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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1246751
審判番号 不服2008-18090  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-15 
確定日 2011-11-07 
事件の表示 特願2002-314227「蛇口直結型浄水器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日出願公開、特開2004-148162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年10月29日の特許出願であって、平成19年11月5日付けの拒絶理由通知に対し、平成20年1月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年2月7日付けの最後の拒絶理由通知に対し、平成20年5月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年5月23日付けで平成20年5月2日付けの手続補正書でした補正について補正却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年7月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成20年8月6日付けで審判請求書に係る手続補正書及び明細書に係る手続補正書が提出され、その後、平成23年2月18日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされたが、これに対する回答書が所定の期間内に請求人から提出されなかったものである。

2.平成20年8月6日付けの明細書に係る手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月6日付けの明細書に係る手続補正を却下する。

[理由]
平成20年8月6日付けの明細書に係る手続補正(以下、「本件補正」ということがある。)は、特許請求の範囲を、以下の(a)に示すとおりに補正するものである。そして、本件補正前の特許請求の範囲は、平成20年5月2日付けの手続補正書でした補正が却下されていることから、平成20年1月21日付けの手続補正書で補正した以下の(b)に示すとおりのものである。すなわち、本件補正は、特許請求の範囲を、以下の(b)に示すとおりのものから、以下の(a)に示すとおりのものに補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 浄水カートリッジと(6)、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)及び該浄水カーリッジを接続するための筒状部(51)を有する浄水器本体(5)とからなり、該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口管に対して鉛直下側に来るように配置される蛇口直結型浄水器であって、
該交換時期表示部が、前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。
【請求項2】 前記交換時期表示部が、水平面から少し起き上がって配置されてなる請求項1に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項3】 浄水器本体に対し、切換レバーが浄水器を蛇口に固定したときの使用者から向かって右側方に設けられ、前記交換時期表示部が、該切換レバーに対して左側に設けられている請求項1又は2に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項4】 前記浄水器本体の上面に窓部が設けられ、前記交換時期表示部が、外周に1?12月の月表示部が配された回動可能な操作盤であり、前記操作盤は、前記窓部より月表示部のうちいずれか1のみの月表示を目視可能なように構成されている請求項1?3のいずれか一項に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項5】 浄水器本体に、中心軸が水平方向となる該浄水カーリッジを本体に接続するための筒状部(51)が設けられると共に、該筒状部の左端上面に、前記窓部が設けられている請求項4記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項6】 前記操作盤(33)の盤面に、コイン溝(35)又は指をかける窪み(34)が配されてなる請求項4又は5に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項7】コイン溝又は指をかける窪みは、使用者から向かって浄水器本体の左側面に位置している請求項6に記載の蛇口直結型浄水器。」

(b)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 浄水カートリッジと(6)、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部及(52)及び窓部を有する浄水器本体(5)とからなり、該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口の下側に来るように配置される蛇口直結型浄水器であって、
該交換時期表示部が、浄水器本体の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。
【請求項2】 前記交換時期表示部が、水平面から少し起き上がって配置されてなる請求項1に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項3】 浄水器本体に対し、切換レバーが浄水器を蛇口に固定したときの使用者から向かって右側方に設けられ、前記交換時期表示部が、該切換レバーに対して左側に設けられている請求項1又は2に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項4】 前記浄水器本体の上面に窓部が設けられ、
前記交換時期表示部が、外周に1?12月の月表示部が配された回動可能な操作盤であり、
前記操作盤は、前記窓部より月表示部のうちいずれか1のみの月表示を目視可能なように構成されている請求項1?3のいずれか一項に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項5】 浄水器本体に、中心軸が水平方向となる該浄水カーリッジを本体に接続するための筒状部(51)が設けられると共に、該筒状部の左端上面に、前記窓部が設けられている請求項4記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項6】 前記操作盤(33)の盤面に、コイン溝(35)又は指をかける窪み(34)が配されてなる請求項4又は5に記載の蛇口直結型浄水器。
【請求項7】コイン溝又は指をかける窪みは、使用者から向かって浄水器本体の左側面に位置している請求項6に記載の蛇口直結型浄水器。」

本件補正の前後を照らし合わせると、本件補正は、特許請求の範囲の記載について、次の(補正1)?(補正3)の補正をするものであるといえる。
(補正1):本件補正前の請求項1に記載の「交換時期表示部(30)と、蛇口接続部及(52)及び窓部を有する浄水器本体(5)」を、「交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)及び該浄水カーリッジを接続するための筒状部(51)を有する浄水器本体(5)」とする補正。
(補正2):本件補正前の請求項1に記載の「該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口の下側に来るように配置される」を、「該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口管に対して鉛直下側に来るように配置される」とする補正。
(補正3):本件補正前の請求項1に記載の「該交換時期表示部が、浄水器本体の上面に目視可能に配置されてなる」を、「該交換時期表示部が、前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる」とする補正。

そして、上記(補正1)は、平成20年2月7日付けの最後の拒絶理由通知で指摘された「交換時期表示部」と「窓部」との関係について明りょうにすることを目的とするものであり、上記(補正2)及び(補正3)は、本件補正前の請求項1の発明特定事項について減縮することを目的とするものであることから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて以下に検討する。

