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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L |
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管理番号 | 1246754 |
審判番号 | 不服2009-106 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-05 |
確定日 | 2011-11-08 |
事件の表示 | 特願2001-166291「カスケードフィルタバンクにおけるエイリアシングを削減する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月20日出願公開、特開2002- 55698〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年6月1日の出願(優先権主張 平成12年6月2日、米国)であって、平成20年9月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成21年1月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、当審において平成22年8月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成23年2月28日付けで手続補正書が提出されたものである。 なお、手続補正書とともに、平成23年2月28日付けで意見書が提出されているが、該意見書には実質的内容は記載されておらず、その後、平成23年4月1日及び4月7日付けで提出された2通の上申書において平成22年8月26日付け拒絶理由に対する意見が述べられている。 2.当審における拒絶理由通知 当審において平成22年8月26日付けで通知した拒絶理由通知書における理由の内、理由2は以下のとおりである。 [理由2] 本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 記 発明内容が不明である。 例えば以下の点が明らかでない。 (1)「近接するサブバンド間のエイリアシング」とはどういうエイリアシングのことであるか明らかでない。 通常、エイリアシングはサンプリングにおける原信号の周波数とナイキスト周波数との関係において生じる問題であるが、本願の特許請求の範囲各項の記載において、サンプリングは前提とされていない。 (2)その上で、どのような技術思想に基づくどのような手法でエイリアシングが削減できるのか、エイリアシング削減フィルタとはどのようなものであるかが何ら説明されていない。 (3)「エイリアス削減フィルタバンクを用いて該周波数コンポーネントを加える」とはどういうことであるか、文意が不明である。 (4)請求項4、5及び8、10に係る記載の内容が著しく不明である。 発明の詳細な説明を参酌しても著しく不明である。 「M1」が第一のフィルタバンクのバンド数であり、「M2」がエイリアス削減フィルタバンクのバンド数であると解釈されるが、この比「M1/M2」の定性的な意味、「M1/M2の比率で基準化された」の意味が不明である。 その上で、「エイリアス削減フィルタバンクが、M1/M2の比率で基準化された、前記第一のフィルタバンクにおける合成フィルタバンクの周波性応答とほぼ等しい」ことがどういう意味を持つのか不明である。 そして、これら各請求項記載の内容で、何故「近接するサブバンド間のエイリアシング」が削減できるのか不明である。」 3.平成23年2月28日付けの手続補正 (1)特許請求の範囲の補正 当該拒絶理由通知に対して、平成23年2月28日付け手続補正書により特許請求の範囲の記載は以下のとおり補正された。 なお、発明の詳細な説明については何ら補正がされていない。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 カスケードフィルタバンクにおいて近接するサブバンド間のエイリアシングを削減させる方法であって、 信号をフィルタリングして、第一のフィルタバンクにおける複数のサブバンドを用い複数の周波数コンポーネントを生成するステップと、 フィルタリングされた信号の各々を、該フィルタリングされた信号の対応する第1の数のサブバンドにてダウンサンプリングするステップであって、該第1のフィルタバンクのダウンサンプリング係数が、該フィルタリングされた信号の該第1の数のサブバンドに等しくなっているステップと、 該第1のフィルタバンクにおける該サブバンドの出力のところでエイリアス削減フィルタバンクとして局部合成フィルタバンクを用いて該周波数コンポーネントを加えるステップであって、該局部合成フィルタバンクが、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものであるステップと、 第2のフィルタバンクにおける複数のサブバンドを用いて該加えられた周波数コンポーネントをフィルタリングするステップと、を含むことを特徴とする方法。 