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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1246736
審判番号 不服2010-3273  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-16 
確定日 2011-11-09 
事件の表示 特願2000-290043「動いている対象物の三次元画像を再構成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月29日出願公開、特開2001-148005〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年9月25日(優先権主張 平成11年9月24日 フランス)の出願であって、平成21年6月24日付けの拒絶理由の通知に対し、平成21年8月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成21年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月16日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2.本願発明の実施可能性について
1.請求項の記載
本願の請求項に係る発明は、平成22年2月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、以下のとおりのものである。

「実質的に周期的な動作で動いている対象物の三次元画像を再構成する方法であって、
前記対象物の動きの数周期にわたる収集期間に、複数の初期デジタル放射線画像(IMi)の連続した収集が、前記対象物の周りを回転するスナップショット装置を用いて行われ、各周期の同じ時間に発生した初期画像ごとに初期画像のグループを形成し、前記対象物の中間三次元表現(RTi)が、各々の初期画像グループと反復画像再構成アルゴリズムを基にして再構成され、2つの中間三次元表現の間の動きを表現する空間変形法則(LDij)が、2つの時間的に連続した発生に対応する2つの中間三次元表現に基づいて公式化され、かつ、前記対象物の最終三次元表現が、前記公式化された対応する空間変形法則を、ある初期画像から他の初期画像へと連続的に取り入れた、反復画像再構成アルゴリズムにより再構成されることを特徴とする方法。」

2.発明の詳細な説明の記載
本願発明の実施可能性に関連して、明細書の発明の詳細な説明の【0011】ないし【0015】には、以下の事項が記載されている。

「【0011】一旦初期画像が収集されると、全ての周期について一様に一時的に発生する初期画像がそれぞれの周期で選択される。例えば、心臓の動きの周期が始まった後に、最初の初期画像IM1が選択される。そして、5つの初期画像IM1(図2)が得られ、それらに基づいて、心臓の血管VSの中間三次元表現の再構成が、反復型画像再構成アルゴリズムを用いて行われる。そのような反復型画像再構成アルゴリズムの原理は当業者によく知られており、すでに多くの刊行物の主題となっている。特に、ゴードン、ベンダー、ハーマンによる論文「三次元電子顕微鏡法及びX線写真に関する代数再構成技術」(セオロジカル・バイオロジカル・ジャーナル、No.29、9471から781頁(1970)又はフランス特許出願No.8903606又は89 16906を挙げることができよう。フランス特許出願No.2 752 975に記載されている対象物の三次元画像再構成方法も実施できる。当業者は、画像再構成アルゴリズム及び/又はスナップショット装置校正段階の実施形態のより細部に関し、これらの従来技術文献を参考にすることができるであろう。
【0012】この中間再構成段階の結果として、心臓の血管の最初の中間三次元表現RT1が得られる。画像IM2によって同じ演算が行われるが、各周期の初期画像IM2は、周期が始まった後に収集される2番目の初期画像である。次いで2番目の中間三次元表現RT2が得られる。この場合、最終的に10の三次元中間表現が得られるように、各周期の画像について同じ操作が行われるのが好ましい。
【0013】図3に示すように、次の段階は、2つの連続する中間三次元表現RT1とRT2を公式化すること、例えば、空間変形法則が、2つの三次元表現TR1及びTR2の間で変形モデルを公式化することから成る。2つの連続する中間表現RTi及びRTjの間で幾何学的変形モデルLDIjを得るため、同様な演算が一般的な方法で行われる。
【0014】例として、このような2つの連続する時間での発生の間で心臓の動きを表現する空間変形法則を得る1つの方法は、種々の連続する三次元表現間で対象要素(例えば特定の血管)を追跡するための既存の技術を使って行うことができる。そのような一致手法が、シン エー、及びアレン ピー.ケーによる論文「画像フロー計算・推定理論及び統合透視」(コンピュータ・ビジョン・グラフィックス アンド イメージプロセッシング、56巻、2号、 1992年9月、152-177頁)に記述されている。同業者は、それを任意に参考とすることができる。
【0015】一旦全ての空間変形法則を得ると、反復型画像再構成アルゴリズムを適用するとともに、今度は、収集の全期間に収集した全ての初期画像ΣIMiを使用することによって、心臓血管の最終三次元表現が再構成される。更に、反復型画像再構成アルゴリズムは、心臓の動きを与えて心臓血管の正しい表現を最終的に得るような方法で、以前に公式化された対応する空間変形法則を、ある初期画像から他の初期画像へと連続的に取り入れる。」

3.拒絶の理由
本願の拒絶査定は、平成21年6月24日付けで通知した拒絶理由によるもので、該拒絶理由通知及び拒絶査定の内容は次のとおりである。

(1)平成21年6月24日付けの拒絶理由通知
『この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から3か月以内に意見書を提出してください。

理 由

理由1.この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(a)・・・(省略)・・・
(b)本願の請求項1に記載された「中間三次元表現」を並べるだけでも四次元画像として画像の再構成を行うことができ、「中間三次元表現」及び「最終三次元表現」の具体的な表現形式等が記載されていないため、作成方法は違うものの、結果として得られた「中間三次元表現」と「最終三次元表現」との違いが不明りょうであり、かつ当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(c)・・・(省略)・・・』

