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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1246731
審判番号 不服2009-23281  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-27 
確定日 2011-11-09 
事件の表示 特願2004-368048「光ディスク装置および光ディスクのチルト補正方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日出願公開、特開2006-179037〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成16年12月20日に出願したものであって、平成21年3月12日付けの拒絶理由通知に対して同年6月23日付けで手続補正がなされたが、同年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成22年12月21日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)に基づく審尋がなされたが、回答書は提出されなかったものである。


第2 平成21年11月27日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年11月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正
平成21年11月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、そのうち、特許請求の範囲についてするものは、

本件補正前に、
「【請求項1】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
該検出されたチルト補正量と、予め設定されたチルト補正量が略ゼロとなる前記光ディスクの回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するチルト変化量算出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うともに、回転数が変化したときに、該算出されたチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備え、
前記チルト補正手段は、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行うともに、回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するとともに、該任意の位置のうちの1の位置において、前記光ディスクの回転数を変化させてチルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
該任意の位置のうちの1の位置において、前記光ディスクの回転数を変化させたときの2つのチルト補正量から直線近似により、該チルト補正量が略ゼロとなる回転数を算出する算出手段と、
前記任意の位置における任意の回転数についてのチルト補正量と前記チルト補正量が略ゼロとなる回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するチルト変化量算出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うともに、回転数が変化したときに、該算出されたチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備え、
前記チルト補正手段は、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するステップと、
該検出された前記光ディスクの前記任意の位置における前記任意の回転数でのチルト補正量と、予め設定されたチルト補正量が略ゼロとなる前記光ディスクの回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するステップと、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うステップと、
前記光ディスクの回転数が変化したときに、該算出されたチルト変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するステップと、
を備え、
前記チルト補正量を再補正するステップは、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスクのチルト補正方法。
【請求項5】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するステップと、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行うステップと、
回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するステップと、
を備えたことを特徴とする光ディスクのチルト補正方法。
【請求項6】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するステップと、
該任意の位置のうちの1の位置において、光ディスクの回転数を変化させてチルト補正量を検出するステップと、
該任意の位置のうちの1の位置において、光ディスクの回転数を変化させたときの2つのチルト補正量から直線近似により、チルト補正量が略ゼロとなる回転数を算出するステップと、
前記任意の位置において、任意の回転数におけるチルト補正量と前記チルト補正量が略ゼロとなる回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するステップと、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うステップと、
前記光ディスクの回転数が変化したときに、該算出されたチルト変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するステップと、
を備え、
前記チルト補正量を再補正するステップは、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスクのチルト補正方法。」
とあったところを、

「【請求項1】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
該検出されたチルト補正量と、予め設定されたチルト補正量が略ゼロとなる前記光ディスクの回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するチルト変化量算出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいて、所定の位置におけるチルト補正を行うとともに、前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、該チルト変化量算出手段によって算出されたチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備え、
前記チルト変化量算出手段は、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行うとともに、前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するとともに、該任意の位置のうちの1の位置において、前記光ディスクの回転数を変化させてチルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
該任意の位置のうちの1の位置において、前記光ディスクの回転数を変化させたときの2つのチルト補正量から直線近似により、該チルト補正量が略ゼロとなる回転数を算出する算出手段と、
前記任意の位置における任意の回転数についてのチルト補正量と前記チルト補正量が略ゼロとなる回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するチルト変化量算出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うとともに、前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、該チルト変化量算出手段によって算出されたチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備え、 前記チルト変化量算出手段は、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するステップと、
該検出された前記光ディスクの前記任意の位置における前記任意の回転数でのチルト補正量と、予め設定されたチルト補正量が略ゼロとなる前記光ディスクの回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するステップと、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、チルト補正量を検出するステップにおいて検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うステップと、
前記チルト補正を行う位置において前記光ディスクの回転数が変化したときに、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するステップにおいて算出されたチルト変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するステップと、
を備え、
前記チルト補正量を再補正するステップは、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスクのチルト補正方法。
【請求項5】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するステップと、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、チルト補正量を検出するステップにおいて検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行うステップと、
前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するステップと、
を備えたことを特徴とする光ディスクのチルト補正方法。
【請求項6】
所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するステップと、
該任意の位置のうちの1の位置において、光ディスクの回転数を変化させてチルト補正量を検出するステップと、
該任意の位置のうちの1の位置において、光ディスクの回転数を変化させたときの2つのチルト補正量から直線近似により、チルト補正量が略ゼロとなる回転数を算出するステップと、
前記任意の位置において、任意の回転数におけるチルト補正量と前記チルト補正量が略ゼロとなる回転数とに基づいて、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するステップと、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、チルト補正量を検出するステップにおいて検出されたチルト補正量に基づいて、チルト補正を行うステップと、
前記チルト補正を行う位置において前記光ディスクの回転数が変化したときに、回転数の変化によるチルト補正量の変化量を算出するステップにおいて算出されたチルト変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するステップと、
を備え、
前記チルト補正量を再補正するステップは、θ=(R-Rp)*θ1/(R1-Rp)(ここで、θ1は、前記所定回転数(R1)におけるチルト補正量、θは、実際の記録・再生におけるチルト補正量、Rpは、実際の記録・再生にチルト補正量が略ゼロとなる回転数、Rはチルト補正量がθになる回転数。)によって再補正することを特徴とする光ディスクのチルト補正方法。」
とするものである。