【請求項2】 カスケードフィルタバンクであって、 信号を複数の周波数コンポーネントにフィルタリングし、およびフィルタリングされた信号の各々を該フィルタリングされた信号の対応する第1の数のサブバンドにてダウンサンプリングするための、複数のサブバンドからなる第1のフィルタバンクであって、該第1のフィルタバンクのダウンサンプリング係数が、該フィルタリングされた信号の該第1の数のサブバンドに等しくなっている第1のフィルタバンクと、 該第1のフィルタバンクの出力のところで、該周波数コンポーネントを加えるエイリアス削減フィルバンクとして用いられる局部合成フィルタバンクであって、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものである局部合成フィルタバンクと、該エイリアス削減フィルタバンクに接続された、該エイリアス削減フィルタバンクにより生成された該周波数コンポーネントをフィルタリングするための第2のフィルタバンクとを備えるカスケードフィルタバンク。 【請求項3】 前記エイリアス削減フィルタバンクの振幅応答が、前記第1のフィルタバンクの合成フィルタバンクの振幅応答にほぼ等しい請求項2に記載のカスケード・フィルタバンク。 【請求項4】 前記エイリアス削減フィルタバンクの位相特性が、前記第1のフィルタバンクの合成フィルバンクの位相特性にほぼ等しい請求項2に記載のカスケード・フィルタバンク。 【請求項5】 前記第1のフィルタバンクにおける前記複数のサブバンドがM1バンドから成り、前記エイリアス削減フィルタバンクがM2バンドを有し、かつ前記エイリアス削減フィルタバンクが、M1/M2の比率で基準化された、前記第1のフィルタバンクにおける合成フィルタバンクの周波性応答とほぼ等しい周波数応答を有する請求項2に記載のカスケード・フィルタバンク。 【請求項6】 カスケードフィルタバンクにおいて近接するサブバンド間のエイリアシングを削減させる方法であって、 第1のフィルタバンクを用いて信号をフィルタリングして、M1個のサブバンドを生成するステップと フィルタリングされた信号の各々を該フィルタリングされた信号の対応する第1の数のサブバンドにてダウンサンプリングするステップであって、該第1のフィルタバンクのダウンサンプリング係数が、該フィルタリングされた信号の該第1の数のサブバンドに等しくなっているステップと、 エイリアス削減フィルタバンクとして局部合成フィルタバンクを用いて該M1個のサブバンドのうちのM2個のサブバンドを加えるステップであって、該局部合成フィルタバンクが、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものであるステップと、 第2のフィルバンクにおいて該加えられたM2個のサブバンドを複数のサブバンドを用いてフィルタリングするステップと、を含む方法。 【請求項7】 カスケードフィルタバンクであって、 信号をM1個のサブバンドにフィルタリングし、およびフィルタリングされた信号の各々を、該フィルタリングされた信号の対応する第1の数のサブバンドにてダウンサンプリングするための、第1のフィルタバンクであって、該第1のフィルタバンクのダウンサンプリング係数が、該フィルタリングされた信号の該第1の数のサブバンドに等しくなっている第1のフィルタバンクと、 該M1個のサブバンドのうちのM2個のサブバンドを加えるためのエイリアス削減フィルタバンクとして用いられる局部合成フィルタバンクであって、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものである局部合成フィルタバンクと、 該エイリアス削減フィルタバンクにより生成された該M2個のサブバンドをフィルタリングするための第2のフィルタバンクと、を備えるカスケードフィルタバンク。 出力のところに配置され、該周波数コンポーネントを加えるエイリアス削減フィルタバンクと、 該エイリアス削減フィルタに接続され、該エイリアス削減フィルタバンクにより生成された周波数コンポーネントをフィルタするための複数のサブバンドと、を備えることを特徴とするカスケードフィルタバンク。 【請求項8】 前記エイリアス削減フィルタバンクの振幅特性が、前記第1のフィルタバンクの合成フィルタバンクの振幅応答にほぼ等しい請求項7に記載のカスケードフィルタバンク。 【請求項9】 前記エイリアス削減フィルタバンクの位相特性が、前記第1のフィルタバンクの合成フィルタバンクの位相特性にほぼ等しい請求項7に記載のカスケード・フィルタバンク。 【請求項10】 前記第1のフィルタバンクにおける前記複数のサブバンドが、M1バンドから成り、および前記エイリアス削減フィルタバンクがM2バンドを有し、かつ前記エイリアス削減フィルタバンクが、M1/M2の比率で基準化された、前記第1のフィルタバンクにおける合成フィルタバンクの周波性応答にほぼ等しい周波数応答を有する請求項7に記載のカスケードフィルタバンク。 4.当審の判断 (1)「近接するサブバンド間のエイリアシング」とはどういうエイリアシングのことであるか、 という点について検討する。 平成23年2月28日付け手続補正書による補正により、請求項1,2に記載内容に「ダウンサンプリング」の要件が加わった。 一方、平成23年4月1日付けで提出された上申書の「(a)(本願発明が直面する)先行技術の問題点について」には、次の意見が記載されている。 「 本願発明は、(明細書の段落[0005]中に記載の)「カスケードフィルタバンク100の問題は、フィルタは完全でないため、各サブバンドフィルタ後のダウンサンプリングはエイリアシングとなることである。」という先行技術における周知の問題点に鑑み、これを解決せんとするものである。 簡単な解決法としては、例えば、MP3におけるエイリアシング削減法が知られている。しかしながら、この方法では、サブバンド対におけるエイリアシングしか削減できない。