(1)本願補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「浄水カートリッジと(6)、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)及び該浄水カーリッジを接続するための筒状部(51)を有する浄水器本体(5)とからなり、該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口管に対して鉛直下側に来るように配置される蛇口直結型浄水器であって、
該交換時期表示部が、前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。」
(当審注:上記「浄水カートリッジと(6)」は「浄水カートリッジ(6)と」の誤記であり、上記「該浄水カーリッジを接続する」は「該浄水カートリッジを接続する」の誤記であることは明らかであるから、以下そのように読み替えるものとする。)

(2)刊行物及びその記載事項
本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-114324号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「流路切換弁を具備する蛇口接続用ボディに対して浄水器本体を着脱自在に組み付けてなる蛇口直結型浄水器において、前記浄水器本体のハウジングの表面に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部が印刷されていることを特徴とする蛇口直結型浄水器。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
イ 「【従来の技術】従来より・・・・浄水器が用いられている。かかる浄水器として、活性炭等の吸着剤によって水のカルキ臭やカビ臭を除去し、又水中のトリハロメタン等を除去し、更に多孔質中空糸膜によって、水中の細菌類や濁度成分等の除去を行なうようにしているものが知られている。」
(段落【0002】)
ウ 「【発明の実施の形態】図1は本発明の1実施例をなす蛇口直結型浄水器が蛇口9取り付けられている状態を示す斜視図であり、図2はその上面図である。・・・・
・・・・
なお図1において、符号3は蛇口接続用ボディ2に設けられている蛇口固定部であり、蛇口接続用ボディ2と蛇口9とを固定するものである。・・・・」(段落【0010】?【0013】)
エ 「【実施例】以下、本発明の蛇口直結型浄水器のより具体的な構成を、図1及び図2に基づいて説明する。
・・・・
本実施例では蛇口接続用ボディ2に内蔵してある水流切換弁について、及び浄水器本体6内に内蔵してある活性炭等の吸着剤や多孔質中空糸膜に関する詳細は図示していないが、これらは従来のものをそのまま使用できる。
浄水器本体6のハウジング表面には、使用者にとって見易い手前の位置に、「交換日」の文字と共に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部1としての「 年 月 日」が印刷されている。
・・・・
文字の印刷箇所は、見やすくて、しかも汚れ難い位置が好ましく、浄水器本体6の上部の頂部であって、しかも手前の位置が好ましい。・・・・」(段落【0014】?【0019】)
オ 「【発明の効果】本発明の蛇口直結型浄水器においては、浄水器本体のハウジングの表面の所定の箇所に日付を表示する数字を、この浄水器本体の使用を開始する際に書き込むだけでよく、これによって蛇口接続用ボディに対しての浄水器本体の交換日の目安を判断することができる。」(段落【0023】)
カ 「【図1】本発明の蛇口直結型浄水器の1例を示す斜視図である。
【図2】図1の蛇口直結型浄水器の上面図である。」(【図面の簡単な説明】)との説明とともに【図1】及び【図2】として以下の図面が記載されている。


(3)刊行物1に記載された発明の認定
(あ)刊行物1には、記載アに、「流路切換弁を具備する蛇口接続用ボディに対して浄水器本体を着脱自在に組み付けてなる蛇口直結型浄水器において、前記浄水器本体のハウジングの表面に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部が印刷されている」「蛇口直結型浄水器」が記載されており、以下、この「蛇口直結型浄水器」の構成要素について順次検討する。
(い)上記記載アの「蛇口直結型浄水器」において、「浄水器本体」は「ハウジング」を有するものであるところ、記載カの図1?2の図面によれば、符号6で示される「浄水器本体」の外形は円柱状であるから、この「浄水器本体」は、外形が円柱状のハウジングを有しているといえる。
(う)上記記載アの「蛇口直結型浄水器」の「浄水器本体」は、記載エの「本実施例では・・・・浄水器本体6内に内蔵してある活性炭等の吸着剤・・・・に関する詳細は図示していないが、これらは従来のものをそのまま使用できる。」との記載によれば、活性炭等の吸着剤を内蔵しているものであるから、上記(い)の検討を踏まえると、上記記載アの「蛇口直結型浄水器」の「浄水器本体」は、外形が円柱状のハウジングと、このハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤を有するものであるといえる。
(え)上記記載アの「蛇口直結型浄水器」の「日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部」は、記載オの「本発明の蛇口直結型浄水器においては、・・・・日付を表示する数字を、この浄水器本体の使用を開始する際に書き込む」との記載によれば、「日付を表示する数字」を書き込んで使用するもの、すなわち、日付を表示する日付表示部であるといえ、また、この「日付」は、記載エの「浄水器本体6のハウジング表面には、使用者にとって見易い手前の位置に、「交換日」の文字と共に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部1としての「 年 月 日」が印刷されている。」との記載からみて、「交換日」であることは明らかであるから、上記「日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部」は、交換日を表示する交換日表示部であるといえる。
(お)上記記載アの「蛇口直結型浄水器」の「前記浄水器本体のハウジングの表面に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部が印刷されている」に関し、記載エには、上記(え)で述べたように「浄水器本体6のハウジング表面には、使用者にとって見易い手前の位置に、「交換日」の文字と共に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部1としての「 年 月 日」が印刷されている。」との記載があるほか、「文字の印刷箇所は、・・・・浄水器本体6の上部の頂部であって、しかも手前の位置が好ましい。」との記載もあるところ、これらの記載とともに記載カの図1?2の図面を併せみれば、上記記載アの「蛇口直結型浄水器」の「日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部」は、その位置として、浄水器本体のハウジング表面のうち、上部の頂部の、使用者にとって見易い手前の位置にあるものといえる。
(か)上記(え)及び(お)の検討を併せみれば、上記記載アの「蛇口直結型浄水器」において、「前記浄水器本体のハウジングの表面に、日付用の数字を書き込むための空欄を有する日付記入部が印刷されている」ことは、交換日を表示する交換日表示部が、浄水器本体のハウジング表面のうち、上部の頂部の、使用者にとって見易い手前の位置に印刷されていることであるとみることができる。
(き)上記記載アの「蛇口直結型浄水器」は、記載ウによれば、「蛇口接続用ボディ」に「蛇口」が固定されるものである。そして、この蛇口は、記載カの図1の図面によれば、ほぼ水平の直線部と下向きに曲げられた先端部を有する蛇口管であり、この蛇口管の先端部が「蛇口接続用ボディ」に固定されるようにしているといえる。
(く)上記(あ)?(き)の検討を踏まえ、刊行物1の記載事項を整理すると、刊行物1には、
「流路切換弁を具備する蛇口接続用ボディに対して浄水器本体を着脱自在に組み付けてなる蛇口直結型浄水器において、前記浄水器本体は、外形が円柱状のハウジングと、該ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤を有するものであり、交換日を表示する交換日表示部が、前記浄水器本体のハウジング表面のうち、上部の頂部の、使用者にとって見易い手前の位置に印刷されており、ほぼ水平の直線部と下向きに曲げられた先端部を有する蛇口管の先端部が、前記蛇口接続用ボディに固定されるようにした蛇口直結型浄水器。」
の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているといえる。

