して本発明の理解の容易化に努める。なお、図10に示す一連の処理は主制御部200が実行するが、リセット回路213から所定時間(例えば4msec)毎に供給されるリセット信号をトリガとして先頭のステップから実行する。」

(オ)
「【0042】次に、ステップS260では、各処理でRAM203に格納したデータを出力ポート215を介して対応する装置に出力し(ポート出力処理)、これを受け取った装置側はこれに基づいた制御動作を行う。そして、特別図柄表示装置100に対して、まず、ストローブ信号を出力し、ステップS180にてRAM203に格納されたモード、イベントのデータを先に図5に示したようにして送信する。これによって、特別図柄表示装置100には、例えば図6乃至図9にて示したコマンドが主制御部200から送信され、受信することになる。」

(カ)
「【0045】ステップS1104では、図5において説明した割り込み処理において、データ受信回路1140が受信したコマンドをRAM1090にコピーし、コマンドが正常か否かのチェック等を行う。次に、CPU1020は、主制御部200とは独立して細かな表示制御を行うための必要なコマンドを得るべく、処理テーブル(図示せず)の先頭アドレスを決定し、次いでステップS1108において、画像処理用LSI1060へ出力するためにRAM1090の必要なエリアのデータを更新する。」

(キ)
「【0050】次に、本発明の動作例を周辺装置の一例としての特別図柄表示装置100を採用して説明する。図15は、本発明の実施の形態の遊技機の動作概要をまとめた説明図である。図15中「〇」は、送信不良が無く表示制御用コマンドが受信されたことを示し、「×」は、送信不良で表示制御用コマンドが受信されないこと(コマンド欠落)を示す。したがって、ケース0は、各コマンドとも正常に受信された通常時の場合を示している。
【0051】(ケース0)この場合には、コマンド欠落が発生しない。図16のタイミングチャートを参照してCPU1020の動作を説明する。CPU1020は、変動パターン指定コマンドを受信して、遊技機内では特別図柄表示装置100での図柄変動を開始させるとともに、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をOFFレベル(例えば0(V))からONレベル(例えば5(V))として試験器に出力する(図16(f)?(i))。次に、順次、左図柄指定コマンド、中図柄指定コマンド、右図柄指定コマンドを受信すると、これらのコマンドで指定された左図柄データ、中図柄データ、右図柄データをコマンド受信を契機として試験器に出力する((図16(l)?(n))。そして、図柄停止コマンドを受信すると、図柄確定信号(図16(j))をOFFレベルからONレベル(100msecの間)として試験器に出力すると共に、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をONレベルからOFFレベルとして試験器に出力する。この際、遊技機においては指定図柄での停止表示が特別図柄表示装置100の表示エリアにおいて行われる。このケース0では、コマンド欠落が発生していないため、図柄表示装置エラー信号(図16(k))がOFFレベルのままである。」

(ク)
「【0069】(ケース4)この場合には、変動パターン指定コマンド、左図柄指定コマンド、中図柄指定コマンド、右図柄指定コマンドが受信されない場合、換言すれば、図柄停止コマンドのみが受信される場合である。図20のタイミングチャートを参照してCPU1020の動作を説明する。この例では、符号D、E、F、Gで示すように、変動パターン指定コマンド、左図柄指定コマンド、中図柄指定コマンド、右図柄指定コマンドが欠落している場合を想定している。
【0070】CPU1020は、最初に図柄停止コマンドを受信した後、変動パターン指定コマンド、左図柄指定コマンド、中図柄指定コマンド、右図柄指定コマンドが受信されないと判定する。この場合には、図柄指定コマンドの受信を契機として、全図柄を前回の出目の図柄として停止表示し、これらの図柄データを試験器に出力(図20(l)?(n))すると共に、図柄表示装置エラー信号をOFFレベルからONレベルにして試験器に出力し、さらに、100(msec)の間だけ図柄確定信号をONレベルとする。なお、このケース4では、変動パターン指定コマンドが受信されないため、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号はOFFレベルのままである(図20(f)?(i))。
【0071】したがって、このケース4では、CPU1020は、図柄停止コマンドのみを受信した場合には、変動パターン指定コマンドおよび図柄指定のコマンドにコマンド欠落が発生したと判断する。そして、図柄停止コマンドが受信されるのを契機として、欠落した図柄指定コマンドで表示すべき図柄に替えて前回の出目の図柄を特別図柄表示装置100の表示エリアに表示させると共に、図柄表示装置エラー信号を試験器に出力するので、変動パターン指定コマンドおよび図柄指定コマンドが欠落しても前回の出目の図柄が停止表示されてデータ収集上支障が無く、図柄表示装置エラー信号の出力によって変動パターン指定コマンドおよび図柄指定コマンドのコマンド欠落を試験器によって把握できる。」