(2)拒絶査定
『この出願については、平成21年 6月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由1.によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

出願人は、平成21年8月17日付意見書「理由1について」において、36条の拒絶理由は解消したと主張している。
補正後の請求項1には、「前記対象物の最終三次元表現が、前記公式化された対応する空間変形法則を、ある初期画像から他の初期画像へと連続的に取り入れた、反復画像再構成アルゴリズムにより再構成される」と記載されている。
しかし、中間三次元表現と最終三次元表現の作成方法が異なることは明らかであるが、中間三次元表現及び最終三次元表現の具体的な表現形式等は依然として記載されておらず、また、空間変形法則を具体的にどのように取り入れて最終三次元表現が再構成されるのかも記載されていない。
したがって、本願請求項1及び2に係る発明は、依然として当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、出願人の主張は採用できない。』

4.当審の判断
本願発明は、上記のように「・・・前記対象物の最終三次元表現が、前記公式化された対応する空間変形法則を、ある初期画像から他の初期画像へと連続的に取り入れた、反復画像再構成アルゴリズムにより再構成されることを特徴とする方法。」であるが、このうち、「空間変形法則を取り入れた、反復画像再構成アルゴリズム」について、検討する。

発明の詳細な説明の記載によると、「空間変形法則」は、2つの連続する時間での中間三次元表現の間で変形モデルを公式化して得られた幾何学的変形モデルであり、上記【0014】には、該空間変形法則を得る方法の1つとして既存の技術を使う方法が記載され、一例として、シン エー、及びアレン ピー.ケーによる論文「画像フロー計算・推定理論及び統合透視」が挙げられている。このように、「空間変形法則」は、一般的な既存の技術を用いて演算し得ることができるものである。

また、「反復画像再構成アルゴリズム」についても、複数の初期画像に基づいて三次元表現を再構成するアルゴリズムは、当業者によく知られた技術であって、一例として、ゴードン、ベンダー、ハーマンによる論文「三次元電子顕微鏡法及びX線写真に関する代数再構成技術」などが挙げられているように、一般的に知られた既存のアルゴリズムである。

しかしながら、本願発明は、最終三次元表現の再構成を、「空間変形法則を取り入れた、反復画像再構成アルゴリズム」により行うことを特徴とするものであり、この反復画像再構成アルゴリズムに空間変形法則を取り入れるのは、どのようにして行うのか発明の詳細な説明には記載されておらず、当業者の技術常識をもってしても理解できるものではない。すなわち、発明の詳細な説明には、これに関して、【0015】に「反復型画像再構成アルゴリズムは、心臓の動きを与えて心臓血管の正しい表現を最終的に得るような方法で、以前に公式化された対応する空間変形法則を、ある初期画像から他の初期画像へと連続的に取り入れる。」と記載されているのみであり、空間変形法則も反復画像再構成アルゴリズムも、それぞれ、個々には知られたものであるが、それらを組み合わせた「空間変形法則を取り入れた、反復画像再構成アルゴリズム」とは、どのようなものなのか具体的な方法が想起できるものではない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。
さらに、発明の詳細な説明には、このアルゴリズムにより再構成を行うこと自体による発明の作用・効果の記載も全くなく、発明を実施するために必要な技術的な記載はなされていないから、このことからも、発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。

この点を理由として、「空間変形法則を具体的にどのように取り入れて最終三次元表現が再構成されるのかも記載されていない。したがって、本願請求項1及び2に係る発明は、依然として当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない」とした原査定の理由は妥当なものである。

第3.むすび
以上のとおり、本件出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件出願は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていないものであって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

第4.付記(特許法第36条第6項第2号について)
なお、原査定の拒絶の理由として、平成21年6月24日付け拒絶理由通知書の理由1では、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨も挙げられているので、この点についても検討しておく。

本願請求項1には、「前記対象物の最終三次元表現が、前記公式化された対応する空間変形法則を、ある初期画像から他の初期画像へと連続的に取り入れた、反復画像再構成アルゴリズムにより再構成される」と記載されている。
上述したように、空間変形法則、反復画像再構成アルゴリズム、それぞれは、既存の技術として知られた技術であるが、それらを組み合わせた請求項1に記載の、「空間変形法則を・・取り入れた、反復画像再構成アルゴリズム」は、既存の技術ではなく、また、空間変形法則と反復画像再構成アルゴリズムの間に技術的関連性があることが当業者に明らかであるわけでもないから、単に、空間変形法則を取り入れた、反復画像再構成アルゴリズムとの記載では、発明がどのような作用によりどのような効果があるものであるのか、その技術的な思想が不明である。
したがって、請求項1の記載では、技術的思想の創作としての発明が明確であるとはいえず、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
 
審理終結日 2011-06-08 
結審通知日 2011-06-14 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願2000-290043(P2000-290043)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板垣 有紀▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 古川 哲也
千葉 輝久
発明の名称 動いている対象物の三次元画像を再構成する方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  

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