(4)対比
ここで、本願補正発明1と刊行1発明とを対比する。
(さ)まず、本願補正発明1は、「浄水カートリッジ(6)と、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)及び該浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)を有する浄水器本体(5)とからなり」との発明特定事項を有しているところ、かかる発明特定事項によれば、本願補正発明1の「浄水器本体(5)」は「浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」を有し、これを含むものであることは明らかであるが、この「浄水器本体(5)」が「浄水カートリッジ(6)」と「交換時期表示部(30)」と「蛇口接続部(52)」までも含むものであるのかは、本願補正発明1の発明特定事項のすべてをみても明らかでない。
そこで、本願補正発明1の「浄水器本体(5)」に関し、本願明細書の記載をみてみると、段落【0014】に、「なお、ここでいう浄水器本体(5)とは、交換して使用される浄水カートリッジ(6)以外の、継続的に使用される部材をいうものであり、浄水カートリッジ(6)が接続される筒状部(51)と、切換機構を内蔵し、蛇口に接続される蛇口接続部(52)とを有する。」と記載されており、この記載によれば、本願補正発明1において、「浄水器本体(5)」とは、「交換して使用される浄水カートリッジ(6)以外の、継続的に使用される部材」をいうものと定義されたものといえるとともに、「浄水カートリッジ(6)」は「交換して使用される」ものであって、「浄水器本体(5)」に含まれないものであり、「蛇口接続部(52)」と「浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」は「浄水器本体(5)」に含まれるものであるといえる。また、「交換時期表示部(30)」については、本願補正発明1において、「前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる」と特定されていることからみて、「前記筒状部」すなわち「浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」と同様、「浄水器本体(5)」に含まれるものであるといえる。
以上より、本願補正発明1において、「交換時期表示部(30)」と「蛇口接続部(52)」と「浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」は、「浄水器本体(5)」に含まれるものであり、これらは、上記定義に照らし、継続的に使用される部材であるといえる一方、「浄水カートリッジ(6)」は、「交換して使用される」ものであって、「浄水器本体(5)」に含まれないものである。
(し)刊行1発明の「浄水器本体」については、刊行物1の記載オに、「蛇口接続用ボディに対しての浄水器本体の交換日の目安を判断することができる。」と記載されていることからみて、刊行1発明において、「浄水器本体」は、交換して使用されるものであるといえる。してみると、刊行1発明において、この「浄水器本体」が有するものと特定される「外形が円柱状のハウジング」と「該ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」、及びこの「浄水器本体」の「ハウジング表面のうち、上部の頂部の、使用者にとって見易い手前の位置に印刷されて」いると特定される「交換日を表示する交換日表示部」は、この「浄水器本体」と同様に、交換して使用されるものであるといえる。他方、刊行1発明において、「蛇口接続用ボディ」は、刊行物1の記載オの上記記載からみて、「浄水器本体」のようには交換されないものであって、継続的に使用されるものであると解するのが自然である。
(す)刊行1発明の「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」は、刊行物1の記載イに、「従来より・・・・浄水器が用いられている。かかる浄水器として、活性炭等の吸着剤によって水のカルキ臭やカビ臭を除去し、又水中のトリハロメタン等を除去し」と記載されているように、浄水機能を有する浄水部材であることは明らかである。そして、このことと上記(さ)及び(し)の検討を併せみれば、刊行1発明の「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」と本願補正発明1の「浄水カートリッジ(6)」とは、浄水部材であるとともに交換して使用される点で共通するといえる。
(せ)刊行1発明の「交換日を表示させる交換日表示部」と本願補正発明1の「交換時期表示部」とは、「交換時期表示部」である点で共通する。しかし、上記(さ)及び(し)の検討を踏まえると、前者は、交換して使用されるものであり、後者は、継続的に使用されるものである点で相違する。
(そ)刊行1発明の「流路切換弁を具備する蛇口接続用ボディ」は、「流路切換弁を具備する」ものであるところ、本願補正発明1の「蛇口接続部」も、本願明細書の段落【0016】の「蛇口接続部(52)には、詳細図示しない切換弁(3)が内蔵されており、切換弁(3)に軸芯で連結された切換レバー(4)の回動操作によって、吐出水を、浄水、原水ストレート、原水シャワーの3段階に切り換えることが可能である。」との記載からみて、当然に流路切換弁を具備するものである。してみると、刊行1発明の「流路切換弁を具備する蛇口接続用ボディ」と本願補正発明1の「蛇口接続部」とは、「流路切換弁を具備する」点で相違するものでなく、「蛇口接続部」である点で共通し、また、上記(さ)及び(し)の検討を併せみても、両者は、継続的に使用される点でも共通するから、刊行1発明の「流路切換弁を具備する蛇口接続用ボディ」は、本願補正発明1の「蛇口接続部」に相当するものといえる。