以上、(ア)ないし(ク)の記載、及び図面(特に、図2?3、10?11、15、20参照)を総合すると、先願明細書には、以下の発明が開示されていると認めることができる。

「識別情報を変動表示するLCDパネル1120を備え、
特別図柄始動口104への遊技玉の入賞に基づき前記識別情報の変動表示を行うとともに、乱数抽選を行い、該乱数抽選の結果が大当りとなった場合に大当り遊技状態となる遊技機において、
前記LCDパネル1120における変動表示制御に用いる表示制御用コマンドを送信する主制御部200と、
前記LCDパネル1120と、前記主制御部200からの表示制御用コマンドに基づいて前記LCDパネル1120の変動表示制御を行う構成とを含む、特別図柄表示装置100と、を含み、
前記主制御部200は、
前記表示制御用コマンドとして、「特別図柄を変動させ、変動開始後、どれだけ時間経過してから特別図柄(識別情報)を停止させるかを指示するための変動パターン指定コマンド」、「特別図柄左の停止図柄を指定する左図柄指定コマンド」、「特別図柄中の停止図柄を指定する中図柄指定コマンド」、「特別図柄右の停止図柄を指定する右図柄指定コマンド」及び「特別図柄を停止させるための図柄停止コマンド」を前記特別図柄表示装置100へ送信し、
前記特別図柄表示装置100は、
前記主制御部200からの表示制御用コマンドが正常か否かのチェックを行い、
前記主制御部200から送信不良が無く表示制御用コマンドが受信されたか、送信不良で表示制御用コマンドが受信されないコマンド欠落が発生したか、を判断し、
前記変動パターン指定コマンドにコマンド欠落が発生した場合は、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をOFFレベルのままとし、さらに、前記図柄停止コマンドを受信すると、前回の出目の図柄として停止表示する遊技機。」
(以下、この発明を「先願発明」という。)


(3) 対比
A.遊技機の技術常識を考慮すれば、先願発明における「識別情報を変動表示する」は、本願発明における「複数の識別情報を可変表示する可変表示ゲームを行う」に相当する。
先願発明における「識別情報」並びに「特別図柄」及び「前回の出目の図柄として停止表示する」の「図柄」は、本願発明における「識別情報」に相当する。

B.先願発明における「LCDパネル1120」は、本願発明における「可変表示装置」に相当する。

C.先願発明における「遊技玉」は、本願発明における「遊技球」に相当する。
先願発明における「乱数抽選」は、本願発明における「所定の乱数が抽出されて」行われる「大当り抽選」に相当する。
先願発明における「大当り遊技状態となる」は、本願発明における「大当り遊技を発生させる」に相当する。

D.先願明細書(イ)、(エ)及び図10の記載から、先願発明における「主制御部200」は、遊技機における遊技を統括的に制御していると認められる。
先願発明における「前記LCDパネル1120における変動表示制御に用いる表示制御用コマンド」は、本願発明における「前記可変表示装置における表示制御に用いる表示指令信号」に相当する。
よって、先願発明における「主制御部200」は、本願発明における「遊技を統括的に制御するとともに、前記可変表示装置における表示制御に用いる表示指令信号を送信する遊技制御手段」に相当する。

E.先願発明における「特別図柄表示装置100」のうちの「前記主制御部200からの表示制御用コマンドに基づいて前記LCDパネル1120の変動表示制御を行う構成」は、本願発明における「前記遊技制御手段からの表示指令信号に基づいて前記可変表示装置の表示制御を行う表示制御手段」に相当する。