(例えば、B.Edlerにより、1992年6月エレクトロニクスレター第28巻、No.12の1104ページから1105ページに発表された「デシメーションによるカスケードフィルタバンクのサブバンドにおけるエイリアシング削減」(“Aliasing Reduction in Subbands of Cascaded Filter Banks with Decimation”)を参照のこと)。 本願発明が直面し、および解決を意図する先行技術の問題点については、明細書の段落[0005]において、「カスケードフィルタバンク100の問題は、フィルタは完全でないため、各サブバンドフィルタ後のダウンサンプリングはエイリアシングとなることである。」と記載されている、本願発明は、先行技術における上記問題に対する解決手法を提供するものである。 とりわけ、カスケードフィルタバンクは、典型的には、異なる周波数分解能および時間分解能を得るために、互いに後続する異なるフィルタバンクを有する。これらのフィルタは完全ではないため、各サブフィルタの後のダウンサンプリングが、エイリアシング(即ち、通過帯域(バンド)の外側の周波数の信号がフィルタの通過帯域に“鏡像化”されること)につながる。この鏡像化された周波数が次の段のフィルタの通過帯域(バンド)内にあると、信号の減衰がカスケードの第1のフィルタにより決定されるにすぎない。これは、結合されたフィルタバンクの劣った周波数選択性につながることとなる。」 しかしながら、明細書の段落[0005]中に記載の「カスケードフィルタバンク100の問題は、フィルタは完全でないため、各サブバンドフィルタ後のダウンサンプリングはエイリアシングとなることである。」という先行技術における周知の問題点は、単に「各サブバンドフィルタ後のダウンサンプリングはエイリアシングとなる」とされているのであって、「近接するサブバンド間の」エイリアシングについて特別な説明がはされているものではない。 また、当該意見において「カスケードフィルタバンクは、典型的には、異なる周波数分解能および時間分解能を得るために、互いに後続する異なるフィルタバンクを有する。これらのフィルタは完全ではないため、各サブフィルタの後のダウンサンプリングが、エイリアシング(即ち、通過帯域(バンド)の外側の周波数の信号がフィルタの通過帯域に“鏡像化”されること)につながる。この鏡像化された周波数が次の段のフィルタの通過帯域(バンド)内にあると、信号の減衰がカスケードの第1のフィルタにより決定されるにすぎない。これは、結合されたフィルタバンクの劣った周波数選択性につながることとなる。」としているが、これは通常のエイリアシングの問題であって、意見書によらずとも技術常識である。 したがって、本願発明における「近接するサブバンド間のエイリアシングを削減させる」とは、特別に定義されるエイリアシングを削除するものではなく、フィルタの通過帯域とダウンサンプリングの関係で生じる通常の意味でのエイリアシングを削減するということになる。 よって、特許請求の範囲が補正されたことにより、当該(1)の指摘事項についての拒絶理由は解消したことになる。 そして、次を検討する。 (2)どのような技術思想に基づくどのような手法でエイリアシングが削減できるのか、エイリアシング削減フィルタとはどのようなものであるか、という点、及び、 (3)「エイリアス削減フィルタバンクを用いて該周波数コンポーネントを加える」とはどういうことであるか、 という点について検討する。 平成23年2月28日付け手続補正書による補正により、請求項1、2及び6、7の記載は上記のものとなった。 しかしながら、発明の詳細な説明については何ら補正がされず、また、意見書においても、この点についての意見は述べられていない。 平成23年4月1日付けで提出された上申書においては、当該補正について次のように説明がされている。 「上述したように、独立請求項は、用語を明確化するとともに、種々の要件を明記するよう、以下のように補正がなされました。 『信号をフィルタリングして、第一のフィルタバンクにおける複数のサブバンドを用い複数の周波数コンポーネントを生成するステップと、 フィルタリングされた信号の各々を、該フィルタリングされた信号の対応する第1の数のサブバンドにてダウンサンプリングするステップであって、該第1のフィルタバンクのダウンサンプリング係数が、該フィルタリングされた信号の該第1の数のサブバンドに等しくなっているステップと、 該第1のフィルタバンクにおける該サブバンドの出力のところでエイリアス削減フィルタバンクとして局部合成フィルタバンクを用いて該周波数コンポーネントを加えるステップであって、該局部合成フィルタバンクが、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものであるステップと、 第2のフィルタバンクにおける複数のサブバンドを用いて該加えられた周波数コンポーネントをフィルタリングするステップと、』」 しかしながら、これは補正された特許請求の範囲の記載を再掲しているにとどまり、本願発明がどのような技術思想であるかとの疑問に何ら答えていない。 発明を方法として記載した請求項1、装置として記載した請求項2を検討するに、まず、請求項2では、エイリアシング削減フィルタバンクに関連して、次のように記載されている。 「該第1のフィルタバンクの出力のところで、該周波数コンポーネントを加えるエイリアス削減フィルバンクとして用いられる局部合成フィルタバンクであって、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものである局部合成フィルタバンクと、該エイリアス削減フィルタバンクに接続された、該エイリアス削減フィルタバンクにより生成された該周波数コンポーネントをフィルタリングするための第2のフィルタバンク」 そうすると、この記載からは、エイリアス削減フィルバンクは次のとおりに解釈できる。