上記本件補正の請求項2についての補正は、補正前に「該検出されたチルト補正量に基づいて」とあったところを、「該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいて」と限定し、「チルト補正を行うともに、」とあったところを「チルト補正を行うとともに、」と誤記の訂正をし、「回転数が変化したときに、」とあったところを、「前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、」と限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

本願補正発明は、次に記載するとおりのものである。

「所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行うとともに、前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。」


2.引用例及びその記載

(1)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成13年12月26日に頒布された刊行物である特開2001-357554号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。


(a)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光ピックアップをディスクに対して垂直になるよう制御するチルトサーボ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】光ディスクに記録されている情報を光ピックアップを用いて読出し、記録されている情報を再生する装置においては、光ピックアップを光ディスクに対して垂直な方向になるよう制御するチルトサーボ装置が使用されている。」

(b)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1および図2を参照して説明する。図1は本発明の実施例の構成図、図2は同実施例のチルトセンサの具体例である。
【0015】図1において、1は図示しない光ピックアップに固定されたチルトセンサ、2はループフィルタ、3は増幅器、4は切替器、5は図示しない光ピックアップが光ディスクに対して垂直となるよう制御するチルト機構、6はチルト値を検出するチルト値検出部、7はA/D、8はループフィルタ、9は増幅器、10はメモリ、11は制御部である。
【0016】チルトセンサ1は、図2に示されるように、発光ダイオード21、フォトダイオード22および23、増幅器24および25、減算回路26で構成されている。フォトダイオード22および23は発光ダイオード21を中にして対称な位置に配置され、発光ダイオード21が発光する光が光ディスクで反射された反射光をそれぞれ受光する。
【0017】したがって、図示しない光ピックアップが傾くと発光ダイオード21およびフォトダイオード22および23も傾き、傾きがフォトダイオード22方向に傾くとフォトダイオード22よりの出力がフォトダイオード23の出力より大になり、逆方向に傾けばフォトダイオード23の出力が大となる。
【0018】フォトダイオード22および23の出力は増幅器24および25でそれぞれ増幅され、減算回路26で差分が出力される。したがって減算回路26より出力される信号電圧は、垂直方向の場合は0となり、フォトダイオード22側に傾いている場合は傾きに応じた正の電圧が、またフォトダイオード23側に傾いている場合は傾きに応じた負の電圧が出力される。【0019】チルトセンサ1の減算回路26の出力は、図1に示すように、ループフィルタ2、増幅器3、切替器4を介してチルト機構5に入力させ、チルト制御が行われる。
【0020】つぎに、図3?図5を参照して本発明の第1の実施例の動作を説明する。ステップS1では、制御部11は、ディスクの回転数を指定するi=0をセットする。ステップS2では、制御部11は、ディスクの回転数をNi =N0 に設定して回転を開始させる。
【0021】なお回転数N0 は通常動作時の回転数でNi のiが大なるに従って回転数は所定数低下する。ステップS3では、制御部11は、図示しない再生装置に対して光ピックアップを光ディスクの最内(外)周に位置づけるよう指示する。