(た)刊行1発明において、「浄水器本体」は「外形が円柱状のハウジング」と「該ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」を有するものであるところ、この「浄水器本体」が「蛇口接続用ボディ」に対して着脱自在に組み付けられるのであるから、この「浄水器本体」のうちの「外形が円柱状のハウジング」が「蛇口接続用ボディ」に対して着脱自在に組み付けられることは明らかである。
また、刊行1発明の「外形が円柱状のハウジング」は、「活性炭等の吸着剤」を内蔵するものであることを併せみれば、この「外形が円柱状のハウジング」は、「蛇口接続用ボディ」に対して着脱自在に組み付けられるとともに「活性炭等の吸着剤」を内蔵するものといえるところ、この「外形が円柱状のハウジング」が、「蛇口接続用ボディ」から「活性炭等の吸着剤」に水を流すことができるように、「蛇口接続用ボディ」と「活性炭等の吸着剤」を接続するという機能を有していることは明らかである。
さらに、刊行1発明の「外形が円柱状のハウジング」は、「外形が円柱状」であって、かつ、「ハウジング」である以上、内部が中空であることは自明であるから、「円筒状」の「ハウジング」であるとみることができる。
さらに、刊行1発明の「外形が円柱状のハウジング」は、「交換日を表示する交換日表示部」が、この「ハウジング」の表面のうち、上部の頂部の、使用者にとって見易い手前の位置に印刷されているものである。
これらを踏まえると、刊行1発明の「外形が円柱状のハウジング」は、「蛇口接続用ボディ」に対して着脱自在に組み付けられるとともに「活性炭等の吸着剤」を内蔵し、「蛇口接続用ボディ」から「活性炭等の吸着剤」に水を流すことができるように「蛇口接続用ボディ」と「活性炭等の吸着剤」を接続するための「円筒状」の「ハウジング」であって、「交換日を表示する交換日表示部」が、この「ハウジング」の表面のうち、上部の頂部の、使用者にとって見易い手前の位置に印刷されているものであるとみることができる。
(ち)本願補正発明1において、「筒状部(51)」は、「浄水カートリッジ(6)」及び「交換時期表示部(30)」に対する関係が特定され、明らかにされているものの、「蛇口接続部(52)」に対する関係については、本願補正発明1の発明特定事項のすべてをみても明らかでない。
そこで、この点について、本願明細書の記載をみてみると、段落【0014】に、「筒状部(51)と蛇口接続部(52)は、別々の部材を接着したり、ねじ止めしたりする等によって固定することもできるが、一体に成型した部材を用いることが好ましい。」と記載されていることからみて、「筒状部(51)」は「蛇口接続部(52)」と固着されているか一体に成型されているものといえる。
また、本願補正発明1において、この「筒状部(51)」に関し、「該浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」と特定されていることを併せみれば、この「筒状部(51)」は、「蛇口接続部(52)」と固着されるか一体に成型されるとともに「浄水カートリッジ」が接続されるものであるといえ、この「筒状部(51)」が、「蛇口接続部(52)」から「浄水カートリッジ」に水を流すことができるように「蛇口接続部(52)」と「浄水カートリッジ」を接続していることは明らかである。
さらに、本願補正発明1において、「筒状部(51)」は、「交換時期表示部」が、この「筒状部」の上面に目視可能に配置されてなるものである。
これらを踏まえると、本願補正発明1の「筒状部(51)」すなわち「浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」は、「蛇口接続部(52)」と固着されるか一体に成型されるとともに「浄水カートリッジ」が接続されるものであって、「蛇口接続部(52)」から「浄水カートリッジ」に水を流すことができるように「蛇口接続部(52)」と「浄水カートリッジ」を接続し、「交換時期表示部」が、この「筒状部」の上面に目視可能に配置されてなるものであるとみることができる。
(つ)上記(す)?(そ)の検討を踏まえ、上記(た)で検討した刊行1発明の「外形が円柱状のハウジング」と上記(ち)で検討した本願補正発明1の「浄水カートリッジを接続するための筒状部(51)」とを対比してみれば、両者は、「蛇口接続部から浄水部材に水を流すことができるように蛇口接続部と浄水部材を接続するための筒状部であって、交換時期表示部が、この筒状部の上面に目視可能に配置されてなる」点で共通するといえるものの、上記(さ)及び(し)の検討を踏まえると、前者は、交換して使用されるものであり、後者は、継続的に使用されるものである点で相違するといえる。
(て)上記(さ)?(つ)の検討を踏まえると、本願補正発明1と刊行1発明とは、「浄水部材と、交換時期表示部と、蛇口接続部と、蛇口接続部から浄水部材に水を流すことができるように蛇口接続部と浄水部材を接続するための筒状部とを有し、交換時期表示部が、前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点(一):本願補正発明1では、「交換時期表示部」と「浄水カートリッジを接続するための筒状部」が、「蛇口接続部」とともに「浄水器本体」に含まれるもの、すなわち継続して使用されるものとされるのに対し、刊行1発明では、「交換日を表示する交換日表示部」と「外形が円柱状のハウジング」が、交換して使用されるものとされる点。
相違点(二):本願補正発明1では、浄水部材が「浄水カートリッジ」であるのに対し、刊行1発明では、浄水部材が「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」である点。
相違点(三):本願補正発明1では、「浄水カートリッジ」が、「浄水器を蛇口に接続したときに蛇口管に対して鉛直下側に来るように配置される」と特定されているのに対し、刊行1発明では、かかる特定がなされていない点。