F.先願発明における「特別図柄を変動させ、変動開始後、どれだけ時間経過してから特別図柄(識別情報)を停止させるかを指示するための変動パターン指定コマンド」及び「特別図柄を停止させるための図柄停止コマンド」は、それぞれ本願発明における「前記可変表示ゲームにおける識別情報の変動時間を指示する変動パターン指令信号」及び「前記可変表示ゲームにおける全ての識別情報の停止を指示する停止指令信号」に相当する。

G.先願発明における、「送信不良が無く表示制御用コマンドが受信された」場合と「送信不良で表示制御用コマンドが受信されないコマンド欠落が発生した」場合は、本願発明における「表示指令信号が正常」である場合と「異常」である場合に相当する。
そして、先願発明における「特別図柄表示装置100」は、「送信不良が無く表示制御用コマンドが受信されたか、送信不良で表示制御用コマンドが受信されないコマンド欠落が発生したかを判断し」ているので、
当該「特別図柄表示装置100」が、本願発明における「前記遊技制御手段からの表示指令信号が正常か否かを判定する指令信号判定手段」に相当する手段を有していることは、自明である。

H.先願発明における「左図柄指定コマンド」、「中図柄指定コマンド」又は「右図柄指定コマンド」を、以下、単に「図柄指定コマンド」という。
先願明細書(ア)【0024】、(ク)の記載及び遊技機の技術常識を考慮すれば、先願発明において、「前回の出目の図柄として停止表示する」とは、「前回」受信した「図柄指定コマンド」によって指定される「識別情報」を「停止表示する」ことと解されるので、
先願発明における「特別図柄表示装置100」が、「前回の出目の図柄として停止表示する」ために、「前回」の「図柄指定コマンド」に基づく情報を記憶保持する、記憶保持手段を備えていることは、自明である。
さらに、先願発明において、「図柄指定コマンド」について「送信不良で表示制御用コマンドが受信されないコマンド欠落が発生した」場合には、「図柄指定コマンド」に基づく情報を記憶保持することはできないので、
先願発明において、「図柄指定コマンド」にコマンド欠落が発生した場合に、「図柄指定コマンド」に基づく情報を記憶保持する処理を行わないか、「前回」の「図柄指定コマンド」に基づく情報を記憶保持し続ける処理を行うこととなり、いずれにしても記憶保持する処理を禁止することと差異は生じない。
よって、先願発明における「特別図柄表示装置100」は、本願発明における「前記指令信号判定手段により正常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報を記憶保持し、前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報の記憶保持を禁止する制御情報記憶保持手段」に相当する手段を備えており、
先願発明における「前回の出目の図柄として停止表示する」点は、本願発明における「前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている前回の可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示する」点に相当する、と認められる。

I.先願発明の「特別図柄表示装置100」は、「前記変動パターン指定コマンドにコマンド欠落が発生した場合は、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をOFFレベルのままと」するものである。
そして、先願明細書(キ)【0051】に記載されているように、「左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号」は「特別図柄表示装置100での図柄変動を開始」したときにONになる信号であるから、
前記「左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をOFFレベルのまま」とするときには、「特別図柄表示装置100での図柄変動」は行われていないと解される。
よって、先願発明における「前記変動パターン指定コマンドにコマンド欠落が発生した場合は、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をOFFレベルのままとし」は、本願発明における「前記指令信号判定手段により、前記変動パターン指令信号が異常と判定された場合は、前記可変表示ゲームの可変表示を行わず」に相当する。

J.前記H.及びI.で検討したとおり、
先願発明において、「特別図柄表示装置100」が実行する、「前記変動パターン指定コマンドにコマンド欠落が発生した場合は、左図柄変動中信号、中図柄変動中信号、右図柄変動中信号および図柄変動中信号をOFFレベルのままとし、さらに、前記図柄停止コマンドを受信すると、前回の出目の図柄として停止表示する」処理は、
本願発明において、「表示制御手段」の「代替表示制御手段」が実行する、「前記指令信号判定手段により、前記変動パターン指令信号が異常と判定された場合は、前記可変表示ゲームの可変表示を行わず、さらに、前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信すると、前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている前回の可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示する」処理に相当する。
そして、先願発明の「特別図柄表示装置100」が前記処理を行うための手段を備えることは自明であり、当該手段は本願発明における「代替表示制御手段」に相当する。