【0022】ステップS4では、制御部11は、切替器4に対して増幅器3の出力をチルト機構5に接続するよう指令する。ステップS5では、制御部11は、チルト機構5に対してチルト制御動作を開始するよう指令する。
【0023】ステップS6では、制御部11は、A/D7の出力値を監視し、チルトセンサ1の出力が目標となる誤差範囲以内におさまるまで待機する。ステップS7では、制御部11は、チルト機構5に対して動作停止を指令する。したがって、以後チルト機構5に入力される信号値が変化してもチルト制御動作は行われない。
【0024】ステップS8では、制御部11は、図示しない再生装置に対して光ピックアップをΔR外(内)周方向に移動させる指令を送出する。ステップS9では、制御部11は、ΔR光ピックアップが移動した後でのチルトセンサ1の出力値をA/D7を介して読取り、メモリ10に記録する。なおメモリ10への記録は回転数Ni に対応して記録する。
【0025】ステップS10では、制御部11は、光ピックアップが最外(内)周位置に達するまでステップS8およびS9を実行し、最外(内)周位置に達したときステップS11に移る。なお光ピックアップを移動させるΔRなる値は、光ピックアップのアドレスおよびアドレス間隔と対応させて予め決められる。
【0026】ステップS11では、制御部11は、次の回転数を指定するためにi=i+1をセットし、ステップS12に移ってiがimax であるか否かを判定し、判定がNOならばステップS2に移ってステップS2?S12を繰返す。ステップS13では、制御部11は、ディスクの再生可能回転数を求めるためにi=0をセットし、ステップS14に移ってディスク回転数をNi に設定し回転を開始させる。
【0027】ステップS15では、再生動作を開始させ、ステップS16に移って回転数Ni で再生可能であるか否かを判定する。ステップS16で再生不可の場合はステップS17に移り、低い回転数を指定するためにi=i+1をセットし、ステップS14に移り、ステップS14?S17が繰返される。
【0028】ステップS16で再生可能な場合はステップS18に移り、ステップS18ではステップS16で再生可能と判定された回転数NX に設定する。ステップS19では、制御部11は、図示しない再生装置よりシーク指令が転送されたか否かを判定し、判定がNOの場合はステップS20に移って切替器4を増幅器3と接続するよう指令して待機する。
【0029】この状態において通常の再生動作が行われる。シーク指令が転送されるとステップS21に移り、制御部11は、シーク指令と共に転送されたシーク先位置に対応するチルトセンサ1の出力値をメモリ10より読出し、ステップS22に移ってチルト値を算出する。なお出力値の読出しは現在回転している回転数DX に対するチルト値を読出す。
【0030】チルトセンサ1の出力値に対するチルト値(光ピックアップの垂直方向よりの傾き角)は予め実験等によって換算係数が求められており、制御部11はこの換算係数をチルトセンサ1の出力値に乗算してチルト値を算出する。
【0031】ステップS23では、制御部11は、切替器4に指令して増幅器9の出力をチルト機構5に接続するよう指令し、ステップS24に移ってループフィルタ8に制御電圧を出力し、ステップS25に移ってチルト機構5の制御動作を開始させる。
【0032】ステップS26では、制御部11は、チルト値検出部6より出力される検出値がステップS22で算出されたチルト値と等しくなったか否か判定し、判定がNOの場合はステップS27に移って算出値より検出値を引いた値Aを求め、ステップS28に移ってAに比例してループフィルタ8に送出する制御電圧を低下させる。
【0033】ステップS26での判定がYESの場合はステップS29に移って、制御部11は、チルト機構5に動作停止を指令し、ステップS30に移って図示しない再生装置よりシーク終了信号が転送するまで待機する。
【0034】ステップS30でシーク終了信号が転送されるとステップS31に移り、制御部11は、切替器4に指令して増幅器3の出力をチルト機構5に接続し、ステップS32に移って、チルト機構5に指令してチルト機構の動作を開始し、ステップS19にもどり、シーク先でのデータの再生が行われる。
【0035】以上説明したように、ステップS30での光ピックアップがシーク完了前に光ピックアップのシーク先のチルト値になるよう制御しているので、シークが完了すると直ちに再生動作を行うことができる。」