(5)判断
(な)上記相違点(一)及び(二)を併せて検討する。水濾過装置に関し、特開平2-35985号公報(以下、「周知例1」という。)には、
「不純な液体を濾過する装置であって、
二部片構造体、
ここで、第1の部片は濾過されていない流体源に結合するのに適した弁ハウジングから成り、
第2の部片は永久的に密封された有限寿命の濾過材料を有する濾過器ハウジングから成り;及び
該弁ハウジングからの流体流入ポートと該濾過器ハウジングへの流体流出ポートを、液体密封関係において、迅速且つ容易に取り外し可能に結合し、そして濾過材料が消耗されたとき、濾過器ハウジングの廃棄のために濾過器ハウジングを迅速且つ容易に分離するのに適合した継手手段、
を有する装置。」(特許請求の範囲の第1項)との記載、
「本発明は、水の流れを濾過するために、交換可能な濾過器ハウジングを有する給水栓取付け水濾過アセンブリに関する。」(第2頁右上欄6?8行)との記載、
「水栓取付けタイプの水濾過器は、・・・・活性ある商用製品となってきた。・・・・一般に、それらは、台所のシンクにおいて水栓の出口に取付けられ、そして生水又は濾過水のいづれかの流れを許容するための弁機構を含み、濾過される水は、・・・・交換可能なカートリッジを通って流れる。」(第2頁右下欄13行?第3頁左上欄6行)との記載、及び
「本発明において、(永久的に固定された濾過材料を含む)濾過器ハウジング全体を廃棄することに、特に注目すべきである。反対に、先行技術においては、フィルターカートリッジを含む濾過器ハウジングが教示され、フィルターカートリッジは濾過材料を含み、フィルターカートリッジは、弁アセンブリに永久的に取付けられた再閉鎖可能な濾過器ハウジング内で間欠的に交換される。」(第7頁右上欄10?17行)との記載があり、
これらの記載からみて、周知例1には、交換可能な濾過器ハウジングを有する給水栓取付け水濾過装置と、その先行技術とされる濾過器ハウジングが弁アセンブリに永久的に取付けられた装置について、「不純な液体を濾過する給水栓取付け水濾過装置であって、二部片構造体、ここで、第1の部片は濾過されていない流体源に結合するのに適した弁ハウジングから成り、第2の部片は永久的に密封された有限寿命の濾過材料を有する交換可能な濾過器ハウジングから成り、該弁ハウジングからの流体流入ポートと該濾過器ハウジングへの流体流出ポートを、液体密封関係において、迅速且つ容易に取り外し可能に結合し、そして濾過材料が消耗されたとき、濾過器ハウジング全体の廃棄のために濾過器ハウジングを迅速且つ容易に分離するのに適合した継手手段を有する給水栓取付け水濾過装置。」(以下、「第一技術例」という。)と、「不純な液体を濾過する給水栓取付け水濾過装置であって、弁アセンブリに永久的に取付けられた再閉鎖可能な濾過器ハウジングを有し、この濾過器ハウジング内で濾過材料を含むフィルターカートリッジが間欠的に交換される給水栓取付け水濾過装置。」(以下、「第二技術例」という。)が記載されていると認められる。
(に)また、浄水器に関し、特開2002-102847号公報(以下、「周知例2」という。)には、
「吐水口の先端部に水道水を浄化して流出する浄水器を備えた浄水器付水栓であって、
前記浄水器における浄化カートリッジ等の浄化機能部の上流部に、流入して来た浄化前の水道水である原水が湯であるか水であるかを検知する湯検知手段と、原水が湯であるときに該湯検知手段による検知に基づいて、原水の流れを前記浄化機能部を通過する浄水流路から該浄化機能部を通過しない原水流路に自動的に切り替える湯切替弁とを設けてあることを特徴とする浄水器付水栓。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)との記載、及び
「図2に浄水器26の構造が具体的に示してある。同図に示しているように浄水器26は、水栓10と一体的に構成されたハウジング30を有している。ハウジング30の内部には収容室32が形成されていて、そこに浄化機能部としての浄化カートリッジ34が脱着可能に収納されている。ハウジング30には開口36が形成されており、浄化カートリッジ34はこの開口36を通じて脱着可能とされている。但し通常時はこの開口36はキャップ38にて閉鎖されている。」(段落【0031】)との記載があり、
これらの記載からみて、周知例2には、「吐水口の先端部に水道水を浄化して流出する浄水器を備えた浄水器付水栓であって、前記浄水器における浄化カートリッジ等の浄化機能部の上流部に、流入して来た浄化前の水道水である原水が湯であるか水であるかを検知する湯検知手段と、原水が湯であるときに該湯検知手段による検知に基づいて、原水の流れを前記浄化機能部を通過する浄水流路から該浄化機能部を通過しない原水流路に自動的に切り替える湯切替弁とが設けられ、該水栓と一体的に構成されたハウジングの内部に収容室が形成され、そこに浄化機能部としての浄化カートリッジが脱着可能に収納されている浄水器付水栓。」が記載されていると認められる。
(ぬ)さらに、浄水器に関し、実願昭63-79781号(実開平2-1295号)のマイクロフィルム(以下、「周知例3」という。)には、
「浄水器の上蓋に積算流量計を付けることによって解決する。」(明細書第3頁下から4?3行)との記載、
「浄水器本体1は上蓋2が外れ、中にカートリッジ3が取り換えできるように入っている。カートリッジ3は下部4が水道水の入口5の台座6に接続し、中には抗菌性活性炭7、中空糸膜フィルター8がある。」(明細書第3頁最下行?同第4頁4行)との記載、
「積算水量計13は・・・・カウント表示窓19で表示する。」(明細書第5頁1?4行)との記載、及び
「積算水量計13のカウント表示を読むことによって水処理剤の浄化能力の限界或は能力の劣化の進捗度を知り、カートリッジ3の交換又は交換すべきカートリッジの準備をすることができる。」(明細書第5頁6?10行)との記載があり、
これらの記載からみて、周知例3には、「上蓋を外すことができる浄水器本体の中にカートリッジが取り換えできるように入っており、カートリッジの中には抗菌性活性炭、中空糸膜フィルターがあり、上蓋に付けた積算水量計にはカウント表示窓があり、積算水量計のカウント表示を読むことによって水処理剤の浄化能力の限界或は能力の劣化の進捗度を知り、カートリッジの交換又は交換すべきカートリッジの準備をすることができる浄水器」が記載されていると認められる。
(ね)さらに、浄水器に関し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-169844号公報(以下、「周知例4」という。)には、
「濾材を内蔵するカートリッジと、
前記カートリッジを覆い、浄水器の外筐となる外ケースと、
年度を順次表記したものと、月度の数字、文字を順次表記したものとを並べた二つの数字車と、を備え、
前記カートリッジの交換予定年月を、前記二つの数字車を回転させて選択し、選択された数字、文字を前記外ケースに設けた窓から視認可能に表示することを特徴とする浄水器。」との記載(【特許請求の範囲】の【請求項1】)、及び
「・・・・カートリッジ3、4はともに交換可能な構造であって、交換は外ケース2を取り外して行われる。」(段落【0018】)との記載があり、
これらの記載からみて、周知例4には、「濾材を内蔵するカートリッジと、前記カートリッジを覆い、浄水器の外筐となる外ケースと、年度を順次表記したものと、月度の数字、文字を順次表記したものとを並べた二つの数字車と、を備え、前記カートリッジの交換予定年月を、前記二つの数字車を回転させて選択し、選択された数字、文字を前記外ケースに設けた窓から視認可能に表示し、前記カートリッジは前記外ケースを取り外して交換可能な構造とされている浄水器。」が記載されていると認められる。
(の)そして、浄水部材をハウジングに内蔵して使用し、浄水部材をハウジングから取り外して交換する浄水器において、ハウジングを継続して使用することは自明であるから、上記(な)?(ね)で検討した周知例1の第二技術例及び周知例2?4の記載によれば、浄水部材をハウジングに内蔵して使用する浄水器において、浄水部材を交換して使用するカートリッジ式のものとするとともにハウジングを継続して使用するものとすることは、周知の技術であるといえ、さらに、周知例1の第一技術例も併せみれば、浄水部材をハウジングに内蔵して使用する浄水器において、当該周知の技術を採用するか、浄水部材をハウジングとともに交換して使用するものとするかは、適宜選択し得るものといえる。
かかる周知の技術に照らしてみれば、浄水部材である「活性炭等の吸着剤」を「ハウジングに内蔵」して使用し「ハウジング」とともに交換して使用する刊行1発明において、「活性炭等の吸着剤」を交換して使用するカートリッジ式のものとするとともに「ハウジング」を継続して使用するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえ、この際に、刊行1発明では、「交換日を表示する交換日表示部」が「ハウジング表面」に印刷されていることに鑑みれば、この「交換日を表示する交換日表示部」も「ハウジング」とともに継続して使用するものとすることは、当業者が自然に想到することである。さらに、交換して使用される浄水カートリッジ以外の、継続的に使用される部材を「浄水器本体」と定義して表現することに何ら困難性を見いだせない。
よって、上記相違点(一)及び(二)に係る本願補正発明1の発明特定事項を導出することは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。