あるいは定義される。 [エイリアス削減フィルバンクの解釈] 該第1のフィルタバンクの出力のところで、該周波数コンポーネントを加える局部合成フィルタバンクであって、「該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものである局部合成フィルタバンク」であって、該エイリアス削減フィルタバンクにより生成された該周波数コンポーネントをフィルタリングするための第2のフィルタバンクに接続されるもの。 同様に、請求項1の記載から、請求項1におけるエイリアシングを削減する手法は次のものと解釈される。 [エイリアス削減の手法] 該第1のフィルタバンクにおける該サブバンドの出力のところで局部合成フィルタバンクを用いて該周波数コンポーネントを加えるステップであって、該局部合成フィルタバンクが、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものであるステップ。 しかしながら、エイリアス削減の手法について、局部合成フィルタバンクを用いることが記載上明らかになっているものの、該局部合成フィルタバンクが「該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成る」ということがどういうものであるか明らかでない上、「該局部合成フィルタバンクが「該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成る」ということについて、これがどういう意味をもち、エイリアシングの削減とどのような技術的関係にあるかは何ら説明がされていない。 平成23年4月1日付けで提出された上申書においては、請求項1、2における当該補正された構成の補正根拠について 「 補正事項の明細書の記載によるサポートは、次のとうりです。 『フィルタリングされた信号の各々を、該フィルタリングされた信号の対応する第1の数のサブバンドにてダウンサンプリングするステップであって、該第1のフィルタバンクのダウンサンプリング係数が、該フィルタリングされた信号の該第1の数のサブバンドに等しくなっているステップ』⇒明細書の段落[0018]ないし[0020] 『局部合成フィルタバンクが、該第1の数よりも小さい第2の数のサブバンドに等しいアップサンプリング係数をもつアップサンプラと、2つもしくはそれより多くのサブバンドフィルタとから成るものであるステップ』⇒明細書の段落[0013]ないし[0017]」 としているが、当該根拠とされる段落には、そのような記載は直接的には存在しない。 図面等を参照することにより、発明の詳細な説明に記載されている実施例が補正された構成に相当するものとして推察されるが、このことがどのような技術思想をもち、どのような理由で発明の課題を解決することになるのかについては上申書において何ら説明がされてはいない。 また、発明の詳細な説明にも、当該補正内容に対応しての技術的意義、技術思想は記載されていない。 結局、請求項1、2について補正はされたものの、発明の詳細な説明については補正されず、「どのような技術思想に基づくどのような手法でエイリアシングが削減できるのか、エイリアシング削減フィルタとはどのようなものであるか」という点で記載不備と指摘した点については、何ら解消されていない。 したがって、平成23年4月1日及び4月7日付けで提出された2通の上申書を参酌しても、依然として、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件明細書の記載は特許法第36条第4項の規定を満たすものではない。 よって、余の事項について検討するまでもなく、本件出願は特許法第36条第4項の規定を満たしていないものとして、特許法第49条の規定により拒絶すべきものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、平成22年8月26日付け拒絶理由における理由1を検討することなく、平成23年2月28日付けで提出された手続補正書、意見書によって、平成22年8月26日付け拒絶理由を解消することはできず、本件特許出願は当該拒絶理由の理由2により拒絶をすべきものである。 よって、原査定を取り消す、この出願の発明は特許すべきものであるとする審判請求の趣旨は認められないから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-14 |
結審通知日 | 2011-06-15 |
審決日 | 2011-06-29 |
出願番号 | 特願2001-166291(P2001-166291) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G10L)
P 1 8・ 536- WZ (G10L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 涌井 智則、間宮 嘉誉、山下 剛史 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 吉村 博之 |
発明の名称 | カスケードフィルタバンクにおけるエイリアシングを削減する方法および装置 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 臼井 伸一 |