(c)「【0040】また、実施例ではステップS17で全ての回転数に対してチルトセンサ出力値をメモリ10に記録させていたが、例えばステップS11でi=i+4とメモリ10に記録させ、ステップS21での回転数Ni に対するシーク先のチルトセンサ出力値がメモリ10に記録されていない場合は、メモリ10に記録されている回転数Ni の前後の回転数より内挿して求めるようにしてもよい。このようにすることによってメモリ10へのデータ記録時間が短くなり、情報再生までの時間を短縮することができる。
【0041】つぎに、図6を参照して、本発明の第2の実施例の動作を説明する。第1の実施例においては予め設定した複数の回転数の全てに対するチルトセンサ出力値をメモリ10に記録させて、再生動作時には再生動作が可能な回転数を求め、求められた回転数でディスクを回転し、メモリ10に記録されている動作回転数に対するチルトセンサ出力値を読出してチルト補正を行わせていた。このためメモリ10に実際に使用しない回転数に対するチルトセンサ出力値も記録され、記録するための時間が長時間であった。第2の実施例はメモリ10への記録時間を短くしたものである。」


上記引用例に記載された事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「光ディスクに記録されている情報を光ピックアップを用いて読出し、記録されている情報を再生する装置において、光ピックアップが光ディスクに対して垂直となるよう制御するチルト機構を有し、
光ピックアップに固定されたチルトセンサは、発光ダイオードを中にして対称な位置に配置され、発光ダイオードが発光する光が光ディスクで反射された反射光をそれぞれ受光する2つのフォトダイオードと、2つのフォトダイオードの出力の差分を出力して、光ピックアップが光ディスクに対して垂直な方向の場合は0となり、傾いている場合は傾きに応じた正負の電圧となる出力信号を出力する減算回路とを有し、減算回路からの出力をチルト機構に入力させて、チルト制御が行われるものであって、

ステップS1:制御部は、ディスクの回転数を指定するi=0をセットする。
ステップS2:制御部は、ディスクの回転数をNi =N0 に設定して回転を開始させる。
ステップS8:制御部は、再生装置に対して光ピックアップをΔR外(内)周方向に移動させる指令を送出する。
ステップS9:制御部は、ΔR光ピックアップが移動した後でのチルトセンサの出力値をA/D7を介して読取り、メモリに記録する。なお、メモリへの記録は回転数Ni に対応して記録する。
ステップS10:制御部は、光ピックアップが最外(内)周位置に達するまでステップS8およびS9を実行し、最外(内)周位置に達したときステップS11に移る。なお光ピックアップを移動させるΔRなる値は、光ピックアップのアドレスおよびアドレス間隔と対応させて予め決められる。
ステップS11:制御部は、次の回転数を指定するためにi=i+1をセットし、ステップS12に移る。
ステップS12:iがimax であるか否かを判定し、判定がNOならばステップS2に移ってステップS2?S12を繰返す。
ステップS18:再生可能と判定された回転数NX に設定する。
ステップS19:制御部は、再生装置よりシーク指令が転送されたか否かを判定する。シーク指令が転送されるとステップS21に移る。
ステップS21:制御部は、シーク指令と共に転送されたシーク先位置に対応するチルトセンサの出力値をメモリより読出し、ステップS22に移る。なお出力値の読出しは現在回転している回転数DX に対するチルト値を読出す。
ステップS22:チルト値を算出する。
ステップS25:チルト機構5の制御動作を開始させる。
ステップS26:ステップS26のチルト量は算出量に等しくなったか?での判定がYESの場合はステップS29に移る。
ステップS29:制御部は、チルト機構に動作停止を指令する。
ステップS30:シーク終了信号が転送される。
ステップS32:チルト機構に指令してチルト機構の動作を開始し、ステップS19にもどり、シーク先でのデータの再生が行われる。

なる、ステップが行われ、

予め設定した複数の回転数の全てに対するチルトセンサ出力値をメモリに記録させて、再生動作時にディスクを回転し、メモリに記録されている動作回転数に対するチルトセンサ出力値を読出してチルト補正を行わせるか、または、例えばステップS11でi=i+4とメモリに記録させ、ステップS21での回転数Ni に対するシーク先のチルトセンサ出力値がメモリに記録されていない場合は、メモリに記録されている回転数Ni の前後の回転数より内挿してシーク先のチルトセンサ出力値を読出してチルト補正を行わせる、

装置。」


3.対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「光ディスクに記録されている情報を光ピックアップを用いて読出し、記録されている情報を再生する装置」は、本願補正発明の「光ディスク装置」に相当する。

(2)引用発明は、その動作から、光ディスクの半径方向の複数の位置のそれぞれにおいて、複数の回転数に対するチルトセンサ出力置をメモリに記録させ、再生動作時には、光ディスクの半径方向の位置及び動作回転数に対応するチルトセンサ出力値を読み出してチルト補正を行うものといえ、チルト補正を行う際には、チルトセンサ出力値を読み出してチルト補正を行っていることから、チルトセンサ出力値からチルト補正量を求めることは明らかであって、引用発明も、本願補正発明の「所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段」を有するものである。