以上A.?J.を総合すると、本願発明と先願発明は、
<一致点>
「複数の識別情報を可変表示する可変表示ゲームを行う可変表示装置を備え、
始動口への遊技球の入賞に基づき前記可変表示ゲームを行うとともに、所定の乱数が抽出されて大当り抽選を行い、該大当り抽選の結果が大当りとなった場合に大当り遊技を発生させる遊技機において、
遊技を統括的に制御するとともに、前記可変表示装置における表示制御に用いる表示指令信号を送信する遊技制御手段と、
前記遊技制御手段からの表示指令信号に基づいて前記可変表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、を含み、
前記遊技制御手段は、
前記表示指令信号として前記可変表示ゲームにおける識別情報の変動時間を指示する変動パターン指令信号と、前記可変表示ゲームにおける全ての識別情報の停止を指示する停止指令信号と、を前記表示制御手段へ送信し、
前記表示制御手段は、
前記遊技制御手段からの表示指令信号が正常か否かを判定する指令信号判定手段と、
前記指令信号判定手段により正常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報を記憶保持し、前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、当該表示指令信号に基づく表示制御情報の記憶保持を禁止する制御情報記憶保持手段と、
前記指令信号判定手段により異常と判定された場合に、前記可変表示装置の表示制御を行う代替表示制御手段と、を備え、
前記代替表示制御手段は、
前記指令信号判定手段により、前記変動パターン指令信号が異常と判定された場合は、前記可変表示ゲームの可変表示を行わず、さらに、前記指令信号判定手段により正常と判定された前記停止指令信号を受信すると、前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている前回の可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願発明が「前記遊技制御手段から表示制御手段への信号入力のみを許容し、前記表示制御手段から前記遊技制御手段への信号出力を禁止する信号伝達方向規制手段」を含むのに対し、
先願発明が当該「信号伝達方向規制手段」を含むか否か不明である点。


(4) 判断
遊技制御手段から表示制御手段への信号入力のみを許容し、表示制御手段から遊技制御手段への信号出力を禁止する手段を設けることは、遊技機において従来周知であるから、
前記<相違点>は、課題解決のための具体化手段における微差であって、新たな効果を奏するものではない。
したがって、先願発明は、実質的に本願発明と同一といえる。


(5) むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-355262号(特開2001-170333号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


[平成23年7月20日付け回答書に対する補足]
なお、平成23年7月20日付け回答書に記載された<補正案>は、直ちに特許を受けることができる程度のものとはいえない。
すなわち、例えば下記の点。
・2.で示した補正事項3と同様の記載が認められる。
・明細書【0055】?【0056】及び図8?11には、「変動パターン指令信号が正常」である場合について、
信号に異常のあった左図柄については、「制御情報記憶保持領域に記憶保持されている左停止図柄「3」(前回の変動表示ゲームの停止図柄)」で停止する旨記載されているものの、
信号に異常のなかった右図柄及び中図柄については、「右停止図柄指令信号、中停止図柄指令信号の右停止図柄「4」、中停止図柄「2」にて停止される。」と記載されており、「制御情報記憶保持領域に記憶保持されている」図柄で停止する旨は何ら記載されていない。
よって、<補正案>に記載された「正常と判定される前記停止指令信号を受信すると、前記変動パターン指令信号が正常か否かに関係なく、前記制御情報記憶保持手段に記憶保持されている可変表示ゲームの停止識別情報を停止表示する」は、発明の詳細な説明の記載と一致しない。
・「代替表示制御手段」が如何なる処理を実行するか不明である。
 
審理終結日 2011-09-07 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2007-239168(P2007-239168)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 後藤 政喜  
代理人 高山 裕志  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 藤井 正弘  

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