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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1246753 |
審判番号 | 不服2008-24294 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-22 |
確定日 | 2011-11-08 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第153946号「半導体処理チャンバ表面を洗浄する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月10日出願公開、特開平10- 70112〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成9年6月11日の出願(パリ条約による優先権主張 1996年6月11日 米国)であって、平成20年5月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月22日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされ、同年10月16日付けで手続補正書が提出され、平成22年5月10日付けで当審による拒絶理由通知がなされ、同年8月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 [2]本願発明 本願請求項1-21に係る発明は、平成22年8月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。 「プラズマ含有処理中に半導体処理チャンバ表面に隣接して使用される温度制御付きのセラミックライナ又はセラミック障壁において、 前記処理チャンバ内での半導体基板の処理中に、前記セラミックライナ又は前記セラミック障壁上の堆積物の形成を減らすように、或いは前記ライナ若しくは前記障壁からの堆積物の除去を促進するように、独立して温度が制御される複数の場所を有し、 前記セラミックは、遷移金属及びアルカリを10ppm未満含有し、実質的には前記遷移金属及び前記アルカリを含んでいなく、 前記複数の場所において独立して制御される温度は、堆積速度の低い第1の場所での温度が低い堆積物除去速度を与え、堆積速度の高い第2の場所での温度が高い堆積物除去速度を与えるように、制御される、 ことを特徴とする温度制御付きセラミックライナ又はセラミック障壁。」(以下、「本願発明1」という。) [3]引用発明 平成22年5月10日付けの拒絶理由通知において引用された、本出願の優先権主張日前に頒布された刊行物1(特開平5-283368号公報)には、以下の記載がある。 (a)「【請求項1】プラズマ生成室と試料室とを備え、該試料室内で試料を処理するプラズマエッチング装置において、前記試料室の室壁の内側に防着部材が配設され、該防着部材と前記室壁との間に加熱手段が配設されていることを特徴とするプラズマエッチング装置。」(【特許請求の範囲】) (b)「本発明は…、主に半導体デバイスの製造プロセスにおいて用いられるプラズマエッチング装置に関する。」(【0001】) (c)「上記した装置によれば、前記試料室の室壁と前記試料保持装置との間に防着部材が配設され、該防着部材と前記室壁との間に加熱手段が配設されているので、前記防着部材が前記加熱手段により直接的に効率的に加熱され、前記防着部材へのエッチング生成物の付着量が減少し、」(【0014】) (d)「また試料室13の室壁13bと試料保持装置17との間には不透明石英製の略筒形状をした防着部材18が配設されており、」(【0018】) (e)「このように構成されたプラズマエッチング装置を用い、試料Sにエッチング処理を施すには、まず加熱ヒータ15に通電し、防着部材18が時間的に一定温度となるように制御を行う。」(【0020】) 上記記載事項(a)-(e)をまとめると、引用刊行物1には、 「プラズマエッチング処理中に半導体試料室壁内側で使用される温度制御付きの石英製防着部材において、 前記試料室内での半導体基板の処理中に、前記石英製防着部材上のエッチング生成物の付着を減らすように、温度が制御される場所を有する温度制御付き石英製防着部材」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 [4]対比・判断 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「プラズマエッチング処理」、「試料室」、「壁内側で」、「エッチング生成物」、「付着」は、それぞれ、本願発明1における「プラズマ含有処理」、「処理チャンバ」、「表面に隣接して」、「堆積物」、「形成」に相当する。また、本願発明1における「セラミック障壁」はその材質としてシリカを含むものであるから(【請求項2】,【0026】)、引用発明における「石英製防着部材」は、本願発明1における「セラミック障壁」に相当する。 よって、両者は、 「プラズマ含有処理中に半導体処理チャンバ表面に隣接して使用される温度制御付きのセラミック障壁において、 前記処理チャンバ内での半導体基板の処理中に、前記セラミック障壁上の堆積物の形成を減らすように、温度が制御される場所を有する温度制御付きセラミック障壁。