(は)上記相違点(三)について検討する。例えば周知例1には、「水栓の上方の垂直面に濾過器カートリッジが伸びることは、多数の顧客にとって、外装が魅力のないものとみなされる。」(第3頁右上欄2?5行)と記載されているように、各部材の位置関係を検討することは、当業者が普通に行うことであり、刊行1発明の「蛇口直結型浄水器」においても同様のことがいえる。
そして、「ほぼ水平の直線部と下向きに曲げられた先端部を有する蛇口管の先端部が、前記蛇口接続用ボディに固定されるようにした」刊行1発明において、「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」が「浄水器を蛇口に接続したときに蛇口管に対して鉛直下側に来るように配置される」ことを阻害するといえる特段の事情もない。
してみれば、刊行1発明において、「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」が「浄水器を蛇口に接続したときに蛇口管に対して鉛直下側に来るように配置される」ことは、当業者が容易になし得ることであるといえ、また、上記(の)で検討したように、刊行1発明において、浄水部材である「活性炭等の吸着剤」を交換して使用するカートリッジ式のものとすることも、当業者が容易に想到し得ることである以上、上記相違点(三)に係る本願補正発明1の発明特定事項を導出することは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。

(ひ)そして、上記相違点(一)?(三)に係る本願補正発明1の発明特定事項を採用することにより奏される効果について本願明細書の記載に基づいて検討しても、当業者が予測し得ない格別なものは見いだせない。
したがって、本願補正発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知例1?4に例示される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(6)補正却下についてのむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、その余の事項について検討するまでもなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正(平成20年8月6日付けの明細書に係る手続補正)は、上記2.のとおり却下されたので、本願明細書の特許請求の範囲に記載された発明は、本件補正前の平成20年1月21日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「浄水カートリッジと(6)、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部及(52)及び窓部を有する浄水器本体(5)とからなり、該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口の下側に来るように配置される蛇口直結型浄水器であって、
該交換時期表示部が、浄水器本体の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。」
(当審注:上記「浄水カートリッジと(6)」は「浄水カートリッジ(6)と」の誤記であり、上記「蛇口接続部及(52)及び窓部」は「蛇口接続部(52)及び窓部」の誤記であることは明らかであるから、以下そのように読み替えるものとする。)