(3)引用発明の「ステップS18:再生可能と判定された回転数NX に設定する。
ステップS19:制御部は、再生装置よりシーク指令が転送されたか否かを判定する。シーク指令が転送されるとステップS21に移る。
ステップS21:制御部は、シーク指令と共に転送されたシーク先位置に対応するチルトセンサの出力値をメモリより読出し、ステップS22に移る。なお出力値の読出しは現在回転している回転数DX に対するチルト値を読出す。
ステップS22:チルト値を算出する。
ステップS25:チルト機構5の制御動作を開始させる。
ステップS26:ステップS26のチルト量は算出量に等しくなったか?での判定がYESの場合はステップS29に移る。
ステップS29:制御部は、チルト機構に動作停止を指令する。
ステップS30:シーク終了信号が転送される。
ステップS32:チルト機構に指令してチルト機構の動作を開始し、ステップS19にもどり、シーク先でのデータの再生が行われる。」ことは、
光ディスクの回転数が、再生可能回転数であるときに、メモリに記録されたその回転数に対応するチルト値に基づいて、チルト補正を行うことものであるから、引用発明も本願補正発明の「前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行う、チルト補正手段を備えた」ものである。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「所定の回転数で回転する光ディスクの任意の位置において、チルト補正量を検出するチルト補正量検出手段と、
前記光ディスクの回転数が前記所定の回転数であるときに、該チルト補正量検出手段によって検出されたチルト補正量に基づいてチルト補正を行う、チルト補正手段と、を備えた光ディスク装置。」


<相違点>

本願補正発明は、「前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正するチルト補正手段」を有するのに対し、引用発明は、チルト補正を行う位置において回転数が変化した場合について特定がない点。


4.判断

<相違点>について
光ディスクの記録、再生動作中にディスク回転数が変化した場合においても、チルト制御することは、例えば、特開2003-217153号公報(速度切り替えがある場合でも正確なチルト制御を実現できるようにした点(段落【0107】)、記録もしくは再生動作中にディスク回転数が変化した場合、チルト制御する点(段落【0114】)参照)に記載されているように周知であるから、チルト補正がなされている位置においてディスクの回転数が変化した場合であっても、回転数に応じたチルト補正を行うことは、当業者が適宜なし得る事項である。
また、引用発明も「予め設定した複数の回転数の全てに対するチルトセンサ出力値をメモリに記録させて、再生動作時にディスクを回転し、メモリに記録されている動作回転数に対するチルトセンサ出力値を読出してチルト補正を行わせるか、または、例えばステップS11でi=i+4とメモリに記録させ、ステップS21での回転数Ni に対するシーク先のチルトセンサ出力値がメモリに記録されていない場合は、メモリに記録されている回転数Ni の前後の回転数より内挿してシーク先のチルトセンサ出力値を読出してチルト補正を行わせる」ものであって、チルト補正がなされている位置において回転数が変化した場合に、その回転数に適合したチルト補正を行うために、回転数が変化する前のチルト値に対して、回転数が変化した後のチルト値との差、すなわち変化分を考慮して、回転数が変化した後のチルト値に補正することは、当業者が適宜なし得る事項であるから、引用発明において、本願補正発明のように「前記チルト補正を行う位置において回転数が変化したときに、予め設定された回転数の変化によるチルト補正量の変化量に基づいて、チルト補正量を再補正する」ことに格別の困難性を有しない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものではなく、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成21年11月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年6月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲、即ち、上記「第2 1.」に本件補正前の請求項2として記載したとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「検出されたチルト補正量に基づいて」について、「チルト補正量検出手段によって」なる限定を削除して「該検出されたチルト補正量に基づいて」とし、「回転数が変化したときに、」について、「前記チルト補正を行う位置において」との限定を削除し、また、「チルト補正を行うとともに、」について「と」を削除して、発明の特定事項を実質的に変更するものではない、「チルト補正を行うともに、」としたものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2〔理由〕3. 4.」に示したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-27 
出願番号 特願2004-368048(P2004-368048)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 勇太小山 和俊  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 小松 正
関谷 隆一
発明の名称 光ディスク装置および光ディスクのチルト補正方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  

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