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 前記セラミックが、本願発明1では、「遷移金属及びアルカリを10ppm未満含有し、実質的には前記遷移金属及び前記アルカリを含んでいな」いのに対し、引用発明では、そのような限定がない点。 (相違点2) 温度制御付きセラミック障壁が、本願発明1では、「独立して温度が制御される複数の場所を有」するとともに、「複数の場所において独立して制御される温度は、堆積速度の低い第1の場所での温度が低い堆積物除去速度を与え、堆積速度の高い第2の場所での温度が高い堆積物除去速度を与えるように、制御される」のに対し、引用発明では、単に、「温度が制御される場所を有する」点。 そして、上記相違点について検討すると、 ・(相違点1)について 半導体製造装置用部材において、半導体の汚染を防止すべく、該部材に含有される遷移金属及びアルカリ金属の量をなるべく低減させた方がよいことは、以下の周知例1、2に記載されているように周知の事項であり、引用発明におけるセラミックである石英製防着部材においても、それらの含有量をなるべく低減させたものとすることは当業者が適宜なしえたことであり、「10ppm未満」なる数値範囲に格別な臨界的意義も見い出せない。 周知例1:特開昭59-78529号公報 「Fe,Ni及びCrの重金属元素の総含有量が100ppm以下、アルカリ金属元素の総含有量が10ppm以下であることを特徴とする半導体製造用炭化珪素質材料。」(第1頁左欄第5-8行) 「本発明によれば、短時間の清浄化処理で高性能の半導体装置を高歩留まりで製造することができ(第3頁左上欄第1-3行) 周知例2:特開平8-133840号公報 「本発明のセラミックスは、不純物として、鉄(Fe)、…が5ppm以下、Ti、Cr、Mn、Cu、Znなどの遷移金属が総量で100ppm以下であることが半導体製造用として使用する上で重要である。つまり、これらの金属量が上記割合より多いと半導体製造時において系外に放出された際、半導体中に混入し半導体特性に影響を与えるためである。」(【0010】) ・(相違点2)について 同じく、当審による拒絶理由通知において引用された、本出願の優先権主張日前に頒布された、刊行物2(特開平8-31751号公報)には、以下のとおりの記載がある。 「プラズマによる発生熱のためプラズマ生成室31,試料室33内の温度は不均一になり易く、…内壁面保護部材38の温度を均一化することが難しいという課題があった。」(【0011】) よって、プラズマ処理装置において、処理室内壁面保護部材の温度が不均一になり易いことは既に知られており、引用発明の防着部材においても同様の問題があったことは明らかである。 したがって、引用発明の防着部材において、プラズマ処理生成物の付着の減少を均一に行うべく、複数の場所において独立して温度を制御することは、当業者が容易に想到しえたことであり、また、引用発明の防着部材は、加熱することにより、付着するプラズマ処理生成物が除去され、付着量の減少をはかるものといえるから(例えば、特開昭63-5526号公報:「防着板4に付着するエッチング用ガスと試料7との反応によって生成された反応生成物を加熱遊離除去させることにより」(第2頁左下欄第12-14行))、上記複数の場所において独立して温度を制御する際、堆積速度の低い第1の場所では、堆積速度が上がるように(すなわち除去速度が低くなるように)、また、堆積速度の高い第2の場所では、堆積速度が下がるように(すなわち、除去速度が高くなるように)制御することは、単なる設計的な事項にすぎない。 なお、審判請求人は、意見書において、引用文献1の発明において温度制御が行われる目的は、堆積物の付着を低減するためであり、一方、引用文献3(上記「引用刊行物2」に相当)では堆積物の剥離の防止であり、目的の異なる引用文献3の記載事項から想到される構成を、引用文献1の発明に組み合わせることは不可能である旨の主張をしているが、拒絶理由通知では、引用文献3により、「防着部材における温度の不均一化」という課題のみを引用しているにすぎないのであるから、上記主張は採用できない。 そして、本願発明1が、引用刊行物1、2の記載及び周知技術からは予想しえない相乗的効果を奏するものとも認められない。 したがって、本願発明1は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 [5]むすび 上記のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-15 |
結審通知日 | 2011-03-22 |
審決日 | 2011-06-06 |
出願番号 | 特願平9-153946 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大塚 徹 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
鈴木 正紀 川端 修 |
発明の名称 | 半導体処理チャンバ表面を洗浄する装置及び方法 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 池田 成人 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 小林 義教 |
代理人 | 柏岡 潤二 |