4.刊行物の記載事項
本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1及びその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

5.対比・判断
(ま)本願発明1は、「浄水カートリッジ(6)と、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)及び窓部を有する浄水器本体(5)とからなり」との発明特定事項を有しているところ、かかる発明特定事項によれば、本願発明1の「浄水器本体(5)」は「窓部」を有し、これを含むものであることは明らかであるが、この「浄水器本体(5)」が「浄水カートリッジ(6)」と「交換時期表示部(30)」と「蛇口接続部(52)」までも含むものであるのかは、本願発明1の発明特定事項のすべてをみても明らかでない。
しかし、上記2.(さ)で本願補正発明1の「浄水器本体(5)」について検討したように、本願発明1の「浄水器本体(5)」についても検討すれば、同様に、本願発明1の「交換時期表示部(30)」と「蛇口接続部(52)」と「窓部」は、「浄水器本体(5)」に含まれるものであり、継続的に使用される部材であるといえ、本願発明1の「浄水カートリッジ(6)」は、「浄水器本体(5)」に含まれないものであり、交換して使用されるものであるといえる。
(み)また、本願発明1において、「交換時期表示部(30)」と「窓部」の関係については、本願発明1の発明特定事項のすべてをみても明らかでないが、本願明細書の段落【0025】の「本発明の交換時期表示部(30)は、浄水器本体(5)に設けた窓部(31)を通し、その中に1?12の月表示部(32)のうち、いずれか一つの選択した月数字のみを表示するようにしている」との記載によれば、本願発明1の「窓部」は「交換時期表示部」を構成する一つの部材である、すなわち本願発明1の「交換時期表示部」は「窓部」を有するものであると解するのが自然である。なお、かかる解釈は、平成20年8月6日付けの審判請求書に係る手続補正書(第3頁)の記載からみて、請求人の解釈と共通するものである。
(む)そして、本願明細書の段落【0014】の「なお、ここでいう浄水器本体(5)とは、・・・・浄水カートリッジ(6)が接続される筒状部(51)と、切換機構を内蔵し、蛇口に接続される蛇口接続部(52)とを有する。」との記載によれば、本願発明1の「浄水器本体(5)」は、「浄水カートリッジが接続される筒状部」を含むものであるといえる。
してみれば、本願発明1の「交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)及び窓部を有する浄水器本体(5)」における「浄水器本体(5)」が、「浄水カートリッジが接続される筒状部」を有するものであることの特定と、本願発明1の「該交換時期表示部が、浄水器本体の上面に目視可能に配置されてなる」における「浄水器本体」が、上記「筒状部」であることの特定を本願発明1に追加した発明、すなわち、
「浄水カートリッジ(6)と、交換時期表示部(30)と、蛇口接続部(52)と、窓部及び該浄水カートリッジを接続するための筒状部を有する浄水器本体(5)とからなり、該浄水カートリッジが、浄水器を蛇口に接続したときに蛇口の下側に来るように配置される蛇口直結型浄水器であって、
該交換時期表示部が、前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。」
の発明(以下、「本願発明1´」という。)は、本願発明1に属するものであり、本願発明1の範囲を減縮したものであるといえる。
(め)ここで、本願発明1´と刊行1発明とを対比するに、刊行1発明は、上記2.(く)に記載したとおりであるから、上記2.(さ)?(つ)の検討と同様に検討すると、本願発明1´と刊行1発明とは、「浄水部材と、交換時期表示部と、蛇口接続部と、蛇口接続部から浄水部材に水を流すことができるように、蛇口接続部と浄水部材を接続している筒状部とを有し、浄水部材が、交換して使用されるものとされ、蛇口接続部が、継続的に使用されるものとされており、交換時期表示部が、前記筒状部の上面に目視可能に配置されてなる蛇口直結型浄水器。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点(1):本願発明1´では、「交換時期表示部」と「窓部」と「浄水カートリッジを接続するための筒状部」が、「蛇口接続部」とともに「浄水器本体」に含まれるもの、すなわち継続して使用されるものとされるのに対し、刊行1発明では、「交換日を表示する交換日表示部」と「外形が円柱状のハウジング」が、交換して使用されるものとされる点。
相違点(2):本願発明1´では、浄水部材が「浄水カートリッジ」であるのに対し、刊行1発明では、浄水部材が「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」である点。
相違点(3):本願発明1´では、「浄水カートリッジ」が、「浄水器を蛇口に接続したときに蛇口の下側に来るように配置される」と特定されているのに対し、刊行1発明では、かかる特定がなされていない点。

(も)上記相違点(1)及び(2)を併せて検討する。上記2.(の)に記載したとおり、上記2.(な)?(ね)で検討した周知例1の第二技術例及び周知例2?4の記載によれば、浄水部材をハウジングに内蔵して使用する浄水器において、浄水部材を交換して使用するカートリッジ式のものとするとともにハウジングを継続して使用するものとすることは、周知の技術であるといえ、さらに、周知例1の第一技術例も併せみれば、浄水部材をハウジングに内蔵して使用する浄水器において、当該周知の技術を採用するか、浄水部材をハウジングとともに交換して使用するものとするかは、適宜選択し得るものといえる。
かかる周知の技術に照らしてみれば、浄水部材である「活性炭等の吸着剤」を「ハウジングに内蔵」して使用し「ハウジング」とともに交換して使用する刊行1発明において、「活性炭等の吸着剤」を交換して使用するカートリッジ式のものとするとともに「ハウジング」を継続して使用するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。そして、この際に、刊行1発明では、「交換日を表示する交換日表示部」が「ハウジング表面」に印刷されていること、及び、表示部を設ける際に、窓部を有する表示部とすることは、一般的に広く知られた技術であって、浄水器の分野においても、周知の技術であること(かかる技術については、周知例3?4に記載されており、また、例えば特開2000-308882号公報(以下、「周知例5」という。【特許請求の範囲】の【請求項1】等参照。)にも記載されている。)を踏まえれば、刊行1発明の「交換日を表示する交換日表示部」を「ハウジング」とともに継続して使用するものとすることと併せて「窓部」を有するものとすることも、当業者が容易に想到し得ることである。さらに、交換して使用される浄水カートリッジ以外の、継続的に使用される部材を「浄水器本体」と定義して表現することに何ら困難性を見いだせない。
よって、上記相違点(1)及び(2)に係る本願発明1´の発明特定事項を導出することは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。

(や)上記相違点(3)について検討する。上記2.(は)の検討と同様に検討すると、刊行1発明において、「ハウジングに内蔵された活性炭等の吸着剤」が「浄水器を蛇口に接続したときに蛇口の下側に来るように配置される」ことは、当業者が容易になし得ることであるといえ、また、上記(ほ)で検討したように、刊行1発明において、浄水部材である「活性炭等の吸着剤」を交換して使用するカートリッジ式のものとすることも、当業者が容易に想到し得ることである以上、上記相違点(3)に係る本願発明1´の発明特定事項を導出することは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。

(ゆ)そして、上記相違点(1)?(3)に係る本願発明1´の発明特定事項を採用することにより奏される効果について本願明細書の記載に基づいて検討しても、当業者が予測し得ない格別なものは見いだせない。
したがって、本願発明1の範囲を減縮したものである本願発明1´は、刊行物1に記載された発明及び周知例1?5に例示される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうである以上、本願発明1´の範囲を拡張したものである本願発明1は、本願発明1´と同様、刊行物1に記載された発明及び周知例1?5に例示される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知例1?5に例示される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-10 
結審通知日 2011-08-11 
審決日 2011-09-21 
出願番号 特願2002-314227(P2002-314227)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 光子  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 目代 博茂
小川 慶子
発明の名称 蛇口直結型浄水器  

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